08話*「『綺麗』」
*寺置視点で進みます
理性など忘れ、総ての感情が渦巻く“俺”を止めることが出来ない。
ただ目の前で涙を浮かべながらも唇も舌も唾液も口内へと許す彼女が──欲しい。
「ん、はぅっ……ああっ!」
「まき……上を向くなって、んっ、言っただろ……」
「むっ、りぃぃ……ひゃっ!」
ゆっくりと降下する観覧車の中で荒い息を吐く声と淫らな音が響く。
まきは煩い手をネクタイで後ろで縛っているせいか身体を前のめりにし、俺は口付ける。同時に隔てる物がない秘部を指で擦るとすぐ身体が後ろへと戻った。
ちょっと擦るだけで感じるなんて本当に経験がないんだな。
嬉しく思いながらも腕を伸ばし、サラリとした髪の間を通って頭を固定すると下を向かせる。羞恥で頬を赤くし、潤んだ表情を見せるのは俺だけでいい……“上の連中”に見せちゃダメだ。
* * *
まさかこんな簡単にタガが緩むとは思いませんでした。
せっかく初日はキスマークだけで、大量にお酒を飲んで抑制していたのに送ってくださるなんて。しかも一人称が“ボク”と知った驚きとツンデレ具合に始終“萌え”について考え込んでしまいましたよ。内緒ですが。
そしてキスも……したのに、舌を口内まで入れることは出来ず残念。
ひとつひとつが可愛いというか、男性経験はないなとは思いましたが啼き方が全然違うので是非ベッドの上で……ふふふ、このまま仕事ではなかったら本当にお持ち帰りでしたね。
翌日は観光とイタズラがてら彼女の職場へと足を向けたのですが、途中で海雲様とみっちゃん様の両思い記念にお赤飯を購入。しかし、徐々に日が沈むに連れて見えてくる星空に感動するなんて年寄りくさいですね。
そしてまき様の反応は予想以上でイタズラは成功。ココアをくださったりと根は本当にお優しい……が、“恋愛”に鈍いのは姉妹ですね。
それでも“デート”を“遊び”と認識された時は苛立ちから手を出してしまった。昨日付けた花弁の上にまた痕を残し、手を肌へと這わせ、片手だけでもマシュマロのような胸の柔らかさと、甘い声に完全にタガが外れようとした。が、まさか社長の電話で止められるとは。どうしてくれよう。
メルアド交換をし、無理や……約束を取り付けました。
さすがに手を出した事に私もマズかったかと思いましたが、まさかの“デート”服でキスしてしまいましたよ。それで余計機嫌を損ねたかと適当にクレープを買ったのですが…………今度イチゴで釣ってみましょう。
その後はちゃんと“デート”と認識してくださり、私も久々に“素”で楽しみました。そしてシチュエーション良く観覧車で終えようと思いましたのに……なんでしょうね、このちびップルは。
まきが異常に怯えているようにも見え、何やらかしてんだコラと少し苛めてやった。それでも、まきから普段聞かない“私”を使われ、急激に寂しくなったのは私らしくもない。
止めるよう言ったが……逆に“俺”を指摘されるとは思わなかった。
何度か緩んでいたことに気付かれたのか女の勘なのか、果てには『綺麗な瞳』って……ああ、やっぱり“まき”が欲しい──。
* * *
──と、ここ数日を思い出していると頭突きされた。
生まれてはじめてですよとニッコリ笑顔を向けると、潤んだ目をしながらも元気に睨まれる。
「ほ~ど~けっきゃん!」
「ふふふ、まだまだ余裕ですね」
また面白い声が出たなと思いながら秘部に指を一本入れる。その中は神聖な域のように全部入らず驚いた。
「キッツ……」
「あぁあん……何すん……あぁっ」
“ズブズブ”と指が奥に入る音と“ぐちゅっぐちゅっ”と愛液が溢れてくるのを聞き、股の間に顔を埋める。頭上からは当然まきの悲鳴と『バカバカ』連呼が聞こえるがスルーだ。
綺麗な秘部からクッキリと割れ目が覗けるが、愛液が溢れ出しているのを間近で見てしまい、舌で“くちゅり”と音を出すように舐めた。
「ひゃあうっ……!」
ザラッとした舌の刺激が強すぎたのか、身じろぐ身体を押さえるように片手は腰に、片手は縛っている手を捕らえ“味見”を再開する。まきの声は徐々に甘さを増し、愛液がいっそう溢れ出す。
「……あ……っ……はぁ……んっあぁ」
溢れる愛液を狂ったかのように舌で舐めて味わい尽くす。
充分な愛液に本当は今すぐにでも欲望を挿し込んでやりたい。服も総て脱ぎ去り、純潔の証を散らしたい。だが“上”で呆然と観賞するヤツらに、まきの素肌を見せることはしたくないし時間もない。
愛液を堪能し終えると顔を上げ、既に達しそうなまきを嬉しそうに見ながら口付けた。
「んっ……はぅ、あ……」
「勢いがなくなったな……どうした、もうイきそうか?」
「イ……く……って……」
『なんだよ』って聞こえてきそうだったが、その声を待たず指を最奥へと突き刺した。
「ひゃああああぁぁああっーーーーーーー!!!」
大きく官能的な声を響かせるのと同時に愛液が手の平に溢れ、抜いて舐める。まきはぐったりと俺の肩に顔を埋め、荒い息を吐いているが、構わず耳朶を甘噛みすると囁いた。
「好きだよ──俺のまき……」
囁きに『ビクッ!』と身体が揺れ、くすくす笑う。
対して“上の連中”に不適な笑みを見せると、連中は顔を青褪めた。
眼鏡を掛け直し、ネクタイを解く。
彼女のショーツとレギンスも戻し、愛液を拭き終えると丁度下へと着いた。自分のコートをまきに羽織らせ、片腕で抱き上げたまま荷物を持って降りる。周囲は驚いた様子で見ているが、気にすることはない。
ショーツでも買ってやるかと考えていると後ろに乗っていたちびっプルが追い駆けてきた。あ、ちなみに私、キライな人間の名前は呼ばないようしていますので悪しからず。
「ちょっと……貴方なんなのよ……」
「何、とはなんでしょう」
微笑みはキープし、ニ人に向き合う。
おやおや顔色が悪いですねとくすくす笑っていると、怒りからか今度は顔を真っ赤にして叫ばれた。
「そんななんの取り得もなさそうなちび女になんでそこま……っ!」
「今……何か言ったか……?」
“仮面”は上手く被っていようと思っていたのに困った女だ。
被り直さないといけないだろうが今はいいと、先ほどと同じように不適な笑みを見せる。
「まきの全部は俺のだ。それ以上関わってくんなよ、てめーら」
「っ!」
吐き出すように言うと歩きだす。
すると、男の方が『なんだよ……あの殺し屋みたいな冷てぇ瞳は』と呟くのが聞こえた。そう、俺の瞳はそんな瞳だ。だから『綺麗』なんてなかった……まきだけだ。
嬉しさを込めるように、彼女の頬に小さなキスを落とした────。