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懐中時計

​番外編*4月6日*シロウ誕生日

*シロウ視点

 四月六日はオレのBirthday(誕生日)。
 日本人とアメリカ人の両親との間に生まれたハーフ。偏見や差別もあったけど、アメリカでも日本でも友人たちは祝ってくれた。対して、三人いる兄たちは『おめでとう』だけ。

 間違ってない。間違ってないけど、友人たちの差と一緒にいなかった時間の差に虚しくなって、いつの日か誕生日どころか家に帰ることも億劫になっていた。
 でも今は──。

 

 

 

 


「Nooo! オレ帰る!! 帰りたい~!!!」
「はいは~い。仕事が終わったら帰れるよ~」

 

 泣き叫ぶオレを笑顔で引っ張るのは男性マネージャー。
 慣れている事務所も笑いに包まれ、助ける者はいない。仕事なので当然だが、腑に落ちないオレは廊下でも抗議した。

 

「誕生日はオレ、早く帰りたいって言ったよね!? だから今日までの仕事も頑張ったよね!?」
「うん、頑張った頑張った。だからスポンサーさんから食事の誘いがあったんだよ。誕生日だから」
「Oh my gosh!」

 

 仕事としては願ってもない話だが、誕生日(今日)に限っては頭を抱えた。そのままエレベーターに乗り込むと、マネージャーは苦笑混じりに自身の鞄を探る。

「SHIROくんが家に帰りたい日がくるなんてね~。仕事も真面目になったし、元気玉もくれる彼女には感謝しかないよ」

 

 そう言って、鞄から取り出した物を渡される。アルミホイルに包まれたソレに目を瞠った。

 

「What? How? レイカに会ったの?」

 同乗者がいないことと予想外に名前を出すと、マネージャーはくすくす笑いながら手を横に振る。

 

「三男さんが近くに用があったついでにって持ってきてくれたんだよ。『今夜、誕生日パーティーすんだから主賓が遅れんじゃねーぞ』って伝言付きで」

 

 もう少し丁寧に伝えたと思いたいが、サン兄らしさがあって不満が和らぐ。何より大好きな恋人が握ってくれた大好物のオニギリは冷えていても嬉しくて、場所構わずかぶりついた。

 

 絶妙な塩と丁度良い握り加減に、一階に着いた頃には平らげると『まだあるよー』と言わんばかりのオニギリが入った鞄を見せられる。ひと癖ふた癖もあるマネージャーを考えれば貰えるのは仕事を片付けた後。舌先で唇を舐め、胸ポケットに入れていたサングラスを掛けると背伸びした。

 

「Let's go!」

 

 ひと息ついた声に迷いはない。
 だって今は家で待ってくれているのも、祝ってくれるのもわかっている。大事な家族と愛しい恋人に会うため、お天道様に負けない笑顔で車に乗り込んだ。

 

 ──が、自宅に着いたのは0時すぎだった。

「じゃあね、SHIROくん。お疲れさま~」
「It’s awful!(酷いよ)」

 時間と住宅街なのも忘れ、去って行く車に罵声を飛ばす。が、自分の声が木霊するだけだった。
 スポンサーとの食事は美味しかったし、撮影先ではケーキや花、ファンから送られてきたプレゼントも貰って嬉しかった。でも、一番楽しみにしていた自宅に間に合わず、ショックを受ける。

 

「Oh、電気さえ点いてない……レイカも絶対寝ちゃったよ~」

 

 外灯以外点いていない玄関の鍵を開けながら涙目になるのは今日明日は平日で、恋人が早寝早起きだからだ。家性婦の頃なら寝ていても問題なかったが、今は笑顔で祝ってもらいたかったのが本音。

 さらにショックを受けながら玄関を開けると案の定真っ暗。なのだが、ぼんやりとした灯りが宙に浮いていた。すべての荷物を落としたオレに、人魂らしきモノは口角を上げる。

 

「おかえり~、シロく~ん」
「Oh my goooooosh!!!」
「あっはははは! マジでビビりやがった!!」
「まあ、兄さんの笑顔は迫力ありますからね」

 

 悲鳴を掻き消す笑い声と共に廊下の電気が点く。
 腰を抜かしたオレに、人魂=蝋燭が点いたケーキを持つ長男は小首を傾げ、爆笑が止まらない三男は撮影し、眼鏡を上げた次男は溜め息をついていた。

 

「What……?」
「なにって、驚いた顔を撮ってやろうと思って車が見えてすぐ電気消したんだよ。おかげで傑作顔が撮れたぜ」
「レイちゃ~ん、シロくん帰ってきたよ~」
「兄さん、先に火を消しましょう」

 

 諭されたイチ兄は『あ、そうだね』と言って、なぜか自分で火を消した。オレのケーキなのに。そう、チョコ板に『Happy Birthdayシロウ』と書かれたオレのケーキ。
 サプライズに腰は抜けても目尻に溜まる涙は嬉しさからくるもの。そして、電気が点いたリビングから顔を出した彼女にまた涙が零れた。

 

「お帰りなさ~い、シロウさ~ん」
「レイ……カああああぁぁっ! シャンパン!! シャンパン振り過ぎいいいぃぃっ!!!」

 

 恋人のレイカは勢いよくシャンパンを振りながらやってきた。その目は明らかに寝ていて、シャンパンを奪ったニイ兄は時計に目を移す。

 

「頑張って起きていましたが限界のようですね。パーティーは明日……今日で構いませんか?」
「I truly am sorry……(本当にごめんね)」

 

 レイカを抱きしめながら出た謝罪は兄たちへも含んでいた。
 ずっと前から誕生日祝ってねと言っておきながら遅れるどころか日を跨ぐなど最低だ。胸が締めつけられ、顔を上げることもできない。

 

「なに言ってんだてめぇ」
「シロウくんの我儘なんていつものことですからね」
「ふふっ……一緒にお祝いできるなら今日でも明日でも……いつでもイいんだよ」

 

 淡々とした声に顔が上がると、サン兄は呆れている。だが、イチ兄とニイ兄のようにすぐ笑みを零し、レイカの手に頭を撫でられる。既に船を漕いでいても笑顔の彼女は兄たちと同時に言ってくれた。

 

「「「「Happy Birthday」」」」

 

 今日たくさん言われた言葉。
 でも、誰よりも嬉しいのは溝が埋まった兄たち。腕の中にいながらも優しく撫でてくれる大切な恋人からオレ自身が貰いたかったからだ。

 

「っ……Thank you……very much」

 

 鼻をすすりながら笑うオレはモデル『SHIRO』としてはみっともなくても『時任シロウ』という末っ子としては正解の顔をしているだろう。
 もちろん、寝息を立てはじめた恋人専用の顔はこれからだと寝室へ足を向けた。

 


 

 

 


「ふんっ、あっ、あああぁっ……シロウしゃンンっ!」
「んっ、レイカ……カワイイ」

 

 薄暗い和室の布団に寝転がるレイカを後ろから抱きしめるオレは既に挿入していた。それこそ何度目かも忘れるほど布団も裸体のオレたちも汗と蜜に濡れ、室内は精液の匂いが充満している。
 いっそう濃くするように腰を動かせば、レイカは大きくのけ反った。

 

「ひゃあああぁぁっ!」
「ああっ……よく締まって……射精(で)るうぅっ!」

 

 締め付ける膣内に刺激された肉棒から白濁が散る。
 それを奥に押し込めようと上体を起こしたオレはレイカの両手を引っ張ると同時に腰を振った。大きな乳房を揺らす彼女は涙目で振り向く。

 

「ああぁっ……シロしゃ……ぁもう明日にンン」
「No……いなかった分も犯すの」

 

 抱き寄せたレイカの顎を持ち上げ口付ける。
 涎まみれの口内は特に美味で、柔らかな乳房を揉んでは搾る両手に嬌声と絞め付けが増した。結合部からは白濁と愛液が零れ、彼女と共に仰向けに寝転んだオレは腰を突き上げる。

 

「あぐっ、あっ、あんっ、シロウしゃあああぁぁっ!」

 

 身長差もあってか、レイカがのけ反る度に厭らしく乱れている顔が月明りでも良く見える。唾を呑み込み、上から乳房を荒々しく揉んでは先端を引っ張れば達した顔に変わった。
 肉棒が引っこ抜かれた秘部からは白濁と愛液、そして潮が噴き出す。

 

「So Good……まるでオレを祝ってくれるシャンパンだね……美味しそう……」
「ああぁ……待っへ……待っあああぁっ!」

 

 上体を起こしたオレはレイカの乳房に肉棒を突っ込むと、彼女の両脚を拡げたまま持ち上げ、多様な汁にまみれた秘部にしゃぶりつく。今日食べる中では一番の御馳走で、舌先で秘芽を弄ってはナカに挿し込む。
 ビクビクと身体を揺らしながらも、乳房に挟んだ肉棒をレイカもしゃぶりだした。

 

「んっ、んんっ……美味しいね、レイカあぁ……」
「んふっ、んんっ……Yesンンンっ!」

 

 腰を浮かせ、垂れ下がった肉棒を咥えたレイカは、両脚でオレの頭を挟む。鼻まで秘部にくっつき、舐める舌とピストンを速めた。

 

「「~~~~っ!!!」」

 

 限界に達した互いの下腹部から蜜と白濁が噴き出す。
 それさえも舐め取り秘部に口付けると、息を荒げるレイカを抱き寄せた。背後からだった今までとは違い真正面で見る恋人はやっぱり可愛くて愛しくて、白濁を零す唇に口付ける。

 

「んっ……レイカぁ……カワイイ」
「んっ、何回いうんですか……誕生日なのはシロウしゃんでしょ……」

 

 頬を赤め膨らませたレイカは不満そうだが、それも可愛いと再び口付ける。
 気付けば肉棒を秘部に宛がい、さらに頬を膨らませたレイカは諦めたように両手をオレの首に回した。何度も口付けながら視線が重なると互いの口角が上がる。

 

「来年こそ休み取るから……レイカも休み取って、朝から晩まで孕ませてね」
「もう……それが誕生日プレゼントになるなら……仕方ないですね」
「yeah!」

 

 舞い上がった身体は熱く、膨張した肉棒が待ち望んでいる秘部に挿入される。
 何度目の挿入でも何度目の射精でも、愛しているから溜まるモノは朝がきても限界はこなかった。誕生日と末っ子の性欲が為せる力だ──。

 

 

 

 


「ノッポ、ちゃんと全部食えよ」
「あ、これ……僕が握ったんだよ」
「シロウくん、マネージャーさんとなりー社長さんがきましたよ、あ、零花さんは私が送っていきますので」
「Oh my gosh!」

 

 笑顔で手作りオニギリを食べさせてくれるイチ兄。鼻提灯を作っているレイカを抱えるニイ兄。意地悪顔で撮影しながらテーブルいっぱいに並んだオニギリを見せるサン兄。
 末っ子は甘やかされ貶されるものなんだと溝が埋まって知る事実に涙を零した。

 

 末っ子も辛いよ~────。

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