家性婦
03話*「解そうね」
「どうぞ、インスタントですが」
コーヒーを淹れてくれた先生が向かいに座る。
中庭を挟んだリビングは残念ながら半分以上が物や服で溢れ、私たちはダイニングテーブルの席に着いていた。講義がない明日にも大掃除をしようと思うが、その明日があるかもわからない私は小刻みに震えている。
「も、申し訳ありません……本当に私ったら……!」
「いえ、見慣れていてすっかり忘れていましたが、当然の反応ですよね。しかし見事な回し蹴り……何か武道でも?」
「か、空手を少々……って、いつも裸なんですか!?」
衝撃発言に、ついソファで気絶している男性を指(さ)してしまった。顔を青褪める私とは違い、先生はなんでもないように頷く。
「いわゆる裸族でして、外はまだしも家では服を着ません。仕事も捗(はかど)ると言いますし」
「し、仕事って……?」
「画家です」
髪や身体に付いている色に納得し、改めて男性を見る。が、バッチリと男のモノを捉えてしまい、慌ててコーヒーを飲み干した。
首を傾げる先生に、カップを置いた私は話を進める。
「じゃ、じゃあ、出てきた女性は彼女さんか、画(え)のお手伝いさん?」
「モデルさんだと思いますよ。何度かいらしていたのを覚えていますので」
「へー……というか、みなさんに彼女いたら性云々は拒否していいですよね?」
「できないので大丈夫です」
コーヒーを飲みながら即答された。
何が大丈夫なのかまったくわからないが、前のめりになると小声で確認する。
「先生……彼女いないんですか?」
「いたらあんなことしません。それより、家で『先生』はやめていただけませんか」
「あ……」
つい学校の調子で呼んでいたが、ここは家。
画家というお兄さんも『先生』だろうし、ちゃんと呼んだ方がいいのだろう……名前を。
「まさか、存じてないとは言いませんよね?」
「ぞぞぞ存じてますとも! ゆゆゆ有名でしたからっ!! もろもろ!!!」
先生は眉を顰めるが、頬杖を付くと楽し気に私を見つめた。
「もろもろは後で聞くとして……まずは名前を呼んでいただけますか? 零花さん」
「……っ!」
冷ややかなのに、厭らしく聞こえた。速まる動悸を堪えながら、震える口を開く。
「け……慶二さ……ん」
名前を呼ぶだけで全身が熱く、動悸が早鐘を増す。
何より、視線を上げた先にいる先生──慶二さんは、ほくそ笑んでいた。それだけで下腹部が疼いていると、立ち上がった彼は私のもとへやってくる。
「よくできました……ご褒美」
「……っん!」
身を屈めた慶二さんに口付けられる。
冷たい眼鏡が当たるが、離れては口付け、舌を挿し込まれる気持ち良さが上。キスがこんなにも気持ち良いなんて知らなかったが、私の上着ボタンを外しはじめたのは別だ。
「ちょちょちょっ、セン……じゃなかった、慶二さん!」
「言い直したことは褒めますが減点ですね」
「ひゃっ!」
くすりと笑いながら、慶二さんは開いた胸元から乳房を掬い出す。
下着に覆われているとはいえ両手で揉み込まれると、浮いた下着の間から赤い先端が顔を出した。
「抱きつかれた時に思いましたが、大きいですね」
「ど、どうせアンバランスですよ……あっ」
「アンバランスかはわかりませんが、柔らかくて綺麗ですよ」
生の乳房を掬い出した慶二さんは両手で揉み込む。
ぐにゅぐにゅと厭らしく形を変える乳房は彼の長い両手を呑み込み、搾り上げた。
「あああぁっっ……!」
「可愛いピンクの先端をこんなにもビンビンに勃たせて……厭らしい娘ですね」
「ちが……ああぁんんっ!」
否定する前に、片胸に吸い付かれる。
そのまま舌先で先端を転がしては突き、反対の胸は指先で弾かれた。
「ぁああっ……慶二さ……」
「んっ……胸も申し分ないですね……この柔らかさと弾力に挟まれたままフェラされるのを考えると……堪らなくイいです」
「何を言ってるんですかっ、変態っ!」
うっとりとした顔で谷間に片腕を挟んだ慶二さんは上下に動かす。まるで自身のモノを挟んだ時の予行練習をしているみたいで顔を真っ赤にしていると、指先が唇に当たった。さらになぞられると、自然と開いた口に指を一本、挿し込まれる。
「んっ、ふんんぅっ……」
「変態と言いますが、零花さんこそ私のをしゃぶっていた時と同じ顔をされていますよ……ここも濡れていますし」
「ふゅんんんっ!」
指を挿し込まれたまま両脚を開かれ、スカートを捲られると、ショーツの底を撫でられる。
ここへ来る前に下着類を買い、濡れきっていたショーツも変えた。なのにもう新しいショーツにシミが滲み、慶二さんは擦る。布越しとはいえ、秘芽も弄られ引っ張られると蜜が零れた。
焦れったさに口内の指を二本に増やされた私は涎を落としながら訴える。
「ふぁあぁ……慶二しゃ……もうっ……」
「我慢できないという顔をしていますね……可愛いで「イいね……」
息を乱しながら笑っていた慶二さんだったが、割って入ってきた呟きに振り向く。私も彼の先を見ると、俯せのまま顔だけ向ける男性。気絶していたお兄さんが私たちを凝視していた。
「ひゃっ!」
「はじめ兄さん……起きていらしたんですか」
口から指を抜いた慶二さんは溜め息まじりに立ち上がる。同じように、ソファの男性も頷きと共に起き上がると、私たちのところへやってきた。
全裸でこられると身構えてしまうが、腰を屈めたお兄さんに凝視される。長い前髪から覗く目はぼんやりしているが私だけを映し、しばし見つめ合う。と、慶二さんが紹介してくれた。
「長男の“はじめ”です。歳は三十一で、画家をされています。はじめ兄さん、今日から家性婦として働く、零花さんです」
「だから字ぃっ!」
明らかに違うとツッコむが、慶二さんは知らんぷり。
すると『家政婦……』と、正しく呟いたお兄さん=はじめさんは私を上から下へと見る。と、むぎゅりと片胸を掴んだ。
「ひゃっ!」
「んっ……柔らかい」
慶二さんとは違う無骨な手に掴まれるというより握られる。
薄ら笑いの彼とは違い、少し痛い私は顔を歪ませた。すると、反対の手でショーツの底をズラしたはじめさんは、蜜を零す秘部に容赦なく二本の指を挿入する。
「ひゃあああぁぁああっ!」
「まったく……」
突然の衝撃と、慶二さんとは違う指に嬌声どころか蜜が噴き出す。
達した私は肩で息をしながら椅子にもたれ掛かり、慶二さんは眉間を押さえた。対してはじめさんは挿入したままの指をぐるぐる回す。
「ふあああっ……やめっ……またイっちゃうううぅぅっ!」
容赦なく掻き回された挙句、勢いよく指を抜かれるとまた蜜が散る。
力を失くした私の目は虚ろだが、立ち上がったはじめさんは指に付いた蜜を舐めると口笛を吹いた。その口元に弧を描く。
「ふふっ、イいね……ケイくん……閃いた」
「それは良かったですが、初日なのでほどほどにお願いしますよ」
「うん……借りるね」
そんなやり取りが聞こえたと思ったら浮遊感を覚える。気付いた時には、はじめさんに横抱きされていた。
「え、ちょ……!」
「大丈夫……落とさないよ」
「そ、そうい意味じゃ……け、慶二さん!」
慌てて振り向くが、手を振りながら『第二関門』と動く口しか見えなかった。
* * *
階段を上がると、いくつもある扉のひとつに入る。
イった後の眠気があったが、独特な臭いに目が覚めた。
部屋の中央にはキャンバスを掛けたイーゼルがあり、多種多様のサイズ、紙質のキャンバスが無造作に立て掛けられている。ひとつしかないテーブルは絵の具や筆やパレットで埋まり、下にはミニ冷蔵庫。
何点か飾られている作品は何がモチーフかわからないが色鮮やかで好きな画だった。
「綺麗……」
感嘆の声を漏らすと、はじめさんは笑う。
その笑い方は慶二さんに似ていて頬を赤めるが、イーゼルの前に設置されたベッドに転がされるとさすがに慌てた。
「ああああのっ私っ」
「Freeze it(ジっとして)」
数時間前の声とパターンに固まる。
そんな私の頭を撫でたはじめさんは大きなクッションを二つ、私の背中に敷いた。とてもふわふわで心地良くて、つい頬が緩んでいると口付けられる。
「んっ!」
突然のことに目を見開くが、すぐ離れ、跨ったはじめさんに見下ろされる。
私は半裸、彼は全裸。それでこの体勢はどうかと思うが、痩せ型なのに筋肉。特に腕が太いことに目を向けていると、胸に顔を近付けたはじめさんは先端を舐めた。
「ああぁんっ!」
「んっ、コリコリしててイいね……でももっと勃って……ケイくんとシてた時のキミが描きたい」
「か、描くって……ひゃああん!」
片胸を搾るように両手で握ったはじめさんは先端をしゃぶる。慶二さんとは違い、荒々しく舐めては甘噛みし、勢いよく吸い上げられた。
「あああぁぁ……そんなに吸わないでえぇ……何も出ないからああぁ」
「っはぁ……でも美味しいよ……ほら」
胸だけでイきそうな私に、反対の胸を両手で搾るはじめさんはツンと尖った先端を向けた。嫌な予感を覚えていると、はじめさんは舌先で先端を舐める。私を見ながら。
「ほら……レイちゃんも舐めて」
「っ……あぁ」
前髪から覗く目に自然と頭を起こすと舌を出す。そして、はじめさんの唾液がついた自分の胸を舐めた。
「っふ、んっ……んん」
「ね……美味しいでしょ?」
「わ、わからな……んんっ」
味なんてないはずなのに、自分の胸なのに舐めてしまう。
はじめさんも同じ胸を舐め、互いの舌先で先端を刺激しては重ねる。ついには自分のだと私はしゃぶりつき、くすくす笑うはじめさんは反対の胸にしゃぶりついた。卑猥な吸引音が響くと同時に離す。
「っはあ……はあはあ」
「んっ……レイちゃん……上手……イい子」
微笑むはじめさんに口付けられる。
今度は味わうように重ね、挿し込まれた舌に舌を絡ませると、応えるように絡み返してくれた。唇が離れると白糸が繋がる。
「っはあ……はじめさ……ん……」
「ん……イい具合になってきたね……あとは……」
もう無理と首を振りたいのに動くことができない。
かろうじて視線だけ動かすと、ベッドを降りたはじめさんがテーブルを漁る。と、新品の筆を持った。本当に描くのだろうかと思っていると、なぜかキャンバスを通り過ぎ、ベッドの前で膝立ちになる。
「ココ……だね」
「え……ひゃっ!」
瞬間、下腹部にくすぐったさが伝わる。
火事場のバカ力で頭を起こすと、はじめさんが筆で秘部を擦っていた。毛先にはドロリと蜜が付き、顔を青褪める私に彼は微笑む。
「ココをよーく……解(ほぐ)そうね」
筆(それ)でええええぇぇ────っ!?