番外編3*拍手小話
*過去拍手のお礼に載せていたSS集です
*「カモん!」の、みきと海雲が登場しているのもあります
(狸の置物の間に猫がいる画像※掲載不可のため文字のみです)
まき*拍手ありがとう……って、なんで狸の置物!?
寺置*よく見てください。可愛い猫ちゃんが寝てるではありませんか
まき*あ、ホントだ……可愛い←猫に近付く
寺置*おやおや、可愛らしいのがもう一匹
まき*うっさい!
寺置*ふふふ、素直にさせるのが楽しみですね
まき*……なんか言った?
寺置*いえ何も。今後もじれったい「カモん!」と、我々「姉の恋人秘書とボク」をよろしくお願い致します
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*風邪なんか~まき編~*
おいおい、三十八度六分ってマジか……最悪だ。
せっかくの休みだっていうのにボク、辻森まきは風邪を引いた。
何か食べなきゃとは思うけど、ボク料理出来ないし、姉さんは藤色のお兄さんと会うって言っていないし……まあ、寝とけば治るか。
そう割り切って、ひとまずメールだけ送ると眠りについた。
* * *
「──ま」
声が聞こえる。
あれ、姉さん早いなー……と、思うも、殴りたくなる声とシルエットに違和感を覚えた。目を開くと、覗き込むように端正な顔を近付ける男。
「大丈夫ですか? まき様」
「……ぎぃやああああああああああああっっーーーーーー!!」
まさかの寺置さん登場に勢いよく起き上がるが、脳内は大混乱。
なんでいるんだよ! ここはボクの家だぞ!! どうやって入ってきた!!!
そんな思考を読み取ったように彼は笑顔で答える。
「みっちゃん様の横には海雲様がいて、必然的に私もいるものですよ。鍵はみっちゃん様から奪……お借りしました」
「今『奪った』って言っただあぅ~……」
殴りたいのに身体が動かず、パタリとお布団に沈む。
すると寺置さんはくすくす笑いながら毛布をかけ、枕元に飲み物を置いてくれた。それから部屋を出て行くが、台所で何かしている音が聞こえる。
いつもの意地悪がない優しさに調子が狂いながらも目を瞑った。
次に起こされた時に出てきたのは美味しそうな御粥──彼の背中を叩いた。
「痛っ」
「完璧人間か!」
彼はくすくす笑っているが、まさか料理できるとは……。
半端ない敗北感に食べるのを躊躇っていると、また端正な顔が近付いてきた。
「まき様、お辛いようなら食べさせてあげますよ。“あ~ん”と“口移し”どっちがいいですか?」
「自分で食べます!!!」
「おや、その選択肢は見当たりませんね」
「~~~~っっ!!!」
その後については語りたくない。
ひとつ言えるのは──風邪なんかもう引かないからなーーーーーーーー!!!、と、苺タルトを買って帰ってきた姉に枕を投げた。
ごめんよ、姉さん……。
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*風邪よりも~寺置編~*
おやおや、ふらふら心地良いと思ったら風邪でしたか。私の中に入ってくるなんて度胸ありますね、ホント。
仕事を海雲様に放り投げ(体温計見せたら黙りました)ホテルに戻って寝ることにした。目を覚ました時には夕刻になっていたが、最初よりはダルさもなく、何か食べようと起き上げる。
するとノック音。海雲だろうかとドアを開けると──
「なんで起きてんの!?」
「まき……様?」
まさかの登場に彼女のほっぺをつねったら足蹴りがきた。どうやら夢ではないようです、良かった。
しかし、海雲様からみっちゃん様に伝わったのだと思いますが、来て下さるとは思わず、内心驚きながら部屋に促す。
「それで、薬は飲んだ?」
「いえ、何か作ってからと思いまして」
「ホテルでも自炊してんの!?」
外食ばかりだと食生活が偏りますらね。お米も置いてあるんですよ。
そう笑顔で言うと、まき様は何かを考えるように黙り込んだ。首を傾げて数分、ポツリと彼女は呟く。
「じゃ……ボクがなんか作る……よ」
「え?」
「一応病人……だし……ほら、ベッドに戻った戻った」
そう頬を赤らめる姿は可愛く、もう少し堪能したかったのですが寝室に戻された。しかし、パタリとドアを閉められ気付く。そう言えば、みっちゃん様がお料理できるのは知ってますが、まき様はできるんでしょうか?
そんな疑問を浮かべたままベッドに寝転がって一時間。目の前に並んだのは──白御飯と味噌汁。
…………おや? ん?
内心戸惑う私とは反対に、まき様は『頑張った!』と誇らしい顔をしている。
えーと、褒めるべき……ですよね、多分。目の前に『褒める・文句を言う・とにかく食べる』の選択肢が見えるのは熱のせいでしょうか。ギャルゲーなどしたことないんですが。
そんな事を考えていると顔を顰められ、ゲームオーバーの雷が落ちた気がした。珍しく流れる冷や汗は風邪のせいだと願う横で彼女は呟く。
「物寂しいと言えば寂しいか……」
そう言いながらキッチンから持ってきたのは鰹節……ん?
すると味噌汁を白ご飯にぶっ掛け、鰹節を混ぜた。
「っ!?」
「はい、どうぞ!」
「あ、ありがとうございます……」
御粥っぽいと言えばぽいですが……これって猫まんま……ですよね。
その味はしょっぱいような甘い(?)ような味で、風邪よりもまき様の将来が不安になりました。
お前、もう俺の嫁にこい────。
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*お正月~まき&寺置~*
まき*2014年あけましておめでとうございます
寺置*昨年度はありがとうございました。本年はさらに彼女のツンデレを発揮させ、ぜひとも私の
まき*うおおおぉぉーーいっ! 何言ってんのさ!!
寺置*何って新年のご挨拶ですよ。本当は元旦の今日、重要なことがあったのですが……
まき*な、何? 深刻そうな顔してさ……
寺置*なのに本編がまだクリスマスも終わっていなくて……
まき*だだだだだだから何!?
寺置*早く本編しろ、と言う願いを込めながら、今年もよろしくお願い致します(ニッコリ)
まき*だからなんだよ~~~~っ!!!
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*カモん!&姉の恋人秘書とボク~Wデート~*
※第三者視点
寒い寒い。そんな冬が苦手な辻森みきとまき姉妹。
ある日の午後。ニ人はお揃いのコートにみきはスカート、まきは短パンに厚めのレギンスとブーツを履いている。それ+みきは毛糸帽子を被り、まきはオレンジのマフラーを巻き、アパートの駐車場で手を繋いでいた。
「寒いね~まきた~ん」
「じゃあ『デート』自体なくせばいいと思うんだ」
そう、ニ人は今日『デート』の約束をしているのだ。
何しろ自分らではないが、同じ会社に勤める男達も大概一緒にいる上、休みも同じ。必然的にWデートになる。
すると、見慣れた車がやってくるのが見え、手を振るみきの頭をまきが叩いた。停車した車から現れたのは、変わらず長身でイケメンの顔立ちにスーツを着た海雲と寺置。
「海雲さ~ん! おっはよう……こんにちは~!!」
「ああ……こんにちは」
「なんで今日もスーツなわけ?」
「午前中に急用が出来まして。あ、みっちゃん様、まき様と手を離してくださいね」
微笑みながら寺置は繋いでいたニ人の手をチョップで外す。
みきは悲鳴を上げ、まきは怒り、海雲は呆れていた。
近所のデパートに来た四人だったが、なぜか海雲、みき、まき、寺置の順で横並び。しかも全員が手を繋いで歩いていた。ツッコミを入れたのはまき。
「なんでこうなった!?」
「まき様がみっちゃん様と手を離せば良いと思います」
「みんなで繋いだ方が楽しいですよ~」
「みき……デパートで横並びは邪魔だと思うぞ」
「はっ! それもそうですね!! 縦になりましょう!!!」
海雲の後ろに回ったみきは、後ろに並び、手を前の人の肩に乗せるよう言った。
それにより出来た姿は──電車ごっこ。
周りの視線が刺さる。しかし、恥ずかしいと感じたのはニ人だけ。海雲の肩に届かないみきは背中を“ぎゅー”と抱きしめ楽しそうだ。海雲は頬が緩むが、まきがガックリと肩を落としているのが気になり、止めるよう言う。が、寺置が『嫌です』と即答した、
「いや……寺置には聞いてないんだが……大丈夫か、妹?」
「お、お兄さん……やっぱり優しいね……」
潤んだ目に『さすが双子、似ている』と、海雲は不覚にもドキリとしたが『さすが寺置、怖い』と冷徹な微笑みも見た。すると寺置はまきの肩を強く握り、彼女の耳元で囁いた。
「それ以上、海雲と喋ると──襲うぞ?」
「ぴっ!!?」
「うひゃあ! 何、まきたん!?」
背筋に悪寒がしたまきは、目先の姉に抱きつく。
それを見た寺置はみきに笑みを向けるが、珍しく危険と悟ったみきがまきを護るように庇い、まきも寺置を睨む。が、姉妹は冷や汗、足もカタカタ震えていた。
周りがハラハラと見ているのに気付いた海雲は溜め息をつくと、寺置を宥め、双子の頭を撫でた。
そしてWデートはやめようと誓った────。
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*カモん!&姉の恋人秘書とボク~節分~*
※第三者視点
今日はニ月三日。
夕暮れの公園に集まった辻森姉妹と海雲と寺置。みきはスーパーの袋から“ある物”を取り出した。
「じゃじゃ~ん! 豆まきセット~!!」
「するの!?」
「こ、このメンツ……でか?」
「まあ、もう夕方ですし、子供に恥ずかしい大人と見られるか、大人に見て見ぬフリされるかですね」
どっちも嫌だなと海雲とまきは思うが、みきは『行事に恥ずかしいのなんてありませんよ~』と笑う。そんな彼女から溜め息混じりで豆を受け取った海雲とまき。そして配り終えたみきは後ろに下がって豆を構えた。
目の前には──寺置(鬼)。
「おかしくありません?」
「「「全然っ」」」
三人の声がハモり、寺置は溜め息をつく。
周りから見れば一人省かれ、三人が苛めているように見えるが、寺置はすぐ笑みを向けた。
「私に当てられるのならどう」
「お~! お秘書さん余裕ですね!!」
「はっら立つ~~!」
「同感……だ」
みきはともかく、残りニ人の背景は何やら黒い。
だが、目の前の男の方が……そんな空気は読めず、元気なみきが言った。
「鬼は~「コミケ、仕事、浮気」
が、遮った男の台詞に一同固まり、豆を落とす。
その隙に笑顔の寺置が三人に豆を当てた。
「そと~福は~うち~。はい、終了」
冷たい風が公園を包む。
覗き見していた方からすれば『何があった!!?』という惨事だ。一VS三だったのが形勢逆転。顔を青褪めた三人の脳内会話が聞こえる。
(かかか海雲さん、なんで止まったんですか!?)
(い、いや……ヤツに“仕事”と言われるとロクなもんがないせいか……)
(姉さんこそなんでコミケで止まるんだよ!?)
(いやああぁっ! まきたん言わないで!! まきたんこそ浮気って何!!?)
(はっ!? ボクが“仕事”で“浮気”は藤色のお兄さんのことじゃないの!!?)
(ちょっと待て妹。誤解を招くようなことは言わないでくれないか)
「御三方、楽しそうですね」
寺置は笑顔のまま残った豆を食べ、節分が終わった。
夜、恵方巻きを食べようとしたが、またしても寺置に乗せられ敗北。
豆を落とした時から、今年も彼にからかわれるのかと三人は膝を折った────。