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11話*「〇×クイズ」

 その想いに気付いてはいけない。
 呑み込まれてはいけない。
 名前を付けてはいけない。

 付けたら──。

 

 

 


 

「おいっ、千風!」
「はひぃっ!?」

 

 突然の大声に丸めていた身体が跳ね、眩しい電気に目を瞑る。暫くして近付いてくる足音に目を開くと、目の前には眉を上げた帝王様。

 

「てめぇ……こんなとこで何してんだ?」
「あ、すみません! 途中でお腹に渦潮が出来てハマっだ!!」
「フツーに腹痛と言え」

 

 チョップに頭を押さえる私がいるのは女子トイレ。の、横にある用具室。
 広さは十畳ほどでソファやテーブル、絵画などが置かれている。いわば物置で、ソファ同士の間に出来た小さな隙間に私はスッポリと入り込んでいた。狭いとこ落ち着くので好きなんです。ではなくて。

 

「帝王様、申し訳ありませんがここは関係者以外立入禁止です」
「挟まって仕事放棄してる女に言われたかねぇな」
「いいいいえいえ! ちゃんと黒服に伝言とアイスをお願いしました!!」
「ああ、腹痛起こしたから休んで来るって聞いたな。ともかく抜くぞ」
「え、あ、ちょ!」

 

 溜め息をつきながら手を掴まれるとカブのように引っこ抜かれる。
 勢いによろけ収まった先は帝王様の腕の中。隆成さんとは違う胸板と匂いに、静かになっていた動悸が激しく鳴りだす。と、頭上から低い声。

 

「俺が頭を回しすぎたから、とか言わねぇだろうな?」
「ちちち違います! 慣れてない強制交替の副作用で……すみません」
「隆成のヤツ……」

 

 舌打ちに、ふーちゃん信号が青のチカチカを鳴らすが、今はなぜ居場所がわかったのか疑問に思う。誰にも言っていないし、男子トイレは場所が違う。女子トイレも殆どのキャストが仕事中で使っていない。

 

 すると、帝王様は一枚の紙を取り出した。
 よく見れば水滴で絵が描かれ、左向きの矢印に──。

 

「女子トイレマークがあんなら用具室(ここ)しかねぇだろ。NO.2もよくわかんねぇ女だな」
「百合姉ちゃーんんっ!?」

 

 まさかの同僚のチクリに悲鳴を上げるが、唇と一緒に塞がれた。
 後頭部を固定されると、一気に彼の唇と舌が入ってくる。淫らな水音が静かな部屋に響くが、同じように私の喘ぎも響いた。

 

「っあ……帝王……様っ」
「さっきは……ふーだけだったからな……ん、ちーもしてもらいたくて腹痛が起きたんじゃねぇのか?」
「そ、そんな……こと……あっ!」

 

 口付けたまま腰を持ち上げられるとソファに押し倒される。
 片手は耳の横、片手は腰の横、そして片膝で股間に割って入り、真上から笑みを向ける帝王様。見つめられるだけで動悸の激しさが増すなんて意味がわからない。
 ただひとつ、腰の傍にある手に手を乗せると口を開いた。

 

「あ……りがとう……ございます」
「ああ?」
「私とふーちゃん……両方を考えてくれて」

 

 帝王様は目を見開く。
 瞼を閉じた私は呟くように続けた。

 

 二重人格(フツー)なら、もう一人の存在など知らず終わってたかもしれない。
 でも彼女(ふーちゃん)を知る私にとっては双子のような存在。身体はひとつだけど違う私。違う個性を持つ別の私。そう思ってたから二重人格を知った人に『千風ちゃんは一人だけだよ』と言われた時とても悲しかった。ふーちゃんも入れてほしかった。

「だから……帝王様が“私達(ふたり)”を別で考えてくれて……嬉しいです。隆成さんは……ふーちゃんを望んでないから」
「ヤツは置いといて……揃って相手してもらいてぇとはドMだな」
「え!? いえ、フツぅんっ」

 そういう意味じゃないと否定するよりも先に口付けられる。
 逃げようとしても優しい口付けに身体が逃げようとしない。何度も何度も繰り返され、さすがに息が上がってくると帝王様がポケットから携帯を取り出す。
 嫌な予感に止めようとしたが、また唇を塞がれてしまい“ON”になった。

 

「ちょっ、総一郎……何っん」
「何って……“二人”の相手だが?」

 

 動画モードで“あたし”にされると、意地悪な笑みを浮かべた総一郎の口付けがまた落ちる。ちーの時とは反対に荒く『何その差!』と、反論するかのように舌を彼の口内に入れた。が、歯に挟まれ悲鳴を上げる。

 

「ふゅううぅっん!!?」

 

 すぐ離されたが、なんとも言えない悲鳴に総一郎は笑った。

 

「っくく、なんだその啼き方」
「う、うるさい! そっちこそ、ちーとの差は何!?」
「てっきり“ふー”は痛い方が好みだと思ったんだが優しいのが好きだったのか? 料亭前といい、さっきといい、舌を入れてきたSなふー」
「バっカあぁっ」

 

 変な推理に顔を赤くしたまま文句を言うが、肩に顔を埋めた総一郎は首筋を舐めながら吸う。慌てて彼の背中を叩いた。

 

「ちょっ、仕事あるんだから……ダメです」

 

 途中で動画が終わり“私”に替わるが、背を叩く手はやめない。帝王様も吸うのをやめないどころかいっそう強くなった。こんな場所でこんなことをされている上、キスマークなんか付けられたら仕事上問題があると涙目で睨む。けれど返ってきたのは笑み。

 

「売約済みの証を付けて何が悪い」

 

 甘く、服従させる声が耳朶を舐めながら伝わる。が、必死に身体をバタつかせる。帝王様は楽しく笑いながら両手で胸を揉みしだき、ドレスの上から先端を摘んだ。

 

「んんっ!」
「客(俺)との性行為で辞めさせる手もありだな」
「枕営業はしてません! 出禁にしますよあぁあっ」
「てめぇにその力はねぇだろ。あるならジジイか……身内か?」

 

 静かな声に喘ぎが止まる。と、ドレスの胸元を引っ張られ片方の胸が露になり、冷たい外気に晒された先端が尖りはじめた。それを見た帝王様は舌を這わせると舐め上げる。

 

「ひゃっ!」
「良い声だ……んじゃ、ちょっくら○×クイズをしようか」
「まる……ば……あぁっ」
「問一。ちーは俺のことが好きだ。○か×か」
「パッス!!!」
「パスは一回まで。もう使えねぇぞ」

 

 酷い! 初っ端から酷すぎる!! しかもパス使い切っちゃった!!!
 ふーちゃんが何かツッコミを入れた気がしたが、先端を口に含まれ思考が乱れる。

 

「帝王……様……っや」
「問二。千風は良家の出である」
「っ!?」

 

 一問目とはまったく違う問題。けれど、別の意味で動悸を激しくさせる。
 戸惑う私に帝王様は先端を舐めながら『自分の推理』を話すと、ふーちゃんが膝をつくのが浮かんだ。帝王様は意地悪な笑みを深くする。

 

「○か×か」
「ノーコメ……ああっん!」

 

 拒否すると先端を噛まれた。舌を挟まれた時とは違う刺激は下腹部まで電流を走らせ、愛液が零れる。

 

「○×以外の回答はなしだ。どこの家や理由は聞かねぇから答えろ」
「それっ……無理や……あっ!」

「んなこと言ってる間に手持ち無沙汰になった俺に喰われるぞ」

 

 指で先端を弾く手とは反対の手が太腿を撫でるとショーツに潜り、秘部を擦る。その手を両手で押さえるが長い指が一本、水音を鳴らしながら膣内に沈んだ。

 

「ふああぁあっ……!」
「加減してやってんのに、そそる声と顔すんじゃねぇよ。二本に増やしてやろうか?」
「ま……まるぅ……っああ!」

 

 指を前後に動かされ、つい口を開く。
 回答に笑みを浮かべた帝王様は指を止めるが、私の息は上がり視界がぼやけだしていた。でも帝王様の顔だけはハッキリ見える。

 

「良い子だ……問三。家は六家の傘下である。○か×か」
「×っ! 入ってたら帝王様のことも知っああ!!」

 

 即答したのに膣内に入った指とは別の指で秘芽を引っ張られ擦られる。弄る指に愛液が帝王様の手にかかるが、彼は喉を鳴らした。

 

「くくっ、気持ち良くなってきたか?」
「あぁ……もう……やめ」
「問四。千風は処女ではない」
「はひぃぃっん!?」

 

 またさっきとは違う問題に悲鳴を上げるが、口付けで止められる。けれどすぐに離され、舌先で唇を舐められると愛液がまた零れた。

 

「なななななんでそんな問題になるんですか!?」
「何度か弄くって思ったが、あんま痛がんねぇだろ」
「じゅうぶ……痛……っあああ!」
「それに……」

 

 指で最奥を突かれ声を上げると、無意識に帝王様の首に両腕を回した。
 目尻から涙を零す私の首筋に口付けた帝王様は膣内から抜いた指を見るが、その指は濡れているだけ。見下ろす彼の口元に笑みが浮かぶ。

 

「血も出てねぇ」
「っ、○っ! したことあります!! 一人だけ!!!」

 

 もう穴があったら埋まりたいほどの羞恥に叫ぶしかない。
 けれど笑い続ける帝王様にも腹が立ち、睨んでいると腰を抱かれ身体が浮き上がる。すぐ目の前には彼の顔。近すぎる距離に両腕を回したままだったと気付くが、既に捕らわれていた身体は簡単に彼と口付けを交わさせた。

 

「っん……ぁふ」
「ん、一人だけならいいか」
「いい……です……んか」
「それ以上を……俺がすればいいだけだろ?」
「はったっ!」

 

 意地悪い声に我に返ると、ショーツを膝下まで脱がされる。
 突然のことに声を上げるよりも先に、支えられていた腕がなくなったせいでソファの肘掛けに背が当たった。すると帝王様の両手が私の両脚を開く。彼が見つめる先には。

 

「蜜がトロトロ出てるぞ」
「てて帝王様っダメっああ!!!」
「素直に回答したご褒美だ」

 

 指だけで濡れてしまった秘部に、帝王様は顔を近付けると愛液を舐めた。
 ザラリとした舌に蜜と秘芽を舐め取られただけで身体は痙攣する。止めようとしても喘ぐことしか出来ない。

 

「ああっ……はあぁん……っあ」
「んっ、良い声に合わして蜜が増えんな……ああ“もう一人”も刺激が欲しいか?」
「あっ、それは……ダメだってばあぁっ……総一郎っ!」

 

 また動画にされ“あたし”に替わる。
 ちーに与えられた刺激は当然あたしにも伝わるが、篭っていた時とは違うナマの舌に愛液が増した。それを悦ぶかのように舐め取る総一郎の舌は早くなり、わからないものが駆け上がる。

 

「あああっあ……総一郎ダメ……ダメ」
「問五」

 

 愛液を舐めながら呑気に話す男を喘ぎながら見下ろす。が、それは間違いだったのか、同じように見上げる男の笑みが妖艶に映ると唇が開いた。

 

「ふーは俺のことが好きだ。○か×か」
「~っ、○+×!!!」
「地図記号かよ」
「ひゃあああぁぁーーーーっっっ!!!」

 

 まさかの答えを互いに言うが、ニ本の指に膣内の最奥を突かれ、愛液を噴き出してしまった。真っ白な世界が訪れたあたしは息を荒げたままソファに沈み、口付ける総一郎は下腹部へとまた手を伸ばす。が、○+×の警察署からではない、櫻木隆成の着信で止まった。

 

 さすがに時間が経ちすぎたら不審がられますよね。
 替わった“私”は息を整えながら濡れた下腹部とソファを拭き、不満そうな帝王様を連れVIP室へと戻った。腰が若干痛い私に皐月ママと百合姉ちゃんは腹痛と勘違いして心配してくれましたが、仁ちゃんと隆成さんの笑みが意味深に映る。

 

 そして、よくよく考えれば○×って別に間違えても良かったんですよね。しかも当たってるかわかるの私だけなんだしと、いまさら気付いたことに沸々と怒りが沸き、仁ちゃんから差し出されたアイスクリームをヤケ食いのように食べた。

 

 完食の速さに拍手が送られましたが、また腹痛が……────。

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