カモん!
17話*「彼氏さん」
「バイトです!」
「どげんしたとね、兄ちゃん?」
『十二月の予定は?』と聞かれたので笑顔で答えたら、海雲さんが机に頭を打ってしまいました。なぜ?
屋台のおじさまも心配そうに見ている私達は今、中洲へ屋台ラーメンを食べに来ています。
* * *
はじめて海雲さんの満面笑顔を見ました。
とっても綺麗だった! 綺麗だけどすんごい怖かった!! 片腕で私を持ち上げるとかすごかった!!!
ちょっと気になっていた事を実行したのがいけなかったのか、お秘書さんにも負けないキラキラ笑顔の海雲さんに捕まり、お風呂に入れら……挿入されました、はい。
浴室入ってすぐとか痛かったです。しかも手で身体を洗われたり、初心者にはハードルが高く、気持ち良くて意識飛んだらいつの間にか中洲に到着。
着ていた服とは違う服に下着もシッカリ付けているのはスルーで。お世話かけました!
そしてなんと海雲さん私服ですよ! はじめて見ました!! しかも髪下ろしてる!!!
スーツ姿とはまた違ってカッコ良いのは行き交う人達の視線でわかります。そんな素敵な男性に腰が辛くて腕に掴まりながら歩く私でごめんなさい。
そんなこんなで近くの屋台で豚骨ラーメンを注文して冒頭に戻ります。
お冷を飲んでいると、海雲さんがゆっくりと顔を上げる。
「東京へ帰る時……一緒にどうかと思ってたんだが……」
「あうー……ご一緒したいのですが、十二月は『カモん』が忙しくて……」
「だろうな……」
海雲さんは大きな溜め息をついた。
これって『仕事と私どっちが大事なの!?』って状況なのだろうか……うん、痛い。同時に彼が東京へ帰ってしまう事実があり、改めて考えると胸がズキズキ痛む。そんな落ち込んだ私の頭を優しく撫でられた。
「急な話だしな……俺も年末は三十日まで仕事があるし……年が明けてから考えよ」
「すみません……あ、でも年末は」
「ほいよっ、豚骨ニつお待ち!」
美味しそうな豚骨の匂いが鼻をくすぐり、待ってました!、と割り箸をパキッと割る。
「のびると美味しくないですからね。おじさま、牛タンもお願いします!」
「へいよ! なんや兄ちゃんと嬢ちゃんは兄妹か?」
店主のおじさまの言葉と同時に『バキッ!』と大変素晴らしい音。
見ると海雲さんの割り箸が真っ二つ! 何度か思ったけど握力強いですね!! じゃなくて!!!
「兄妹じゃないですよ!」
「違うんか? 向こう行くだの行かないだの、年末一緒帰るかの話なんかと」
あわわ、おじさまストップ! 海雲さんから黒いオーラ出てますから!! 確かに黒髪とか身長差とかで『ぽい』かもしれませんけど!!!
「海雲さんは私の彼氏さんです!」
勢いよく海雲さんにしがみつくと、いつの日かと同じように場所も忘れ大声で言ってしまった。屋台のおじさまも、隣に座ってる男女も、後ろを行き来する人達も一斉に視線を向ける。
一分後、視線に気付いた私に屋台のおじさまも同じように頬を真っ赤に染めるとポリポリと頭をかいた。
「そりゃーすまねーな。そんじゃご両親に挨拶に行く予定とかか?」
「そ、そうですねー海雲さ……ん?」
海雲さんを見ると、顔を伏せ、肩を震わせていた。
なぜ!? もももしかして『彼氏』って違うの!!? 『両想い=恋人=彼氏』は違うの!!!?
よくよく考えればこんなカッコ良い人の『彼女』が、ボケで能天気で中身小学生(まきたん談)で色気なしな私なんて不釣合いなんじゃ……。
急に体温が低くなったように顔を青褪めると、目の前が真っ黒になった。けどそれは海雲さんに抱きしめられたから。
「かかかかか海雲さんっ!?」
「……彼氏……で……彼女でいいんだな……?」
「わわわわ私の方こそ、そそれでいいんですか!?」
また周りの目を忘れ、混乱しながら聞き返す。すると目が合った。
「それでいい……」
ふんわりと、柔らかい微笑。
背後からお姉さん方の黄色い悲鳴が上がり、私の顔も真っ赤になる。これがもしや、りんちゃんの言っていたドッキューンで爆発!?
頭が茹でダコ状態で思考停止するが、顔を近付ける海雲さんに慌ててて腕でバッテンを作った。
「かかか海雲さん、食べ終わってからにしましょ!」
「……………………わかった」
しばしの間を置いた海雲さんは頷くと、ニ本目の割り箸を割る。
止めなかったら絶対キスされてましたよね。嬉しいけどさすがにこれ以上は私がダメです。逝ってしまいます。まだ治まらない動悸に手を当てていると、屋台のおじさまに牛タンと天ぷらを差し出された。
「いやぁ~ラブラブカップルか! こんにゃろー!! ほれ、天ぷらはおじさんからのお祝いだ」
「あ、ありがと……ございます」
隣の男女さんからもおでんを貰い、祝福のようなものをしてもらった。
知らない人達ともこうやって繋がるのが屋台や居酒屋の醍醐味で私は好きです。恥ずかしかったけど。
* * *
腰が辛い私はまた海雲さんの腕に掴まり、駐車場へと向かう。そこでふと海雲さんが口を開いた。
「両親と言えば……俺はみきのところに挨拶に行った方がいいんじゃないか?」
「あー……そうですね。妹には会ってますが母にはまだですよね」
「父親は?」
「離婚しているので会えるかわからないです」
「……え?」
ピタリと海雲さんの足が止まった。
そう言えば離婚してるとは言ってなかった気が……まあ、離婚と聞けばなんと言えばな雰囲気はありますよね。苦笑しながら海雲さんの胸板をペンペン叩く。
「大丈夫ですよ、時たま会いにきてくれますから。ただ私は連絡先を知らないので母に聞くことになりますけど」
「……そうか。なら帰る前に時間を作って会いに行こう」
「はいっ! あと、りんちゃんにも会ってもらいたいです」
「りんちゃん……?」
「私の友達で、以前博多駅で会った日にデートしてた子です!」
「……ああ」
一瞬暗~いオーラが見えたのは気のせいでしょうか?
りんちゃんのおかげで気持ちに気付いたようなものだし、出来れば紹介したい。鞄から携帯を取り出した私はスケジュール表を開く。
「でも海雲さん忙しいですから、いつがいいですかね」
「……その子が良いなら、明日の夕方でも構わない」
「本当ですか!?」
ぱああっと明るくなった私に海雲さんは頷き、早速りんちゃんにメールを打つ。数分後、駐車場に着くのと同時に返事が返ってきた。
タイトルは『大歓迎!』。本文も『会いたい! 明日の夕方五時頃、博多駅の中央改札口でいい!?』と、絵文字カラフルハイテンション。それが可笑しくて笑うが、ふと気付いたことを訊ねる。
「でも、なんで夕方なんですか?」
午前中に会って午後はデートでもしたいなと思った私は少し残念な気持ちになる。すると海雲さんは後部座席に座り、手招きしながら言った。
「どうせ起きるのが昼頃だからだ。さっき『食べ終わってから』って約束したよな……みき?」
数刻前に見た満面笑顔に後退りするが、辛い腰が動いてくれない。
抵抗虚しく、車の中に吸い込まれまし──。
* * *
「ひゃう……あんっ……やああっ」
静かな車内に淫らな水音が響き渡る。
シートに背を預けている海雲さんの膝に、膝立ちで跨った私は彼の肩に手を置いていた。既に唇はぷくりとふやけ、上着もブラごと捲くし上げられ、乳首を片手で擦ったり舌で転がされる。
「何がイヤだ……蜜はいっぱい出てるぞ」
胸を弄る手とは反対の手で、丸見えになっているショーツ越しに秘部を撫でられる。その愛撫にショーツもぐっしょりと濡れ、私はもう我慢できずにいた。
「海雲……さん、もう……私」
「……早いぞ」
先ほどから焦らしに焦らされ、指一本すら挿れてもらえていない。一度体験した快感は忘れられず、懇願するように口付けた。
「お願……い……イきたい……です」
「……仕方ないヤツだ。自分で下着を外して……もう一回アレを上手に言えたらシてやる」
楽しそうに言いながら、ズボンから大きなモノを出した彼は、先端でショーツを擦る。指とは違う刺激に身体中がゾクゾクし、震える手でショーツを外すと、車内で何度も促された台詞を言った。
「私は……海雲さんの……彼女で……全部海雲さんの……もの……です」
「……良い子だ」
瞬間、腰ごと下ろされ、膝で支えられなくなった膣内に海雲さんのモノが突き刺さる。
「ああああああっ!!!」
激しい衝撃と快感に、腰が痛いことも忘れ、上下に動かす。
緩やかな動きでも強く締め付けたせいか、白液を一番奥で吐き出され、一瞬で意識を手放した。
目覚めても、またベッドで啼かされるなど露知らず────。