04話*「シンクロ」
“好き”が“愛”に変わったのはいつか。
繋いでいた手が離れた時?
身長を追い越した時?
会話が減った時?
それらを寂しく感じた時?
いつでもいい。理由なんていらない。
脳も身体も、すべての“俺”が彼女を好きだと、愛していると、欲しいと求めているだけで充分だ。情欲に歯止めなんて効かない。
「んっ、ふ、ん……ああぁっ!」
「ん……ちぃ、可愛い」
夜も深まった時間に響く甘い声。
明々と電気が点る部屋で涙を滲ませながらも頬を赤めているのが晒される。それが可愛くて、抵抗する身体を両脚で挟んだまま、当にふやけた唇へと口付けた。
重ねるだけでなく、上と下、両唇を数度舐めて舌を挿し込む。
さらに逃げる舌に舌を絡ませると、たくし上げたワンピースパジャマから見えるショーツの中に手を潜らせた。
「あっ、ダメ、春ちゃ……ああっ!」
顔を逸らしたちぃの白い首筋に吸いつく。
耳元で聞こえた喘ぎに高揚感は増し、両脚を緩めると彼女の股が少しだけ開いた。その隙に茂みを掻き分けた手が男とは異なる小さな花芽を見つける。指先で擦ると、びくりと、ちぃの身体が跳ねた。
「な、何……ひゃっ!」
恐る恐る見下ろす彼女の首筋を舐めると、擦っていた指をナカへと挿し込む。異物感に強張った身体が指を締めつけた。
「あっ……いいね、ちぃ……上手」
「な、何いってるんですかあ、あっ、ああぁ……っ!」
恥ずかしそうに睨んでくれたお礼に緩急をつけながら指を抜き挿しさせる。
厭らしく響き渡る水音と一緒に蜜が零れてきた。
「ちぃ、すごい濡れてる……もしかして攻められるのが好きなMだった?」
「わ、私はフツーで……すぅうんんっ!」
「そっか……じゃあ、濡れてるのもフツーなことだよね。興奮してる証拠」
くすくす笑う俺に、ちぃは違うと頭を左右に振る。
そんな意思に反してニ本に増やした指で奥を攻めれば、大きく目を見開いたと同時に身体が大きくのけ反った。
「ひゃああんんっ!」
時間が時間なだけに、悲鳴を口付けで塞ぐ。
下唇から零れる唾液よりも粘り気のある蜜が股から零れ、息を荒げる彼女を見下ろした。
「イっちゃったちぃ……最高に可愛い」
「いっ……た……?」
呼吸を繰り返しながら理解しようとしているが、とろんとした目にゾクゾクする。手早く腰で止めていたワンピースパジャマを胸元までたくし上げると、たわわに実った乳房が露になった。
「あっ!」
我に返ったように慌てるちぃの両腕を掴む。
それでも必死に身体を左右に揺らしているが、その度に下着に隠れた乳房も大きく揺れた。片手で彼女の両手を頭の上でひとまとめにすると、空いた手で下着越しに胸を揉む。
「はひっ!」
「あ、すっごい柔らかい……しかも大きいし」
予想とは違う柔らかさと大きさに驚く。
まだ一緒にお風呂に入ってた頃はぺったんだったのに、今じゃ俺の手から少しはみ出すぐらい大きい。その分、重さがあるが柔らかさは損なわれてないし、突いても弾き返すほど弾力があって気持ち良い。
揉みながら息を乱すちぃの耳元に口を寄せた。
「ちぃ……なんでこんなに大きくなったの? 自分で揉んだ? それとも誰かに揉んでもらった?」
「そ、そんな……ああぁ」
「誰かだったら嫉妬するなあ……捻り潰すだけじゃ……すまないよ?」
「っ、誰もいないです! 春ちゃんがはじめてです!!」
囁きが冷たかったせいか、ちぃの顔が真っ青になる。
反対に、口走った言葉に頬を紅潮させた俺は微笑んだ。
「嬉しい……ちぃ、大好き」
「んっ、あ、あぁ……」
小さく口付け、下着をズラすと両手で胸を揉みしだく。
柔らかな乳房に沈んだ指で、ぐにゅぐにゅと形を変える。その度に薄いピンク色の先端が勃ち上がるのがわかり、親指と人差し指でぎゅっと摘んだ。
「ああぁんっ!」
「あ……もしかして胸が弱い? ねえ?」
「ああ、やめ……ああぁ!」
恥じらうように、ちぃは両手で顔を隠す。
そんな可愛い行動にまた先端を摘み上げると、今度はすぐ離して押し込んだ。びくびくと動く身体、そして指を挿れてないのに零れてくる愛液に俺も興奮する。
「あぁ、ちぃ可愛いよ……もっと、もっと乱れて……」
「ひゃああ……っ!」
胸を揉みながら、赤く尖った先端にしゃぶりつく。
口の中で吸い上げれば喘ぎが増し、先端を甘噛みしたり舌先で嬲れば大きく身体がのけ反った。またイったことがわかり、ちぃが胸に弱いことを知……ちぃ“は”? じゃあ“もう一人”は?
「っ!」
瞬間、支配していた思考や身体が勢いよく引き上げられる。
黒く塗り潰されていた世界も真っ白に変わり、徐々に畳や棚。景色という名の色を視界が認識しはじめると、手で瞼を覆った。
「はあ……はあ……“ふぅ”……出て……これますか……?」
大量の汗をかきながら問う“僕”に、真下にいる彼女の手がピクリと動いた。しばらくして、ゆっくりと上体を起こす。
「うっさ……い……バカ……冬」
ギロリと睨むのは、ふぅ。
ちぃの意識が切れたせいかおかげか、監視機器がなくとも出てこれたようで安堵する。だが、同じように息を乱していて、肩を押せばすぐ布団へ逆戻り。身体を丸めた。
「もうっ……なんなのよ……アンタ、止めなさいよ……ね」
「むしろ……教えてもらいたい……ぐらいですよ……先輩」
「キモいし……あたし達は飢えた狼みたいな状態なったことない……」
必死につんけん態度を取っているが、頬は赤く、ショーツ越しにシミが見える。僕同様、裏に引き篭もっていても刺激という快楽に襲われていた証拠だ。そう、快楽。
完全に春は暴走していた。
どれだけ止めても声は届かず、条件なんてないのに替わることが出来なかった。危うく欲望に呑み込まれるところを、なんとか気が緩んで出てこれた……が。
「ちょ、ちょっと、早く出てってよ!」
「無茶いわないでください……」
無理やり替わった代償か、予想以上の体力消耗にふぅを抱きしめるように倒れ込む。
傍にある頬を舐めたり胸を揉んでしまうのは“春冬”としての意識か、手で声を抑えている彼女のせいか。意地悪するようにまた尖りきった胸の先端を摘んだが、さほどダメージは見受けられなかった。
「ふぅは胸……弱くないんですね」
「し、知らないし! ていうか……ちぃが好きってホント?」
顔を上げた彼女に全身がざわつく。
恥らった表情よりも“ちぃが”というのが引っ掛かった。自身は入ってない、他人事のような言葉に。
「ふぅは……好かれてないと思ってるんですか?」
「えぇー……あのドMに好かれるなんてごめんなんだけど」
「じゃあ、僕には好かれていいんですね」
「は……んっ!」
心底嫌そうだった顔がぽかんとなり、すかさず口付けた。
力尽きていたはずなのに、簡単にちぃよりも動く身体と顎を固定する。深く口付ければ、春が感じたような高揚感に包まれた。好きも愛もわからないのに、不思議と湧き上がる気持ちが春と同じ情欲だとわかる。とても滑稽だと。
「ん、ちょ……冬、やめ……」
「やめてと言いながら濡らしているのは誰ですか」
「あ、ちょ、やんっ!」
ショーツ越しに指を押し込めば、吊り上っていたふぅの眉が下がる。その表情に邪魔な両手を片手でひとまとめにして退けると、ショーツを剥いだ。
真新しい愛液が零れていることにほくそ笑む。
「ふぅ……これはなんですか? 何に感じたんですか?」
「ち、ちぃが出したんじゃない?」
「へー……」
「何? なんか文句でも……やっ、ちょ、何して!?」
往生際の悪い子にくすくす笑いながら膝で股を割ると顔を近付けた。
抵抗されても両手は片手、足はもう片方の手と両脚で挟んでいるため無意味。バカバカ連呼も無視して見つめる先には決して自身で見ることはないであろう秘所と可愛らしい秘芽。その割れ目から溢れ出ている蜜に、ふっと息をかけた。
「やっ!」
たった一息だけで、のけ反った。
それが面白可笑しいが、ふぅ“は”こっちかとわかると、舌先で秘芽を舐めた。
「あぁぁっ!」
さっきとは違う甘い声に刺激されたかのように、今度は舌の動きを速める。
大きな水音を立てる卑猥さに、ふぅは羞恥で顔を真っ赤にさせた。
「やああ……冬ぅ、あっああぁぁ……そこダメ……」
「ああ、ここが気持ち良いんですか?」
「ひゃっ! ダメって……いった、のにぃ……っ!!」
反応のあった場所を執拗に舐めると喘ぎと蜜が増す。
普段勝気な彼女が最高に乱れているのが堪らない。ゾクゾクする。それをもっともっととねだる様は本当に春と同じだ。本当……ダメだ。
そんな思考が、想いがシンクロした時、指で最奥を貫いた。
「あああぁぁっんんんっっ!!!」
達する声はまた唇で塞ぐ。
大きく腰を浮かせ、ひくひくと痙攣させる股からは愛液が溢れる。それを数度舐めると顔を上げ、汗ばんだ自分の服を脱いだ。
「ふぅも……イちゃったね……“ちぃ”?」
唇についた愛液を舌で舐め取ると、浅い呼吸を繰り返す彼女を見下ろす。
薄っすらと開かれた目が“俺”を捉えた。
「春ちゃ……もう、いいで……しょ……もう」
「ヤダ……まだ全部貰ってない」
「全……やっ!」
冷ややかな声に肩を揺らしたちぃは、さらに目も瞠った。
屈曲させた両脚を持ち上げられたのもあるだろうが、一番は秘所に宛がわれているモノの存在。当然、電気が点いているのだからちぃの目にも映っている。信じられないほど大きく上を向いた男のモノが。
ソレを愛液に絡ませながら秘芽を擦ると、ちぃは身体を反らした。
「ダ、ダメです……それは……しかも……」
「うん……悪いけど、さすがの俺も避妊具なんて持ち合わせてなくてね。でも、シたいからナマでもするよ」
察したように続けた言葉が恥ずかしかったのか、ちぃは両手で顔を覆う。
その可愛い顔がさらに欲情を駆り立て、肉棒は血管が浮き出るほど痛くなった。もう我慢出来ないとちぃの腰を持つと、亀頭を小さな割れ目に食い込ませる。
「ひゃ、ああ……」
「ああっ……すごい……少しだけなのに果てそう……」
「じゃあ……抜いて……んん!」
「ヤダ……奥で果てたい……っ!」
狭いナカを押し広げるように腰と肉棒を進める。
痛みからか、ちぃは涙を落としながら首を振っているが、逆に締めつける要因になり、俺は呻いた。だが、結合部から零れる愛液と千風という甘い匂いに支配され、一気に最奥を突く。
「あ、ああぁぁあっ!」
「っああ、ちぃ……最っ高……もっと」
「やあぁ、動いちゃああぁ……!」
根元まで埋まった肉棒を休む暇もなく突き動かす。
さらに唾液を零すちぃを抱きしめると、口付けたまま癒着を繰り返した。次第に腰に手を回すちぃに、胸板で潰れていた乳房を揉んでは先端を弄ってあげる。やはり弱いのか、両手もナカの締りも強くなった。
「ああっ……いいよ、ちぃ……出る」
「ダメぇ……出しちゃ……怒る……嫌い……なる」
「えぇ……それはヤダ……じゃあ、中出ししなかったら……今日のこと……怒らない?」
必死に呼吸を繰り返す彼女の耳元で囁く。
だが、返答がないことに胸の先端を摘んでグリグリ回すと、再度問うた。
「ねぇ、怒らない? 怒らないならキスして? 怒るなら、ちぃの深い場所で何度も出して孕まんっ!」
腰にあった両手が首に回ると、頭を押され口付けられる。
自分からするのとは違う甘さと至福に我慢が効かなくなりそうだが、ぐっと堪えて肉棒を引き抜いた。瞬間、熱い飛沫がちぃの股やお腹、果てには乳房にもかかるほど飛んだ。
「っ!」
「ひゃああぁ……!」
ほとばしる白液に驚くちぃを抱きしめるとベッドへ沈む。
静まった室内には乱れる息だけが響き、隣を見れば同じようにウトウトしているちぃ。その頬を撫でていると自分の頬が緩むが、畳に置かれたダンボールに目が移る。覚えのある物も入っているのがわかると、気持ち良くなっていた身体が痛みに襲われた。
「ちぃ……」
抱き寄せると口付ける。
無理やりだと、我侭だとわかっている。でも、嫌われるより離れるのはもっと苦しくて嫌だ。
それだけ俺達は一緒にいすぎてしまった────。
※次話、千風視点で進みます