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ラップトップ&コーヒー

​2の間*「喉奥」

*慶二視点

 兄弟のために動くのも我慢するのも苦ではない。
 でも、ほんの少しだけ解放されたい自分がいた──。

 


* * *

 


「んっ……」

 

 薄暗い中で聞こえる音と振動。
 携帯の目覚ましだと気付いた手が反射で止めると静まるが、今日は日曜日で大学はない。ゆっくり休めるはずだ。なのになぜ目覚ましがと、眠い頭で考える……と。

 

『慶二さ~ん、起きてますか~』

 

 思い出すと、いつもより元気な声とノック音が響く。が、返事をする気力がない。むしろ返してはいけないと、ワザと仰向けになった。

 

 しばらくすると『入りますよー』の声と一緒にドアが開閉し、慣れた足取りでベッドに近付く気配。秋までは布団を捲っていたが、冬は気を遣ってか、自身が寒いのか躊躇いもなく潜ってきた。
 ゴソゴソと動く様を薄く開いた目で楽しむが、下腹部から伝わる刺激に腰が跳ねる。

 

「っ……!」
「んっ、んん~っ……はぁ」

 

 ちゅぱちゅぱと厭らしい蜜音を立てながら刺激を送る犯人。
 正体を暴くように布団を捲れば、眼鏡がなくとも肉棒を美味しそうにしゃぶる女性と目が合う。

 

「おはよーございましゅ、慶二しゃん」
「…………はぃ」

 

 笑顔に対して小声なのは気持ち良いから。
 家性婦こと零花さんはまだ寝ていると思っているのか、大きく開いた口で肉棒を根元まで咥え込むとゆっくり上げる。その焦らし感と吸引が堪らなく好きな私は彼女の頭を撫でた。
 ちゅぽっと音を立てながら肉棒を離した零花さんは、唇と同じ唾液がついた亀頭に口付ける。

 

「んっ、早く起きてくださいね……ケーキがなくなっちゃいます」
「予約制っ……ですから大丈夫っぁ……!」

 

 今日はいつか約束したケーキバイキングに行く日。
 多忙で流れに流れていたが、私が覚えていたことに大袈裟なほど喜んでいた彼女は昼からだというのに待ちきれないらしい。が、滲む汁も舐めて呑み込む音に私の我慢がきかず、彼女の背中に両足を回すと横を向いた。そして、両手で頭を持つと肉棒を咥え込ませる。

 

「んん゛っ!?」

 

 察した零花さんは私の背中を慌てて叩く。Noの合図に眉を落とすと、手足を緩めた。

 

「ダメ……ですか?」

 

 自分でもわかるほど落ち込んだ問いに、肉棒を引き抜いた彼女は涎を落としながら顔をそらす。

 

「……さっき、朝御飯をつまみ食いしたので」

 

 予想外に目が点になる。
 だが、零花さんは恥ずかしそうに肉棒を両手で捏ねた。その素直さと拒否ではなかったことに苦笑すると抱き寄せる。

 

「確かに……それはダメですね」
「うぅ~、吐いた上に洗濯とか最悪ですよ~」
「でも、挿入したら一緒でしょ」
「え、ちょ、ダんんんっ!」

 

 零花さんの顎を持ち上げるとまた背中を叩かれるが、今度は聞かないと口付け、萎えていたモノを昂らせると挿入した。良い朝です。

 


 

 

「ケイ兄って、鬼畜だよな」

 

 リビングソファで待っていると三弥くんがやってくる。
 突然の話に疑問符を浮かべるが、昨夜渡した物を思い出した。

 

「面白い体験でしたが、もうシませんよ」
「悪かったって……つーか、研究室にボイスレコーダー置いてんのかよ」
「家にもありますよ。防犯と、うるさい女対策用に監視カメラ付きで」
「別に良いけど……あの女、まだ言い寄ってたのか」

 

 彼の依頼で行った先生と生徒セックス。
 それを録音していたのだが余計な話まで入っていたようで怪訝な顔をされる。大学用の携帯に入ったメッセージを確認すると、なんでもないように答えた。

 

「慣れているので心配ありませんよ。それより、零花さんの機嫌を損ねる方が怖いです」
「またなんかシたのかよ」

 

 二度もドアを破壊された彼には言われたくないが、今日が『御詫び』なのも事実。だが、今回は違う気がして口元に手を寄せた。

 

「損ねるというか、私たち兄弟に嫉妬……羨望ですかね」

 

 セックス前夜の悶着を思い出していると、三弥くんも腕を組む。

 

「米農家の実家が嫌で上京したとか、元彼が同じ大学なのは言ってたけどなー」
「初耳ですね。長男主義で厳しい家とは聞きましたが」
「厳しい? あんなアホなのに?」

 

 眉間に皺を寄せた三弥くんは洗濯物が並ぶテラスを指す。
 シロウくんのハワイ土産、身丈以上ある七色クジラの抱き枕を抱えている零花さんは尻尾を持つと、振り子の要領で物干し竿に乗せようとする。が、落ちてくるの繰り返し。ぴょこぴょこ跳ねる様を楽しみながら思い出す。

 

「そういえば、父が来月帰国されるそうです」
「マジで!? やっべぇ……ドア、直した方がいいか?」
「脱がない努力の方をしてください」

 

 語気を強めると三弥くんの目が泳ぐ。
 というのも、呑気な母とは違い、厳格で頑固一徹な父を兄弟全員が恐れているからだ。家訓『言いたいことはハッキリ言え。そして曲げるな、守れ』のおかげで私も教師を選んだほど。完全に決意したのは彼女のおかげだが。

 

「零花さんについては『家政婦』で通してくださいね。セックスも」
「シないってのは約束できねぇぞ」

 

 断言に、立ち上がった私は目を丸くする。対して三弥くんは舌舐めずりした。

 

「調教シまくったし、されまくったからな」

 

 愉しそうな顔を見るのは何年振りか。
 決して良いも悪いもない兄弟仲だったのに、彼女が来てから変わった。特に弟二人は表情が柔らかくなったし、言い寄っているようにも見える。

 

 私も過去を話すほど信頼しているが罪悪感も沸く。
 だが、テラスにいる彼女から受け取ったクジラを物干し竿に乗せるだけで消えた。悪意も狙いもない、純粋で真っ直ぐな笑顔に。

 


* * *

 


「きゃー、時任先生が私服だー」
「カッコイイ!」

 

 ケーキバイキングの前に大学へ寄ると、部活終わりの女子生徒たちに会う。
 私用も終わったので去りたいが『遊ぼー』や『写真撮っていい?』と腕を捕まれた。

 

「写真は構いませんが、予定があるので失礼します」
「じゃあ、いつなら空いてます? できれば……二人っきりで」

 

 小声で話す生徒は頬を赤めると腕に胸をあてる。が、もっと誘い上手な娘(こ)を知っているため振り払った。

 

「噂を鵜呑みにするのはやめなさい。誘われてノっても私には不利益にしかなりませんし、勃ちません」

 

 冷たい拒否に生徒たちは顔を顰めるが、構わず廊下を進むと掲示板に目が留まった。新入生宛のチラシが増える中、隙間に小さなメモを貼ったことを思い出す。
 

 不利益と言っておきながらバイトに困ってる娘やセックスに抵抗がない、既婚者とのトラブルよりはと数年前からはじめた家性婦募集。

 兄弟の性格と性癖のせいで長くて三ヵ月、最短半日と、経営学とは違う難しさに頭を抱えたし、諦めようとも思った。そんな時に現れたのが息を切らし、ノックもせず入ってきた今の小さな家性婦。

 

「……さらに小さくなってどうしました?」
「なってません! っととと……」

 

 車に戻ると、助手席にいたはずの零花さんが後部席で縮こまっていた。後部席のドアを開けた私は首を傾げるが、彼女は別を凝視している。

 

 視線の先にあるのは喫煙所。
 灰皿台があるだけだが、煙草を吸っている男子生徒が二人いる。さほど距離もなく、人もいないせいか話し声が聞こえた。

 

「お前、また別れたの?」
「巨乳女ってなんでうるせぇのかな……デカイ乳を揉ませるだけでいいのに」
「前の子には腹を殴られた挙げ句、荷物全部置いて出て行ったんだろ? だっせぇ」
「マジ、あの女ムカツク。尽くすのは身体だけで良いのに余計な世話ばっか焼いてさ」

 

 会話に零花さんがいっそう縮こまり、察した私は後部席に座るとドアを閉めた。

 

「なるほど……左の彼が腹パン食らわした相手ですか」
「っ!」

 

 図星で逃げようとする身体を捕まえると膝に乗せ、運転席と助手席の間から元彼とやらを観察する。自分の講義でも見た顔だが、どうにも腑に落ちない。

 

「あんな男に処女を渡したんですか? 態度も不真面目ですし、顔も普通に見えますが」
「す、好きって言われた時は……嬉しかったんです!」

 

 そう言って恥ずかしがる彼女は先ほどの生徒や過去の家性婦、言い寄ってきた女性たちのような顔をした。散々向けられてきたのに、自分ではない男を想っていることに顎を持ち上げる。

 

「では……私が『好き』と言ったら、お付き合いしていただけるんですか?」

 

 零花さんの目が大きく見開かれる。が、すぐそっぽを向かれた。

 

「しません……しばらく恋愛はいいです」
「……そうですか。でも、セックスはシてくださいね」
「んっ!」

 

 ムリヤリ顔を向き直せると口付けた。
 荒く深く長く味わいながら彼女のシャツボタンを外すと膝を叩かれるが、構わず下着越しに胸を揉む。

 

「ダメで……あぅっ!」
「すみません。勃ったので犯します」
「No! 車内でも見られるって話したでしょ……それに」

 

 チラリと向ける視線がどこかはわかる。
 それがいっそう苛立ちを募らせ、下着から乳房を掬い出すと揉み込んだ。

 

「あぁ……慶二さん、Noてば……」
「雇用主の私が犯すと言ったら家性婦(あなた)は犯されるしかないんですよ。元彼に気付かれても……ね」
「ひゃうっ!」

 

 耳朶を舐めながら元彼が好きだったと言う胸を引っ張る。大きすぎて運転席と助手席の間を通れない代わりに胸の先端を座席に擦りつけた。

 

「ああぁ……やめてくださ……い」
「あ、元彼がこちらを見ましたよ」
「へっ!?」
「ウソです」
「へっ、あぁんっ!」

 

 腰を浮かせた彼女のスカートを捲るとショーツを下ろす。
 両脚を屈曲させれば秘部が丸見えになり、元彼が動く度に身体も揺れ、蜜が零れた。それが不愉快なのに昂るのは、兄弟に犯されている時と同じ。涙目で震えては悦ぶ顔が好きだからだろう。唾を呑み込むと、既に大きい肉棒を宛がった。

 

「寝取るってこういうことなんですかね……すごいゾクゾクします」
「変態っあああぁん!」

 

 褒め言葉の礼に勢いよく挿入する。
 激しい律動に零花さんは座席に手を乗せるが、元彼を窺っては締めつけた。彼女の瞼を手で覆うと耳元で囁く。

 

「こら……今の貴女は私の家性婦(もの)でしょ? 他を見るのは許しませんよ」
「ああぁぅ……ごめんなさンンンっ」

 

 涎を落としながら謝る口に良い子と口付けると、片胸の先端を摘まみながら反対の先端を舐める。
 手放した女性を今は私が犯していると教えてやりたいが、残念ながら元彼は去って行った。それでも今は利用しようと、まだ瞼を覆われている彼女に囁く。

 

「こら、また彼を見ましたね?」
「みみみみ見てません! 目隠しされててどうやって見るんですか!?」
「睫が動きました」
「えぇっ!?」

 

 リアクションに笑いながら肉棒を抜くと、目隠ししたまま寝転がせる。そのまま馬乗りになると、蜜の付いた肉棒を口に宛がった。

 

「傷ついたので責任取ってくださいね。もちろん、“喉奥”まで」

 

 聞き慣れた言葉に頬を赤めた零花さんは唇を結ぶ。だがゆっくり、そして大きく開くと咥え込んだ。

 

「っはぁ……」 

 

 暖かい口内を悦ぶ身体が跳ね、声が漏れた。小さな舌先は棒を舐めては吸い上げ、次第に自分の腰が動く。

 

「んっ、んぐっ、んん~っ!」

 

 押さえ込んでいるせいか、嬌声とは違う呻きが響く。
 だが、悶えながらもちゃんと咥えて吸ってくれるのは彼女がはじめてで、捩じ込みたい衝動が抑えきれない。

 

「んぐっ、んふっンンンっ!」
「ああ……イいですよ、零花さん……そのまま出させてください」

 

 両手を頭に移すと、腰と同時に動かす。
 フェラとは違い自由が利かない彼女は嘔吐き、蜜を噴き出した。それでも止まらない。むしろもっとと腰を動かし、やがて密着するほど肉棒を押し込むと精を放つ。

 

「ふっ、んぐっ、んんんン゛ン゛っぱぁ……!」

 

 引っこ抜けば、零花さんの顔も服も白濁と胃液にまみれた。それが可愛いと舐め取る私に、彼女は咳き込みながら睨む。

 

「かはっ……もうっ……慶二さん、イラマ……好きなんだからぁ」
「ええ……大好きです。受け入れてくださる零花さんはもっと」

 

 眼鏡を外し微笑む私に零花さんは頬を赤める。
 普通の女性なら苦しくて汚くて嫌だと半数以上が拒否のイラマ。だが彼女は文句を言いつつ必ず受け止めてくれる。その目にはもう私しか映っておらず、こみ上げてくる嬉しさにまた口付けた。

 

「さ、身形を整えてデザートバイキングに行きましょうか。ちなみにこのホテルのなんですが」
「ちょっ!? ここってすごい有名な……もうっ、そうやってみんな機嫌取るんだから!」

 

 胸板を叩く彼女に笑いながら頭を撫でる。
 家性婦を雇うのは兄弟のため。そして世話を任せ、自分の時間を作るためだった。でも彼女になら世話を焼かれたいし、シてあげたい。弟たち同様、私だけを見てもらいたい恋情。

 

 リアル先生と生徒の恋愛────シてみますかね。

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