カモん!
番外編21*「熟れた身体」
*2017年年賀SS企画のものです
「みきさんっ、お願いがありますっ!」
「はいっ?」
毎年恒例、海雲さんの実家で新年を迎えた今日。
友人であり、もうすぐ成人の歳となる“かえでん”こと、峰鳶 楓ちゃんの真剣な眼差しに瞬きを返した。
* * *
「海雲さん、入りま~……っととと」
ノック後、海雲さんの自室に入ると、運悪く電話中。
返事を待たず入ってはいけませんねと反省しながらドアを閉めようとすると、おいでおいでをさせる。一瞬躊躇うも、すぐ電話を切ってしまったので慌てて駆け寄った。
「大丈夫だったんですか?」
「ああ……寺置のことで、ちょっと義妹にな……何かあったのか?」
まきたんになんて珍しいと思ったが、はっと思い出す。
けれど羞恥もあって、モジモジしながら顔を伏せた。
「え、えっと……そのお……キ、キスするとこ……撮ってもいいですか?」
「……………は?」
何を言われたのかわからないといった顔をされた。
当然でしょう。ええ、当然です。私だって恥ずかしいです。でも友人のためだと、手に持っていたビデオカメラを置いた。海雲さんは瞬きする。
「え、えっとですね……かえでんが今度……漫画でラブシーン……あ、少女漫画程度ですよ……を、描くらしいんですが、ドラマとか観ても……良い構図がないらしくて」
かえでんは去年、念願だった少女漫画家になり、先日デビュー作が雑誌に載った。それから次のお話も決まったそうなのですが、自分の描きたい構図の資料。つまるところキスの角度などがわからないと相談されたのです。
「つまり…………モデルか?」
「そ、そんなところです! 出来れば壁ドンとか、こめかみにキスとかも欲しいなって……」
疎いながらも理解してくれた旦那様に、ぱっと明るい顔を上げる。
どこか考え込む様子もありましたが『で、どうすればいい』と訊ねられ、ビデオカメラを起動させながら、かえでんメモを取り出した。辺りを見渡す。
「ええと、じゃあ……まずは壁ドンを……壁ドン、わかりますか?」
壁を指す私に、頷いた海雲さんは立ち上がる。
どこで覚えたんだろと、そろそろコミケのことがバレそうで震えてしまったのは内緒です。
カメラを構図の欲しい場所に置くと、私も壁の前に立った。瞬間、ドンっと、彼の右手が左壁を叩いた。端正な顔立ちも一緒に近付き……。
「きゃああああぁぁぁ!!!」
「な、なんだ!?」
突然の悲鳴に海雲さんは後退り、両手で顔を覆った私はその場にへたり込んだ。何も言わない私に恐る恐るといった声がかけられる。
「み、みき……?」
「いきなりなんてずるいですずるいです!」
「す、すまん……こういうのは急にした方がいいかと」
「そうですよ! 効果抜群ですよ!! 瀕死ですよ!!!」
普段マイペースな海雲さんのせいもありますが、攻められるのに私が慣れてなさすぎる。
かえでんの描く主人公は結構気が強いのに……もう、まきたんとお秘書さんにさせた方が良いですよ。妹、カモーん。
そんなことを思っていると、かえでんメモを読んだ海雲さんが頷いた。
「みき……立って、壁に背をつけろ」
「はい……っ!?」
素直に応じると、また大きな右手が左壁につけられ、海雲さんの顔が間近に迫る。真っ直ぐと見つめる目に魅入っている隙に顎を持ち上げられ、口付けられた。
「んっ……はあ」
それは一瞬で離れたが、頬に鼻に瞼に額にこめかみに小さなキスが落ちる。くすぐったくて身じろいでいると、耳元で囁かれた。
「みき……俺が好きか?」
「は……はい」
ぞくぞくするほど甘美な声に腰をくねらすと、くすくす笑う声が落ちる。
「なら、俺の服を脱がしてくれ……上だけで良い」
「う、上だけ……?」
つい聞き返してしまったが、かえでんメモに上半身裸の相手男に攻められると書いてあったのを思い出す。従うように上着をたくし上げると、脱がしやすいように上体を丸めてくれた。礼を言うように髪を撫で、肌着も脱がす。たくましい肉体が露になった。
「ふあああぁぁ……!」
いつも見ているのに、状況が違うだけで感嘆の息を零す。
それがおかしいのか、海雲さんは苦笑しながら両手を伸ばすと私を抱きしめた。頬に当たる胸板は硬い。でも暖かくて気持ち良くて幸せになれる。
「みきからもキス……していいぞ」
頭を撫でながら囁く声にピクリと身体が疼く。
特に下半身だった気がするが、今は違うと胸板にキスをする。ちゅっちゅっと啄むような小さなキスを何箇所にも落とし、胸の先端も……キスして、ちょっとだけ吸う。と、首筋に吸いつかれた。
「はふ……ん」
真似するように両手を彼の首に回すと吸いつく。次いで頬や耳にも口付けるが、目が合うと唇が塞がれた。
「んんぅ……」
「良い子だ……次は後ろから抱きしめてくれ……腰でいい」
両手を離すと、海雲さんは背中を向ける。
それが妙にドキドキして、震える手を腰に回して抱きしめた。まるで恋人の頃に戻ったような甘さに動悸を鳴らしながら、背中にもキスをする。
笑いながら振り向いた海雲さんは屈むと目を合わせ、頬を撫でた。
「どうした……欲情したような顔して」
「そ、そんなこと……あ」
否定するが、服越しに胸を揉まれただけでも身体はピクピク跳ねる。
それが焦らされているように思うのも、息が上がっているのも、下腹部が疼くのも、その先を知ってしまったせいかもしれない。少女の殻なんて当に引き剥がされてしまった私は震える口を開いた。
「……しい……です」
「ん……?」
胸とお尻を揉んでいた海雲さんの視線が私に移る。
その目に移る自分は発情した女そのもので、抗うことは出来ない欲情を言葉にした。
「海雲さんの全部……欲しい……です……」
「……良い子だ」
弧を描いた唇に口付けられると、抱き上げられる。
そのままベッドに押し倒され、服も下着も脱がされた。乳首は勃ち上がり、秘部からは蜜が溢れている。両足を屈曲させた海雲さんは股に顔を埋めると蜜を吸い、伸ばした両手で乳首を摘んではグニグニと弄りだした。
「は、ああ……ああぁ……気持ち良い……」
「これだけでか? ……淫乱になったな」
「んっ、海雲さんが……そうさせ……ああぁ」
「そうだったか?」
とぼけているが、蜜を吸う力も弄る手も強くなった。
膨れ上がる快楽にトドメをさすかのように、舌先で秘芽を突かれ、大きく身体が仰け反る。
「ぁあああっ!」
「イったか……」
一瞬世界が真っ白になると、楽しそうな声と顔が朧気に見える。
ピンピンに勃った乳首を舐めながらズボンを脱いだ海雲さんは、自身のモノを秘部に宛がった。それだけで身体はヒクつき、蜜を零す。
「俺の全部……だったな?」
顔を真っ赤にさせた私を見下ろす彼は意地悪な笑みを浮かべている。でも、食い込んでくる大きなモノに、私は頷いた。
「大きいのも……熱いのも……海雲さんの全部ください……大好きです」
両手を広げると、応えるように抱きしめられ、口付けを交わす。
同時に硬いモノが埋め込まれ、私を支配していく。
「あ、ああ……おっきいの……ナカに……んん」
「っ、もう……動かすぞ」
「あ、あああぁぁ!」
全部入る前に腰を動かされ、容赦なく最奥を突き上げられた。
激しい快楽に襲われるが、まだダメだと、まだ突いてもらいたい欲が勝り、浅ましくねだる。
「んあ、あぁあっ……もっと……もっとシてくださ……深いとこで出してぇ……」
「っ、やっぱり……淫らになったな」
「あ、ああ、ああああぁぁ!!!」
腰を持ち上げられると、繋がりが深くなる。
そのまま抜き挿ししながら子宮を突いていた肉棒から熱いモノが、私を溺らせる大好きな人の愛が心も身体も満たした──。
ちなみに、カメラには映っていませんでしたが、バッチリと声は入ってたようで、かえでんが可愛い湯でダコさんになってしまいました。
新年からごめんね────。