カモん!
番外編20*「ジレジレハロウィン」
いたって普通の平日。
でも外に出れば、カボチャ型のランタン、まん丸お目々の可愛い幽霊やコウモリ型のお菓子。子供も大人も天使や吸血鬼などの仮装をしている今日は十月三十一日。いわゆるハロウィン!
「私も何かしようかな~」
夕飯の買い出しをしながら、ハロウィン棚を見つめる。
お祭り大好きな私は当然仮装したい派ですが、まきたんに冷たい目を向けられたことがあるので、最近はお菓子を買うぐらいです。
「海雲さんは気にしないと思うけど、本格的にすると困るだろうな~」
だいたいのことは許してくれるけど、特殊メイクまでするとさすがに引かれそう。あと、コスプレも前科があるので考えものです。
「ん~、やっぱりいつも通りにしよう」
無難が一番と、ハロウィン棚からお菓子を何点か取る。それから数秒考え込むと別の所に足を向けた──。
* * *
「トリックオアトリート!」
夜になり、海雲さんがご帰宅。
玄関で迎えた私は笑顔で両手を広げた。
「お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃいますよー!」
決まり文句をいうと、海雲さんは目をパチパチと瞬かせた。
そんな私はトンガリ帽子に黒のケープ。百なり均で買った『魔女っ子もどき』衣装を着ていた。
半端モンが嫌いなしょうちんが見たら怒られそうですが、そこはご愛嬌。
もっとも、立ち止まったまま何も言わない海雲さんも怖いです。またスベったかなと冷や汗をかいていると、懐に手を入れた海雲さんは何かを取り出した。
「……ん」
「はい?」
『となり●トトロ』のカンタくんよりは怖くない顔で渡される。
瞬きしながら見ると──チョコレートの箱。
「わーい!」
目を輝かせた私は喜びを表現するように廊下を小回りする。
そうでしたそうでした。海雲さんは隠れ(てない)甘党なので、お菓子持ってるに決まってます。しかも高級チョコ! さすがです!! ヤッター!!!
「海雲さん、ありがとうございます! あ、ご飯出来てますから、着替えてきてください!!」
満面笑顔の私に、海雲さんも頬を緩める。
それからトンガリ帽子を取ると、私の頭を撫でてくれた。幸せいっぱいになっていると手が離れ、顔を上げる。と、なぜか海雲さんが私のトンガリ帽子を被っていた。
写メを撮らせてもらえないかなと思っていたら、手を差し出される。
「トリックオアトリート……」
「え?」
あまりにも淡々としていたため、何を言われたのか一瞬わからなかった。
けれど、ジーと見つめる視線と手に我に返る。
「あ、ああ、お菓子ですね! 部屋に置いてるので取っ……」
慌ててリビングを指すが、海雲さんの視線が痛い。
こんなに痛いのははじめてで、たじろぐと同時に差し出した──彼から貰ったチョコレートを。
「どうぞ……」
まさか貰った物を返すことになるとは思わなかった。
高級チョコ、食べたかったです。でも海雲さんの機嫌には変えられませんと、内心涙を零しながら視線を上げる。が、海雲さんはキラキラ笑顔を向けていた。
滅多にない。でも、嬉しさより悲しみが大きいのは身体が知っているからか。
笑顔のまま震える私の頬に手を添えた海雲さんは、顔を近付けるとそっと囁いた。
「みき……“イタズラ”決定だな」
良い言葉には聞こえないのに全身を疼かせるのは、チョコレートのように甘い魔性の声だから。誘われるように口付けを交わすと、もう逃げられない──。
*
*
*
「あんっ、あ……」
荒い息と小さな水音が、暗い寝室で響き渡る。
でも私は涙目だった。
「海雲さ……もうぅ……」
「まだ……ダメだ」
「ひゃっ!」
後ろから抱きしめる海雲さんは裸。
私もケープ以外は下着も脱いでいて、既に愛液で溢れている秘部を何度も突かれていた。
でも突いているのは指。しかも一本だけで、奥に入れたと思ったらすぐ浅いところに戻って肉壁や秘芽を擦るだけの寸止め状態。お尻には大きなモノが当たっているのに、先端すら入れてもらえない。
気持ち良さよりも疼きが増すばかりで、汗を落としながら懇願した。
「お願……挿入てくだあああぁぁン!」
ニ本になった指が秘部に埋まり、蜜が勢いよく噴出した。
「ニ本でか……よほど我慢してるな」
「わ、わかってるな……あん、シ……ンンッ!」
勃ち上がった胸の先端を摘まれると揉まれる。
自然と腰をくねらせる私に、くすくす笑う海雲さんは首筋に口付けると耳元で囁いた。
「トリックオアトリート……?」
「あ、あああぁぁ……!」
反転され、中腰になると、胸に顔を埋められる。
そのまま“チロチロ”と先端を舐められては唇で挟まれると引っ張られた。
「ん、甘い……良しとしよう」
“お菓子”と判断されたようで安堵するが、下腹部の疼きは溜まる一方で、勝手に蜜が零れていくのを感じた。イきたい、埋めてもらいたい、激しくされたい。
蜜と共に溢れる欲情が頂点に達した私は彼を抱きしめると、耳元で囁いた。
「海雲さ……ん」
「ん……?」
乱れた呼び声に顔を合わせると、彼の頬を両手で持つ。
互いの目には互い。さらに瞳の奥には熱いモノが見え、私はそっと口を開いた。
「トリックオア……トリート?」
意地悪な笑みを浮かべると、一瞬彼の目が見開かれる。
でも、すぐに同じ笑みに変わると口付けられた。深く深く、角度を変えては何度も。舌を伸ばせば舌を絡ませ、唾液もすべて自分のモノにする。
気付けば彼の両手が背中へ回り、白い糸を繋いだまま唇を離す。
それが切れると同時に、キラキラとは違う微笑を浮かべる彼は答えた。
「ハッピー……ハロウィン」
“イタズラ”ではない“許可”に私も笑みを浮かべると口付ける。
そのまま蜜を零す秘部に待ち焦がれていた肉棒の先端が宛がわれると、躊躇いもなく挿入された。
「あ、あああぁぁーーーーっ!!!」
ずっと欲しかったモノが、快楽が押し寄せてくる。
もっともっとせがむように、満たしてもらうように、彼にも歓んでもらえるように腰を動かせば、呻きを上げながらも海雲さんは笑みを浮かべた。
それはちょっと意地悪で、まだまだ終わらない夜を告げる──。
「みきが……小悪魔だったの……忘れてた」
「え? なんですか?」
翌日、見事腰痛になった私。
なのに海雲さんが大きな溜め息を吐いているのは、晩御飯も食べずにシたからでしょうか。これからはキャンディのひとつぐらい持っておきましょう────。