カモん!
幕間4*「彼女」
※海雲視点
静寂が包まれていた室内に、携帯のバイブ音が響いた。
眠い頭のままサイドテーブルに手を伸ばすと、もう一方の腕で眠るみきが身じろぐ。だが、起きる気配はない。安堵の息をつく一方、退院したばかりで無茶させたことを反省しながら携帯を見た。
「やっぱ……寺置か」
みきの髪を撫でながらメール主を呟く。
ちなみにもう翌日の土曜、しかも夜六時。目覚める度に抱いていたから身体もベタベタだ。自分がこんなにも性欲の塊とは思わず、一息つくとメールを開く。
『お赤飯買っておきましたよ』
…………たまにこいつ、超能力者なんじゃないかと思う。
以前みきがホテルに泊まった時も『合掌』なんぞしやがったし、今回もニ日休みをモギ取るし……ありがたいとは思うが感謝はしたくない。
一番の理由はこの携帯。
仕事とは別のプライベート用だが、待ち受けは『カモん』で働くみきだ。人が忙しく駆け回っている時にちゃっかり『カモん』に行っていた寺置が送ってきた写メ。見た瞬間、握力で携帯を壊すところだった。結局一緒に写っていた寺置の部分を切り取って待ち受けにしたが……罠に掛かったとかじゃないよな?
そんなことを考えていると、また携帯が鳴る。
しかし今度は着信。さらに相手は──溜め息をつきながら通話ボタンを押した。
「……なんだ、親父」
『なんだとはなんだ。の、割りに、不機嫌ではなさそうだな』
低いバリトン声の相手は俺が勤める会社の社長でもあり父親。
電話越しでも溜め息だけで機嫌の善し悪しを理解され、俺も正直に話す。
「寺置のメールに苛立ってはいたけどな……」
『いつものことだろ』
二十年もの悪友の性格も理解しているせいか笑われるだけ。だが、みきの額に小さくキスを落としていると、ピタリと止んだ。
『なんだ、もしや女といるのか?』
「ああ」
『…………………………』
「なんだ、その間……」
『……いや、お前に本気の女が出来るとは意外だったんでな』
一度もみきのことを話したことないせいか、さすがにその指摘は驚く。
もっとも女なんて学生時代に一、ニ人いたぐらいで、本気になったのは寝顔を見るだけで自然と頬が緩むみきだけだ。
長い沈黙に何か感じたのか、電話越しでもわかるほど真剣な声が届いた。
『ベタ惚れだな』
「……勝手に言ってろ。で、用件はなんだ」
『急に不機嫌になるな。一緒に居たいのは……わかるがな』
明らかに最後、声のトーンが下がったな。さてはまた御袋を怒らせたか?
ウチの両親は円満だが、最近は親父の仕事が詰まっていて自宅に帰っていないはずだ。それだけで短気な御袋は実家に帰り、中々帰ってこない。どーでもいいが。
『どーでもよくないっ!』
「……ナーンモイッテマセン。ゴヨウケンドウゾ」
『片言になるな! まったく……来週の話なんだが』
幸せ気分中に仕事の話するなよ。
溜め息混じりに聞きながら指をみきの口に一本入れる。『ふぎっ』と変な声を発しながら“もきゅもきゅ”食べる姿は可愛い。
『それで海雲、再来週帰ってくる時、彼女どうするんだ? 連れてくるのか?』
「あー……それだが……」
一瞬ドキリとするのは、もう『恋人』でいいのだろうかという一抹の不安。
みきのボケを見すぎたせいか、無意識に俺を不安にさせるの得意だからな。ひとまず今は置いておこう。
「俺としては連れて行きたいんだが……来週から十二月に入るだろ」
『何か問題あるのか?』
「………………稼ぎ時」
『……は?』
親父は素っ頓狂な声を上げるが、俺としては至極真面目真剣な話だ。
恐らく六割……いや、八割。十二月と言えば飲み会! 忘年会!! 『カモん』稼ぎ時!!!
という、素晴らしいフラグが俺の頭で立っている。入院してしばらく休んでいたみきは何がなんでも出そうだと話すと、さすがの親父も唖然といった様子。
『……また、変わった子を好きになったな』
「おかげで充実した毎日だ……その件に関しては折り返し連絡する……」
『わかった。私も会うのを楽しみにしているが、ほどほどにしておけよ』
「……御袋を怒らせたアンタよりマシだ」
『おっ──』
途中で通話を切るとテーブルスタンドに携帯を置く。
みきの思考がわかってきたのは良い事なのか違うのか。何しろ寺置の予想斜め上を行く大物だからな。溜め息をついていると、腕の中で寝息を立てていたみきの目が開く。
「海雲……さ……ん」
「悪い、起こしたか?」
そう言いながら、まだ眠そうに瞼を擦っているみきに口付ける。
小さな喘ぎだけで、また下腹部のモノが膨れ上がりそうだ。が。
「お腹……空きま……した」
予想とは違う“お願い”に、しょんぼり肉棒が下がった気がした。
そうだな、そう言えば昨日から何も食ってなかったな。仕方ないと上体を起こす。
「部屋に食事頼むか? 外は……腰が辛いだろ」
「腰……痛いですね……あーでも……ラーメン食べたいです」
「は?」
「豚骨ラーメン……あー……屋台に行きましょ~……」
行きましょうって、そのふわふわしたままで大丈夫か?
確か屋台って天神か中洲にあったよな。ならどっちかに車を停めて……と、考え込んでいると、みきがこちらを凝視しているのに気付く。しばらくして、腰が痛いだろうにモソモソやってきたみきは一点を見つめた。視線の先には……俺の肉棒。なん……だ?
すると、あろうことか両手で肉棒を握った。
「っ!」
「わー……大きくて硬いですね……んっ」
瞬間、パクリと咥えた。
ちょーーと待てーーーーっっ! 急にそれは待てーーーーーーっっ!!
脳内で叫びながらも、萎えていたハズの肉棒がピンッと元気を取り戻したのは言うまでもない。覚束ない手付きながら強弱を付け、上下に擦ったりと全身に快感を与える。
「っ……するの……はじめて……だよ……な?」
「ふぁい、ふぁじふぇちぇでしゅよ……」
咥えたまま言うが、上から見るとエロイ。
“ちゅっぽっ”と肉棒から口を離したみきの口からは白液が垂れる。ゴクリと俺の喉が鳴るが、みきは半泣き。
「思ってたより苦いです……うう……でも、硬そうに見えて柔らかいとこもあるんですね」
前半半泣き、後半笑顔。興味本位か! 小学生か!! 悪魔か!!!
何も知らないことが武器になることを実感する反面、途中放棄された肉棒は膨張を続ける。
「…………みき」
「はい?」
「風呂に入るぞ」
そう言って俺は過去にないぐらいの笑顔を向け、風呂で挿入した────。