家性婦
*幕間1*「私の一日」
陽春と梅雨が過ぎ、薄暑を覚える七月。
時任家に雇われ二ヶ月が経った私の一日は、鳴り響く目覚ましを止めることからはじまる。
「ふあぁ~……今日は特になし……と」
薄暗い室内であくびをしながら上体を起こすと、パジャマが乱れていないのを確認。起き上がるとシーツも濡れていないのを確認し、畳んで押し入れに閉まった。
「濡れてたら洗濯がね……あ、籠にもない」
自室の和室から出てすぐ横には玄関。端には脱ぎ捨て専用の籠が置いてあるが、今日は空だ。階段横の壁掛けボード『4』マグネットも×のままで、残りの○を確認する。
「えーと……『0』の私は三限だけ。『1』は昼から打ち合わせで朝はなし。『2』はいつも通り。『3』……また書いてない」
無記入者の御飯はなしと言ってあるので、洗面を済ますと米を一号セット。
中庭で十分ほど稽古するも起きてくる気配がなく、汗を拭くとパジャマのまま二階へ上がる。綺麗に直った真新しい扉とは違う扉をノックした。
「慶二さーん、起きてますかー?」
声を落として呼びながら何度か叩くが応答なし。
次いで『入りますよー』と言いながら鍵が掛かっていない扉を開けた。カーテンが閉まっている部屋は大学同様、本や服が散乱している。
ある意味兄弟で一番の散らかし魔だと思いつつ、踏まないようベッドで眠る人に近付く。そして、タオルケットから出ている肩を叩いた。
「慶二さーん、起きてますかー?」
「…………ぃ」
同じ問いに、小さな声が返ってきた。
だが、時任家の次男。いつも真面目な大学講師の慶二さんは駄々をこねる子供のように枕に顔を埋める。意外と朝が苦手なのだ。
大学では見れないなと役得を感じつつ、タオルケットを捲る。が、全裸。
絶対に見せられないなと溜め息をつきながら股間に座ると男のモノを握り、舌先でゆっくりと舐める。
「っ……!」
ビクリと動いた身体と声に構わず、袋を食み、両手で扱く。
次第に亀頭からは先走りが滲み、ちゅっと軽く吸い上げながら息を零す人を見上げた。
「慶二しゃん……んっ、起きてますかー?」
「…………まだ、です」
ハッキリした返答だったが、自身の腕で顔を隠していて『本当か』はわからない。そこで自分のパジャマボタンを外すと、下着をしていない乳房を両手で持ち上げ広げ、大きく聳え勃つ肉棒を挟んだ。
「っぁあ……!」
「んっ、息子さんは起きてますね……ンンっ」
胸で扱きながら谷間から顔を出している亀頭をしゃぶる。
静まり返っていた室内には卑猥な蜜音や吸引音、そして艶やかな声が響いた。徐々に肉棒の脈動も増し、彼の腰も大きく浮く。
「射精(出)ま……っ!」
「んんん゛ん゛んンンっ!」
亀頭から白濁が噴き出し、口内どころか胸にも散った。
呑み込みながら肉棒に付いた白濁を舐め取っていると、背中に回った両脚にホールドされ反転。息を切らしながら私に跨がった慶二さんに口付けられると、意地悪く微笑まれる。
「おはようございます、零花さん……朝からイい目覚めをありがとうございます……おかげで喉奥まで犯したくなりましたよ」
「お、お手柔らかにぃンンっ!」
イタズラ心の起こし方を気に入ったのは貴方ですと言いたい口に肉棒を突っ込まれると、頭を掴んだ慶二さんは優しさの欠片もないほど腰を振った。
女主導のフェラとは真逆の男主導で口内を犯すイラマ。容赦なく喉奥を突くモノは苦しくて嘔吐き、触れられていない秘部から潮が噴き出す。
この汚くてみっともない姿に興奮するという慶二さんは重度の変態だと思うが、彼の目に映る私も同じ顔で受け止めているので同類だ。
もっとも、何か食べていたら黒歴史になるし、いま以上の洗濯が待っているが。
* * *
兄弟よりも圧倒的に多い自分の服とショーツをサンルームに干すと、見送った慶二さんの部屋からバルコニーに出る。増やしてしまったシーツやソファカバーなど、毎日洗わないだろう類を干すが、短身の私には一苦労だ。
「ふー、終わっだがー……きゃっ!」
一息つきながら振り向くと、自室の窓から楽しそうに見ている全裸の人がいた。見慣れた全裸より、いたことに驚く。
「は、はじめさん、声を掛けてくださいよ。あ、サンルームに画が置いてありましたけど」
「ふふっ、置いたままで大丈夫……レイちゃんこそ、言えば手伝うのに」
胸を撫で下ろす私に時任家の長男。画家のはじめさんは網戸にすると笑う。
「でも、必死に干してるレイちゃん見て……閃いた」
「そ、それは良かったです」
「うん、だから……レイちゃん、おっぱい出して」
「はいぃっ!?」
サラリとすごいことを言われた気がするが、背を向けたはじめさんはスプレーボトルに水を入れる。嫌な予感に、ゆっくりとフェードアウト……する前に振り向かれた。
「レイちゃん?」
「はいぃ……」
満面笑顔に内心涙を零しながら上着を捲る。
さすがにブラはしているが不要のようで、小刻みに震えながら外した。ふるりと露になった乳房は外気に触れたせいか緊張からか、早くも先端が尖っている。楽しそうに見ていたはじめさんは手に持つスプレーボトルを網戸越しの胸に向かって吹きかけた。
「ひゃっ、冷たっ!」
「レイちゃん……離れちゃダメ」
「そう、言われて……ううぅ」
冷たい粒に腰が引ける。
だが、ジっと見つめる視線に耐えかね、震えながら胸を網戸に押し付けた。また吹きかけられ、筆で先端を擦られる。
「ああぁあ……!」
「ふふっ……イい具合に色付いて可愛い」
「もう……また……あっ、個展用です……か」
「Yes……レイちゃんにもチケットあげるね」
「ひゃうっ!」
長い前髪から目を覗かせるはじめさんは網戸越しに片胸を舐め、反対の先端を筆で擦る。
喘ぎながら見つめる部屋は来年春に個展を控えているせいかいつもより散らかっていて、何枚ものキャンバスには鮮やかな背景や知らない動物が描かれていた。
てっきりヌード専門だと思っていたが、様々なインスピレーションを受けて自身の世界を描く空想画家だったのだ。私は知らなかったが、その分野で『はじめ いち』といえば有名で、海外での評価も高いという。
そんな彼のモデルに選ばれるのは光栄だろうが人物画は描かず、人間がモデルでも“この”やり方な上に、空想のモノに変えられてしまうのだ。
はじめて訪れた時に出て行ったモデルさんも“こんな目に遭って”自分が描かれてないことに腹を立てたそう。私にとってはありがたいが、実際コレが役に立つかはわからない。
「ああぁ……はじめさ……も……ムリぃ」
くすぐったさと冷たさと疼きに負けた身体が背後のシーツに埋まる。と、網戸を開けたはじめさんがバルコニーに出た。全裸で。
「ちょっ! 誰かに見られっ……」
「バルコニーも家だよ……それより、我慢できなかったレイちゃんがダメな子」
「ご、ごめんなさ……ンンっ」
くすりと笑いながら網戸越しではないナマの舌で胸をしゃぶられる。同時にスカートの下からスプレーボトルを吹きかけられ、ぐっしょり濡れたショーツから水滴が落ちた。
「ふふっ……レイちゃん、おもらしシたみたいで可愛い」
「どこがでンンっ」
涙目で応えるが、ボトルを捨てたはじめさんに唇を塞がれる。
そのまま片脚を持ち上げられるとショーツの底をズラし、水とは違う蜜で濡れた秘部に肉棒を宛がった。誰かに見られることより、ジっと見つめる目に身体は熱くなり、囁かれる。
「じゃ……お仕置き、ね?」
「はいいぃ──っ!」
息を切らしながら笑みを返すと挿入される。
半分外なのに、気持ち良さに羞恥は消えた。結果、シーツの洗い直しが決定。
* * *
「あ、シロウさんだ」
徒歩と電車で片道三十分ちょっとの大学と夕飯の買い出しを終え帰宅した私。
リビングで一息ついていると、たまたま点けていたテレビに時任家の四男で『SHIRO』の名でモデルをしているシロウさんが映る。
明るく面白い性格が受けているのか最近はテレビ出演も増え、同じ家に住んでいる実感がない。
「ホテルに泊まるのも増えたし……と、三弥さんからだ」
携帯に入ったメッセージを見ると『部屋にこい』だけ。
頬を膨らませながら悩むが『いるのは知ってんだよ』が届き、溜め息まじりにテレビを消すと二階に上がる。真新しい扉をノックすると開いた。
「ボードに締め切り書いてって言ってるでしょ?」
「予定通りいかないからムリ」
プロの台詞とは思えず呆れると、ヘッドフォンを外した時任家の三男、三弥さんは眠た気な顔で何かを差し出す。
「このバイブで騎乗位オナニーしてくれ」
「言い方っ!」
濁すどころか、男のモノを型どった玩具を堂々と見せられる。
成人漫画を描いているせいか、ちょくちょく手伝わされる苛烈な内容に顔を顰めると、三弥さんは玩具の電源を入れた。以前は動くだけだったが、今回は先端だけ左右に動き、棒部分は回っている。
「アトラクションみたい」
「お兄ちゃんは撮ってるから早く乗ってこい」
「もうっ、お兄ちゃん最低っひゃ!」
設定にノっかると、スカートに潜った手がショーツを下ろす。
既に携帯を構えている三弥さんは締め切りに追われているのか機嫌が悪そうだ。不満はあるが、染み付いた身体と手はスカートを捲くし上げ、床でくるくる回っているモノに跨がる。否、挿入した。
「ふあっ、あっ、あぁ……!」
「どんな感じ?」
「せ、先端が不規則にっ……動くか、ら……奥まで行くまっあ……イいとこ……刺激するんんっ!」
「回る棒は?」
「ああぁっスピード上げないでえぇぇ!」
奥まで挿入した状態で威力を上げられ、ナカを掻き回される。激しさに散った蜜が床を濡らすが、胡座をかく三弥さんは気にするどころか嬉々として撮っていた。
「感想は?」
「あああぁ……イいとこ当たるっと、イいけ……ど、動きすぎ……て、ちょと……痛い」
「……じゃあ、どっちが痛い?」
「ひゃっ!」
携帯を置いた三弥さんに腕を引っ張られ、抱き留められる。
蜜が付いた玩具は転がり、秘部からは塞き止められていた蜜が零れた。が、曝け出されていた大きなモノにすぐ塞がれる。
「あっあああ゛あ゛ぁぁ!」
玩具とは比べものにならない巨根に、反射で彼に抱きつく。
抱き返してくれるが、そのまま上下に揺さぶったり回し、繋がりを深くした。痛みは玩具以上なのに、快楽が勝る。
「ふあああぁ……イいっンン……お兄ちゃ……に、突かれ……と、気持ひ良いいぃっ」
「お前っ……ホント、エロヒロインなれんぞ」
「んふっ、んっ、んんん゛ん゛ンン!」
荒い口付けを受けていると肉棒を引っこ抜かれる。同時に噴き出した白濁が股やスカートを濡らし、力なく床に寝転んだ。そんな私を撮った三弥さんは舌舐めずりする。
「ま、ウチの家性婦だけどな」
何も言い返せず頬を赤める。が、隙ありと足で携帯を蹴ると、容赦なく玩具を突っ込まれた。
* * *
そのせいかおかげか三弥さんの筆は進み、晩御飯ははじめさんと慶二さんの四人で取ることができた。私以外全裸だが。
裸体にセックスばかりの時任家だが、講師の慶二さんには勉強を見てもらえるし、使っていないノートパソコンをくれた三弥さんは締め切りが近くなければ買い物に付き合ってくれる。
疲れた時ははじめさんが抱きしめてくれるし、あまり会わないシロウさんもお土産や服をくれたりと悪い人たちじゃない。
むしろ大学までの交通費や生活費も出してもらっている上に性代分か給料も高い。癖はあるけど優しいし、なんだかんだでセックスも上手く、満たされる。良い家に雇われて幸せだ──が。
「あっ、あんっ……」
薄暗い室内に蜜音と嬌声が響く。
シーツではない、暖かくて硬い何かを背に感じながら胸を揉まれ、秘部を弄られる。
「っあ……もうっ……シロウさ……んんっ」
わかりきっている犯人を呼ぶと口付けられる。
舌先でも遊ぶように上と下唇を舐められると、ぼんやりとした目に、テレビで観た笑顔が返ってきた。
「Hi、家性婦ちゃん。ただいま」
「お帰り……ん、なさっあぁ……明日は休み……ですかンン」
「No。数時間後には出るよ……だから補給」
「ああぁあっ!」
裸のシロウさんは私の片脚を持ち上げると挿入する。
既に濡れきっているナカは簡単に肉棒を受け入れ、蜜音が増した。するとお腹を持ち上げられ、彼の胸板に仰向けで寝転がされる。そのまま激しく肉棒を突き上げられた。
「ああぁんんん!」
「Wow……相変わらずイいね……っああぁ」
「ああっ、あぁ……っ!」
ズルリと肉棒が抜かれると、薄暗い宙に白い塊が飛んだ。
後ろから抱きしめるシロウさんは息を切らしながら、うなじや背中を舐める。
「んっ……お土産のお菓子、リビングに置いてるから食べてね」
「もう……そうやって機嫌取る……ン、おにぎり、冷蔵庫に入れてますよ」
「Oh,Thanks!」
大好物に、笑顔で口付けられると何も言えず頭を撫でる。が、お尻に当たっていたモノが膨張し、また挿入の繰り返し。パジャマもシーツも洗濯決定だ。
良い家ではあるが、やはりセックスが多すぎる────。