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​モん!

  37話*「繋がり」

 時刻は夜の十一時を過ぎ、残り一時間で年を越そうとしている。

 でも、部屋に聞こえるのは紅白でも蕎麦でもない。淫らな匂いと喘ぎ。

 

「で……仲畑さんとこの家族見て……んっ」

「それ……で、んん……」

 

 自分の顔が涙でぐしゃぐしゃなのは過去の悲しい事と、海雲さんの愛撫で溢れているから。

 暗いベッドの上で全裸になった私の両腕は、海雲さんの手によって頭上で囚われていた。彼は上半身だけ裸で、額、瞼、頬、首筋、鎖骨、乳首と順に小さなキスを落としながら秘部を捏ね回し、話を聞く。

「りん……ちゃんの……家で……遅くまでいたら……家族揃って……晩御飯はお鍋って……」

「ん……」

「お邪魔だって……帰ったけど……私の家では……もう……家族でお鍋……できないって……」

「……寂しくなったんだな」

「ひゅんっ……!」

 『家庭を持つのが怖いか?』と問われた瞬間、私の心には大きな錘(おもり)が乗った。

 ずっと心の奥に閉じ込めていた“別れるという恐怖”を、好きになった海雲さんに言われたから。それは心が壊れるかと思うほど痛かったけど、優しい口付けをしてくれた彼は言った。

 

『全部の錘を吐き出せ……俺が快楽で壊してやるから』

 誰にも言わず溜めていた錘を吐き出す度に快楽によって消えていく。

 それだけでニ時間は経っていたかもしれない。それでも海雲さんは気にせず相槌を打ちながら、決して唇には触れず快楽だけを与える。それは寂しくもあり、私の言葉を聞いてくれているようでまた涙が出た。その涙を優しく舌で舐め取られる。

 

「……で、やっと俺の登場か……溜め過ぎだろ」

「そんな……ありました……ひゃんっ!」

 

 『あった』と苦笑しながら指で強く秘部を撫ぜられた。

 上半身はベトベト、下腹部は自分の蜜で溢れ、お漏らししているみたいと顔を赤くしていると、卑猥な音を鳴らしながら海雲さんが蜜を吸っていく。快楽を与えられる。

 

「はぅ、あぁああん……あん」

「……俺と会ってからは……錘……乗ってないだろうな?」

「ん、好きかな……と考えた時……あんっ……胸が痛かった……ぐらい……あああんっ」

「ならいい……」

 

 吸い終えると指を秘部の最奥に挿入される。

 同時に数時間振りの口付けに心も身体も歓喜した。両腕も解かれるとすぐ彼の首に回し、抱き合ったまま何度も何度も口付けと舌を交じらせ堪能する。いつの間にか私の表情は涙から微笑に変わり、海雲さんも嬉しそうに瞼にキスを落とした。

 

「両親の事はもう大丈夫か……?」

「……はい……離れた方が互いに良かったみたいで……」

 

 今では呑気に笑っている母だけど、昔はずっと隅で泣いてた。

 子供がニ人いる身としては別れるなんて生活面でも金銭面でも辛いのに、決断して育ててくれた。私の“発作”も泣きながら『ごめんね』って……ただ私が弱かっただけなのに。

 

 でも今では三人でなんとかやれている。何より海雲さんが母に挨拶へ来た後“友達”と出て行ったけど、それは恐らく“父”だったんだと思う。もう“一緒”にはなれなくても、繋がりがあるだけで私は充分……それに。

「海雲さんがいますからね……」

「……みき相手だとケンカする方が難しいな」

「私はいつも怒ってますよ。かな様に“ちんちくりん”とか言われた時とか」

「なるほど……」

 

 くすくす互いに笑っているとベッドに押し倒され、海雲さんもすべての服を脱ぐと跨る。時刻はもうじき0時になりそうだ。

 

「……心配するな。御袋達にはみきが起きる前に説明してある。ついでに『出てくるまで邪魔するな』ともな」

「バッチリですけど、年越し蕎麦が~」

「蕎麦じゃなくて俺を食べておけ」

「あう~、またそう恥ずかしいこと~……んっ」

 

 優しく口付けされると、乳房を掬われ舌で舐められ吸われ弄られ、荒い息と共に蜜が溢れ出す。既にぐちょぐちょの秘部は我慢できずにいて、彼を見つめた。

 

「海雲……さん……もう……」

「んっ……知ってる……みき…」

「ふぁ……い……」

 

 両足を上げられると肉棒の先端が秘部を擦る。

 それだけでも身体がゾクゾクと待ち望んでいるが、海雲さんが真剣そうに見つめるので私も我慢しながら目を合わせた。

 

「“幸せな家庭”……俺と作れそうか……?」

「……まきたんに聞きましたね」

 

 ジと目で聞くと頷かれる。

 まきにも言った記憶ないのにわかっちゃったのかな。いつまでたっても妹に勝てる気がしないと苦笑していると耳朶を甘噛みされた。

 

「ひゃんっ!」

「妹の方がみきをわかってるっていうのは嫉妬するな……」

「人生の半分は一緒にいましたか……きゃんっ!」

 

 今度は噛むだけではなく舐められ『言うな』とまで囁かれた。

 海雲さんが怒ってるじゃないですかとくすくす笑うと、ムスっと可愛く拗ねた顔を私の肩に埋める。髪がくすぐったいが、私は真似するように海雲さんの耳朶を小さく舐めて噛むと囁いた。

 

「私が人生最初で最後に愛するのは海雲さんだけですから……“幸せな家庭”に絶対なります」

「……そうか」

 

 顔を上げ、優しく微笑まれると0時を報せる音が響く。

 でも同時に秘部に大きくて熱いものが一気に駆け上り、全身を支配していった。

 

「あああぁぁぁあ!!!」

「くっ……まだ奥……進めるぞ……!」

「ひゃああぁ……ダメぇ……」

 

 上下に揺すられる度に締め付け、快楽が襲う。

 激しくて激しくて涙が出るが、それは嬉しい涙で、海雲さんの肩にしがみ付くように腰を浮かせると奥へと突き立てられる。

 

「自分で……動いてダメとか言うな……っ」

「だ……って……気持ち良いから……ああん!」

 

 ズブズブと膣内を入ったり出たりを繰り返し、快楽は収まるどころか増していく。錘も何もない空っぽの私の心には海雲さんしか入ってこない。

 

 “幸せな家庭”がいつか壊れそうで見るのが考えるのが怖かった。

 でも私はどこかで憧れていた。幸せに笑っている両親を覚えているから。その愛を自分も知りたかった、見つけたかった、繋がりたかった──それが今。

 

 

「海雲さん……愛してます……」

「先に言うな……でも……俺も愛している」

 

 

 海雲さんの愛が溢れるほど膣内を私を満たしていく。

 本当の幸せも愛も貴方に出逢って知りました────ありがとう。

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