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銀河

誕生日シリーズ

7月3日*ユフィ

*ユフィ視点です

 女王になって、もうじき十年。
 仕事や指示にも慣れたが、いまだに慣れない行事がある。それは大切で嬉しいはずなのに、気恥ずかしさが勝ってしまう、今日だけの特別な日。

 


「姫様っ、お誕生日おめでとうございます!」
「ひゃいっ!」
「陛下、真っ直ぐ向いてくださいまし」

 

 変な返事に、入室してきたジェリーは笑顔のまま目を瞬かせる。
 対して椅子に座る私は身体を浮かしてしまい、メイド長に叱られてしまった。改めて向き直す私の目前には、ジェリーやメイド長を含めたメイド達。そして、煌びやかな衣装にあわせ、髪を整えていただいている自分が映る鏡。

 今日、七月三日は私の誕生日。同時に一国の王としての生誕祭。
 朝から城下で祭りが開催され、城内も式典準備に追われていた。来賓に、トルリットの貴族だけでなく、他国の王も出席されるからでしょう。私だけのために。

 

「ああぁ……ただの誕生日で、こんな盛大にお祝いしなくても……」
「何を言っていますの! 平和が続いているのは姫様のお力あってこそ!! むしろ国民(わたくし)達が感謝する日ですわ!!!」
「なっははは、それは言い得て妙だな」
「姫様、毛がつくからマオンにくっついちゃダメだよ」

 

 まさに今、マオンちゃんに抱きつこうとしていた私は止まり、マオンちゃんもワンダーに捕まってしまった。そんなマオンちゃんも、ジェリー、ワンダー、ランジュのようにマントを羽織った正装。

 私もまたレースが編み込まれた白のドレスに国旗が描かれたマント。国宝プレシャス・オパールが光るティアラとペンダントと、正午の式典にあわせた装いになっていた。

 もちろん誕生日は嬉しい。けれど、国中からお祝いされるというすごさに萎縮してしまい、喜びよりも申し訳なさが勝ってしまう。が、当然毎年のことだと慣れている三人と一匹は早く来るようにと手招きする。
 女王扱いされないのは付き合いの長さからか、呆れるというより安心してしまい、一息吐くと姿見を見つめた。そして、耳に手を添える。

 

 国宝とは違う輝きを放つ琥珀のピアス。
 まだ今日は会っていない、大切な人と同じ瞳の色。その姿を浮かべながら、多くの歓声が沸くバルコニーへと足を向けた───。

 


 

 

 


「ユっフィ~! 誕生日おっめでと~う!!」
「あ、ありがとうございます、ヒナタさっぷ!」

 

 式典も大広間での宴も終わった夜。
 来客用の部屋に入ってすぐ跳びついてきたのは、親友ヒナタ様。いつものように大きなお胸に抱きしめられ息が出来ないでいると、いつもの制止がかかった。

 

「ヒナタ、帰るぞ」
「ちょっ、今きたばかりだぞ!? 帰るならフィーラだけ帰れ!!!」
「そんなことをしたら他の連中に殺される。そもそもキミが寝坊したのがいけないんだろ」
「仕方ないだろ。イズがユフィの誕生日祝いに皿回ししたいって付き合ってたんだから」
「もう少しマシな祝い方はないのか」

 

 解放された私は息を整えながら『今日は一段と回ってるなり~』と、皿回しのパフォーマンスをしていたイヴァレリズ様を思い出す。確かにすごかったが、喜びよりお皿が心配になってしまった。

 そんな気持ちを知らない御二人はいつもの言い合いを続けている。
 それが微笑ましく、羨ましくも思えるのは理想の御二人だからか。すると、ヒナタ様を抱えたアズフィロラ様と目が合う。

 

「では、ユーフェルティア女王。我々はこれで失礼します」
「え、本当にもうお帰りになられるのですか? せめてお茶ぐらい」
「いえ、長居すると彼にも悪いですから……どうぞ、ゆっくりと祝ってもらってください。お誕生日おめでとうございます」

 

 令を取ったアズフィロラ様は顔を上げると微笑む。
 それはカッコイイというより、苦笑を含んでいる感じで小首を傾げるが、騒ぐヒナタ様に構わず出て行ってしまった。

 

 一人残されてしまった私は呆けてしまう。
 それはきっと、朝からたくさんの方にお祝いの言葉やプレゼントをいただいていたので、急に一人になって寂しくなったのでしょう。気恥ずかしいと言っていたのに寂しいだなんて矛盾している。

 

「私……寂しがり屋だったんですね」

 

 呟きながら、バルコニーへ出る。
 冷たい風が頬と髪を撫でるが、真上には満点の星空が広がっていた。子供の頃、チンチロリンで勝ったご褒美に連れてきてもらったのを思い出す。

 

 でも、あの頃とは違う。

 気持ちも関係も大きく変わった。誕生日も今までと違う……それはきっと。

 

「何、バカ面を晒しているんですか」
「っ……!」

 

 あの頃より低い声に振り向く。
 でも、呆れた表情と溜め息。私を見つめる瞳は変わらない。逆に私は頬を赤めて彼を呼ぶ。

 

「ルーファス!」

 

 戸惑う私にまた溜め息をついたルーファスは、ゆっくりとやってくる。いつもの皮肉も忘れずに。

 

「バルコニーに出ると言ってから出ろ、ヴァーカ」
「あ、騎士(あなた)が付いてくるものでしょ!」
「は? だからきたでしょ」
「っ~!」

 ああ言えばこう言うの繰り返しに、赤い頬を膨らませる。
 アズフィロラ様と違って、どうしてこうも意地悪なのかと思いながら、口でも文句を零した。

 

「私の誕生日でもお仕事優先なんですね……今日、はじめて会います」

 

 他人のことは言えないが、総騎士団長なら女王(私)の護衛を一番にしてもらいたい。我儘かもしれないが、騎士で旦那様なのに……一緒にいられないのは。

 

「ええ、とても疲れました……なので貴女を好きに出来ます」

 

 ハっと顔を上げると、隣に並ぶルーファスは手すりに背を預けていた。
 そして、長い手でネクタイを解くと、意地悪い笑みを私に向ける。

 

「すべての仕事を終わらせてきたんですから、文句ないでしょ?」

 

 騎士とは思えない上から目線と自信。
 でも彼だから、私達だから何も思わない。むしろ湧き上がる嬉しさに笑みを返すと、両手を広げたまま抱きついた。

 

「はいっ!」

 

 大きな身体と腕に抱き留められると、顔が近付く。
 さっきまでとは違い、若干彼の頬も赤く見えるが、今は感謝を伝えるように口付けた。甘い甘い、待ちに待っていた愛しい人からの祝い。

 

 

 


「っあ、あん……ひゃっ!」

 薄暗い寝室に月明りが差し込む。でも見えない。
 目に映るのは、裸体となった旦那様が汗を落としながら私の乳房を舐める姿。たくましい両手に絞られた乳房はいっそう勃ち上がり、舌先で舐められては甘噛みされる。でも、痛みより気持ち良い。

 

「ひゃっ……ああぁ」
「次はどこ……してもらいたい?」
「ああぁ……そこ……触ってるとこ」

 

 耳元で囁く声は意地悪。
 同じように、片胸を離した手が秘部を撫でる。優しく優しく焦れったく。

 

「やあぁ……ルー……ナカが良いです……」
「我儘な女王様ですね」
「……誕生日ですから」

 

 ルーの目が一瞬丸くなる。けれどすぐ鼻で笑うと、私の両脚を持ち上げた。

 

「きゃっ!」
「ナカ……でしたよね」
「あぁ……待っ、まだ指かああああ゛あ゛ぁぁっ!」

 

 制止をかける前に、雄々しい肉棒を挿入される。
 下腹部はあまりイジられていなかったはずなのに、口付けや胸の愛撫だけで濡れていたのか、さほど痛みもなく、グングン奥へ突き進む。

 

「淫乱なっ……女王ですね……っ」
「ああぁ……ルーのせいですううぅんんンンンっ!!!」

 

 腰を速く動かされると、結合部から愛液が噴き出す。
 それでもまだ足りないと身体は疼き、彼の首に両手を回すと腰を浮かせた。抱きしめてくれたルーは、いっそう突き立てる。

 

「ああ、ああああぁぁ……ルーぅ……いいです……好きです」
「セックスが? それとも俺が?」
「バカ言わないでくだあああぁぁっっ!」

 

 意地悪に身体中が熱くなり、ナカを締め付ける。
 耳元で呻く彼の声に少しだけ嬉しくなると、同じ色のイヤリングに口付け囁いた。

 

「ルーが……一番大好きで愛しています」
「…………っヴァーカ」

 

 間があった口癖。
 でも、月明りに手伝ってもらったおかげで頬が真っ赤に染まっているのがわかった。ちゃんと愛してくれている、私をずっと好きでいてくれる証拠。
 また嬉しさで口付けると、たくさんのプレゼントを貰った。国民全員でも敵わないほど素敵なプレゼント。

 

 ルーからしか貰えない特別なプレゼント───。

 

 

 


「いや、フィーラもすっごい意地悪だぞ。夜だって私の望むことしてくれないし、命令してくるし」
「まあ、ルーファスと一緒。御二人は兄弟でしたのかしら」


 後日、遊びにきたヒナタ様との会話で二人を見る。
 剣の柄を持つのと同時に、激しく抱かれる夜になることも、国民からのプレゼントの大半がベビーグッズだったのも、まだ知る由もない────。

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