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​モん!

シェル
   番外編14*「双子の日曜日」

*第三者視点です

*「姉の恋人秘書とボク」のニ人(まきと寺置)も登場しますが、途中みきと海雲になります

 今日は至って普通の日曜日。

 デパートもクリスマスが近いせいか華やかに彩られ、多くの家族連れで賑わっている。そんな笑顔で溢れているはずの群衆の中で、不釣り合いな顔をした男達がいた。

 

「…………おい、寺置」

「しっ、移動しましたよ」

 

 呆れた様子で声をかけたのは、前髪を下ろしている私服の藤色 海雲。

 そんな彼の声を遮った寺置 守もまた私服だが、仕事以上に真剣な目をしている。人混みを盾に追う先には、似た背格好をした小さな背中が二つ。

 

 一人は腰まである長い漆黒の天パに、ベレー帽を被り、ロングスカートを履いた海雲の嫁、みき。

 一人は同じ天パは肩まで。オレンジのマフラーを巻き、もこもこのロングコートを着た寺置の嫁、まき。

 仲良しな双子姉妹は手を繋ぎ、楽しそうに喋っては目に入った店で立ち止まっていた。その度に寺置と海雲も立ち止まり、数メートル先から様子を伺う。

 

「まきたんもたまにはスカート履いたら?」

「ヤダ。寒い」

「私のロングスカート、あったかいよ」

「みっちゃん様、もう一声!」

「お前……何がしたいんだ」

 

 口は“へ”の字でも、みきのロングスカートを握るまきはぽっと頬を赤める。その様子に壁際から顔を覗かせている寺置は握り拳を作るが、海雲は今日何度目になるかわからない問いを呟いた。

 

 はじまりは昨夜のこと。

 みきから妹と二人で買い物に行きたいから明日子供をお願い出来ないかと頼まれた海雲は二つ返事で引き受けた。直後、寺置から『明日、嫁の真相を掴むため、子を預ける』とメールが入り、クエッションしか浮かばなかったため電話。

 なぜか義母に子供達を預かってもらい、密偵……嫁のストーカー化していた。

 

「……どう見てもただの買い物だろ。何を心配してるんだ?」

 

 フードコートで注文待ちしている二人を見ていた海雲に、寺置は自販機で買ったコーラを手渡す。礼を言った海雲はプルタブを上げるが、振ってあったのか、勢いよく炭酸が噴き出した。

 顔面泡だらけになった男をスルーした寺置は缶コーヒーに口をつける。

 

「いつもなら程々気にはしないんですが、頼み方がいつもと違ったので何かあるのではと」

「頼み方?」

「『行っていいですか』が、ツンと照れたものじゃなくて土下座だった」

 

 ハンカチで顔を拭く海雲の手が止まった。同時に不審な目を向けるが、注文品を受け取った姉妹がキョロキョロと席を探しているのに気付く。長身の二人は向こうが空いていると指すが、内密だったことを思い出し、互いに腹を殴った。

 痛み分けのように大の男二人が蹲っていることなど知らず、席を見つけた姉妹は話しはじめる。

 

「ハピーセットのおもちゃって今『妖怪チッチ』なんだね。まきたん、ココマさんいる?」

「なんで良い大人が……まあ、りまが好きだから貰うけど」

 

 付属のおもちゃを受け取るまきの頬はどこか赤い。立ち上がった寺置は眼鏡を上げながら溜め息をついた。

 

「好きなのはりまじゃなくてまきでしょうに……」

「そうなのか? みきが『よーでる体操』してるアニメのキャラだろ?」

 

 サブカルチャーに疎い海雲が珍しく話題アニメに乗っかる。柱に背を預けた寺置は頷くと、おもちゃを鞄に仕舞うまきを見つめた。

 

「本人は隠してるつもりでしょうが、明らかにココマさんが映ってる時と映ってない時とでは姿勢が違います」

「姿勢?」

「ココマさんが映った時は正座になる」

 

 眉を顰めた男に海雲は黙る。その顔は『とてもわかりやすい』と言っているようにも見えた。そんな旦那達を他所に、ポテトを食べる嫁達の会話内容が変わる。

 

「姉さん、今年も年末年始は東京?」

「うん、海雲さんの実家。でも向こうの都合でニ日に行くことになってるんだ」

「え、コミケは?」

「ん~……無理かなあって。だから本はしょうちんに頼もうと思って。あ、なっちゃんのプレゼントどうしよう」

「なっちゃんって、数年前マンホールに墜ちて行方不明になった友達だっけ?」

「そうそ。いつか帰ってきた時に渡そうと思って。女の子好きだからやっぱり百合系かな」

 

 さほど大きくはない二人の会話は、賑やかな休憩場では掻き消されるはずだが、数メートル先の席に着いた旦那達にはハッキリと届いていた。向かい合ったまま天井を見上げていた二人は目を合わせる。

 

「………………戦場で百合が売られてるのか?」

「マンホールって私達のサイズでも墜ちますかね?」

 

 チョイスした言葉の違いに沈黙が漂う。

 しかし顔つきが真剣だったのと容姿端麗が合わさったのか、二人組の若い女性達が声をかけてきた。頬を朱に染めた女性達に男達は目だけ向けると同時に左手を見せる。その薬指から効果抜群の光が放たれるように、みきの爛漫な声も聞こえてきた。

 

「だから今年はお秘書さんの誕生日も一緒に祝えるよ。その前にクリスマスだけど……中々決まらないね」

「そもそもあの二人、好きな物がなさすぎるんだよ」

「やっぱり本人に選んでもらった方がいいのかな……プレゼント」

 

 花が散ったようにしゅんと声を落としたみきに、男達は石像のように固まった。

 特に海雲は訝しい目つきで寺置を見据えるが、逆光で眼鏡の奥にある表情が読めない。そんな男の愚痴が背後から零れた。

 

「特にウチのは無趣味に等しいから困るんだよ。聞いてもアレだし……」

「アレ……ああ、まきたんが欲しっぐ!」

 

 前屈みになって姉の口を両手で塞いだまきの顔は真っ赤。寺置は密かにOKサインを出していた。モガモガと口を動かすみきから手を離したまきは大きな溜め息をつく。

 

「もうクリスマスまで外に出れる日ないし、今日中に決めないとマズいよね……あんまり遅くなっても怒られるし」

「お秘書さん過保護だからね~。もうビビッときた物を即買いするしかないよ」

 

 会話内容から、どうやら姉妹はクリスマスプレゼントを買いにきたようだ。しかも旦那達の。無言の彼らを他所に、ジュースを持ったみきが苦笑しながら立ち上がる。次いで立ち上がったまきもジュースを飲みながら頷いた。

 

「姉さんはいいよね。変なの買ってもお義兄さん優しいから」

「お秘書さんも笑って終わるでしょ?」

「終わるけど、夜がねちっこくなる。すっごいねちっこくなる。ゴ●ホイホイ並に」

「あ~……捕まったが最後だよ。諦めよっだ!」

 

 後ろから姉の脚を蹴ったまきとは反対に寺置は頷く。

 海雲は呆れるしかなかったが、ゴミを捨て、ベレー帽を被るみきを捉える。

 

「でもね、最近海雲さんも意地悪だから、私も慎重に選ばないと後が怖いかも」

「意地悪?」

「うん、ちょっと俺様になるからドキドキしてね……」

 

 話しながら思い出してしまったのか、みきの頬が簡単に朱色に染まる。ゴミを捨てているまきは気付かないまま話を続けた。

 

「あのお義兄さんがね……まあ、いつもと違う調子で来られるとそうかもね。なに、俺様のお義兄さん嫌いなの?」

「う、ううん! 嫌いじゃないよ俺様海雲さん!! ば、爆死するかもしれないけど嬉しいもん!!!」

 

 両手で握り拳を作ったみきは顔を真っ赤にしたまま宣言する。

 その大きな声に周りは驚いたように凝視し、海雲は両手で顔を覆った。ゲシゲシと寺置が足を蹴っていると、熱が移ったように顔を真っ赤にしたまきが慌てて姉の手を取る。

 

「もう、恥ずかしいこと言わないでよ!」

「ま、まきたんだってお秘書さんが俺様になっても嫌いにならないでしょ!?」

「あいつは元から俺様で腹黒なの! これ以上酷くなっても受け止めれるのはボクだけだから良いの!! ……あ」

 

 必死なみきにつられるようにまきも声を荒げてしまったが、口走ってしまった内容にピタリと止まる。姉以上の視線が集中し、その顔は真っ赤。口も金魚のようにパクパクさせている。そんな妹の頭を撫でたみきは手を引っ張るように人混みから離れて行った。

 

「良い嫁に巡り逢えたな……寺置」

 

 どよめきが起こる休憩場で、海雲はポツリと向かいに座る腐れ縁に呟く。片手で顔を覆う寺置は反対の手で三本の指を立てた。

 

「一、今から二人と合流する。ニ、今すぐヤる。三、拉致って犯す」

「四、俺達は帰る」

 

 指折りしていた寺置に溜め息をついた海雲は立ち上がる。

 口元は変わらず結ばれているが、頬が緩んでいるようにも見えた。その様子に寺置も一息つくと立ち上がり、メールを打つ。数分後、海雲の携帯に『お秘書さんから二人で飲んできなさいってきたんですけど、遅くなってもいいですか?』というメールが届き、隣の男に目を移す。

 いつもと変わらないように見えたが、長い縁から読み取ったのか、了承の返信を送った。

 

「俺達も……飲んで帰るか?」

「こんな昼間っから飲むわけないでしょ。素直に瑞希様のとこに戻って父親しますよ」

「…………明日は雪か」

「りまに『ママのサンタミニスカコスが見たい』を言わせる練習をします」

「…………お前、本当に離婚されるぞ」

 

 並んだまま外に出た海雲は白い息よりも重い息を吐いた。

 それでも暖かな日差しと晴れ渡った空に二人は自然と笑みを零す。早く会いたい、抱きしめたい。でも、今日は少しだけ待つことにした。

 

 可愛い嫁姉妹が変わらず想ってくれていることを知ったから──。

 

 

* * *

 

 

 日を跨ぐ少し前。

 ガッチャンと玄関が開閉される音に、ソファに寝転がって読書していた海雲が起き上がる。しばらくしてリビングのドアが開いた。

 

「ただいまで~す!」

 

 子供が寝ているからか、いつもより声を落としたみきが入って来た。が、その頬はほんのり赤く、上機嫌にも見える。ベレー帽と一緒に、鞄や荷物を置いたみきは真っ直ぐ海雲に抱きついた。

 

「お帰り……楽しかったか?」

「はい、久々にまきたんと飲みました! ありがとうございました!!」

 

 スッポリと胸板に埋まって嬉しそうに頬を擦る彼女に海雲も頭を撫でると、笑顔のみきは軽く唇にキスをした。

 面を食らったように海雲は目を丸くするが、直ぐ笑みを浮かべると軽くではない、唇すべてを覆う口付けを返す。上、下唇を舐め、歯列を割って口内に舌が挿し込まれると、みきも舌を伸ばし絡めた。

「んっ……あ、ん」

「ん……酒の味だが……甘いな」

 

 アルコールの味がするが、伝わるのは甘味。

 何度も舌を行き来させ唇を重ねている内に、その甘さが濃厚になる。焚き付けるかのような甘美に、海雲は口付けたままロングスカートの中に手を入れた。

 

「ひゃあ!」

 

 慌てて唇を離したみきはスカート越しに海雲の手を押さえる。

 両手だったのもあり、ピタリと止まってくれたが、ほっとしたのも束の間。首元に顔を埋めた海雲が舌先で首筋をなぞっただけで簡単に両手の力が緩くなった。その隙に止めていた手を進められ、股を撫でられる。

 

「あっ、あ……」

「徐々に濡れてきたな……義妹とこういう話はしなかったのか?」

「こういうの……って、ひゃんっ」

「こういうの……だ」

 

 ショーツ越しに秘芽を指で突かれてはナカに押し込まれると、次第に染みてくるものがあった。それを恥ずかしがるようにみきは目を瞑る。

 

「そ、そんなの……話せないですよ……恥ずかしい」

「そうか……」

 

 どこか残念がってるようにも聞こえる声にみきは小首を傾げる。

 けれどロングスカートを捲き上げられ、ショーツも下ろされては、疑問を問うことも出来なかった。そればかりか両脚を広げさせた海雲は股に顔を埋める。いっそう羞恥に襲われたみきは次いでやってくる刺激に備えるように両手で顔を隠した。

 

 だが、やってきた刺激はヌプリと浅く蜜口に挿し込まれた指。

 予想していたものではなかったことにみきは少し呆気に取られたが、抜き差しされる度に鳴る水音と一緒に腰を浮き上がらせた。

 

「あっ、ああ……ひゃっ」

「出てきたな……酒とは違う蜜が」

「ゃあ……!」

 

 両脚を掴んだ海雲はくすりと笑う。

 その目にはちょっとした刺激でも零した愛液が映り、咄嗟にみきは身体をよじらせた。だが直ぐに腰を抱いた海雲は、まじまじと愛液を零す秘部。そして、顔を真っ赤にした嫁に目を移す。

 

「何年経っても……初々しい反応して……可愛いな」

「ひゃうっ!」

 

 艶めかしい声と微笑だけでもみきは早く達したくなってしまう。

 その願いを叶えるように再び股に顔を埋めた海雲は、くちゅりと音を立てながら秘芽を舐めた。

 

「ああっ!」

 

 指とは違う舌先は速度を速め、零した愛液も、零れてくる愛液も吸い取っていく。刺激と快楽に襲われるみきは小刻みに身体を揺らしながら、ただ喘ぐしかない。

 気付けば腰を抱く手とは反対の手がみきの上着に潜り込み、引っ張ったブラから零れた胸の先端を摘んだ。

 

「ひゃあ……」

「尖ってるな……イきそうか?」

「ひゃ、あ、ああっ!」

 

 見上げる目さえ気付かないみきは涙を落とす。

 だがそれは嫌なのではなく、気持ち良いからこその涙だと海雲は知っていた。乱れた彼女がもっとと言うように、舌先で蜜口を嬲りながら太い指を勢いよく挿し込んだ。

 

「っああぁぁ!」

 

 火花が散ったように絶頂を迎えたみきは天井を仰ぎ、そのままぐったりとソファに倒れる。びしょびしょに濡れた手を舐める海雲に、みきは息を荒げながら口を開いた。

 

「海雲さ……ん、いつもより……意地悪です」

「そっちが好みじゃなかったのか?」

「え……ん!」

 

 目を丸くするみきに口付けが落ちた。

 数度繰り返している内に上着が捲くられ、両手で乳房を揉みしだかれる。既に両先端は尖り、クリクリと捏ねられるだけでみきは腰をひくつかせた。唇から首筋にキスを落とした海雲は赤く実った先端に吸いつく。

 

「あ、ああぁ……」

「みき……クリスマスプレゼントは何がいい?」

「は……んんっ!」

 

 突然のことに、みきは何を言われたかわからなかった。胸の先端を甘噛みされ吸われれば尚のこと。だが、吸い落とした先端を舐めながら再度問われた。

 

「クリスマスプレゼントだ」

「プレゼント……んー……」

「勝手に選んでいいのか?」

 

 反対の胸を舐めながら間を空けることなく訊ねる彼に考えていたみきは頷く。

 

「海雲さんが選んでくれた物ならなんでもいいですよ……」

 

 えへへと、はにかんだように笑う。

 そんな彼女を横目に海雲は荷物と一緒に置かれたデパートの袋に目を移した。既に買われたであろう自分のプレゼントに。中身を考えるだけでも頬が緩むと、みきをうつ伏せにさせた。そのまま腰を上げ、脚を開かせれば達した愛液がポタポタと落ちてくる。

 何も騒がないみきに海雲は口元に弧を描くと愛液を舐めた。

 

「あっ……!」

「わかった……ペンギン以外を考えておこう」

「え……ペンギンが一番嬉……なんでもないです」

 

 振り向いたみきは、不敵な笑みを見たような気がして直ぐ顔を戻した。

 その様子に一息つきながら海雲はズボンを下ろす。そしてみきの腰を持つと、零れる愛液の入り口に大きく張りつめたモノを宛がった。それだけで息を漏らすみきの頬を、海雲は後ろから撫でる。

 

「ともかく今は……いなかった分を埋めてもらおうか」

「はい……──っっ!!!」

 

 互いに笑みを零すと同時に、待ちわびていたモノが押し入ってきた。

 何度も抽挿を繰り返し、息を乱し、覆い被さればうなじに吸いついたまま腰を突き動かされる。たった半日。それでも数時間傍にいて触れなかった分を取り戻すように、今夜もまた激しく求めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにクリスマス当日。

 海雲に贈られたのは口を“へ”の字にした青のテディ・ベア。

 みきに贈られたのは羽のついたピンクのテディ・ベア。

 

 同じ店のロゴと、意外と似た者夫婦であった────。

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