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いちご

​番外編5*私とみっちゃん様

*「番外編4*ボクとお兄さん」の寺置視点

 家族連れが賑わうデパートで恋人まき──の双子の姉、みき様こと、みっちゃん様と買い出しです。残念。

 同じ綺麗な天パは腰下まであり、ムッスリがデフォルトのまきとは一八十度違う百点満点笑顔。まきでも見たいような見たくないような彼女は堅物ヘタレ上司、海雲様の恋人です。

 ニ人のおかげでまきと逢えたので何も言いませんけどね。

 

 守備隊と言う名の料理出来ませんまきと海雲は辻森家で留守番。

 めえめえ泣いていそうな羊に早く餌を持っていかねばと、お肉をかごへ入れると、みっちゃん様が元気よく訊ねてきた。

 

「まきたんのどこを好きになったんですか?」

「突っ掛かってくるところとツンデレなところです」

「お~、ツンデレ好きだったんですか~」

「まき様限定ですけどね」

 

 恥ずかしがり屋なまきは何も話してないようで興味津々に聞かれる。取り合えず×××な事を省き、病院後やデートの話をしながら野菜売り場に移った。

 

「でも、デレにさせるの難しくないですか? 私が言うのもなんですが、まきたんいっつもムッスリ顔ですよ」

「そのデレをどう出すかが私の腕の見せ所です」

「おお~! さすが“ドS変態腹黒鬼畜俺様魔王”さんは違いますね!!」

 

 満面笑顔の私達とは反対に、周りが静まり返った。おや、なんでしょうね。この子、今なにか素敵な呪文を唱えませんでしたか?

 ともかく……と、彼女の頭に手を乗せると思いっ切り髪を掻き混ぜた。

 

「わわわわわわ!」

「困ったお子様ですね。学校で習ってきたんですか? いけませんね~」

「おおおおお秘書さん! 私は子供じゃあああ!!」

 

 “お秘書さん”と言うのは、あだ名を付けるのが好きなみっちゃん様に付けられたもの。まんまですが、同じ顔で名前を呼ばれるよりは良かったと今では思います。けれど、公の場で言ってはマズい言葉を吐いたので年上として叱っておきましょう。

 

 すると、慌てて野菜をかごに入れたみっちゃん様が私の背を押す。

 姉妹揃って察知が良いですねと感心しながら、ヒソヒソ話す奥様方に爽やか笑顔を向けた。頬を赤める奥様方を見ながら『イケメンさんですからね!』と呟くみっちゃん様に私も訊ねる。

 

「海雲様よりですか?」

「はい! 一位は海雲さんです!! お秘書さんはニ位です!!!」

「気持ち良いぐらいの即答ですが、中身が残念堅物優しさしかないドヘタレ海雲でも?」

「はいっ!!!」

 

 ドキッパリ言い切った彼女に足を止めると瞬きする。

 清清しいところも双子だと笑うと足を進め『本人目の前に……』と、顔を青褪めるみっちゃん様を余所に苺を手に取った。

 

「彼に負けるのは癪ですが、恋人なら仕方ないですね」

「す、すみません……」

「いいえ。ところで彼、ベッドの上でも真面目で優しいんでしょうか?」

「へ?」

 

 かごに入れるとレジへ向かうが、みっちゃん様は唸っている。まき様と違い×××な話を出来るかと思いましたが……。

 

「一緒に寝ると温かいです!」

「人肌ですからね。あ、一括でお願いします」

 

 的外れな回答に、笑顔でカードで支払う。

 そう言えばボケボケなお姉様だったと、まきがツッコミ性になったのがわかる。食材を抱え、駐車場へ向かう間も云々と唸っていた彼女でしたが、助手席に座ると突然顔を赤めて下を向いた。

 

 おや、やっと意味がわかったんでしょうかと笑いながら車を発進させる。いつも隣にいる子とは違いますが、ごにょごにょと口元を動かすのは同じで、躊躇いながらも話しはじめた。

 

「えっと……普段は優しいんですが……なんか……俺様な部分が……」

「おや、俺様海雲は嫌いですか?」

 

 そう言いながらも海雲が『俺様』というのに驚く。

 昔から無口で何かを命令する仕事以外では見せないあいつが……俺様海雲なら少しは歯応えあるだろうかと思ったが、いまさらあいつとやるより、まきを突いた方が面白い。

 想像で楽しんでいると、みっちゃん様は否定するように首を横に振る。

 

「い、いえ! 激しいってだけで……ギャップと言うか……お、お秘書さんもベッドだと俺様になるんですか!?」

「いえ、私はあまり変わらないですよ」

 

 アッサリ否定すると脱力された。

 ご期待に副えず申し訳ありませんが私は何も変わりませんよ。元々俺様ですから。

 そんな事など露知らず、気を取り直したお姉様に『ベッドの上のまきたんはどんな感じですか!?』と訊ねられる。赤信号で停まると、爽やか笑顔を向けた。

 

「全力で逃亡及び回避」

「へ?」

「を、繰り返して捕まります。無駄だとわかっていても止めないところが可愛いですよね」

 

 捕まることも気持ち良くなることも知ってるくせに、素直じゃないまきはいつも逃げる。けど捕まえた時に見せる表情は可愛いし“お仕置き”させるのも楽しい。

 今日も逃げるかなと青に変わった信号にアクセルを踏むと、顔を青褪めたみっちゃん様が慌てて口を挟んだ。

 

「や、優しくしてくださいね! 嫌だって言ったら止めてくださいね!! お秘書さん!!!」

 

 微笑んだまま私は何も言わない。

 今、何か私には縁遠い台詞が出ませんでした? いえ、これでも二十八年の間で一番優しくしてますよ。確かに過去何度かまきに『ダメ!』と言われましたけどね。ベッド上の話しで曖昧ですが。

 すると、運転中だというのに肩を揺らされた。

 

「まきたんはお秘書さんの恋人ですけど私の大事な妹ですからね! 海雲さんとは別ですからね!! 無理やりしたら怒りますよ!!!」

 

 声を荒げる彼女をほぼはじめて見たせいか目を丸くする。

 涙目がまきにも映り、“お義姉さん”にここまで言われるとさすがの俺もお手上げだ。敵なしとも言える俺だが、どうにも姉の方には弱いらしい。時と場合によるが。

 溜め息を吐くと小さく呟いた。

 

「……わかりました。努力はしましょう」

「お秘書さん……!」

「ただし」

 

 嬉しそうな笑みを浮かべたみっちゃん様に私も笑顔を返す。

 辻森家近くのパーキングに車を停め、シートベルトを外すと、容姿は似ているが特にドキドキしない姉に顔を近付けた。恋人と同じ引き攣った顔と冷や汗はさすがだと目を細めると、ヘタレな恋人を持つ彼女にも助言した。

 

「女性もヤりたい時は素直に言ったり攻めてくださいね」

 

 したい時は『したい』と言ってくれた方が別の意味で燃えますから。

 瞬きするみっちゃん様にくすくす笑いながら買い物袋を持つと、可愛い羊こと恋人の下へと急ぐ。仕方ないので今日は優しくしてあげましょうかね──。

 

 

 

 

 

 

 ──と、思ったのは間違いだった。

 不在の間に海雲と何かを話したらしく、いつもはツンツンなまきがなぜか素直で積極的だ。

 

 居間の壁に背を預けている俺に抱きつき、口付けを何度もするまきの口からは先ほどまで咥え吸っていた俺の精液の味がする。

 愛撫後なら自分からしてくれる事はあるが、俺はまだ何もしていない。なのに『フリーパス」と言っただけで触り舐め咥えた。そればかりか躊躇いもなくショーツを外すと、雄雄しい肉棒を自身の手で持ち──挿入。

 

「ちょっ……まき、あ゛あ゛ぁっ!」

「あああぁぁんんっ!!!」

 

 あまり膣内は濡れていなかったが、俺の方が充分濡れていたため滑るように挿った。抜かないよう抱き合い、上下に強く揺す振る。

 海雲と何を話したのか気になるが、気持ち良すぎる快楽に早くも限界が駆け上ってきた。

 

「はあ、んん……あぁ……んっ」

「んっ……あ、まき……ダメだ……出る……っ!」

「ああぁぁーーン!!!」

 

 持ち上げていた腰を勢いよく下ろすと、膣内で白液を噴出す。

 頭が真っ白になるのを振り切って額に頬に口付けると、虚ろな目をするまきが見えた。おい、待て。と、両乳首を摘む。

 

「ひゃあぁん!」

「勝手に意識を飛ばすな……」

「なんで……!?」

 

 瞬間、黒い笑みを浮かべた俺に、まきの顔が真っ青になった。

 満足したからイくと? このまま俺が守りに徹して終わると? 俺が優しいまま……終わると?

 繋がった部分をそろ~りと抜こうとするまきだったが、すぐ腰を落として貫く。

 

「ああ……あぁ、ぁっ!」

「ん……勝ち逃げは許さない……」

「か、勝ち逃げってんん!」

 

 気持ち良い刺激に持っていかれないよう服を脱ぎ、上半身裸になる。同時に眼鏡を外すと汗を流しながら満面の笑みを向けた。

 

 

「さ、次は俺が優しく優しく優しく激しくしてやろう」

「最後のいらないいいいぃぃいーーーーっ!!!」

 

 

 大絶叫をお見舞いするまきだったが、一応他にもカップルはいるので口付けで押さえた。それは『優しい』など欠片もない、貪るように舌を速く動かしては奥まで突き、口内を掻き混ぜる。

 喘ぎを漏らしながらまきは必死に離れようとするが、お尻を持ち上げるとまた身体を上下に揺すり、肉棒を入れたり出したりを繰り返す。

 

「んああ゛……っ、ひゃめ、ああぁっ!」

 

 みっちゃん様には『嫌だと言ったら止めて』と言われたが『ひゃめ』なのでセーフ。

 そんな自分ルールを勝手に作りながら唇を離すと肉棒を抜く。イった後の激しさにまきは胸板に倒れこんだが、身体を反転させ、後ろから抱きしめる。背中やうなじの汗を舐めるとくすぐったいのか、身じろぐまきの胸を揉みながら両乳首を引っ張った。

 

「ふぎゅぅっ!」

「ふふふ、お得意の変声が出たな」

 

 くすくす笑いながら乳房を中央に寄せたり下から揺らすと、まきは怒った顔を向ける。すかさず口付ければ『しまった!』といった顔に変わるが、口内には侵入せず、唇と唇を合わせるだけの口付け。呆気顔に微笑んだ。

 

「ふふふ、荒いのが来ると思ったか?」

「こ、コンニャ……あああぁん!」

 

 普段の眉を上げ、顔を真っ赤にさせる顔に悦びながら首元に吸い付く。赤い所有の証が出来ると片手を下腹部に潜らせ、愛液で濡れた秘部を指で擦る。

 

「あぁん……入れるなら……」

「“入れて”か? いいぞ……願い通り挿入(いれ)て……っ!」

「はあああぁぁーーーーんっ!!!」

 

 両太腿を持ち上げると挿入する。

 指を想像していたまきは大きな喘ぎと言う名の悲鳴を響かせたが、さすがにアパート内ではマズいかと抜き、前へ押し倒す。俯けでこたつ布団に頬を付け、荒い息を吐くまきは恨みの目を向けた。

 可愛くないですよと頬を突くが、開いた口で指を噛もうとしたので引っ込める。

 

「あ……んた……何、したいの……」

「先ほど言ったように“次は俺が激しく優しく激しく優しく”してあげようと」

「さっきとなんか違うよ! っああぁあっ!!」

 

 今度は親指から順に一本ずつ膣内へと入れては抜いていく。

 指を入れ替える度に丸く縮こまったまきのお尻が左右に揺れて可愛い。ついでに反対の人差し指で背中を上から下に下ろすと『ふんぎゃっ!』と小怪獣のような声と同時に上体を浮かすが、膣内の指の刺激にまた丸くなった……面白い。

 

「ひ、ひい加減にしてよっ!」

「ははは、バレました?」

 

 また同じ事をしようとした俺の手を叩いたまきは顔を真っ赤にして睨む。

 いや、それが可愛くて楽しいから何度もするんだろ。さすが、まきは飽きない。くすくす笑いながら不機嫌な恋人を後ろから抱きしめると耳元で囁く。

 

「ほら、今度こそ気持ち良く俺のでイかしてやるから」

「もうっ、何回挿入する気だよ……」

 

 半泣きで言うまきに苦笑しながら俯けのままお尻を突き出させる。

 零れる愛液を舐めれば卑猥な水音と一緒に嬌声が響き、我慢も優しくする理性も吹っ飛んだ。腰を持つと、肉棒の先端を宛てがう。

 

「ああぁ……ぁっ」

「んっ……何回するかって当然──俺が満足するまで」

「ちょ──っっ!!!」

 

 何度も挿入した膣内は充分に濡れ、俺の肉棒を簡単に受け入れた。

 だが擦り付けるなどして刺激を与えると、締め付ける無意識な行動に肉棒は膨れ上がり、快楽が駆け上る。

 

「まき……ナカ……出すぞ」

「あああぁぁ……あぁあんんんんっ!!!」

 

 奥深くまで挿し込むと、愛情と言う名の愛液を噴出す。

 溢れるモノが俺がまきをどれだけ愛しているかの証拠。だが、まだまだ愛を出し切れておらず、意識を飛ばしたまきに口付けると、舐めては撫でて挿入を繰り返す。

 

 結局はいつも通りの俺だった──。

 

 

* * *

 

 

「まあ、結局私達も人間ですから理性という名の本能に勝てるわけがありませんよね」

「お前が言うと説得力あるが、反省する気まったくないだろ」

「反省ってなんでしょう?」

 

 向かいに座っている海雲は酒を手に溜め息をつく。

 海雲の膝でスヤスヤ眠るみっちゃん様とは違い、私の膝には魂のない抜け殻まき。そこに買ってきた苺を取り出すと、見えない何かが喜んでいるような気がした。

 まきの口に苺を付けると、餌を求めるようにパクパク動き出す。

 

 笑みを浮かべながら、みっちゃん様が起きたら『努力はしました』と報告する事を決めた────。

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