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​番外編2*まき光臨

いちご

*最終話前の話で寺置視点からはじまり「***」で視点変わります

 ニ月にしては天気の良い日曜の正午過ぎ。

 洗濯物を干し終えると背伸びをし、網戸にした窓に目を向けた。

 

 その景色は海、レインボーブリッジ、観覧車。福岡とは違う景色に肩を落とす。久々の休みは嬉しいのですが、隣に可愛い羊がいないのは寂しいものですね。

 

 そんなことを思っていると彼女からの着信が響き渡る。

 珍事件に何かあったのかと急いで出るが、変わらない声が届いた。

 

『もっしもーし、起きてるー?』

「むしろ寝てるのはまき様でしょ。掛けてくるなんて雨になりますね」

『えぇ~。じゃ、降ったら寺置さんが雨乞い踊りしたって事で』

 

 いつもの不機嫌声と口調に笑いながらコーヒーを淹れる。まきは外にいるのか、雑音が酷い中、淡々と続けた。

 

『それでさー、聞きたいんだけど』

「なんですか?」

『ガン●ムの身長っていくつ?』

「は?」

『あ、初代ね』

 

 突然の質問に手が止まった。

 ガン●ムの身長って、なぜソレを俺に聞く。と言うよりなぜにガン●ム?

 しばし沈黙していると、まきの不満そうな声が届く。

 

『知らないなら知らないって言ってよ……人が多くて看板も見えないしさ』

「ちょ、ちょっと待てまき! 確かにガン●ムの身長は知らない……じゃなくて、お前どこにいる?」

 

 素に戻るほど混乱している脳内をなんとか整理するが、妙な違和感を覚える。そんな問いに返ってきたのは──

 

 

『お台場でガン●ム見てる』

 

 

* * *

 

 

 動悸が激しい。

 人で溢れているのに、笑い声や話し声よりも心臓の音がうるさく聞こえる。携帯を持つ手が緊張で震える。

 

 電話してどのくらい経ったかもわからなくなった頃、自由の女神像が見える場所で待っていると、見慣れた男が走ってくるのが見えた。手を小さく振ると、目の前で息を切らしながら屈んでいるのは──(一応)彼氏の寺置さん。

 

 はじめて見るネイビー色の眼鏡に内心喜んでいることを悟られないよう、久々に会う彼にゆっくりと口を開いた。

 

「ガン●ム、十八メートルだってさ」

「その……答えより……」

「うわっぷ!」

 

 立ち上がると同時に強く抱きしめられる。

 うおおおぉぉーーいっ! 大勢の前ではやめろって言ってるだろ!! 今日日曜ーーっっ!!!

 必死にジタバタと抵抗するが、動けば動くほど苦しくなり、観念するように動きを止めた。当然頬は赤いがまあ……久々だし。

 

 そんなボクは今日『東京』にやってきた。

 勤務表に連休があるのを見つけた姉さんが『お秘書さんのとこに行ってくれば?』と、近所に行くノリで提案。最初は躊躇ったが、ドッキリ降臨が多いヤツに一泡吹かせたくて決行。ついでに姉さんに習って連絡もなしで……来たが、はじめての東京に右往左往してしまい、失敗したと後悔もした。

 

 でも、サプライズは成功(?)みたいで良かったと頷いていると、身体が開放された。見上げた先には端正な顔があり──唇が重なる。

 

「っ!」

 

 周りが仰天の眼差しで見てるよ! 相変わらず場所考えない人だな!! しかも長い!!!

 けれど、久し振りの口付けに抵抗は弱く、口内が彼で満たされていく──が!

 

「却下!!!」

「っだ!!!」

 

 容赦なく足を踏むと、大勢の人がいるハズなのに沈黙が訪れた。

 

 

 羞恥な事をされたボクはムッスリ顔。だったが、お昼ご飯、そして苺のミルクロールケーキを奢ってもらった後は頬が緩んでいた。

 

 そんなボクとは違う笑みを浮かべるヤツに顔を逸らしたまま礼を言い、アクアシティ内などを回る。が、人酔いしてしまい、海浜公園の遊歩道を歩く事にした。

 寒い外に抵抗はあるものの、繋いでいる手は暖かい。

 

「つまり、海雲も一枚絡んでるって事ですか」

「じゃないとアンタが休みかなんてわかんないよ」

「まさか日帰りとか言いませんよね?」

「そんな強行出来んの何も考えない姉さんだけ。でも寺置さんは明日仕事でしょ? だから明日は観光でもして夕方の便で帰るよ」

 

 そう言いながら進むが、繋いだ手がやってこない。

 振り向けば、歩みを止めた男は顎に手を当て、何かを考えている様子。何さと首を傾げると、変わらない笑みが返された。

 

「いえ、泊まる所はどうしたのかなと思いまして」

 

 沈黙と共にボクの目が泳ぐ。

 手を離そうとするが、逆に引っ張られて抱きしめられた。耳元で甘く囁かれる。

 

「まき……?」

「っ!」

 

 慌てて離れようとするも抱き上げられ、ビーチに下りる。

 木陰にあるベンチに座るが、ボクは彼の膝の上に跨って座り、顔は静かな海ではなく笑顔の魔王を見ることとなった。

 ややややややヤバい! この状況とってもヤバイ!! ああっ、眼鏡外しやがった!!!

 冷や汗をかいていると、彼の顔が肩に埋まり、首元を舐められる。

 

「あぅっ!」

「ほら、言え……お前はどこに泊まるんだ?」

「う、っと……えっとおぉぉっ!」

 

 躊躇している間に、お尻に回った手が上着の中に潜る。

 肌を撫でながら上へと上った手はブラ越しに胸を揉んだ。彼の肩や頭を叩くが、くすくす笑うだけで、止めるどころかブラホックを外される。

 

「あっ! ちょっ、こんなとこで」

「素直に言わないまきが悪い。そろそろ日も沈みそうですし、声さえ落とせば問題ないですよ」

「えっ、もう日暮……んっ!」

 

 慌てて振り向くと、一瞬夕日が見えた。そう、一瞬。

 すぐ引き戻されると口付けられ、頭も固定された。角度を変える度に舌が口内をかき回し、彼とボクの唾液が行き来していく。あっという間に気持ち良くなってしまった。

 

「あん……んっ」

「んっ、久々で……蕩けるのが早いな……ん、ほら言え」

「あぅぅっ……んっ、はぁ……泊め……て……くださ……い」

「誰のとこに?」

 

 真っ赤になりながら言ったのに、意地悪魔王は笑みを浮かべたまま先を促す。

 だが、口付けされながら胸を揉みしだき、乳首を弄られていては言えるものも言えない。砂浜の色がオレンジ色に変わり冷たい風が吹くが、ボクは熱く荒く喘ぎを漏らす。

 すると唇が離れ、唾液が下唇から垂れたまま小さく口を開いた。

 

「て……寺置さん家に……泊めて……ください」

「はい、いいですよ」

 

 それはもう背景にキラキラが見えるほどの笑顔で頭を撫でられた。

 く、くっそ~~! やっぱホテル取れば良かった!! 姉さんの『お秘書さんに怒れるよ』に負けたボクがバカだった!!!

 脳内で大反省会をしていると、ズボンを下ろさ……!?

 

「な、何すんの!!?」

「何って、我慢出来なくなったので挿入します」

「こんなとこでバカかーーーーあぁっ!」

「声落として膝……上げろ」

 

 辺りもだいぶん暗くなった。

 でも、木陰に長いカーディガンを着ているとはいえ、日曜で人はまだいる。あり得ないと首を横に振るが、聞かない魔王はショーツも下ろした。垂れ出した愛液を指で絡ませながら、ボクの首元に赤い花弁を付けては舐める。刺激に声と愛液が止まらない。

 

「あんっ……あっぁぁあ」

「ほら、まき……上げて」

「う、ぅん……」

 

 思考が揺れはじめると、彼の両肩に手を置き、膝と腰をゆっくりと上げながら口付けた。彼の片方の手は乳首を弄り、片方は自身のズボンチャックを開く。雄雄しく先端を向けているモノを虚ろな目で見下ろすが、秘部を弄る指は出たり入ったりを繰り返す。

 

「入るなら……んっ、早くあぁっ」

「それは恥ずかしいからか? それとも早く入ってもらいたいのか?」

「そ、それ……自分だろ」

「大当たり」

 

 笑みを浮かべた魔王はボクの腰を落とし、肉棒で貫いた。

 

「ああぁあーーーーっ!!!」

「こらっ、まき……」

 

 久々の大きなモノに声を上げてしまい口で止められる。

 抜こうとしても彼の手が背中に回り揺す振られると、膣内で激しく動き回る肉棒に早くも意識が飛びそうだ。そんなボクとは違い、嬉しそうな声が聞こえた。

 

「ああぁ、気持ち良い……」

「あっ、ん……ああぁもう……ダあぁああっ!」

 

 一気に駆け上ってきた快楽に、早速真っ白世界にご案内──。

 

 

* * *

 

 

 意識を飛ばしたまきの頭が肩に乗る。

 必死に荒い息を整えながら彼女の背中を撫でるが、まだ肉棒を抜きたくない。が、さすがに冷えてきた。寒いの大嫌い羊にはキツいなと名残惜しくも抜く。

 

「ひゃぅっ!」

 

 小さな嬌声を聞き終えると荷物をどうしたか、下腹部を拭きながら聞き出す。か細い返答に眼鏡を掛けると、抱き上げたまま足を進めた。

 

 周りの目など気にしたことはない。

 むしろ未だ、まきが東京こっちに来てくれた事に驚き嬉しがっている。それもちゃんと俺の所に泊まると決めて。姉の方は海雲の“か”の字もなく、ネッカフェに泊まろうとしてたからな……まきはまともで良かった。

 

 コインロッカーから荷物を出すと駐車場へ向かい、眠るまきを助手席に座らせると額にキスを落とした。自分も運転席に座ると携帯と手帳を取り出し、慣れた指で電話を掛ける。数コール後、いつもの声が出た。

 

『なんだ、寺置』

「明日休みますね」

『は?』

 

 当然な反応をされたが、察したらしい海雲は溜め息をついた。

 

『……妹が来たか』

「そうなんですよ。可愛い羊を放牧はしてはおけないので、明日はお休みをいただきます」

『何をどうしてそうなる』

「知っておきながら休みにしなかったそちらが悪いです。今から明日のスケジュールを言うので頭に突っ込んで覚えろ。そして一人で行け」

『おいおい、ちょっと待て!』

 

 ギャーギャー何か言っているが、問答無用でスケジュールを言いながらまきの髪や頬を撫でる。サプライズは嬉しいですが、私相手は周りも固めてもらうよう言いつけておきましょう。

 たった数分で疲れた様子の海雲は『お前、覚えとけよ……』と捨て台詞を吐くが『はいはい』とスルー。電話を切ると車を出した。

 

 日が沈んだことで、レインボーブリッジがライトアップされる。

 はじめて訪れた彼女にも見せてあげたいとは思うが、マンションからも見えるし、また運動しながらでも良いですかね。

 小さな笑みを零すと、隣で眠る愛しい人の唇をなぞった。

 

 来てくださった分────たくさん愛してあげますよ。

 

 

* * *

 

 

 気付けば寺置さんの家だった。

 

 けれど玄関入ってすぐ口付けされては服を脱がされ、廊下で啼き、リビングで啼き、ちょいっと夜景を見て啼き、お風呂で啼き、ベッドで……………………もう絶対こいつんとこ行かなあああぁぁーーーーっ!!!

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