top of page

  ​番外編22*慰めの愛

いちご

*2017年年賀SS企画のものです

 また巡ってきた、一月一日。

 元旦? いいや、ドS変態腹黒鬼畜俺様魔王……もとい、旦那の誕生日。プレゼントは言うまでもなく『俺の命令は絶対券』。クリスマスの頃から生きてますようにと神頼みをするが、今年は頼む必要もなかった。

 

 

「そっか、守くんって勘当されてたんだっけ」

「勘当した、が、正しいけどね」

 

 元旦とは思えないほどゆったりとした時間が流れる午後。

 こたつに寝転がるボクとりまの隣では、紫苑が注いだお茶を母が受け取っている。ここは高校時代から結婚するまで住み続け、今は母が一人で暮らしている実家。

 いつもは一日を除いた日に帰省するが、今年は旦那がいないため年末から世話になっている。

 

 そう、いない。何がなんでも居そうな守がいない。

 勘当した実家から祖父が亡くなったと連絡があったからだ。

 

 両親に対しては何も思わない男だが、祖父には色々と世話になったらしく、弔問だけしてくると、ひとり東京に旅立った。会ったことのないボクが行くのも変だし『来なくていい』と頑なに言われたからだ。

 それから一週間。一週間。一週間経っても帰ってこない。あの魔王が。

 

「でも、メールは来るんでしょ?」

「きますね、一日一回。今日は『まきが嬉しそうな顔で私の「紫苑っ!!!」

 

 暴露する息子を慌てて止める。

 小首を傾げられるのは、息子からすれば普通のメールだったからだろう。だが、捉え方を変えれば顔から火が出るような内容で、顔が真っ赤になった。

 それだけで察したのか、紫苑にチョコレートを渡した母は溜め息をつく。

 

「そんだけ愛されてるなら電話ぐらいしてあげなさいよ 」

「うっ……!」

 

 鋭い指摘に顔を逸らしてしまうのは、自分から連絡したら負けだという癖が染みついているせいだ。今も昔もヤツに関しては意地っぱりになってしまう。

 

 どうしようもなくて、りまを抱きしめる。

 眠々だった娘は直ぐ寝息を零し、柔らかい頬に頬を寄せればとても心地良くなった。でも、やはり守とは違う。身体は休まるだろうが何か物足りない……欲求不満?

 

「んなわけ……っ!」

 

 つい声に出した時、着信音が鳴る。

 タイミングの良さに心臓が飛び出すかと思ったが『守、きまーす!』ではなく、海雲お義兄さんからだった。どこか残念に思いながら起き上がると耳にあてる。

 

「はい、もしもし」

『あ…………ああー……』

 

 ガッカリされたのは気のせいだろうか。

 新年の挨拶はメールで済んでいるのもあって疑問符を浮かべると、数秒の間を置いて、大きな溜め息が聞こえた。

 

『寺置と…………一緒じゃないんだな』

 

 静かで重い声が胸の奥まで届く。

 

 

* * *

 

 

 薄暗い中、僅かにカーテンの隙間から月明かりが差し込む。

 慣れているはずの足は躊躇うが、丸くなっている物体を見つけると意を決して跳びついた。

 

「っ!?」

 

 大きく揺れたベッドに、俯せで寝転がっていた男は驚いたように振り向く。

 眼鏡をしていない目がボクを捉えたのがわかると、サイドテーブルに手を伸ばしてライトをつけた。そしてまた背中に張りつき、文句を言う。

 

「お前さー、ボクが帰る連絡しなかったら怒るくせに、なんで自分はしないわけ」

「……俺だからだ」

「なんだよそれ、俺様め」

「ふふふ、いまさらだな」

 

 笑いながら、大きな手が膨らんだ頬を撫でる。

 でも、あまりあったかくないし、口調も素。何より部屋に入ってきた時点で気付かなかったことに考え事をしていたのがわかる。こいつが、守がボクをわかるように、ボクだってわかるのだ──落ち込んでいると。

 

「海雲に聞いたのか?」

「うん……昨日の便で帰ったって。なのにボクが電話に出たから驚いてた」

「まあ、普通なら携帯すら持たせないからな……で、言うことは?」

「あけましておめでとー」

「ふふふ、さすが俺のまき」

 

 抱き寄せられると唇が重なる。

 一週間振りのキスはどこか冷たいが、差し込まれた舌は熱い。一週間。たった一週間いなかっただけで蕩けてしまいそうになる。

 離れていく舌に舌を絡ませると、守の手が頭と腰に回った。

 

「ふっ、んん……」

「ふふふ、調教してきたかいがありましたかね」

「ちょ、調教!?」

 

 何いってんだと真っ赤にした顔を離す。

 でも、守の顔を見ると熱が冷め、両手を首に回した。そのまま頭を撫でる。

 

「……まき?」

「……お前にする気ないならこれでいい」

 

 肩に顔を埋めたまま呟くと、息を呑むような音が聞こえた。構わず頭を撫でるボクに守は一息吐く。

 

「相変わらず表情を読むのが得意だな」

「どうだろ……実家程度でお前が落ち込むとも思えないし」

「ふふふ、理解してるじゃないですか……どちからと言えば反省ですけどね。完膚なきまで潰せばよかったって」

「こっえー」

 

 くすくす笑う声に身じろぐが、黒い空気は感じない。

 よほど実家で何か言われ、騒動を起こさないよう我慢していたように思え、話題を変えた。

 

「そういや、今朝のメール何さ」

「え?『まきが嬉しそうな顔で私のイチゴをしゃぶってるのを想像してました』なんて、普通のことじゃないですか」

 

 一言一句間違わず言われ、ベシベシと頭を叩く。すると、耳元にくすりと笑う声が落ちてきた。

 

「訳せば『後ろ向きで跨いで俺のをしゃぶってください』だが」

 

 今の状況に置き換えての訳に、耳まで真っ赤になる。

 恐る恐る顔を上げれば、口角を上げている。意地悪で傲慢な俺様魔王降臨の笑みに顔を引き攣らせると、ゆっくりと唇が動いた。

 

「まき……命令」

「っっ~~~~!!!」

 

 耳元で言われたわけじゃないのに、お腹の奥がゾクゾクする。

 調教されたと思いたくない身体も気付けば彼に背を向けたまま跨り、布団を退けたズボンに手を伸ばしていた。

 

「まきもごろーんしてくださいね」

 

 子供に言うような口調だが、従うように胸板に寝転がり、自分で自分のズボンチャックを開く。くすくす笑いながらズボンもショーツも脱がした守は両手で太股を割り、秘部に顔を寄せた。

 同じように彼のモノを取り出したボクも顔を近付け、互いにペロリと舐める。たったそれだけなのにイってしまいそうな感覚に陥るが、ちゅくちゅくと音を鳴らしながら舐める守に意識が戻った。

 

「んっ、ん……まきの味だ」

 

 嬉しそうな声に身体は熱くなり、勝手に蜜が零れる。

 つられるように両手で握ったモノに口付けると、亀頭にしゃぶりついた。一瞬、守の腰が動いたが、気にせず喉元まで咥え込む。

 

「んっ、んん……!」

 

 守もまた舌を使って秘芽を押し込み、さらに指でナカを掻き回す。

 溜まっている蜜を掻き出すようにグニグニと執拗に嬲られる刺激に、肉棒を離してしまった。

 

「は、ああぁぁぁっ……!」

「声は出してくださいね……まきだって一番実感出来るんだから」

「実感って……ボクを幽霊かと思ってるのか!?」

「ふふふ、そうですね……わざわざ一人で帰ってきてくれるなんて素直なことするわけだだだだ!」

 

 失礼なと、大事なモノを噛んでやった。

 でもすぐチロチロ舐めると口から離し、守の方を向いて跨る。額に手を当てる男は恨みの目を向けているが、構わず肉棒を秘部に宛がった。躊躇いもなく亀頭を食い込ませたボクに、ちょっとだけ守の表情が変わる。気持ち良い時の表情に。

 

「これが一番……実感出来る……でしょ?」

 

 息を乱しながら問うボクは意地悪な笑みを浮かべる。

 守は目を見開いたが、すぐ同じ笑みを返した。それが合図のように腰を下ろす。

 

「あ、あああぁ……」

「ああ……まだわからないですね……これ、誰のナカだ?」

 

 汗を落としてるくせにと言うツッコミは飲み込み、腰を振りながら下ろしていく。次第に守の表情が崩れ、卑猥な水音と一緒に根元まで食い込ませた。

 

「挿っ……!?」

 

 全部挿入ったのも束の間。守が激しく腰を動かした。

 

「んあ、あああぁぁっ!」

「すみません、もうちょっと奥いいですか……ついでに胸もしゃぶらせてくれると誰なのかわかるんですが」

「こ、こんにゃ……あ、あっぁ!」

 

 腰を押さえられ、激しく揺さぶられる。

 肉棒はさらに大きく硬くなり、ボクのナカを広げていく。それでもまだ認めない男に、覚束ない手で上着と下着を捲くると、口に乳房を寄せた。

 開いた口からは舌が覗き、胸の先端を舐めると吸いつかれる。

 

「あぁ!」

「甘いですね……ああ、そう、この締めつけ具合は……」

「は、早く言ええぇ……」

 

 もったいぶりながら胸をしゃぶり、腰を揺らす男を睨みつける。

 くすくす笑う守は胸の先端に口付けると、勢いよく上体を起こした。ぎゅっと締めつけられると同時に深まった結合部から蜜と白液が溢れ、股を伝って落ちていくのも構わず口付けられる。

 舌先が口内掻き回し、ちゅっと音を鳴らして離れた。

 

「はい、奥様(まき)のナカですね」

 

 目先の微笑に呆気に取られる。けど、ジワリと目尻に何かが溜まると抱きついた。

 知っている暖かさ、匂い、声。何より、まだまだナカで大きくなるモノにボクもまた大好きな旦那だと、守だと実感する。背中や頭を優しく撫でながら押し倒されると、上着を脱いだ守が顔を覗かせた。

 

「思い出させてくれた分、たっぷりとお返しさせていただきますよ……覚悟はいいか?」

 

 甘美な声に熱が集まる、ナカが疼く。 

 何も恐れることはないと自分から口付けると『誕生日おめでとう』の呟きと共に、激しくも愛おしい夜がはじまった──。

 

 

 

 あれやこれやと調子を戻して命令をくだす男に、もう優しくしねぇとも誓ったが────。

/ 番外編 / 次

bottom of page