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花のフィールド

​04話*「夜食」

 無機質な時計の秒針が響く。
 だが、動悸の方が速く進んでいた。筆を持って微笑む人によって。

「ま、待って……はじめさん……ふ、筆で何を……?」
「解すんだよ……レイちゃんのナカを」
「ナっあああぁあ!」

 

 聞き返す前に筆で秘部を擦られる。
 指とは違う毛先はくすぐったくて身動ぐが、反対の手に押さえ付けられた。

 

「Freeze it(ジっとして)」
「む、無理ですうぅ……!」

 

 くすぐったさと、なんとも言えない刺激に身体は跳ねる。が、力のある腕に押さえ付けられては敵わず、ただただナカに沈んでいく筆に喘いだ。

 

「あああぁ……ダメっ……そこは……っ」
「ココ……好き?」
「あああぁああぁっ!」

 

 敏感な場所を毛先で擦られ、我慢が効かず蜜を噴き出す。
 当然、目の前にいるはじめさんにも掛かったが、気にした様子もなく引っこ抜いた。蜜を引いた筆を。

 

「ふふっ……レイちゃんの色……キレイ」
「そっ、そんなの全然っ……綺麗じゃ……っ!?」

 

 ない。そう言おうと思った瞬間、あろうことかはじめさんは蜜が付いた筆先をしゃぶった。目を瞠ると、ちゅぽっと音を鳴らしながら筆が抜かれ、蜜と白糸が彼の唇から垂れる。そして、艶やかな笑みを向けた。

 

「んっ……キレイだし……美味しい」
「っ……!」

 

 端から見ればすごい光景だし、ドン引きだろう。
 それでも彼の方が綺麗で画になると思ってしまった私は震える両手で両脚を持ち上げると秘部を広げた。目を丸くするはじめさんに、息を零しながらねだる。

 

「もっと……出して……舐めてください……」

 

 なんて羞恥で淫乱な女だろう。
 でも、あんな愉悦感のある表情を自分がさせていると思うとまた見たくなった。もっともっと喜んで美味しいと言ってもらいたい。そんな彼を見たい気持ちだけで蜜が零れ、口笛を吹いたはじめさんは筆で掬った。

 

「イいよ……僕にも……レイちゃんの可愛い顔……見せて描かせて」

 

 はにかみに頬が赤くなるが、容赦なく筆を挿し込まれた。毛先だけでなく、持ち手の半分まで。

 

「あああぁぁっ!」
「ふふっ、いっぱい出てくる……美味しそう……んっ」
「はぁぅんっ!」

 

 挿入した筆を回しながら秘部を舐められる。
 違う刺激の同時攻めに私はのけ反り、新しい蜜が噴き出した。抜いた筆どころか自身も蜜まみれなのに、はじめさんは笑っている。

 

「ほら……レイちゃんので……色を塗ろう」

 

 おかしなことを言いだしたが、蜜が付いた筆で私の胸の先端を擦った。まるで色を塗るように押し付けられるばかりか、塗りたくった上からしゃぶられる。

 

「ふああ゛あ゛ぁぁっ!」

 

 電流が流れるような激しい刺激に、喘ぎも蜜も止まらない。
 それでもまた挿入された筆で掻き回されても、蜜が付いた筆で脚やお臍や首を塗り付けられても、胸に塗った蜜を舐め合っても快楽しかない。
 それは彼も同じなのか、下腹部に当たるモノが確実に大きくなっていた。

 

 既に頭が回っていない私は自然と彼のモノに手を添える。呻きと筆を落とす音がすると、抱きしめ、口付けられた。

 

「んっ、ふぅン……レイちゃんはすごいね……コレに耐えられるモデルさん……中々いないよ」
「いつも……はあ……シてるんですか……じゃあ、あの女性はぁ……っああ」

 

 出て行った女性を浮かべるが、濡れきっている秘部に肉棒を宛がわれる。が、ゴムの感触がない。

 

「はじめさ……ゴムんんんああぁ!」
「服(ゴム)を着(付け)るの……キライ」

 

 確認する前に挿入される。
 筆とは圧倒的に違う太さと大きさ。ゴム越しとは異なる感触と快楽が腰を振られる度に増し、理性が飛んだ。

 

「あ、ああぁ、気持ちイいよおぉ……」
「んっ……僕も気持ちイい……レイちゃんのナカ……イいっ」
「ああぁ、そこはダメぇぇ……!」

 

 筆で探し当てられた敏感な場所を突き上げられ嬌声が増すと、頭上から汗が落ちてきた。喘ぎながら両手で彼の頬を包むと、隠れていた両目──灰色が見え、私だけを捉える。
 嬉しくてドキドキすると、口付けながら膣内を締めた。

 

「──っ!」

 

 肉棒が引っこ抜かれると、蜜で濡れた亀頭から白濁が噴き出した。
 私のお腹や股間が白に染まり、室内は絵の具以上に濃い性の匂いが充満する。互いに熱い息と汗を零しながら抱き合うと、頬を寄せた私は謝罪した。

 

「回し蹴りして……ごめんなさい……」

 

 彼のお腹を撫でると目を丸くされる。
 けれどすぐ苦笑し、抱きしめたまま額にキスが落ちた。変人だけど良い人だ……変人だけど。

 


* * *

 


「おや、すごい。第二、第三関門クリアじゃないですか」

 

 感心するような声に、ふわふわなクッションに包まれていた私は目を開く。
 ぼんやりする視界に映るのは椅子に座り、キャンバスに画を描いているはじめさん。隣にはカップを持った慶二さんがいた。風呂上がりなのか首にはタオルを巻き、髪も身体も濡れている。が、兄同様に全裸。

 

「もう~。この家、変態しかいないよ~」
「犯しますよ。というか、人のこと言えないでしょ」
「レイちゃん……こっち向いて」

 

 クッションに顔を埋めるも、指示に向き直す。
 私は部屋に入った時と同じように半裸だが、ショーツもブラもない上に、股は濡れきり、はじめさんの白濁が未だ残っていた。
 ラフを取るからと言われたからだが、さすがに慶二さんにも見られるのは恥ずかしい。

 

「はじめさん……そろそろお風呂に入りたいのですが……」
「うん……もうちょっと……終わったら一緒に入ろ」
「い、いえ、ご遠慮します……」

 

 そんな会話に慶二さんはまた感心する。
 聞けば第二関門ははじめさんの全裸、第三関門はモデルにされた場合らしい。確かに、全裸の男性が筆を持って迫ってくるのは怖いものがある。でも、ちゃんと話せば通じるし、良い人だ。不思議な言動行動をする変人変態さんだが。

 

「ふふっ、レイちゃんて意外と失礼な子だよね……犯したくなるよ」
「でしょう?」
「や~め~て~く~だ~さ~い~」

 

 自分の思考が悪いのだろうが、不吉な話に首を振る。溜め息をついた慶二さんは筆を動かすはじめさんを見下ろした。

 

「ところで、他の二人を見ましたか? メッセージを送っても返ってこなくて」
「ミツくんは昼に会ったよ……締め切りが近いみたい……シロくんもいつも見てる」
「それは媒体違いでしょ」

 

 視線をキャンバスに向けたまま語るのんびりはじめさんに、慶二さんは呆れながらカップに口を付けた。
 考えれば時任家は四兄弟。あと二人、二人にとっては弟さんがいることになる。よもやこんなにもセックス三昧になるとは思わず会うのが怖いが、まずは仕事を全(まっと)うしようと訊ねた。

「あの……明日のご予定は?」
「私は朝から大学です。七時前には出ます」
「僕は……昼から打ち合わせがある……でも、画を描くから、このまま起きてるかも」
「じゃあ、朝御飯は一緒に食べられますね」

 

 笑顔で言うと二人は動きを止め、視線だけ互いを見合う。
 対して私は献立を立てていた。料理を作るのは好きだが、元彼は起きるのが遅かったし、紗友里ちゃん家では用意してもらっていたので久々に腕を振える。

 

「やっぱり朝は鮭と味噌汁……シジミ汁がいいけどないだろうな。それか目玉焼きにトースト。あ、弟さんたちのも……?」

 

 必要ですよねと聞こうと思ったら、カップと筆を置いた二人がやってくる。全裸フルチ○男二人が。
 咄嗟に後ずさるも、クッションに当たるだけ。引き攣った顔の私とは反対の笑顔を向ける二人は左右に座った。

 

「大丈夫……ミツくんは忙しくて出てこないし……シロくんも帰ってこない」
「私たちだけで良いですよ」
「あ、朝御飯の話……ですよねンンンっ!?」

 

 問いは膝立ちした慶二さんの肉棒を咥え込まされ消え、胸に顔を埋めたはじめさんの無骨な指が秘部に挿し込まれる。

 

「ええ、朝御飯の話をしましたよ。でも」
「今からは……夜食……レイちゃんにもあげるから僕たちにもちょうだい」
「やひょっんんふ!」

 

 目を瞠るが、ぐっと頭を慶二さんに押さえ込まれ、奥まで咥え込まされる。苦しいが、既に亀頭から先走りの汁が飛び、呑み込むと舐め回した。その度に慶二さんの腰は動き、私も蜜を零す。
 それを指で絡め取ったはじめさんは勃ち上がった胸の先端に塗ってしゃぶりついた。

 

「ふゅんんっ!」
「ん……やっぱり美味しい……ほら、ケイくんも」
「どれどれ」
「ンンンん゛ん゛っ!」
「んっ……イいですね」

 

 咥え込んだまま仰向けに寝転がされると、私の頭に跨った慶二さんは腰を動かしながら蜜の付いた胸をしゃぶる。反対の胸ははじめさんがしゃぶり、違う舌と歯の刺激、喉奥まで突く肉棒。そして、嬉しそうに見つめる二人に絶頂が駆け上ってきた。

 

「──っ!」

 

 思考もお腹の奥も弾けると、一気に蜜と白濁が噴き出す。
 もう何度イったかわからないのに、辛さより気持ち良さや快楽が勝(まさ)り、息を切らしながらも微笑んでしまった。それを見た二人も笑うと交互に口付け、骨の髄まで味わいはじめる。

 ゆっくりじっくりと。


 


 

「んっ……あっ……んんっ」
「Wow、すごいね。精液が染みついてる」

 

 暗闇の中で、はじめさんでも慶二さんでもない、楽し気な声が聞こえる。
 お風呂は朝に入ろうと玄関横にある六畳ほどの和室を自室代わりに貰い、やっと布団で眠れたはずだったのに、後ろから抱きしめる両手が上着に潜り、胸を揉みしだく。
 揺らしたり突いたり、指先で先端を擦ったりと遊ぶような仕草に身体を捩らせた。

 

「やぁ……」
「Ok。なら、こっちをあげる」
「っ……あ、ああんっ!」

 

 くすりと笑う声がすると、ショーツの底をズラされる。同時に熱い何かが挿入され、お腹に回された腕で身体を揺らされる度に深くなると締め付けた。

 

「っあぁ……イチ兄たちが気に入っただけあるね……よく締まる」
「あっ、ああぁっ、あっ……ダメぇ……イっちゃンンっ──!」

 

 ぐっとお腹を押さえ込まれると蜜が噴き出し、引っこ抜かれたモノから飛び出した何かが背中を濡らす。次いで熱いモノが股間に挟まれると卑猥な音が響いた。
 いったいなんなのか息を乱しながら振り向くと、柔らかい何かに唇を塞がれる。

 

「んっ、ふぅん……」
「ンっ……今度の子は、イい処理してくれそう」

 

 リップ音と共に首筋や耳を舐められると、くすくす笑いながら囁かれる。

 


「See you(またね)、家性婦ちゃん」

 


 気楽な声と一緒に、背中にあったぬくもりも気配も消える。
 貴方はいったい誰ですか、そもそも人間ですかという疑問よりも先に快楽に沈んだ────。

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