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番外編*二人分の素直さ

 年が明けた一月一日。
 『蓮華』もカレンダー通り休みの私は引き篭り、録り溜めていた『わくわく農業紀行』を鑑賞し続けていた。は~、何もしないでいいって幸せです。

 


* * *

 


「……なのに、なんでこんなとこに」
「てめぇ、去年と同じことを繰り返してぇのか?」
「千風さーん! あけましておめでとうございまーす!!」

 

 こっちの台詞ですと返す前に、結城さんが両手を広げやってくる。が、遮るように出てきた隆成さんに抱きしめられた。

 

「癒される~」
「はひいぃぃっ!」
「お兄様!」
「スリーのヤツ、マジで気に入られてたんだな」
「…………ご愁傷さま」
「あ、龍兄さん! お着物、貸してくださってありがとうございます!!」

 

 結城さんの満面笑顔に、駄菓子屋さんはアセトアルデヒドさんの背中に隠れ、隆成さんは帝王様チョップを食らった。安堵の息をついていると、結城さん同様、華やかな着物に身を包んだ撫子さんが、こめかみを押さえていた手を離す。

 

「千風さんも着物いかがですか? 階堂さまが何点かお持ちになってますの」
「い、いえ、過去ロクなことがなかったので……そもそも私、場違いにもほどがあるんですが」
「ほうほう、儂の誘いを断るというか、風?」

 

 どこか楽しそうで威圧感のある声に全員が振り向くと、従者を連れた六家の頂点──高科 仁左衛門様が現れる。一斉に頭を下げる皆さんに続いて私も頭を下げた。

 高科家で行われる六家の新年会。断りたいけど、断れるはずありません。

 


* * *

 


「なんでそう、ジジイに従順なんだ」
「とってもお世話になって、とっても大好きだからでっだ!」

 

 閑散としていた廊下に、新年最初のチョップ音が響いた。
 仁ちゃんの家は1500坪もある平屋で、広間は既に宴会状態。六家の家族と役員合わせ五十人もいるせいでしょうが、一番は帝王様のお父様方。つまるところ親世代が揃ってすぐ、静かだった室内が大騒ぎになったのです。大人しい子世代と大違い。

 

 気付けば夜も深まり、人酔いと熱気と、入れ替えて遊ぶ隆成さんに疲れて廊下に出ると、縁側で一服している帝王様を発見。胡坐をかいた真ん中に座らせてもらうが、チョップを食らった頭が痛く、涙目で訴える。

 

「帝王様……今年は優しくするを目標にしてください」
「くくっ、じゃあおめぇは素直になるが目標だな」
「私、結城さんの次に素直です。良い子でああぁっ!」

 

 誇らし気に言うと、タバコを潰した帝王様の両手が胸を揉む。
 服越しでも、ぐにぐにと形を変える様に身体は簡単に熱くなり、耳元で囁かれる。

 

「エッチでは素直じゃねぇだろ」
「はひっ……!」

 

 喉と耳をしゃぶる卑猥な音が全身をめぐる。
 それが下腹部まで到達すると勝手に腰が動き、お尻に硬いモノが当たった。胸板に寄りかかった私は、ソレを手の平で転がす。

 

「どこが良い子だ。ドS」
「フツーですぅんんっ」

 

 くすくす笑う声と一緒に口付けが落ちた。
 お酒やタバコ、様々な味がするのに舌が差し込まれると“彼”一色になる。舌先で自分の舌を突かれると、従うように舌を絡めた。

 

「んふ、ん、ん……」
「早速素直になって偉いじゃねぇか……それに習って俺も優しくしてやるよ」

 

 自分で願っておいてなんですが、一番似合わない台詞ですね。
 すると、ニットと肌着だけだったせいか、服の上から簡単に下着をズラされる。ニットの上からでもわかるほど尖った先端を帝王様の太い指が摘んだ。

 

「ああっん!」

 

 悲鳴は口付けで塞がれる。
 すぐ近くに全員が集まる広間があるせいと言えば親切に聞こえるが、直接触れない手、さらにスカートの上から股間を撫でられると焦らされるとしか思えない。

 

「あぁ……帝王様」
「なんだ? 優しいだろ」
「そ、そうですけど……ん」

 

 吐息を漏らす唇が重なる。
 それもまた小さなリップ音を鳴らすだけの軽いものを繰り返すだけ。不満気に見上げるが、帝王様はとても意地悪な顔をしていた。やはりいつもの彼だと怒りもあってか、私は後ろ手で握ったモノを強めに捏ねた。

 

「っ……なんだ、何が不満なんだ?」

 

 一瞬呻きが聞こえたが、彼の表情は変わらない。
 頬を膨らませた私は何も言わずただ捏ねる。と、つーと、舌先で首筋をなぞられた。

 

「はひっ!」
「素直に虐めてくださいって言えばいいじゃねぇか」
「い、言いませ……んん」
「往生際悪……お」
「え……やっ!?」

 

 何かに気付いたように携帯を取り出した帝王様は動画モードにした。
 突然のことに驚いた“あたし”を、中途半端な快楽が襲う。

 

「ちょ、何す」
「総一郎、いつまで外いんだよ。スリーも」

 

 文句を言おうとした時、広間から安室圭太が出てきた。
 慌てて顔を逸らすが、総一郎の手がニットの中に入り、肌着越しに乳首を、スカートの中に入った手がショーツを撫でる。廊下は広間の明かりが漏れているだけなので見えないとは思うが、安室圭太が近付いてくる度に動悸は速くなる。

 

「千風が寝ちまって動けねぇんだよ」
「いや、スリー、めっちゃ動いてんぞ。新年から大嘘吐くんじゃねーよ」

 

 身体を揺らしての抗議に安室圭太は気付いてくれた。さすがツッコミ、さすが幼馴染と声に出して褒めたかったが、乳首を引っ張られ、ショーツの底をズラした指に秘芽を押し込まれた。

 

「っ~~~~!」

 

 焦らしのない本気の刺激に電流が走る。
 なんとか声は抑えたが、くちゅくちゅと僅かな水音が聞こえ、蜜が零れているのがわかった。息を上げながら総一郎の肩に頬を寄せると、震える唇を動かす。

 

「っ、ちょうだい……総一郎の……大きいの……もう焦らされるの……ぃや」

 

 ちーより我慢出来ない自分が恥ずかしい。
 でも、裏に篭っていても寸止め、表に出てきても寸止め。もう楽になりたくてねだると、頭上からくすりと笑う気配がした。

 

「圭太、わかってんなら邪魔すんな。まあ、てめぇが聞きてぇなら話は別」

 

 最後まで聞くことなく反転した安室圭太はピシャリと広間の戸を閉めた。理解と察し力のあるヤツだと感心していると、肌着ごと捲くし上げられ、乳房が夜空の下に曝け出される。

 

「ひゃっ!」

 

 乳首まで丸見えなことに羞恥が襲うが、あたしの腰を浮かせた総一郎はズボンから自身のモノを取り出すとスカートの中に潜らせた。ヒクヒクさせた秘部の中央にモノが掠ると、ビクリと身体が仰け反る。

 

「ほら、もう一回おねだりしてみろ……ふー」

 

 意地悪く囁く男はSだ。でも、そんなのわかりきっているし、充分火照った身体と頭に否定の言葉は浮かばない。素直な言葉しかない。

 

「っあぁ……ちょうだい……総一郎の大きいのナカに欲しい……」
「良い子だ」

 

 褒めるように頭を撫でられ口付けられると、熱い楔がドロドロに熟したナカを貫いた。

 

「はっ、あ、あああぁぁ」

 

 溜まりに溜まっていた小さな刺激が一瞬で弾き飛ばされ、快楽へと変わる。
 いつ誰がまた来るかわからないのに、乳房を揉みながら腰を突き動かされる度に『もっと』と声を上げてしまう。

 

「あぁ……いいの……気持ち良いの……もっとちょうだい……もっと突いて」
「やっぱおめぇの方が素直だな……ほら、いっぱい喰え」
「ああああぁん!」

 

 腰を掴まれると、ナカで肉棒を掻き回される。
 一番弱くて気持ち良くて好きなところを執拗に突かれ、愛液が止まることなく溢れた。

 

「はあ、ああぁ……イっちゃ……──っっ!」

 

 頭の中で何かが弾けると世界が真っ白になる。
 動きを止めた身体は痙攣し、ゆっくりと胸板へと落ちた。荒い息を吐く下唇からは唾液が零れるが、腰を抱かれると、繋がったまま反転される。

 

「ああっ!」
「ほら……今度は、ちーの番だ」

 

 同じように息を乱す帝王様は“私”の頭を撫でながら腰をゆっくりと動かす。

 

「あっ、あんっ……」

 

 ふーちゃんの絶頂が残っているせいか、頭が上手く回らない。
 でも、ぱちゅんぱちゅんと鳴る音や、唾液を舐め取る舌に、両手を帝王様の首に回した。

 

「わ、私も欲しいで……帝王様の……」
「おめぇは『虐めてください』だろ?」

 

 さっき言わなかったことを根に持っているのかワザとなのか、乳房を揉む手は緩い。だが、怒るよりも先に私は口付けていた。角度を変えながら深く口付けると、白い糸を繋げたままねだる。

 

「私を……帝王様ので虐めて……ください……」
「ドM」
「フツーで……あああ!」

 

 弧を描いた唇が胸をしゃぶる。
 同時に腰を持ち上げられると激しく抜き挿しされ、浅いところも深いところも支配すると最奥を突いた。寒い夜空も場所も関係ない、歓喜を響かせる──。

 


 情痴後『どんなプレイしたの?』と爽やか笑顔で聞いてきた隆成さんに、洗いざらい吐いた帝王様に落とした怒号の方が大きく響きましたが────。

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