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銀河

誕生日シリーズ

6月11日*ルーファス

*ルーファス視点です

 結婚して半年が経つが、総騎士団長という職である以上、目まぐるしい毎日は変わらない。倒れない程度とはいえ、書類整理から視察まで多岐に渡る仕事量。城にいることも稀だ……なのに。

「なんのマネだ、狛犬」
『ギャウウゥ』

 

 女王の執務室前に居座るのは狛犬こと、ライオンのマオン。
 女王への書類があるというのに、まったくもって入室させる気がない。子ライオンの頃から嫌われているのは知っているが、仕事まで邪魔されるのは迷惑千万。

 苛立ちながら左右に動いたりフェイントをかけるが、デカイ図体の割に反応が良い。

「ええいっ、そんな動きが出来るなら騎士団に入れ! というか貴様と遊んでいる暇はない!! 陛下に書類を渡せねばならんのだ!!!」
『ギャウっ!』

 叫びに急ブレーキをかけた狛犬が大きな手、という名の肉球を差し出す。まるで『おら、寄越せよ。オレが渡しといてやる』と、鼻で笑っているような感じで腹が立つが、忙しいのは事実。溜め息まじりに書類を差し出した。

 

「そこまで自信があるなら、ちゃんと陛下に渡してサイン貰っておけよ」
『ギャウっ!』

 

 元気な返事と共にガブリと書類を咥えた。
 書類に広がる染みに、消失させたい衝動に駆られるが、慣れた様子で扉を押して入る狛犬を見送る。自然と扉が閉じる間際『まあ、マオンちゃん』と、女王……ユフィの声が聞こえた。

「……そう言えば、最近会ってないな」

 

 呟きは、閉まる音で掻き消される。
 昔と変わらず短いようで長い距離のままだ。

 


* * *

 


「距離も何も、夫婦なのだからゼロ距離だろうて」
「会わないので、距離さえ存在しませんね。はい、二二二(ニゾロ)」
「むぅ!?」

 カランコロンと椀の中で転がった、三個のサイコロ。
 その出目に、ベッドに座る前王であり義父であるタージェラッド様は、長い髭を擦った。眉間に皺も寄せているが、負けは確定している。

 

 用があると伺えば、チンチロリン=遊び相手が欲しかったようだ。
 身体が悪いのにと半分呆れるも、こういう戯れが療養と言えるかもしれない。何より『多忙』に捕らわれた私にとっても休息になっているのだ。当然、賭けなしの健全ルールで。

 

「しかし、やっと夫婦になったというのに、ユフィと過ごせぬというのは辛いものではないか?」
「二十年以上待ったのに比べればマシです」
「むぅ……忍耐強いと言うかなんと言うか……もしや、くっついたから冷め「てないので大丈夫です」

 

 即答すると、次のサイコロを振ったタージェラッド様は目を瞬かせる。
 カランコロンと鳴り響く音のように、このテの質問や疑問は耳にタコが出来るほど聞いてきた。気持ちが変わったことなどないので毎回『大丈夫』と答えているが、色々と助力いただいた義父にまで言われてはと、サイコロを手に取る。

 

「……辛くないと言えば嘘になりますが、毎日一緒にいるだけが夫婦ではないですし、私もユフィも今のままで問題ないと思っています。私としては、二十年の片想いが実っただけで充分ですからね」

 

 そう言いながら、サイコロを手の平で転がす。
 自分もユフィも立場を理解している。会えない日があっても以前と変わらない、それが私達という夫婦。だが、ユフィにも『本当に愛してもらえているか不安になることはある』と言われたことがあり、一抹の不安はある。

 

「まあ、お主とユフィがそう言うなら良いさ。ただ、今日ぐらいは素直になっても良いではないか」
「……は?」

 

 指摘にサイコロを止めると、今度は私が目を瞬かせる。すると、タージェラッド様は一瞬驚くも苦笑した。

 

「忙しすぎるのも考えものだが、やはり娘が一番ではないとならぬだろうな」
「なんの話しですか?」
「知りたければ、ユーフェルティアに会うことだ。必ず、今日中に」

 

 最後、念押しされたばかりか『他の者にも先に言わぬよう口止めしておこう』と従者を呼ぶ始末。余計気になってしまい、今すぐユフィのところへ行こうかとサイコロを振──。

 

『ユっフィ~! 遊びにきたぞ~!!』
『なり~!』
「っ!!!」

 

 厄介な声が廊下から聞こえ、手元が狂う。
 二個のサイコロは椀の中に入ったが、残りのサイコロは椀外。見事な即負け(ションベン)に、眉間を押さえると決意した。

 あとで行こう──。

 


 

 

 


 仕事が一区切りついた頃には夜を迎えていた。
 マントとコートを脱ぐと、ネクタイを解きながらバルコニーへ出る。火山地帯とはいえ、夜になればちょうど良い風が吹き、ほっと一息ついた。が、今日のことを考えるとモヤモヤが増す。

 今日“何か”があるのは間違いないのに、タージェラッド様は何も教えてくれなかった。そればかりか、ワンダー、ランジュ、ジェリーも部下も、問うだけで逃走。タージェラッド様の伝令が回っている証拠だ。

 

「はあ……ユフィのところに「あ、ルー!」
 
 行こうかと呟く前に声を掛けられる。
 振り向けば、いつの間に入ってきたもアポも関係ないユフィが、バルコニーへ出てきた。髪を下ろしているのを見るに仕事は終わっているようで向き合うと、少しだけ頬が膨らんでいる。

 

「もう、留守かと思ったではないですか。探す身にもなってください」
「……呼び出せば良いじゃないですか」
「え?」

 

 この国の誰もが従い、命令を与えることが出来る女王。なのに、当人はアホ面ともいえる顔を数秒すると、ハっと気付いたように目を瞠った。

 

「そっ、それもそうですよね……思いつきませんでした」
「ヴァーカ」

 

 さっきまで膨らんでいた頬も萎んだユフィは、恥ずかしそうに顔を伏せる。いつもと変わらないことに安堵していると、何かを差し出された。

 

「それより、はいっ! お誕生日おめでとうございます」
「え?」

 

 それは、ベリーが乗ったチーズケーキ。
 代わるように目を瞠るが、ユフィは笑顔で続ける。

 

「頑張って作ってみたんです。ルー、あまり甘い物は食べませんが、チーズケーキはお好きだったでしょ?」
「……私に死ねと?」
「あ、味見はしてます! 教えてくださったのはヒナタ様ですよ!! お上手なの知っているでしょ!!!」

 

 手料理や菓子は見たこともなければ食べたこともないので躊躇ってしまった。だが、ヒナタ様と聞いて、今日きていた理由に納得する。性格に似合わず料理上手なのも。

 

「何より……結婚後、はじめてのお誕生日ですから、ね?」

 

 目前までやってきた彼女は、照れた様子で私を……俺を見上げる。
 変わらない笑顔。だが、今日がなんの日で、彼女に言われるとどれほど嬉しいか実感すると、ゆっくりと口を開いた。

 

「ヴァーカヴァーカヴァーーカ」
「ちょっ、ルー……!?」

 

 いつもの返しに当然ユフィは怒るが、自然と伸びた手が彼女を抱きしめると静かになる。柔らかな髪から漂うのは甘い匂い。それはケーキの匂いだろうが、自分にと思うと頬が熱くなり、素直な言葉が出た。

 

「……ありがとう……ユフィ」
「っ……はい!」

 

 驚くような気配があったが、すぐ元気な声が返ってきた。が。

 

「あっ! ちょっ、ルー、ケーキが」

 

 悲鳴に近い声に腕を解くと、すっかり忘れていたケーキが潰れるどころか俺の服についていた。慌てて傍にあったミニテーブルにケーキを置いたユフィは、ハンカチで拭き取ろうとする。

 

「別に着替えればいいでしょ。むしろ食べます」
「え……?」

 

 顔を上げる彼女の手を取るとハンカチが落ちる。
 指には拭き取れなかったケーキがついていて、口元へ運ぶとパクリと食べた。

 

「ひゃっ!」
「んっ……これだけじゃ、味わかりませんね。またください」
「くださって……ひゃっ!」

 

 慌てふためく彼女の指に、また服についたケーキをつけ、パクリと食べた。伝わってきた甘さよりも、顔を真っ赤にさせたユフィに口角が上がる。口を離すと、自分の指にもケーキをつけ、彼女の口元に運んだ。

 

「はい、貴女もどうぞ」
「んぅっ」

 

 ヌプリと指先を口に挿し込むと、ユフィは躊躇いながらも口を動かし、舌先で舐める。

 

「俺よりエロいことしてますね」
「そ、そんなこっ!?」

 

 真っ赤になると同時に指を抜くと口付けた。
 舌を挿し込めば、ビクリビクリとユフィの身体が揺れるが、久し振りの口付けに悦ぶように舌を絡めてくる。次第に息遣いが荒くなり唇を離すと、ユフィの唇から唾液が零れ落ちた。

 

「あっ!」

 

 はしたないというように両手で口元を隠す。
 その隙にミニテーブルへ向かうと、崩れたケーキを手で掬った。それを見せると、ビクリと身体を揺らしたユフィは耳まで真っ赤になる。くすりと笑うと、タージェラッド様が言っていたように『素直』を口にした。

 

「誕生日ケーキは貰ったので……プレゼントにユフィをください」

 

 意地悪く言うが、少しだけ視線をさ迷わせたユフィは小さく頷いた。主導権が自分にあると思えて翻弄されている。それはきっと好きだからで、頬を赤めると手を伸ばした。

 

「っん、あっ……ひゃんっ!」

 

 嬌声が響くのは、風が冷たくなってきたバルコニー。
 椅子に持たれかかったまま、上半身を曝け出している女王は綺麗で厭らしい。片膝を着いたまま伸ばした両手で乳房を真ん中に寄せると、先端についたケーキを食べる。

 

「ああぁん……!」

 

 一緒に乳首も食(は)んだため、ビクリと身体が跳ねるが、既に何度も跳ねているため構わずケーキを、乳首を舐めた。舐め取られた乳首はツンと赤く尖ったのが月明りで曝され、舌先で舐めたり引っ張る。

「っああ……ルー……んっ」

 

 涙目に顔を寄せると口付ける。
 次いで頬、耳、首筋を舐めながら腰を持ち上げ立たせると、後ろを向かせた。手すりに両手を置かせ、背中からうなじへと舌を這わせながら、揺れる乳房を揉み込む。

 

「あっ、ああぁ……」
「女王が……外でこんな淫らな恰好で……声は……どうなんでしょうね」
「っ~~!」

 

 両乳首を引っ張ると、反射で身を反らしたユフィの目と目が合う。
 涙目ながらも頬を赤めたまま、ゆっくりと口を開いた。

 

「大好きな……旦那様(ルー)にされるなら……いいんです」
「…………ヴァーカ」

 湧き上がる熱が頬に達すると口付ける。
 そしてまた手すりに両手を置かせると、ドレスを捲くし上げるとショーツを下ろした。月明りだけでも濡れているのがわかり、指先で秘部を撫でればビクリビクリと身体が揺れる。次第に蜜も零れ、取り出した肉棒の先端を食い込ませた。

 

「ああっ……!」
「なら俺も……大好きな姫君を犯すぞ?」

 

 半分で肉棒を止めるが、囁きにキュッと膣内が締まる。
 それが肯定だと腰を持つと、焦らすことなく挿入した。

 

「っああああぁぁあ!!!」

 

 今日一番の嬌声が上がるが、もっと響かせるように腰を動かす。
 会えなくても問題ない。そう思っていても身体は求めていたようで止まらない。

 

 ケーキよりも甘い、一番のプレゼントのおかげで──。

 

 

 


「ねえ、ルーファス。このヨダレまみれの書類はなんなのさ」
「小生にはちっとも字が読めぬのだが」
「もう、誕生日だからって浮かれすぎですわよ!」

 


 浮かれてヨダレをブチ捲けるわけないだろと言いたいが、各所からの苦情は止まず、真っ先に女王の執務室へ向かう。久し振りに二日連続で会うも、愛の欠片もない狛犬との戦いをはじめた────。

  / 物語 /

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