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​番外編10*拍手小話3

いちご

*過去拍手のお礼にて載せていたSS集です**

*「カモん!」のキャラもいます

*~新婚旅行の相談~*第三者視点

 

「みき」

「まき」

「「……ふぁい?」」

 

 男達の前に座るのは妻となった愛しい、みきとまき。

 しかし、旦那を前にしても仲良くボリボリ『うめぇ棒』を食べる二人に、海雲と寺置は脱力した。海雲は早く食べるよう促したが、寺置はまきの『うめぇ棒』を半分折り、自分の口に入れる。当然怒られるが割愛。

 

「そんで何?」

「どうかしたんですか?」

 

 食べ終えた女二人と男二人が向かい合わせに座るとまるで合コン。ではなく、旦那を見つめる新妻二人が首を傾げると海雲の口が開く。

 

「二人に……確認したい事がある……」

「確認ですか?」

「本当は言わなくても大丈夫かなーとは思うのですが、念のためにと」

「じゃ、聞くなよ……わかったわかった! 聞くから早く言って!!」

 

 ツッコミを入れたまきだったが、寺置の笑みが黒かったため手を横に振る。しばし間を置き、眉を吊り上げた海雲と寺置は真剣な眼差しを向けた。

 

 

「「五月のGW(ゴールデンウィーク)の予定は!?」」

「「仕事」です」

 

 

 なんの躊躇いもなくハモった双子に、男達も机に突っ伏した。

 良い音が響くが、さすがに眼鏡の寺置は片腕で直撃をかわしている。みきはオロオロと海雲を心配するが、まきは御茶を飲むだけで続きを催促した。顔を上げた寺置は眼鏡を外し、額と瞼を手で覆いながら答える。

 

「いえ……支社が安定してきましたので。先延ばしにしていた新婚旅行をと思いまして」

「なんで人の多いGW選ぶのさ」

「GWぐらいしか……休みが取れそうにないからだ」

「新婚旅行ですか~海雲さん、どこに行きます?」

「姉さん、仕事って言わなかったけ?」

「あっ!」

 

 数秒前の事も忘れるみきに三人は溜め息をつく。

 すると、眼鏡を掛け直した寺置が前のめりになり、まきに顔を近づけた。

 

「まき、やっぱり仕事辞めてください」

「介護社会なめんな」

 

 即答で寺置の頭に手刀を落とすまきは容赦ない。

 しかし、隣に座るボケ姉は考え込みながら天の助けのような地の囁きのような発言をした。

 

「ん~……私は大将に言えば休めると思いますよ。新婚旅行ですし」

「だそうです、まき。貴女も新婚旅行、もとい寿退職しましょう」

「どうあってもボクに辞めてもらいたいんだな……」

「だが、新婚旅行なら……休みは貰えるんじゃないか?」

 

 海雲の指摘に、さすがのまきも返答に困る。

 何しろ海雲と寺置は基本土日が休みだが、双子は揃って曜日関係ないので合わない事が多い。しかし今回は新婚旅行! そんな我侭も許されるはず!!、と旦那達の目が怖く、まきは渋々了承した。

 

「言っとくけど、仕事は辞めないからね」

「まあ、しばらくは良しとしましょう。で、どこに行きます?」

「切り替え早っ!!!」

「海外も行けなくもないが……」

 

 何しろもう四月の中旬。

 さっさと決めないと宿やら飛行機やら手配出来なくなると海外パンフを取り出す男達。しかしここでまたしても双子から強烈な言葉。

 

「「パスポート持ってない」です」

「「え?」」

「私達生まれて二十五年、一度も日本を出たことないので……」

「パスポートなんて持ってないよ。むしろ国内で良い」

「温泉巡りとか良いよね~熊本や大分とか?」

 

 完全に隣県じゃないかと、脳内ツッコミしながら海雲と寺置は顔を見合わせる。

 

「まあ……確かに外国に行くと……迷子とか何かに巻き込まれそうだな」

「海雲さん、方向音痴でしたっけ?」

「いや、姉さんのことだろ。なんか珍事件起こしそうだもんね」

「まきも人のこと言えない気はしますけど」

「そ?テロリストに会ってもアンタが普通に倒しそうな気がするんだけど」

「まき、私も一応人間ですからね。銃で撃たれれば普通に死にますよ」

 

 戸惑いを含んだ寺置の言葉に、三人は仰天と疑いの眼差しを向けた。即座に新聞紙で叩いた寺置は国内パンフを見る。

 

「ま、お二人が良いなら車で行きましょうかね。まき、海と山、どっちがいいですか?」

「どっちもロクなもんないな……いや、むしろ車も危ない!?」

「車も……って、じゃあ電車で行くのか?」

「電車内でもエッチ出来ますけど?」

「前提で考えるなーーーーっっ!!!」

 

 濁す気など更々なく微笑む旦那を叩く。

 海雲が言葉をなくしていると、パンフを見ていたみきが口を挟んだ。

 

「だったらまきたん、徒歩か二人乗り自転車だね!」

「遠い道のりを二人で乗り越えた時、真の愛が育まれる……みっちゃん様、それ良いですね」

「のるなよ!!!」

「あ、じゃあ四人で行きます!?」

「「「「んな新婚旅行ない」」」

 

 ボケボケすぎる回答にツッコミを入れながら両家の新婚旅行が迫る。

 はてはて、どうなることやら────。

 

 

~~~~*~~~~*~~~~*~~~~

 

 

*~父さんと母さんの出会い~*第三者視点

 

 

「父さんと母さんの出会いって、どんな感じだったんですか?」

 

 日曜の昼下がり。昼食を終えた寺置家でソファに座る紫苑が淡々と訊ねた。

 昼寝中の娘りまをお腹に乗せて絨毯に寝転がる母まき。と、紫苑とは反対のソファに座り、妻の口元の真上でイチゴを餌に、まき釣りをする父、守が息子を見る。

 

 瞬間、頭を素早く上げたまきが吊るされたイチゴを口でキャッチ。クッションに頭を戻し、イチゴをもぐもぐ。綺麗にヘタだけ残して行ったまきから守は紫苑に笑みを向ける。

 

「こうやって気紛れな魚に餌をやって釣り上げたんですよ」

「ウソ教えんな、ストーカー」

「ストーカー……なるほど」

「おや、納得されるとは一体どういうことでしょうか」

「自分の胸に聞け……ああ! イチゴ!!」

 

 素直な息子に“あっかんべー”を守に向けていたまきだったが、イチゴが遠退くどころか食べられた。そんな両親を見ながら、みきの言っていた『ツンデレ』を紫苑は探る。謎の視線を向ける息子に二人は首を傾げるが、まきはお隣さんを指した。

 

「そもそもの発端は姉さんと海雲お義兄さんだよ」

「あの二人が恋に落ちてくださったおかげで、いつも仕方なく一緒にいた私達も出会うことが出来たんです」

「お前、ちょっと黙っとけ」

 

 微妙に違う内容に、まきは守の足を叩く。が、大きな手がまきの頬を撫でる。りまがいるせいかおかげか、身じろぐだけのまきを紫苑が見ていると守は嬉しそうに口を開いた。

 

「こうやって酷いことを言いながらも優しくされると甘えん坊になるママが可愛くて私は好きになったんです」

「確かに母さん、コロコロと性かく変わりますよね」

「こいつほどじゃない! 紫苑も今のこいつに騙されるな!!」

「……母さん、だまされて結婚したんですか?」

 

 なんて愛のない、みたいな冷たい視線に慌ててまきは両手でバツを作る。

 同時に守の方が昔は女遊びは酷かったんだぞと言うと視線が父に向く。が、父の方が冷たくて黒かった。そんな旦那は撫でていた手で妻の顎を上げると不敵な笑みを向ける。

 

「まき、私は貴女と違って浮気なんてしてませんよ」

「おいこら、いつボクが浮気した。まだ重……くんのこと言ってんの?」

「それも許していませんが今の話です。先日、仕事先の男性にデートに誘われたそうですね」

「っ!?」

 

 息を呑んだまきは直ぐさま息子の下へ向かおうとしたが、両足でガッチリと身体を固定され動けない。なんだかよからぬ方に動いていると紫苑は取り合えず観察することにした。

 

「なんでアンタがそれ……て言うか断った断った! 浮気じゃない!!」

「おや、開き直りましたか。いいですよ。じゃあ、飲み会で押し倒されたことや下着を見られた件は?」

「酔ってた人と一緒に倒れただけ。あと、鍵をかけてなかったボクのせい! て言うか、どこで仕入れてきた!?」

「母さん……やっぱり父さんを愛してないんじゃ…」

「違う! ちゃんと愛して──っ!?」

 

 無意識に出た言葉に慌ててまきは両手で口元を覆う。

紫苑は何も言わないが、守はソファから降りるとイチゴを一口食べ、まきに口移しした。

 

「んっ…ちょっ……あっ」

「ふふふ、私も愛してますよ。だからこそ……ん、なんでも知ってるんですから」

「だからそれストーカーんっ」

 

 睨むまきにまたイチゴを口移し“ちゅっ”と音を立てては繰り返す。

 紫苑は無心。見慣れているからこそ無心でいられる。いつの間にか成長する子供である。気付けば息を荒げたまきはぐったりとし、りまを抱えるとクッションに顔を埋めた。

 そんな彼女に笑う守は息子の隣に座る。

 

「紫苑も愛する人を見つけたら捕まえないと後悔しますよ。離れても大丈夫と思っていた私が後悔したんですから」

「好きな人じゃないんですか……?」

「ええ。好きは手放せるもの、愛は手放してはいけないものです」

 

 静かに話す守の笑みはとても優しく、紫苑は父が見つめる母を見る。

 まだ生まれて五年の紫苑でも、父がどういう人なのかはわかる。黒い気配も。すると、まきに向けるのとは違う笑みを浮かべた守は、息子の頭を撫でた。

 

「紫苑がもう少し大人になったら捕まえ方を伝授してあげますよ」

「それは……どっちの父さんで?」

 

 その真っ直ぐな瞳に一瞬目を見開いた守だったが、立ち上がると口元に人差し指を付けた。

 

 

「さあ……お前次第だな」

 

 

 いつもとは違う、少し低く意地の悪そうな声に紫苑は何も言えなかった。

 いつかそれを教えてもらう日がきたら今のように本当の父を見れるかはわからないが、ともかく今は泣き付いてくる母をどうにかしようと抱きしめる。

 

 また恨まれそうだが……。

 

 

~~~~*~~~~*~~~~*~~~~

 

 

*~拍手SS最終回~*

 

みき*拍手ありがとうございます!

守*ありがとうございます

海雲*大丈夫か、義妹?

まき*こ、腰痛い……

紫苑*やはり柔道かなにかですか?

羽実*やわらちゃん?

りま*ばた~ん!

 

守*ふふふ、子供達は元気で何よりですね。そんな中、残念なお知らせがあります

海雲*笑顔で残念と言われてもな……

みき*そうなんです……

まき*うっわ、姉さんが言うとマジで深刻に見える。何これ、守が悪いの?

紫苑*母さん、父さんがねらってますよ

りま*パんパ~キラキラえがお~

守*まき、まだ愛が足りなかったんですね。いいですよ、ここで差し上げても

まき*いらんいらん! ノーサンキュー!! とっととお知らせ言って!!!

みき*お秘書さんは何も変わらないですね~

海雲*残念なぐらいにな……

 

羽実*ママ、お知らせは?

みき*あ、はい。実は今回で拍手SSが終わります

海雲*ついにか……(しみじみ

まき*バカバカしい話しかしてなかった気もするけど……今度こそ終わりか(しみじみ

守*拍手は終わっても、番外編は続きそうですけどね

海雲&まき*は?

みき*そうなんです。何しろ気まぐれな作者さんなので、またひょっこり増やすかもしれないんです

紫苑*実際、海へ行く番外編を考えてらっしゃったんですが、いそがしすぎてできなかったんです

りま*パんパの~おたんじょうびも~またかきたいって~

まき*ボクを殺す気!!?

守*ふふふ、今度は“奥様”で愛されたいものですね

みき*なので、拍手はなくなりますが、気ままにまたお付き合いしてもらえると嬉しいです

海雲*気ままって……

羽実*うみやしーちゃん達の話もあるといいね

紫苑*それはそれで別の話になりそうですが……

守*そんなわけで、ここでは『さよなら』しますが、またどこかでお会いしましょう

まき*ああ……またコイツに何かされるのか……阻止方法考えないと

守*ええ、さすが“俺のまき”

海雲*……何か悪寒がしたが、そういうことらしいから……またよろしく頼む

みき*はい、よろしくお願いします!

まき*します………

羽実&紫苑&りま*バイバイ~

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