カモん!
40話*「大好きな人」
新年もニ日目が終わろうとしている。
今日は海雲さんと仁くんは留守番で、午前中かえでんと画材の買える店で大はしゃぎでした。が……腰が。
午後にはほしりんと会う事が出来て、かえでんと三人セールに突入しました。が……腰が。そして帰宅して食事後は淑女さんとかな様にお茶を誘われました。が……腰が。
「若いヤツが何いってんのよ」
「か、かな様の息子さんってすごいですよね~」
頭を叩かれた。
既に漫才のような繰り返しで、淑女さんとかえでんが笑っている。あれからニ人は一緒にいることも笑顔も増え、ダンディさんとちーパパさんも海雲さんも仁くんも楽しそうです。
その光景が『幸せな家庭』に映っていると、かな様がコツンと私の額を小さく叩いた。少し怒っているように見えて身構える。
「アンタももうウチの娘みたいなもんなんだから、傍観も遠慮もやめて甘えたり頼りなさい」
「……っ!」
「まったく、こういうとこは海雲と一緒でヘタ……って、こらっ!」
気付けばかな様に泣き付いていた。
心のどこかでは人様の『幸せ場面』を邪魔してはいけないって気が引けていたのかもしれない。でも海雲さんに『頼ったり甘えろ』『遠慮はいらない』って言われ、かな様には『ウチの娘』って……たった数日でこんなに涙が溢れるなんて泣虫だったんですね、私。
「なに泣かしてんだ御袋」
泣き付いたままいると、後ろから海雲さんが不機嫌な顔を覗かせた。
淑女さんが困ったように事情を話すと納得しながらもかな様から私を引き離し、抱き抱えられた。
「何するんですか~」
「風呂に入るぞ」
「今夜はかな様と入ります~」
「「却下」」
かな様にも断れた!
かな様は溜め息をつき、かえでんと淑女さんは恥ずかしそうに手を振りながら私はお風呂の扉を潜った。
* * *
「ひゃう……あ……んあぁ」
タオルも何も纏わず身体と身体、唇と唇が触れ合い、違う熱がバスルームを包む。
私は暖かい浴槽ではなく、タイルの上で両膝を折り、前屈みの状態で両手を浴槽の縁で支えたまま海雲さんに洗われていた。大きな手で泡を立てながら胸の合間を擦り抜け、乳房を掬い上げられる。けれど泡で滑ってと、同じ事を繰り返すばかり。
「海雲さ……ん……ワザとです……きゃん!」
「滑るのもあるが……俺より御袋を取った罰だ……ほら、やっと乳首が摘めたぞ」
「ひゃあんっ!」
焦らされた乳首はいつの間にか尖り、指で弄られる。
その刺激に耐えられず後ろの海雲さんに寄りかかってしまった。でも彼は楽しそうに口付けると下腹部へ、秘部へ手を伸ばす。
「あっ、そこは……」
「ここもよく洗っておかないとな……ん、濡れているようだが湯か? それとも……」
「それ……は……あぁん……!」
スイッチが入ったらしく意地悪海雲さんが降臨!
意地悪海雲さんの片手は乳首を摘み、もう片方の手は膣内に指をニ本入れ、ゆっくり混ぜられる。快楽に酔っていると耳元で囁かれた。
「今夜は何度もイかせてやるからな……」
「ひゃ……?」
「明日帰るだろ……」
「うっ……あんっ!」
“帰る”という言葉に胸が痛むが、すぐ膣内に指が三本入り、奥を突かれた。また耳元では『錘は増やさない』と言葉は優しいのに、口付けも指の動きも激しくなる。
そう、今度は私が明日福岡へ帰る日。
福岡に支社を創るといってもまだ先の話で、しばらくは遠距離になってしまう。徐々に気持ち良くなってくるとシャワーをかけられ泡が流れていくが、すぐに乳首を口に含まれ、舌で転がされる。
「あぅう……いま……洗ったの……ひゃあぁあん」
「んっ、俺はしたい時にしているだけだ……」
変わらず膣内にも指があり、お湯ではない愛液が海雲さんの手を濡らす。けれど『もっと出せ』とせがまれ、激しく掻き混ぜられると限界が近付く。
「やあぁあん……イくっーー!」
「イけ……」
瞬間、目の前が真っ白になり、荒い息を吐く。
海雲さんは浴槽に背を預け『今度はみきが洗え』とボディソープを私に渡した。既に気持ち良くなっている私は言われるがまま手にソープを付け、泡を立てると海雲さんの股の間に入り、身体を洗う。
「……もう少し強くでいいぞ……ん、そうだ」
「ふぁい……」
滑る手で海雲さんの首筋、鎖骨、腕を洗い、身体と身体を密着させる。
背中は抱き合うようにして洗うが、気持ち良いのか不安で顔を上げた。すると、海雲さんも荒い息を吐きながら優しく私の髪を撫でる。
嬉しさから下腹部まで下がると、小さい胸の谷間に肉棒を挟む。袋部分を手で洗いながら先端には泡を付けず、口で咥えた。
「っ……相変わらず突拍子なこと……くっ」
「ひゃあう……海雲しゃん……お汁いっぱい……ひゃっ!」
せっかく白液も出ていたのに離されてしまった。
すると突然腰が浮き、急いで海雲さんの首に掴まる。でも泡がまだ付いているせいか掴まっていても滑り、秘部に先端が刺さりそうで刺さらない宙ぶらりん状態となった。
「か、海雲さ……ん」
「頑張れば落ちないだろ」
キラキラ笑顔で言われても完全落ちれって言ってるようなものですよ!と、内心ツッコむが、両くびれを突かれた瞬間簡単に──。
「ひゃあああぁーーーーん!!!」
「本当……すぐに落ちるな……っ!」
膣内に痛い衝撃と共に気持ち良くて熱いモノが挿入され、快楽で意識が飛──。
* * *
目が覚めると海雲さんの部屋でベッド……に居るけど、海雲さんの胸板が下に!
そんな海雲さんは私を乗せたまま器用に本を読んでいた。私に気付いたのか本をサイドテーブルに置き、頬にキスを落とす。
「起きたか……今、0時を過ぎた頃だな」
「ごごごごごご迷惑おかけしま……って、裸のままじゃないですか!」
サイドテーブルのライトと掛け布団でわからなかったけど、よく見ればニ人共全裸のまま。私は急いで起き上がるが、両乳首を引っ張られ跨ってしまった。
「やあぁ……あん」
「今夜は何度もイかすって言っただろ」
「そ、そうですけど……」
意地悪海雲さんが続行中!
涙目で彼の胸板を叩くが効果はなく、腰ごと引っ張られると肩に顔を埋められる。私が起きるのを待っていたかのように、髪に耳に首筋に花弁を幾つも付けていく。私も負けじと首に手を回し、花弁を付けるが、全然付かない。なぜ!?
「みきは遠慮なく強めにしないと付かないぞ……」
「遠慮なく……」
その言葉に習って首筋を“かぷっ!”としたが、これじゃ吸血鬼ではと思う。海雲さんは肩を震わせながら笑っている……もしや騙された!?
ムッとした私は下顎、肩、乳首を、かぷかぷ。慌てて止める海雲さんにニッコリ笑顔を向けた。
「どうしました?」
「みき……本当は隠れSじゃないのか……?」
「海雲さんに気持ち良くなってもらいたいだけですよ」
「…………やっぱり悪魔か」
納得いかず不貞腐れていると楽しそうに笑われた。なんですかー。
「いや……前に比べて喜怒哀楽が激しくなったと思ってな」
「……そうですか?」
そう言えば涙脆くなったし、結構怒ってるような……海雲さんが錘を取ってくれたからかなと笑うと、今度は海雲さんが“なんだ”といった様子。
「海雲さんだって無口無表情から百面相になりましたよ~」
「……おかげ様でな……」
それが可笑しくて、またニ人で笑う。
最初出逢った時は思わなかった海雲さんの素顔。それを自分が変えたなんて思えないけど、私は確かに貴方に変えてもらった。
微笑む海雲さんに“みき”と呼ばれると嬉しくて、彼の背に手を回す。
胸の鼓動が大きく聞こえるのは私も同じで、いつまでたっても胸のドキドキは治まらない。頬を撫でられ近付いてくるのは大好きな人。
唇に舌に指に膣内に、私の全部に入れるのは海雲さんだけ。
互いがそう認めるかのように口付けを、繋がりを、今夜も紡ぐ──。
* * *
一月三日。見事に筋肉痛です、はい。
海雲さんに支えられ羽田空港へと辿り着いた私は今から福岡へと帰ります。なんと藤色と峰鳶両家共お見送りにきてくれました! かえでんと抱き合っていると仁くんが便乗して抱き付く……が、海雲さんに襟を引っ張られ残念!!
「みきさん……本当にお世話になりました」
「いいえ。私の方こそ同志……とは違うけどお友達できて嬉しかったです」
「婚約者ちゃん、次に会う時は人妻?」
「それはやめてください。仁くんも、ちーパパさんの言うこと聞いてくださいよ」
そう言うと最初とは違う笑顔をニ人は見せる。
ちーパパさんと淑女さんは手を繋いだまま私の前に立つと頭を下げ、私も慌てて下げる。ニ人はくすくす笑いながら、ちーパパさんが私の肩を小さく叩いた。
「嬢ちゃん、今度はウチにも泊まりこいや」
「その日まで私も子供達と一緒に進みます……」
「……はい。お二人もいつまでも幸せ夫婦で」
ニ人のおかげで私は過去を乗り切れ『幸せな家庭』を夢見て良いものだと思えた。
すると、かな様に頭を荒く撫でられる。ボサボサになります~。
「フンッ、ちんちくりんにはそのぐらいが丁度いいのよ」
「やっぱり思考読めてるんですか~」
「ははは、海雲を読むよりは楽な方だよ」
それもそっかと納得していると海雲さんにも頭を荒く撫でられた。
おおっと撫で方が同じですよ! さすが親子ですね!! と、思っていると三人に呆れられた。そこもね!!!
「みきちゃん、私も三月には福岡に視察に行くからその時はよろしくね」
「精々変わらず呑気に過ごすことね」
「はいっ! また私もきますね!!」
ニ人と握手を交わすと、海雲さんに抱き付く。
一瞬驚かれたが、抱き抱えられると頬に小さなキスが落ちた。
「海雲さん、以前もしましたよね」
「……今度は逆だがな」
ニ人で苦笑するとしばらくは見つめ合う。
今度会えるのはダンディさんと視察に来る三月。短いかもしれないし長いかもしれない……でも不思議と何も怖くない。
「……今から離れるのにニコニコだな」
「出会いも別れもニコニコ一番です!」
「みきはそれが一番だな……」
くすくす笑いながら空港なのも忘れ口付けた。
かな様達は呆れてるし、周りからは凝視されるが気にしない。海雲さんと私ですから。数秒間した唇と唇が離れるとやっぱり寂しいけど、海雲さんの腕から降りる。
「それでは海雲さん、また!」
「……ああ、今度は俺も突然行く事にしよう」
「はい、楽しみにしてますね!」
海雲さんもみなさんも笑顔。同じく私も笑顔で手を振りながらゲートを潜る。
大勢の人がいる中でも海雲さんの姿が見え、その優しい目はずっと私を見ていた。
明日から『海雲さん達に会うため』を目標にバイトしよう。
今まではただ何もなく貯めてただけだけど、バイト頑張って、またみなさんに、海雲さんに会いにこよう。
大好きな貴方の元へ────。