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​番外編20*キスシリーズ「唇」

いちご

*寺置視点

 時刻は当に0時を過ぎている。

 突然入った商談と食事が長引いたせいだと、マンションのエレベーター内で海雲の背中を蹴った。睨まれても満面笑顔を返せば黙り、恐る恐るといった様子で訊ねられる。

 

「お前……そんなに早く帰りたかったのか?」

「寝惚けてるのも好きですが、やはり不貞腐れた顔で出迎えられるのが良いですね」

 

 話が噛み合ってないように見えて理解している腐れ縁男は階に着くと真っ先に自宅へと姿を消した。内心褒めながら隣に住む私も鍵を開ける。

 玄関は真っ暗だが、リビングの明かりは点いており、もしやと期待しながら靴を脱ぐと、抜き足差し足でノブに手を掛けた。

 

「ただいま帰りましたー」

「……おかえりー」

 

 間延びした声に不機嫌声が返ってきた。

 リビングに入ると、クッションを抱えたまま体育座りでソファに寄り掛かっていたまきが振り向く。その表情は声と同じだが、構わず椅子に鞄を置くと上着を脱いだ。

 

「てっきりもう寝ているかと思いました。ご飯、ちゃんとみっちゃん様のとこで食べました?」

「お前、ボクを小学生と間違えてないか?」

「お風呂ひとりで入れました? 一緒に入ります?」

「帰って早々ケンカ売ってんの!?」

 

 解いたネクタイを置くと、元気に怒鳴るまきの元へ向かう。見下ろす笑顔に後退りされるが、別に視線を移した私は口角を上げた。

 

「テレビも付いていませんし、携帯も充電中……なんで起きていたんですか?」

 

 することがあったのならまだしも、それらしき物はない。何より三度の飯より睡眠を取るまきが起きているのは不可解……否、別の理由が考えられたが敢えて何も言わずジっと見つめる。視線に堪え兼ねたのか、まきは顔を逸らした。

 

「し、心配なんてしてないぞ! お、お前が帰る連絡(コール)しなかったからって!! ボクには絶対にしろって怒るくせにさ!!!」

 

 逆ギレする顔は真っ赤。

 確かに帰る連絡はしていない。突然の仕事を抜きにしても前日に遅くなると伝えたし、みっちゃん様にも晩御飯を頼んでいた。だから寝るだろう、連絡して起こすほどじゃない。

 そう気遣ったつもりが、逆に心配の種になったようで苦笑を漏らした。

 

「寂しがり屋さんですね」

「だ、誰が……っ!」

 

 反射のように振り向いた彼女の顎に手を添えると──唇に口付けた。

 

 柔らかな唇を覆うように、潤すように、満たすように。

 最初は抵抗していたまきも小さく開いた口から舌を伸ばし、応えるように舌を絡めた。

 

「んっ、ふんん……」

「待っててくれたお礼に……ん、たくさん愛してあげますよ」

 

 口付けを深くしながら押し倒すと、パジャマボタンを外し、ブラジャーから掬い出した乳房を揉む。

 

「あっ、あ、やめ……」

「こんなにツンツンさせた厭らしい子がよく言いますよ」

「バ、ぁあっ……ダメえぇ」

 

 勃ち上がった胸の先端を舌先で突いては舐めると吸い上げる。

 嬌声を聞きながらパジャマズボンの中に手を入れると、やはり濡れていたショーツの中央を擦った。

 

「ああ……ちゃんと挿入(いれ)ろ……」

「はいはい」

「ああぁ!」

 

 お望み通り、ショーツをズラすと秘部に指を挿し込む。

 ヌルヌルの蜜が零れる音、胸をしゃぶる音、気持ち良く喘ぐ声が混ざり合うが、不快になることはない。むしろもっと響かせたいと、秘部の指を三本に増やすと激しく上下に動かした。

 

「あ、ああぁあ……ダメ……っ、イっちゃ……出ちゃうううぅっっ!」

 

 艶やかな嬌声と共に潮が噴き出した。

 俺のシャツとベストも濡れたことに、息を乱すまきは目を見開く。

 

「あ……ごめん」

「いいよ……それだけ気持ち良かったんだろ?」

 

 引っこ抜いた指を濡らす蜜を舐めながら見下ろすと、赤めた顔を逸らしたまきは気恥ずかしそうに頷いた。

 くすりと笑いながら太腿を持ち上げ、M字開脚させる。噴き出したばかりなのに、ドロドロに濡れた秘部からは新しい蜜が零れ、まきはか細い声で言った。

 

「早く挿入ろ……」

「命令ですか? お願いじゃなくて?」

 

 笑みを浮かべた顔を近付けると、まきは悔しそうに頬を膨らませる。

 お前だっていつも命令しているだろうと考えていそうだが関係ない。すると、腰を浮かせたまきに口付けられると囁きが聞こえた。

 

「守の大きいの欲しい……挿入て」

「……いいですよ」

 

 可愛いおねだりに口付けると、既にズボンから取り出していた肉棒を挿入する。歓迎するように奥まで入ったことに、抉るように突いた。

 

「あ、あぁぁっ! イい……気持ちイい……もっと」

「こっちか?」

「はああぁんんんっ!」

 

 持ち上げた腰を捻らせると、締まったところを突き上げる。

 それは正解だったようで、まきは涙を零しながらも嬉しそうに喘ぐ。その様子に勃ち上がった乳首を両方引っ張りながら子宮の奥底を突いた。

 

「ひゃぁあああっ!」

 

 艶やかな声と共に愛液と白濁が噴き出す。

 だが、抜くどころか腰を持ち上げると何度も何度も突き上げては口付けて達した。寂しさを埋めるように、愛情を注ぐように──。

 

 

 

 

「まきー、いつまで不貞腐れているんですか」

「うるさい! あっちいけ!! 許すもんか!!!」

「じゃあ、まきの分のイチゴタルトも食べておきますね」

「………………許す」

 

 

 ご機嫌取りは大事ですよね────。

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