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​番外編4*ボクとお兄さん

いちご

*最終話前の話で、まきと海雲の話ですが途中まきと寺置になります。まき攻めの回

「寺置さんの愛がすごく重いんです」

 

 真剣な眼差しを向かいに座る男性、姉の恋人である藤色のお兄さんに向ける。

 こたつでぬくぬくのはずの居間は静寂に包まれ、外から流れる『夕焼け小焼け』に合わせて日が沈みはじめた。

 

 今日、ボクら姉妹と藤色のお兄さん。そして寺置さんは休みで外出する予定だった。が、寒波にボクが敗北。そんなボクを気遣い、我が家でまったり人生ゲームなんぞして過ごしていると晩御飯の時間。

 けれど、人数分の材料がなかったため狩猟隊と言う名の料理出来ちゃいます姉さんと寺置さんが買出しに向かい、守備隊と言う名の料理なんざ出来ませんボクとお兄さんが留守番となった。

 

 そんなお兄さんは私服な上に、いつもはアップにしている前髪を下ろしていて別人だ。まあ、寺置さんも眼鏡を外すと別……いや、魔王だ。うん、間違えるとこだった。

 そんな恋人男を思い出し、顔が赤くなったり青くなってると、お兄さんが静かに口を開く。

 

「……重いって、どう言う意味で重いんだ?」

「えーと、所構わず色々……あっ! 色魔です!! エロ野郎って事です!!!」

 

 両手に作った拳で勢いよく机を叩くとカップが揺れる。

 熱くなりすぎたかと内心慌てたが、お兄さんは変わらない表情でコーヒーを飲む。

 

「寺置は……妹以外に今は興味ないから、色欲と言うよりは性欲魔だ」

「どっちも一緒ですから……と言うかあの人、昔そんなにしてたんですか?」

「まあ……来る者は拒まず、去る者は追わず……だったな」

「サイっテー」

 

 低い声に、お兄さんの肩が跳ねる。

 だが、脳内でヤツを蹴りまくっているボクのオーラを察したのか、慌てて手を横に振った。

 

「昔の話だ……それに、あいつが隣に許した女は妹だけだぞ」

「…………………………本当?」

 

 机に置いた両腕に顔を伏せたボクは視線だけ上げる。なぜかお兄さんは長い沈黙後に頷いた。なんだ、今の間……でもまあ、長く一緒にいたお兄さんが言うなら……う~。

 考えるだけで恥ずかしくなり、腕に顔を埋めたまま訊ねた。

 

「男の人って……すぐキスしたくなるもんなんですか……?」

「…………まあ、好きな女ならそうだろうな。俺もみきによくするし……妹は寺置にしたいと思わないのか?」

「思わなくはないですけど……一度するとしつこいんですよ」

「ああー…………」

 

 想像出来たのか、互いに大きな溜め息をつく。

 いや、ホント一度すると口付けどころかあれやこれやと別の事まで『お願いします』って笑顔で言うんだよ。それに従うボクが悪いのかもしれないけど……けど。

 

「所構わずするのは止めてくださいよ……」

「所構わず?」

「大勢の人がいるとことか……お兄さんも空港でしてたでしょ?」

「…………………………すまん」

 

 ジと目で見たせいか、深く頭を下げられてしまった。いや、そんなつもりはなかったんだけどね。ごめんなさいとボクも頭を下げる。しばし沈黙が続くと、お兄さんが口を開いた。

 

「なんて言うか……可愛いと思った瞬間に勝手に身体が動くんだ」

「可愛いって……あの姉に? どの部分で?」

「笑顔」

 

 姉さんの満面笑顔がドアップで出て来るが、引き戸のように閉めた。わからん。

 だが、お兄さんの頬が若干赤いため人それぞれなのだと頷くと『妹は寺置のどこが好きなんだ』と問われた。考え込むこと数分。

 

「さあ?」

「…………………………もう少し、愛してやってくれ」

 

 両手と一緒に首を傾げたボクに、お兄さんは大きな溜め息を吐いた。いや、急に言われても困るというか、寺置さんの好きなとこ好きなとこ……。

 

「気遣い上手なとこ?」

「俺には欠片も見せないな」

「その気遣い後に陥れるとこが嫌い」

「ホント、真っ黒なヤツですまん……」

 

 肩をガックシと落とすお兄さん。

 彼もまた、よくあの魔王と二十年以上一緒にいられたなと感心しながら同情する。同時に寺置さんと姉さんが同じ属性な気がして訊ねる。

 

「姉さんと一緒にいると疲れません?」

「……まあ、行動力ありすぎる点では心臓が幾つあっても足りないが……ベッドの上だと素直だしな」

「ベ、ベッドって……お兄さんも結構する……んですか?」

 

 物静かなお兄さんのまさか発言に慌てるが、普通に頷かれ顔が赤くなる。考えてみれば、しょちゅう姉さんの首にキスマー……!

 頭から湯気が出はじめるボクにお兄さんは首を傾げるが、話を続ける。

 

「けど……たまに小悪魔化するのが問題だな」

「小悪魔? それボ……私も寺置さんに言われた事ありますけど、どういう意味ですか?」

 

 まだ慣れていないせいか、一人称が“私”になるが、構わず首を傾げる。と、お兄さんは溜め息をついた。なんですかい!?

 

「いや……その辺は双子だと思ってな……小悪魔ってのは……まあ積極的って意味だ」

「ああ、受けだと思ったら攻めだったみたいな?」

 

 するっと出たボクとは違い、お兄さんは瞬きする。

 しまった、お兄さんはこのテの用語通じないんだったと慌てて首を横に振った。

 

「おおお男の人が女に負けちゃダメですよ! 寺置さんみたいに両方OKな人は別ですけど!!」

「あいつ、積極なのが好きなのか?」

 

 MSだからね!、とは、口が裂けても言えない。

 実際ボクがちょっと悪戯的な事をすると喜ぶから、Mっ気あると思う。お兄さんは頷きながら『あいつがな』と、信じられない様子でコーヒーを飲み干すと壁に背を預ける。上げた目と目が合った。

 

「まあ……あいつが何しても言いって言うならそれだけ妹が好きって意味だろ。愛情表現がデカイとは思うが、まあまあ受け止めてやってくれ」

「……お兄さんもファイト」

 

 なんとも言えない応援を互いにするのがなんだか可笑しくて笑った。

 そして、たまには文句言わず愛を受け入れようと思う。ほんのちょびっと──。

 

 

* * *

 

 

「まきた~ん~!!!」

「うわっ!!!」

 

 勢いよく飛びついて来たのは姉、みき。

 帰ってきて早々なぜか半泣きの姉に、後ろにいる男を睨む。寺置さんは苦笑しながら手を横に振ると姉さんが叫んだ。

 

「お秘書さんに優しくされて優しくしてね!」

「何アホなこと言ってんの?」

 

 意味がわからず冷たい視線やると、姉さんは黙った。

 優しくしたらダメな男だろと思っていると、藤色のお兄さんが立ち上がる。と、姉さんを手招きした。なんの疑いもなく彼の下へ向かった姉に、お兄さんは口付ける。

 

「ふゅっ!?」

 

 変な声が聞こえたが、ボクは呆然、寺置さんは変わらない笑みを向ける。ニ人の唇はすぐ離れ、姉さんの頭を撫でるお兄さんは何事もなかったようにボクを見た。

 

「妹……やっぱり無理のようだ」

「みたい……ですね」

 

 本当にしやがった……と呆れながら言うと、耳元で怪しい声。

 

「おや、海雲様となんのお話をされていたんですか。ま・き」

「ぴぃっ!!!」

 

 魔王=寺置さんの寒いブリザードに、姉以上に変な声を出すと、こたつへと身を隠す。温かいこたつの中で激しくなる動悸を抑えるが、ドアが閉まる音が聞こえた。姉さんとお兄さんが出て行ったのがわかる。

 同時に、ちょっこり出ていた頭を突かれた。

 

「まーきーさーまーでーてーきーてーくーだーさーい」

「なんだよっ、その新しい誘い方!」

「ふふふ、手法を変えないと飽きてしまわれるでしょ?」

 

 なんのこっちゃと顔半分を出すと、座り込む寺置さん。

 こたつの中に足を入れた彼の間にボクは挟まったが結構隙間は開いている。いつもならギッチリと挟みそうな男に違和感を覚え、視線を上げた。

 

「……何、どうしたの? 気持ち悪いんだけど……」

 

 微笑む彼の片脚に顎を乗せ、手で腹部を突くと頬を撫でられる。

 その気持ち良い手に普通は喜ぶところだが、今は『何!? 優しすぎて怖いっ!!!』だ。お前怪しいぞオーラが伝わったのか、くすくす笑う男は撫でる手を止めずに話す。

 

「いえ、みっちゃん様に『まきたんに優しくしてください』と言われたのでしてみようかなと」

「急激にされるのは怖いからヤメテクダサイ」

「おや、そんな事を言われると通常モードに戻ってしまいますよ……ねぇ?」

「うわわわわっ! それはダメっ!!」

「っと!」

 

 寒気に、俯けのまま彼の腰に腕を回す。

 この状態のまま通常に戻ったら間違いなく変な事をされる。が、この状況もだいぶん変だと気付く。なんと言ってもボクの顔は彼の股の間にあるわけで、モッコリとした大きなモノが……ね。

 

「自分から抱きつくなんて今日のまきは積極的ですね。海雲と何か話したのか?」

「べべべ別に! 姉さんが小悪魔とか寺置さんがMとか昔は散々女と遊んでた話し……あ」

「あいつ……」

 

 一言余計だったのか、撫でていた手が止まる。

 閉じたドアを見つめる彼の背景は黒い。慌てて背中を叩くと、モッコリした部分に頬ずりした。それが効いているのか『っぐ!』と頭上から呻きが漏れる。恥ずかしすぎる行為に顔は真っ赤になるが、股に顔を埋めたまま問う。

 

「今は……ボク以外と……しないよね?」

「心外だ。基本俺は女に触られるのは嫌いだぞ。言い寄って来るから痛~い事をして離したんだからな」

「ドSめ……」

「ふふふ、なんとでも。でも、まきだけはフリーパス」

 

 両手で顔を持ち上げられた先には甘い顔で見つめる男。心臓の音が速くなりながら聞き返した。

 

「フ、フリーパス……?」

「そ、何をしてもOK。キスも舐めるのも咬むのも──ここを触り咥えるのも」

 

 手を掴まれると、先ほどより大きくなっている部分に置かれる。

 次いでズボンチャックに手を持って行かれると『外して』の声。震える手で下ろすと、肉棒が露になった。見上げると、笑みを向けられる。

 

「どうぞ?」

 

 身体中が熱くなると『何しても言いって言うならそれだけ妹が好きって意味』と言ったお兄さんを思い出す。高鳴る動悸と疼く身体に、両手を肉棒に添えると顔を近付け──咥えた。

 

「っあぁ……」

「んっ……はふっ、ん……汁……出て……んん」

 

 奥まで咥えた肉棒を舌で舐めると白液が垂れだす。

 それをさらに舐め、呑み込むと、先ほどより荒い手がボクの頭や頬を撫でた。嬉しそうな声と一緒に。

 

「ふふふ、上手……もっと、ね」

「ん、はぅ……やっぱ……Mじゃ……ん、暑い……」

 

 こたつの中に半分入っているのと、彼に熱せられ暑くなった身体。

 咥えたままパーカーのジッパーを下ろし、インナー越しに肉棒を胸に挟むと、吸うのを再開した。

 

「あぁっ……なんでナマで……ん、してくれないんですか」

「何しても……んはぁ……いいんでしょ」

「ああー……小悪魔まきにお預けされた」

 

 手を額に当てて苦笑する彼に、ベタベタになった両手を伸ばす。

 その手で彼の上着ボタンを外すと、肉棒から口を離し、シャツを捲った彼の胸板に吸い付いた。そこまでされるのは予想外だったのか、珍しく慌てるのを感じ、今度は乳首に吸い付くと咬んだ。

 

「あ゛っ!」

「あ、ごめん……」

 

 咬んだ乳首を舐めながら両手を彼の首に回すと口付ける。

 自分の唾液と彼の白液を渡していると、彼の舌が挿し込まれ、後ろの頭を固定された。何度も交わしていた口付けを息を切らしながら離す。笑みを向けていた彼の表情は欲情しているかのように真剣で、心臓の音が増した。

 

「小悪魔まき降臨か……さすがに色々とマズいな」

「ボクの勝ち……?」

「いや、負ける気は俺もないんだが……」

「んじゃ、頑張る」

「え?」

 

 丸くなる目に構わず自分のズボンもショーツも下ろすと肉棒を手に取り、恐る恐る先端を秘部に近付けた。

 

「ちょっ……まき」

「優しくしてもらった礼に……ボクも優しく……しますっ!」

「あ゛ぁっ……!」

 

 自分から招き入れるという恥ずかしい感情は挿れるとすぐ消える。

 まだそんなに濡れていなかった自分の膣内を、トロトロに濡れた彼の肉棒が濡らしていく。その快楽に彼の首に腕を回すと、ボクの腰にも腕が回り、上下に揺す振られながら口付けられた。

 

「はあ、んん……あぁ……んっ」

「んっ……あ、まき……ダメだ……出る……っ!」

「ああぁぁーーン!!!」

 

 腰を勢いよく下ろされると、膣内で白液を噴出される。

 頭が真っ白になる同時に彼も壁に背を預け、荒い息を吐きながら額に頬に口付けていく。その気持ち良さに意識が飛びそうになるが、インナーもブラも捲られ露になった両乳首を摘まれた。

 

「ひゃあぁん!」

「勝手に意識を飛ばすな……」

「なんで……!?」

 

 顔を上げた先には──魔王の笑み。

 冷や汗が流れてくると繋がった箇所がジンジン痛みだす。そろ~りと抜こうとしたがまた下ろされ、奥まで貫かれた。

 

「ああ……あぁ、ぁっ!」

「ん……勝ち逃げは許さない……」

「か、勝ち逃げってんん!」

 

 肉棒の刺激に思考が揺れるが、上半身裸になった男に覚める。眼鏡を外した男は満面の笑みを向けた。

 

 

「さ、次は俺が優しく優しく優しく激しくしてやろう」

「最後のいらないいいいぃぃいーーーーっ!!!」

 

 

 やはりこいつに優しくするのも自分からするのも危険だと悟り、とーーーーーーても重ーーーーーーい愛を受け止めました。はい。

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