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​モん!

  22話*「長い間」

「んふ、んっ、あん……もう……」

「イく……か?」

「ひゃあぁぁぁんっ!」

 

 音は止まない。

 求め求められを繰り返し、全身啼かされた涙と汗と海雲さんの愛液でいっぱいだ。イった今も秘部から溢れる蜜を舐め取られる度に腰が浮く。

 

 スカイチャペルでイった後、気付けば海雲さんの部屋。でも、ベッドの上では無意味でした。

 

 

* * *

 

 

 日付が変わった頃に目が覚めると、喉がガラガラ。

 啼きすぎたとわかると恥ずかしくなる私に察したのか、上体を起こした海雲さんがサイドテーブルに置いていたペットボトルを手に取った。

 

「ほら、水」

「ありが……ふゅんっ!」

 

 水は水だけど口移しですか!?

 冷たい水と海雲さんの唾液が口内を満たすが、流し終わっても舌を奥まで入れられ、歯列をなぞるように口付けを続ける。堪能し終えたのか、海雲さんは乱れた息を整える私の頭を撫でながら片肘をついた。口元は笑っている。

 

「“ふぎっ”や“ふゅん”とか変わった啼き方をするな……」

 

 “ふぎっ”なんて言ったことありました!? と言うか啼き方まで覚えてるんですか!!?

 羞恥で布団を被っても剝がされ、彼の胸板に収まる。私は口を尖らせた顔を上げた。

 

「海雲さんこそ……ベッドの上ではお喋りと言うか俺様ですよね」

「……そうか?」

「いつもは今みたいに“間”がありますけど、シてる時は言葉攻めされるというか、ガラスに押しつけるとか……あっ!」

 

 言いながら数刻前の惨事を思い出し、両手で胸板をペンペン叩く。真っ青な顔で。

 

「なななんてことしてくれたんですか! 神聖なチャペルを私ぐちょぐちょに汚しちゃいましたよ!!」

「……ああ、ガラスについた分は一応拭き取ったが後は……………………」

「そうやって長い間がある時は怪しいんですよ!」

 

 指摘に、ギクッといった様子で視線を逸らされた。

 言った後に思いましたけど、確かに間が多い時って呆れてるか深く考えているか、私にとって不都合な時のような気がします。逆に間がない時は嘘偽りもないってことかもしれませんが。

 

「後悔先に立たず、だ」

「ドヤ顔で言わないでくださ~い」

 

 力なく顔を伏せると左手を取られ、指先に“ちゅっ”とキスの音がした。

 

「……おかげで指輪(これ)を渡せたから……問題ない」

 

 そう言われると何も言えず、薬指にある指輪を見つめる。

 婚約なんて夢みたいと思ったが、指輪を見ると現実味を帯びてきた。そこでふと気付く。

 

「海雲さんのはないんですか?」

「……ある」

 

 男性の方で婚約指輪をする人はあまり見ませんが、記念にと海雲さんも購入したらしく、見せてくれた。同じデザインで、ダイヤの横には緑色のペリドットではなく紫色のアメシストをあしらった指輪。海雲さんはニ月生まれだから……あれ?

 

「なんで嵌めないんですか?」

「みきの膣内を傷つけるだろ」

「あうっ……」

 

 間もなかったから本心だ。海雲さん、実は天然タラシなんじゃ……。

 そんなことを考えながら起き上がった私は海雲さんの指輪を持つと、彼の左手を取る。

 

「……なんだ?」

「こういうのはお互いにしないと。えー……ごっほん、つきましては」

「…………結婚式の司会者か」

「藤色海雲さんは私、辻森みきの男(もの)になってくれますか?」

 

 ツッコミはスルーして訊ねると、海雲さんは目を見開いている。あれ、間違えた?

 不安がっていると、微笑が返ってきた。

 

「ああ……俺はみきの男だ」

 

 やっぱり天然タラシですよ! 絶対!! 私の方が胸ドキドキですよ!!!

 爆発しないよう平静を装いながら彼の左手の薬指に指輪を嵌め、“ちゅっ”と小さなキスを落とした。

 

「交渉成立……ですね」

「…………………………やっぱ、今から婚姻届け出しに行くか」

 

 なぜ!? と言うかもう深夜ですよ! 開いてないですよ!!

 ……え、婚姻届は二十四時間三六五日受け付けてる? へー、市役所さんありがとう………じゃなくて!!!

 

「海雲さん『婚約期間』って言ったじゃないですか! と言うかこの指輪幾らだったんですか!! それにチャペルと洋服代!!!」

「サラリと別の疑問を入れるな。金のことを気にするのは可愛くないぞ」

「庶民には色々あるんです~」

 

 半泣きで訴えたが結局幾らかは教えてもらえなかった。

 それなら『海雲さんのは払う!』と言って通帳を渡すと、開いた瞬間チョップが頭に落とされた。なぜ!?

 

 しばらくだんまりもされ、恐る恐る胸板をペンペンすると我に返ったように頭を撫でてくれた。お尻も撫で……お尻はダメ!

 お尻を撫でる手の腕を叩くと、海雲さんは笑いながら額に小さなキスを落とす。

 

「我慢せずやるって約束したろ」

「そうですけど……んっ、ふあぁっ……」

 

 額のキスは目と鼻を通り、唇へとたどり着く。

 お尻にあった手は一本の指が膣内へと入り、蜜がくちゅくちゅと音を鳴らした。反対の手もツンと尖った乳首を擦り、嬌声を上げる。

 

「あっ、あぁぁ……っ」

「感度高くなったな……しばらく会えない分、ジックリ時間かけて愛してやる……ほらこっちこい」

「ひゃ……ぁい」

 

 既に蕩けていた身体は言われるがままに動き、海雲さんの開いた股の間に座る。そこには腫れ上がった肉棒があり、口を付ける。ゆっくり舐めながら両手で上下に擦ったりしていると呻きのようなものが聞こえたのと同時に射精された。

 

「ひあっ!」

「その顔……エロいぞ」

 

 顔中に彼の精液を受け舐めるが、やはり苦い。でも心地良くて構わず舐める。そんな私を愉しそうに見ているのが余裕あって悔しい。肉棒をはじめて咥えた時のようにビックリさせたい。

 そう考え一瞬躊躇ったが、心地良くなっている今ならと、腰辺りで跨る。

 

「……おい?」

 

 観賞していた彼の声を無視し、先端がピンと勃った肉棒を震える手で持つ。そのまま自分の秘部へと近付けた。

 

「待てみ……っあ!」

 

 自分でなんて恥ずかしすぎる。でも海雲さんにも気持ち良くなってもらいたい一心で、肉棒を膣内へと招いた。

 

「やあああぁぁぁんっっ!」

 

 その刺激はいつも以上に激しく膣内を、全身を支配していく。

 でも海雲さんは苦しそうに呻きを上げていて、私だけが気持ち良くなってるんじゃと、抜こうと動いた。

 

「動く……な……そのまま……っ!」

「ふゃあ……ダメぇっ!!!」

 

 勢いよく膣内で射精され、目の前が真っ白になると、繋がったまま海雲さんの上に倒れる。息を乱しながら彼を見上げた。

 

「気持ち……良かった……です……か?」

「…………………………ああ」

 

 あれ……間が多いぞ。

 瞼を擦り、よく見る。何やら背景が暗い……あれ?

 海雲さんが動くと、繋がったままの部分が強く反応する。

 

「やぁあああんっ! 動いちゃ……」

「…………これから……だろ?」

 

その顔は最近よく見るキラキラ笑顔……しまったーーーーっ!!!

 

 

* * *

 

 

「それで散々泣かされたらしいですよ」

「まき様、“なく”の字が違いますよ」

「なんか言った……?」

 

 微笑むお秘書さんに、妹まきはジロリと睨む。やっぱり二人仲良いのかな。

 そんな中、私は海雲さんと“ぎゅー”してます。空港内で恥ずかしいですけど。

 

 そう、今日は海雲さんとお秘書さんが東京へ帰る日。

 前日忙しいのに、わざわざ『カモん』に寄って大将達に挨拶してくれました。『婚約しました』とも発表され、閉店まで大騒ぎでしたよ。しかもホテルにお持ち帰りされてしまい朝方まで啼かされました、はい。

 

「海雲様、そろそろ中に入りませんと。はい、チケット」

「……ああ」

 

 顔を上げた海雲さんはチケットを受け取る。なぜかお秘書さんのチケットも一緒に。そのまま私を抱っこすると手荷物検査に向か……ちょちょちょちょちょ!!

 

「こらこら、幼女誘拐ですよーーーー!」

「おまわりさーーーーん!」

 

 お秘書さん、まきたんヤメテーー! と言うか幼女じゃないですからーーーー!!

 慌てて海雲さんの首に手を回し抱きしめると、溜め息をついた彼は頬に小さなキスを落とす。私は笑みを向けた。

 

「海雲さん……出会えて嬉しかったです」

「……別れ話なことはやめろ」

「感謝の言葉は大事ですよ。海雲さんが福岡に……『カモん』にきてくれなかったら私ここにいませんから。私を好きになってくれてありがとうございます」

「…………………………や」

 海雲さんが何かを呟こうとした瞬間、お秘書さんが新聞紙で頭を叩いた。なんだろとまきたんの方を向くと、溜め息をついている。わかったの!?

『十七時五十分発、東京羽田行き、まもなく──』

「……タイムアップか……みき」

「はいんっ!」

 アナウンスと共に口付けられた。

 まきたんがジタバタしているように見えたが、お秘書さんに止められている。私も普段なら『こんな場所で!』と恥ずかしくなるが、今から遠距離になる海雲さんと離れたくなくて長く口付け、名残惜しくも離れた。

 気付けばボロボロと涙を流していたが、その涙を海雲さんは舌で舐め取る。

 

「ふっきゃう!」

 

 突然のことに変な悲鳴を上げると、まきたんとお秘書さんに冷たい眼差しを向けられた。なのに海雲さんは笑っている。恥ずかしくなっていると『みき』と呼ばれ、頬を優しく撫でられた。

 

「浮気……するなよ……」

「それは海雲さんの方ですよ! カッコイイんですから!!」

 

 笑顔の私に海雲さんは苦笑しながらまたキスしてくれた。けど。

 

「とっとと行け!」

 

 まきたんがお秘書さんごと海雲さんを押した。

 こらこらまきたん、ダメですよーと諌めるが、どこか妹の頬は赤い。気になりながらも歩き出す海雲さんとお秘書さんに私は大きく手を振った。

 

「海雲さーーん! またねーーーー!!」

「……ちょっと違うだろ」

 

 最後にツッコミをされましたが、小さく微笑みながら手を振り返してくれた。

 その姿が遠退くまでずっと手を振っていたらまきたんに叩かれ、私は指輪を見つめる。しばらくして背後から一息つくのが聞こえた。

 

 

「帰るよ……」

「……うん」

 

 

 さ、今日も頑張ろう────。

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