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​番外編7*ぼくの家族

いちご

*最終話から数年後のお話。~~~~*=視点変わります

 いつもはない、目覚ましの音がひびく。

 ぼんやりと目を開け、顔を横にむけると、やわらかい肌に顔がうまった。パジャマボタンが数個開いた胸の谷間だとわかり、顔を上げる。ぼくを抱きしめたまま寝ているのは──母さん。

 

 カーテンの間から太陽が入りこむが、じゃっかん寒い。

 タオルケットだけでは寒かった母さんが温かさを求め、ぼくを抱きしめているのだとは思います。が……これはマズいです。ベッドサイドに置かれた目覚ましを止めたいが動けず、母さんもまったく起きない。

 

 すると、ドアが開いた。

 現れたのは白のシャツに黒のズボンとスリッパをはき、メガネの奥と口元に笑みを浮かべる──父さん。

 

「おはようございます、紫苑(しおん)」

「おはよう……ございます」

 

 寝たフリを決め込んでいたのに先手を打たれ、あいさつを返す。

 部屋に入ってきた父さんが目覚ましを止めてくれるかと思ったが、持ったままベッドの前でかがむと母さんの耳元で鳴らし続けた。悪魔がいる。ぼくにはガマンしろってことですね。

 

 さすがにうるさかったのか、母さんの目が半分開いた。

 ぼくの頭にあごを置くと、笑顔の父さんを見上げる。

 

「まき、朝ですよ~」

「…………………………うっさい!!!」

 

 ベッドのすみに置いてあった羊のぬいぐるみ(中)を投げた。

 父さんの顔面にヒットした羊は静かに床に落ち、目覚まし音が止まる。それを止めた父さんはとびっきりの笑顔になった。とてもこわいぼくとはちがい、母さんは気にすることなく寝直した。

 

 すると、ぼくを抱きしめていた手が父さんの手によって解かれると、ドアを指される。すぐさま部屋から脱出したぼくはドアを閉めた。直後。

 

『ひゃあああぁぁぁーーーーンン!!!』

 

 母さんのひめいがひびくが回れ右。

 朝のこうれいだと、生まれて五年もたてばわかります。

 

 手洗いをすませ着替えると、毛先がはねた肩までのかみをといてリビングに入る。と、走ってきた小さな体に体当たりを受けた。でも、よろけるだけで、すぐ頭をなでる。

 

「りま、おはようございます」

「にんに、おはよ~」

 

 お腹あたりで顔をうめていた妹“りま”は笑みを向けた。

 ぼくよりは母さんの天パが強い髪の毛を左右上で結んだ笑顔の妹は、ぼくを引っぱる。

 

「にんに~マんマは~?」

「母さんなら『おっまえ、毎朝毎朝いい加減にしろってーーーーっっ!!!』

 

 勢いよく聞こえた声と同時に大きな物音がひびく。

 これはまた羽実うみの家までひびいたかもしれませんねと、ため息をついていると、母さんが部屋から出てきた。きれいな天パは肩下まであり、まゆを上げていたが、ぼくとりまを見ると顔を赤くする。それから目をそらしたが、抱きしめてくれた。

 

「マんマ~おはよ~!」

「うん、おはよ……見っともない姿でごめん……」

「いえ、別に……父さんは?」

 

 パジャマの上はボタンが全部開けられていて、ズボンはなく下着の母さん。気にせず父さんのことを聞いたが、余計にまゆが上がり、失敗したと気づく。

 

「あんな魔王知らん! 毎朝毎朝嫌がらせしやがって!! 姉さん家(隣)

に家出してやる!!!」

「はあ……じゃあ、みっちゃん姉さんに言「わなくて結構ですよ」

「ぴいっ!!!」

「わっ!」

「ぴゃ~」

「今からママを“良い子”にさせれば阻止出来ますからね」

 

 すぐ後ろにいた父さんに、三人とも抱きしめられる。

 身長がある父さんはよゆうです。けれど、すぐ怒りの母さんに追いかけられ寝室に入っていった。が、魔王(父さん)のワナだったらしく、数分後、母さんはぐったりと父さんに抱っこされて現れた。

 

 いつものことです。

 

 

* * *

 

 

「しーちゃん家、いつもケンカしてるけど大丈夫?」

「ケンカじゃなくて遊んでるだけですよ」

 

 こかげの下で青のぼうしをかぶっている羽実こと“藤色 羽実”と一緒に、ようち園のすな場で大きな四角の台を作る。

 

 羽実は同じマンションに住むおとなりさん。

 お母さんは母さんの双子の姉、みっちゃん姉さん。お父さんは父さんの会社の社長をしている海雲おにい様で、いわば親せきです。

 

 りまのような天パのかみは左右で三つ編みにされ、表情は父さんやみっちゃん姉さんにソックリなニコニコ笑顔。

 ぼくと同じ年で、ようち園もクラスも同じ。あ、りまはまだニ才なので、仕事の父さんと母さんに代わり、みっちゃん姉さんに預かってもらってます。ぼくも母さんの仕事が終わるまではおじゃましているのがにっかです。

 

 台を作り終わると、その上に小さな山を三つ作る。

 すると今朝のさわぎのことを聞かれたので、父さんの言っていたことをそのまま伝えた。

 

「母さんはすなおじゃないので“良い子”にさせる遊びをしているんだそうです」

「ホントに良い子になるの?」

 

 首をかしげ、台の下で指を動かす羽実にぼくはうなずく。

 今日も白はたを上げてましたからね。なんでか『こしが痛い……』と言ってるので関節技かもしれません。それは痛い。

 

 納得しながら手を洗うとスコップを持ち、先たんで台にもようを入れる。そこで今朝のげんかんの事を思い出し、羽実にたずねた。

 

「海雲おにい様って仕事に出る時、みっちゃん姉さんとキスしますか?」

「うん、ほっぺにするよ。ママいつもテレテレ」

「……口は?」

「口チューって、そんなにする?」

 

 何度も目をパチパチさせる羽実に、ぼくは沈黙。

 いえ、母さんみたいにいつも口をへの字にしている海雲おにい様のキスもおどろきですけど、口ってしないんですか?

 ウチ、今朝もいろんなとこにしてましたよ。しかも口だと何分も何度もして、母さんにけられてました……とは、なぜか言えない。

 

 考えていると先生の呼ぶ声が聞こえ、周りのみんなはクラスにもどって行く。でもぼくはもうちょっとと手を動かすと、道具を片付ける羽実が笑顔を向けた。

 

「でも、ホントまもちゃんはまきちゃん大好きだよね」

「まあ……否定はしませんね。母さんをイジメるのを生きがいにしていそうですから」

 

 実際りまが『パんパしゅき~』と言ったら笑顔で『来世で好きになってあげますね』って返事してますからね。らいせって……と、母さんとニ人ぼう然とするほど、父さんは母さんを愛しているのだと思います。

 

 まあ、ぼくとりまにも優しい父さん(たまにウソつきですが)なので、一番じゃなくてもいいんですが、母さんはどうなんでしょう。本当に父さんのこと愛しているんでしょうか。

 悩んでいる間に作っていた物が完成し、スコップをバケツに入れる。先生がおどろいた顔でソレを見た。

 

「し、紫苑くん、羽実ちゃん……これは!」

「「お城」」

 

 ぼくがスコップの先でまどやドア、三つの屋根にはもようを入れ、羽実が指で木やお花を周りにかいた“お城”。先生がぼう然としているが、道具が入ったバケツを羽実と一緒に持って歩き出す。

 

「“ふうふ”になるには、コブタさんがドキューンとうった相手じゃないとダメなんだよね!」

「え、半日ぼれした相手じゃないんですか?」

「ん~……でも、大好きな人どうしならだいじょうぶだよ。だってママが大好きな人との愛がいっぱいで生まれたのがうみだって言ってたもん」

 

 笑顔を向ける羽実に、ぼくは目を丸くした。

 考えてみればそうですよね。毎日『あんなヤツ!』って怒ってる母さんですが、父さんがおそい時はソワソワウロウロしてますし……“すなおじゃない”と言っていた父さんを信じるなら照れかくしというヤツでしょうか。

 

 そんな照れかくしが母さんの父さんへの愛だというなら不思議と納得できる。いつもの賑やかさこそ、ぼくの家族だと。

 

 そんな両親の血を持つぼくも将来、母さんのような人を好きになるんでしょうか──。

 

 

~~~~*~~~~*~~~~*~~~~

 

 

「みっちゃん様は素敵なことを仰いますね」

「どこがだ! おかげで紫苑に『母さんは父さん大好きですよね?』って真顔で聞かれっん……んあっ」

 

 紫苑とりまを寝かし付け、ゆっくりしていたボク。

 だが、ソファに座る上半身裸男に手招きされ捕まってしまった。気付けば寝転がった彼の上に四つん這いで跨り、パジャマボタンが数個開けられ、ブラもしていない胸元に舌を這わされている。

 既にズボンもショーツも脱がされ、膣内に入った指によって水音を鳴らしていた。

 

「で、まきはなんて答えたんですか?」

「誰が教えるか……ああぁ……ちょ、ダメ……」

「ホント頑固で素直じゃない奥さんですね。仕事も辞めないし」

「旦那が……こんなんだからだろ……あんっん」

 

 結婚して寿退職を責められたボクだったが、パートになってやった。

 動いてないと落ち着かない30%、姉さんに申し訳ないけど70%、魔王に反発してやる100%。

 

「まさかのMAX200ですか」

「成長したボクをなめる……ひゃんっ、こらあ……」

「ふふふ、そうですね。ご褒美に成長して出来たミルクを舐めてあげましょう。あ、名前を呼ばない罰で吸いも付け足しときますよ」

「変な変換するあぁんっ、ああっ」

 

 真下で笑みを浮かべた魔……守は膣内から指を抜くと、外した眼鏡をテーブルに置く。両手で乳房を揉みながら摘まれると先端から白い液体、母乳が零れだした。

 りまが卒乳して一年は経つが刺激を受けると飛び散り、守の肌に落ちると先端に吸い付かれる。

 

「んっ、脳内で呼んでも……意味ないぞ」

「エスパーかあぁぁん……あっ」

 

 ツッコミの声も吸った先端を舌でイジられるせいで喘ぎに変わる。

 反対の先端も舐めては吸い、転がされ、段々と気持ち良さに酔いはじめてきた。息も荒くなれば秘部からは愛液が零れる。そんな蜜を指で絡ませた守は、胸の先端を口で引っ張ってから離した。

 

「あぁんっ!」

「ふふふ、ミルクを垂らしながら物欲しそうな顔を向けるまきはそそるな……けど」

「んんっ……あっ、ちょっ!」

 

 口付けを受けると、口内がミルクの甘さに変わる。が、すぐに離れた彼は上体を起こし、場所を反転。今度はボクが見上げることになり、引き締まった身体をペチペチ叩く。と、胸板がボクを押し潰すように密着した。重い。

 

「何っ! 殺す気!?」

「柔道技のひとつ、縦四方固です」

「父さん……いろんなワザ知ってますね」

「ふぎゅっ!?」

 

 突然聞こえた別の声に叩いていた手を止める。

 ソロリと視線だけ移すと、開かれた扉の前に目をしばしばさせた紫苑がいた。

 

 見られたのだろうかと動悸が激しくなるが、見た目は守ニ世の紫苑は気にすることなく冷蔵庫を開くとコーヒー牛乳を取り出す。コップに注ぐと砂糖をニ杯入れた。それに呆れているのは守。

 

「紫苑……それはやめなさいと言っているでしょ」

「父さん、メガネしてないのにみえるんですか?」

「いえ、視えてませんが冷蔵庫の音がすれば想像はつきます」

「甘いのは正義だっ「まき、ちょっと黙っとけ」

 

 甘々好きとして抗議したが、硬い胸板に押し潰される。

 文句言ってやろうかと思ったが、ちゃんと父親らしく注意する声にやめた。この人が父親って大丈夫だろうかと不安だったが、ボクと同じように紫苑もりまも大事にしてくれている。それは紛れもない親子。

 

 それが嬉しくて胸板に頬ずりすると、顔を覗かせた守は笑みを向けた。そのまま片手でボクの秘部を撫でる。

 

「ぷぎ「ところで、紫苑。まきに『母さんは父さん大好きですよね』と聞いたそうですが、そのお答えはなんでした?」

「えっと「しおーん! 言うな言うな!!」

 

 奇声の塞ぎは感謝するが、その回答を聞かせるわけにはいかない。

 撫でる手にも負けず叫ぶと紫苑は沈黙。甘々コーヒーを飲み干し、コップを洗い終えるとドアへ向かった。

 

「こら、紫苑。回答がまだですよ」

「言うな言うな! お前はママの味方だろ!!」

「…………………………父さん、母さんから直接聞いた方がうれしいと思います。では、おやすみなさい」

 

 長い沈黙の後、超早口でまくしたてた息子は頭を下げるとリビングのドアを閉じた。逃げたな。

 紫苑は姉さんの家にいることが多いせいか、姉さんの絵描き力と海雲お義兄さんの沈黙力を装備している。写メで見せてもらった砂の城を作る才能なんてボクと魔王にはないからな。勘の良さはボク似だが。

 

「まきの口を割らせる才能なら私はありますよ」

「あっ、ちょっ!」

 

 紫苑が出て行ったことで、撫でていただけの指が膣内に入った。肩に顔を埋めた守は耳朶を舐め、その音と一緒に囁く。

 

「で……なんて答えたんだ……まき?」

「んっ……あん、いつも言ってる……こと、んっ」

「あっ……」

 

 守の身体が一瞬跳ねたのは、ボクを潰している胸板の乳首を舐めたから。同時にズボン越しに大きくなったモノを擦った。小さな呻きを漏らす守も膣内に入れている指を素早く動かし、愛液を零させる。

 

「ああぁ……っ」

「ほら、まき……入れてほしければ言え」

「やぁ……あ、ああ」

「……仕方ありませんね。では、ゴム付けて挿入しましょう」

「っ!!?」

 

 その言葉に舐めていた舌を止め、笑みを浮かべる男を見上げる。

 妊娠してからはさすがにキスぐらいだったけど、安定期入ってからこいつの我慢が保たずヤった。『お前かよ!』なんてツッコミはスルーされ、初の避妊具で挿入。したけど、ゴムは変な感じでボクは……そんな好きじゃない。ナマを知ってるせいかもしんないけど……けど。

 

 膣内から指を抜き、上体を起こした守は戸惑い沈黙するボクを楽しそうに見下ろす。と、律儀にポケットに入れていた避妊具を見せる。愛液が太腿を濡らしていく。

 

「さ、まき……どうする?」

「っっ~~~~もうっバカ! 好きです愛してます!! じゃなきゃ一緒いませ──んっ!?」

 

 白状すると唇を塞がれ、何度も口付けを受ける。

 舌が口内の奥まで入り込み、唾液も流す。避妊具を床に捨てた守はズボンのチャックを開くと、勃起した肉棒を取り出した。秘部から垂れだす愛液を先端で擦りながら、嬉しそうに言う。

 

「んっ……反発しながらも素直になるまきが……俺も大好きだ」

「一言余けッあああぁぁーーーー……っっ!!!」

 

 熱くて硬い肉棒が挿入され、身体が悦びに変わる。

 喘ぎも流す汗も受ける口付けも吸われる胸も支配されるナカも全部ただ一人、愛する人のためだけのもの。

 

 その愛情が姉さんが言うように紫苑とりまをくれたのなら、本当にボクは守が好きなんだと思う──。

 

 

~~~~*~~~~*~~~~*~~~~

 

 

 翌朝目覚めると、母さんに抱きしめられていた。

 でも全身筋肉痛だと泣きながら『魔王め』『アホンタコナス』『モビルスーツ』と、わけのわからないことを言い、やってきた父さんにかいがいしく世話をされる。

 

 やはり父さんがキライなのかと海雲おにい様に聞くと『義妹はツンデレらしいからな……』と言われ、ツンデレの意味を問う。今度はみっちゃん姉さんが『お秘書さんがイチゴを吊らして、まきたんが釣れた時のこと』と言われた。

 

 みっちゃん姉さん、わかりません────。

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