番外編21*ミ゛ャーッハロウィン
今日は十月三十一日。
何もない普通の平日。ないったらないっと豪語していたところにメールが届いた。帰りに○×公園に来ないと×××するぞという、悪魔からの脅迫が。
「何……この騒ぎ」
仕事終わりに向かった待ち合わせの公園。
顔を顰めるボクとは反対に周りは笑顔ではしゃいでいた。服装も会社や学校帰りのものではなく、魔女や悪魔や女装、なり~んと意味不明なコスプレと化している。
街もオレンジや黒色に染まり、カボチャ型の照明、コウモリやお化けのお菓子などが大々的に売られている。そう、何もないと思っていた今日はハロウィンだったのだ。
「ふふふ、やはりまきはこのテのイベントは嫌いですか」
聞き慣れた声に振り向くと寺置さんがいた。
が、いつものコートではなく、襟が立っている黒いマントを羽織っていた。眼鏡にも小さなコウモリがデコられ、完全にハロウィンを楽しんでる。
「そんな、下等物を見るような目をしなくても……」
的を射た視線を送ると苦笑された。
彼の言う通り、ボクはハロウィン……というより祭り=賑わう系が好きじゃない。冷めた性格をしているのもあるが、本来の趣旨と関係なく、ただ騒ぎたいだけなんじゃないかと嫌悪してしまうのだ。
「真面目な日本人の息抜きには必要だと思いますよ」
「便乗して悪ノリするヤツもいるだろ……アンタとかな!!!」
不満を漏らしている間にボクの頭には猫耳カチューシャ、お尻にはブローチピンで猫しっぽがくっつけられていた。『ミ゛ャーッ!』と怒るが、寺置さんは笑顔で肉球手袋をボクの両手にはめる。あ、あったかい……。
「ふふふ、可愛いですね」
「撮りまくるなーーーーっ!!!」
和んだのは数秒。
携帯カメラで連写しまくる男にまた『ミ゛ャーッ!』と叫びながら猫パンチを繰り返す。すると、ミニスカに胸も谷間がある魔女コスをした女の人達がやってきた。
「ねえねえ、ヴァンパイアお兄さん、一緒に撮らない?」
「すっごいカッコイイ! 血を吸われた~い!!」
黄色い悲鳴を上げながら頬を赤める魔女達にボクの毛が逆立つ。
自分が認知されていないのは今更なので気にしないが、見た目ヴァンパイア、中身ドがつくほどのS魔王をカッコイイと言うばかりか、血を吸われたいなど頭は大丈夫か。血だけじゃ終わらないぞと心配半分、面白くない半分で頬を膨らませる。
すると、背後から寺置さんに抱きしめられた。
「ちょっ!」
「申し訳ありませんが、露出魔女よりも不貞腐れ猫の方が可愛いくて美味しそうなのでお断りさせていただきます」
「誰のこと言っん!?」
反射で振り向くと、カプッと首筋に咬みつかれた。
息を呑む周りに構わず吸い続ける男に声が漏れそうになるが、手で口を塞がれると咬まれた箇所を舐められる。ビクリと反応した身体も嬌声も手で止められ、耳に柔らかな唇が触れた。
「思った通り……美味しい」
甘美な囁きに全身、特に下腹部が疼く。
ボクからは見えないが、魔女や他の女性達の顔も赤いことに、彼が微笑を浮かべているのがわかる。誰もが虜になり、光臨した魔王の笑みだと。
口を塞いでいた手が離れるとまた囁かれる。
「猫ちゃん……トリックオアトリート」
ボクにしか聞こえない要求に反転すると抱きつく。
回した腕を強めると、すぐそばにあった頬に頬を寄せ、羞恥など忘れて耳元で応えた。
「……ボクでいいなら……持ってけ魔王」
「……さすが、俺のまき──じゃ、いただこうか」
耳元で笑う声はくすぐったいが、吐息と頬はボクと同じように熱い。何より重なった目には欲情が見えた。また肩に顔を埋めた男は首へと歯を宛がう。
知らない誰かが選ばれるより、身を捧げるに決まっている──。
*
*
*
「っあ、待っ、ああ゛あ゛!!!」
「“みゃー”がいいです」
薄暗い車内で、くすくす笑う声と喘ぎが響く。
後部席に座る男の膝に乗るボクは猫耳と肉球手袋しか付けていない。つまり全裸。公園近くのパーキングに停めているため、人の気配がするだけで身体が強張ってしまう。
それを解くように肩に顔を埋めた寺置さんは吸いついた。
「ふああぁ……っ」
「“みゃー”?」
「ミ゛ャーッミ゛ャーッミ゛ャーッ!!!」
「っだだだ」
お望み通り猫語(?)、ついでに肉球手袋で頭を叩く。
吸血鬼コスのせいか身を捧げたせいか、首も肩も胸も吸われ、幾つもの赤い痕(キスマーク)が付いていた。痛みと快楽に息を荒げるが、片方の胸に吸い付かれると引っ張られる。
「あああぁぁン!」
「ん……美味しい。でも一番は“こっち”だろうな」
「ひゃっ!?」
刺激に身体が弓形に反ると、椅子に押し倒される。
屈曲された両脚を伝う蜜は彼のスボンにも付いていて、自分が零したのだと考えるだけで熱くなった。また零れてくる蜜を吸血鬼は吸い取っていく。
「ああっ、ああぁン……!」
「厭らしい猫ちゃんですね……こんなにたくさん溢れさせて……全部いただこうか」
妖美な笑みに恐れよりも歓喜に胸が高鳴る。
でんぐり返しするように両脚を肩辺りまで持ち上げられると、蜜を生み出す秘部をしゃぶられた。
「ああん、んううぅっ!」
熱い舌が秘芽を蜜を舐め、両手はビンビンに勃ち上がった胸を引っ張る。
すると、外していた猫しっぽを手に取った男は、あろうことかそれに蜜を絡めだした。
「みゃあぁ……!」
「ふふふ。はい、遊びモノ」
くすぐったさがなくなると、蜜に濡れた猫しっぽを渡される。
必死に頭を横に振るが、秘部を舐められると同時に口を開いてしまい、しっぽを咥えさせられた。
「ふゅんん!」
ザラザラした毛は美味しくないのに、頭を撫でられている内に自然としゃぶりだしていた。猫が美味しいおやつを貰ったかのように幸せ気分になるが、秘部を舐める舌が速くなってくると限界が駆け上ってきた。
「ああっ、ダメ……イっちゃンンっ!!!」
しっぽを離すと世界が真っ白に弾ける。
視界がボヤける中、大きく息を吸っては吐いてを繰り返すボクに構わず、吸血鬼は一滴も残すことなく舐め取っていく。小刻みに身体を浮かしながら両手を伸ばすと目が合った。
「トリック……オアトリート……」
掠れ掠れでも聞こえたのか、ふっと笑みを零した吸血鬼に腕を引っ張られる。自然と上体を起こされると柔らかな唇と唇が重なった。
自分の愛液が混じっていても“彼”というだけで嬉しくて何度もねだる。
「ふふふ、ツンツンだった猫ちゃんがデレてきましたね……」
「みゃー……」
「はいはい」
頬を膨らませると、肉球部分で頬を突く。
くすくす笑いながら抱き上げた吸血鬼はまた膝へと座らせようとするが、先に雄々しく勃起したモノが待っていた。顔を反らすと、首筋を吸われる。
「ああぁ……!」
「ご馳走していただいた分、俺も悦んでもらえるのを差し上げますよ。味は……自分で確かめろ」
「あ、あああぁぁあっっ!!!」
熱の篭った囁きと共に肉棒が挿入され、嬌声を零す。
抱きつけば深さも増し、激しく何度も突き上げられた。大きくて熱くて硬い。お菓子には程遠いのに、快楽という名の甘い海へと沈める。
美味しくて美味しくて病み付きになる不思議なモノ──。
「百なり均で鈴を買ってきましたので、また猫ちゃんしてください」
「お前がしろーーーーっっ!!!」
チリーンチリーンと鳴り響く鈴の音と怒声。
そこに甘さはないが、腹黒猫王様が登場するとなぜか甘くなる魔法が存在するとかしないとか────。