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複雑なスノーフレーク
複雑なスノーフレーク

11話*「ド・M」

「ハルハルー、きたぞー」

 雅が示唆する先を見る。
 眼鏡をしていない目には、威勢よく向かってくる黒服の男達がハッキリと映っていた──千風と白鳥さんを拉致った敵を。

 

 気付いてはいた。休日を楽しむのとは違う視線と気配。前を歩く二人だけに注がれる“監視”の目。機器じゃないせいか千風は気付かない。その分、俺達が敏感だ。
 家業以前に、それぐらいしか幼馴染を護る術がなかったから。

 

 なのに白昼堂々、車に乗った男達に拉致られてしまった。目の前で。
 そんなの許されるはずないし許すはずもない。相手が大人であろうと誰だろうと関係ない。徹底的に捻り潰す。

 

 そのためにも運転手付きの雅と合流し、白鳥さんに付けられた発信機を頼りに廃墟と化したホテルへ向かった。警察を呼べば長期戦+少人数が敵も油断するため、執事と雅と三人で正面突破する。だが、俺自身は別に焦ってもいなければ急いでもいなかった。
 むしろ遅いとか、護衛のくせに何やってるんだとか、能無しとか罵声を飛ばす幼馴染を思い浮かべていた……ああ。

 


「最っ高にゾクゾクするなぁ……」

 


 前髪を掻き上げながらほくそ笑むと、迎え撃つ。


 

 

 

 


「ちぃ~、おっ待たっが!?」


 満面笑顔で入室すると勢いよく蹴られた。股間を。
 両手で押さえたまま屈むが、俺の顔は緩み、数時間振りに見る千風も笑顔。その背景がドス黒いのは後ろ手に縛られているからか。

 

「Sなちぃが縛られてるなんて興奮すっあああぁぁっっ!!!」

 

 縛られていない足に何度も蹴られる。
 当然悦ぶが、千風から笑顔が消えていることに気付く。そればかりか目は虚ろで息も荒い。

 

「ち「っああぁあぁぁ!」

 

 遮ったのは白鳥さんの悲鳴。
 横たわっている彼女もまた後ろ手に縛られているが、苦しんでいるように見える。傍に控える執事の顔つきも険しいことに、さすがの俺も起き上がると千風の腕を取った。

 

「何か「ひゃああぁっ!」

 

 今度は千風の悲鳴に遮られる。
 驚く俺など映していない目を見開いたまま止まった彼女はすぐ膝から崩れ落ちた。

 

「ちぃ!?」
「媚薬です……」

 

 慌てて抱き留めると、静かな声に顔を上げる。小型ナイフを取り出した執事は背を向けたまま続けた。

 

「拉致られている間に媚薬を飲まされていたそうで、感度が高くなっています」
「っあ、ああぁ……!」

 

 縄を切るだけで漏れる白鳥さんの声は甘い。
 対して冷静に見える執事は感情を押し殺しているようにも思えた。先行した執事に倒された主犯と呼ぶべきハゲおっさんと黒服。白鳥さん目当てで拉致った連中を睨んでいると、縄で縛っていた雅が何かを投げた。それは小瓶で、鼻に近付けると甘ったるい匂い。恐らく媚薬だろう。

 

(本物なんですか?)
「いや、わかんないけど……飲んでみる?」
(千風にあげてください)
「OK、分けよ」

(は……ちょ!?)

 

 ぎょっとした冬を他所に、小瓶の蓋を開けた俺は液を半分口に含む。そのまま息を乱している千風に口付けた。

 

「んんっ!?」

 

 突然のことに目を見開いた千風は身じろぐが、既に媚薬は舌を伝って流し込まれた。俺の服を握る手は震え、唇を離すと唾液を落としながら睨まれる。
 残りの半分を飲み干した俺は薄笑いを浮かべた。

 

「最っ高……」

 

 ぶるりと駆け上る刺激と火照りは彼女のせいか媚薬のせいか。
 頭を抱える冬に構わず千風の縄を解くと自分の上着を肩に掛け、抱き上げる。同じように、おっさん達を立ち上がらせた雅が振り向いた。

 

「絞め殺されない程度にしておけよ」

 

 溜め息交じりの指摘に、首に回された千風の腕が強くなる。
 苦笑だけ返すと部屋を後にした。

 

 突入から四十分。迎え撃っている際に雅が通報して十五分。
 既に外からは警報音が聞こえ、警官が揃っているのが想像できる。犯人を連行した雅が説明し、現場検証がはじまるまでの時間を考え……たいのに頭が回らない。

 

「っあ……結構効くんだな」

 

 壁に寄り掛かると大きく息を吐く。
 少量だったのに呼吸は荒く、汗が出てくる。何より耳にかかる千風の息が下腹部にまで刺激を与えていた。ゆっくりと頬を寄せると囁く。

 

「ちぃ……辛くない?」
「……くない」

 

 か細い否定が返ってきた。
 肩に顔を埋めているせいで表情はわからないが、声と同じように身体も震えている。さらに無意識だろうが胸を押し付け、腰をくねられるとダメだった。チュニックの下から手を潜らせると股を撫でる。

 

「ひゃっ!」
「あ、濡れてる……いつから? もしかしてハゲおっさんに触られた? 捻り潰してこようか?」

 

 タイツまで濡れていることに目を細めると、千風は真っ赤な顔を上げる。と、ぎゅっと股間を握られた。

 

「っあぁ!」

 

 いつも以上の刺激に呻く。
 その場にへたり込むのを堪え、なんとかボロボロのソファまで辿り着くと雪崩れ込むように寝転がった。息を乱す俺とは違い、上体を起こした千風はズボン越しに肉棒を捏ねる。

 

「あ、ああぁ……」
「そもそも……こうなったのは誰のせいですか? 春ちゃんの仕事ってなんでしたっけ?」
「ああぁ……ち、千風の護衛……っああ」
「ですよね? なのにこんなに遅くなって……しかも」

 

 ゆっくりとズボンのファスナーを下ろした千風は、はち切れるほど膨張した肉棒を取り出すと亀頭に指を押し込んだ。

 

「あああ゛ぁぁっ!」

 

 容赦ない刺激に白濁が迸る。
 必死に息を整える俺を見下ろす千風は、自身の手についた白濁を舐めた。

 

「私より先にイく早漏男なんて……捻り潰してやる」

 

 息を弾ませながら口元に弧を描いた千風は明らかに怒っている。
 望んでいた俺にとっては最高のご褒美だが、ふぅの口調が混ざっていることに正気を失っている気がした。実際、目は虚ろで止めようかと思うが、靴を脱いだ両足で肉棒を挟まれる。

 

「っああ゛!」
「出したばっかのくせに……また大きくさせて」
「あっ、あ、ああぁぁ……!」

 

 玩具のように、肉棒がタイツ越しの両足に弄ばれる。
 片足で亀頭を、反対の足で袋を擦っては両足で踏まれ、一気に快楽が駆け上ってきた。

 

「ああっ……ちぃ……出る」
「ダメです……タイツ汚したら許さない」
「あああっ……無理……無理だってああぁ!」

 

 頬を紅潮させたまま呻く俺に、笑みを浮かべた千風は両足で肉棒を挟むと大きく上下に扱きはじめた。その動きは速く、擦れ合う度に硬さと大きさを増す肉棒は限界を超える。

 

「っ──!」

 

 総身を奮わせると同時に、さっき以上の白濁が迸る。
 ダメだと言われたタイツどころか胸や頬にもかかり、手で拭った千風はくすりと笑った。

 

「ダメって言ったのに……ホント、ド・M……っきゃ!」

 

 勢いよく伸ばした両手で千風の両脚を掴むと引っ張る。
 咄嗟に身体を捻らせた彼女はソファの端を掴むが、開脚の先にあった染みに“僕”はくすりと笑った。

 

「人ので遊びながら……ぐしょぐしょに濡らしていた淫乱女に言われたくない……ですね」
「ち、違いま……ひゃ!」

 

 チュニックを捲ると、さらに両脚を引っ張る。
 目の前にはタイツに覆われた丸いお尻。その中央は薄く白い染みができていて、顔を近付けると舐めた。

 

「あああぁ……冬く……んんっ!」
「これは俺達のじゃなくて……んっ……千風のですよね……あ、また生暖かいのが出てきた」

 

 自分の口調もおかしいのはわかっている。
 だが、身体も脳も目の前にある極上物を貪って貪って貪れられたい欲情に支配されていた。

 

 次第に煩わしくなったタイツを引き下ろすと、意味を成していないほど濡れたショーツが露になる。それを指先で突けば嬌声が上がり、感化されたようにショーツをズラした。
 落ちる蜜とピンク色の秘芽にしゃぶりつく。

 

「ひゃあああぁ……ダメぇ……イっちゃ……」
「イきたかったのならいいじゃないですか……ただし、僕にかけないでくださいよ?」

 

 さっきのお返しだというように、しゃぶりながら指を膣内に埋めると、千風は大きく仰け反った。イったのだとわかるが、すぐ睨まれる。“ふぅ”だと、愉悦感が増す。
 すると、大きく口を開いた千風は剥き出しのままだった肉棒に食いついた。

 

「っ……!」
「んっ、また……大きくなっふぇる」

 

 突然のことに顔を離すと、亀頭を舐め続ける千風が股間から見える。
 寝惚けている時に春がしゃぶらせたことはあるが、こうも躊躇いもなく、しかも的確に良いところを攻められるとは思わず、つい声が漏れた。

 

「あっ、あぁ……」
「んっ、あたしにかけちゃダメ……って言いたいけど、口の中なら大丈夫かな……んんっ」
「っ!」

 

 機嫌良く言いながら肉棒に食いついた千風は上下に頭を動かす。
 すべてを持っていかれそうなほど強い吸いつきと喉元を突く肉棒に、また限界が訪れた。

 

「っそ……僕が……っ!」
「ふんんンん゛ん゛っ!!!」

 

 熱く滾った白濁が千風の口内に溢れる。
 必死にコクコクと飲み干していく音に両手で顔を覆っていると『っはあ』と肉棒が離された。振り向いた千風の頬は赤く、唇から白濁を落としながら笑みを浮かべる。

 

「勝った……」
「っ……良かったですね!」
「きゃっ!」

 

 勝ち誇った顔に勢いよく起き上がると跨る。
 そのままチュニックのボタンを外すと、ブラ越しに胸を揉みしだいた。さすがに上から押さえ込まれていると抵抗できないようで、千風は身じろぐだけ。だが、いつも聞く怒号が響いた。

 

「何すんのバカっあああぁ!」

 

 ゾクゾクしたものが駆け上ると、ズラしたブラから取り出した胸の先端を引っ張る。さらに愛液を零す秘部に肉棒を擦りつけた。その大きさに目を瞠った千風が振り向くが、汗を落としながら口角を上げる。

 

「負けたままなのは……性に合わないんですよ……なので、もうひと勝負」
「あっ、ああぁ……!」

 

 濡れ切っているおかげで滑るように肉棒は入り、ゆっくり動かしただけで卑猥な音が響く。嬌声も。

 

「あ、あああぁぁ……」
「我慢しなくていいんですよ……欲しくて欲しくてたまらないんでしょ……ほらっ」
「あああ゛あ゛ぁ!」

 

 ぐっと奥まで押し込むと、今日一番の嬌声が上がる。
 一緒に胸も弄れば締めつけは強くなり、腰を大きく打てば蕩けた表情に変わった。

「ふあ、あ、あああぁぁっ……気持ちい……もっと……欲しいの」
「はいはい……っ!」

 

 お望み通り。いや、ギリギリのところで抑えていた欲望を放出するように抽挿を繰り返す。秘部からはドロドロの愛液が零れ、痙攣した様子にイったのだとわかるが、止めることなく突き立てた。

 

「っ……!」
「はあああぁぁン!!!」

 

 嬌声は喜悦にも聞こえ、僕の世界も真っ白になる。
 気付けば力を失くした千風を抱きしめていた。

 

「冬が……負けるなんて……」

 

 珍しい状況に、くすりと笑った“俺”は千風の頬に口付ける。さらに耳元に口を寄せると問うた。

 

「千風……気持ち良かった……?」
「は……ひ」

 

 ゆっくりと振り向いた彼女は小さな声で答える。その目はやはり虚ろだが、笑みを浮かべるとまた問うた。


「じゃあ……俺達のこと好き? 俺達は好きだよ……好きならキスして」


 そっと顔を寄せると、目を閉じた千風の唇が唇に重なる。
 理解してないのはわかる。卑怯だともわかってる。それでも高ぶる感情は媚薬の力じゃない。千風が好きで好きでたまらない、偽りのない愛。

 それは俺だけじゃないと目を閉じると、深く口付けながら心の中で問いかけた。

 そうだろ────冬?

/ 本編 /

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