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銀河

ハロウィンシリーズ

「魔法のハロウィン」

*ユフィ視点です

「ユフィ! ハッピーハロウィン!! そして、トリックオアトリート!!!」
「はい?」

 

 執務室の扉が勢いよく開かれると元気な声が響く。
 突然のことに呆けるも、入室してきた女性──ヒナタ様の笑顔に慌てて立ち上がった。

 

「ヒ、ヒナタ様!? いつ、トルリット(こちら)に……というか、はろうぃん……?」

 来航を聞いていなかったことよりも、聞き慣れない言葉に首を傾げる。すると、溜め息が二つ聞こえた。

「ヒナタ、何度も言うが他国にハロウィンはない」
「私も来航時は報せてくださいと何度も言っていますが?」

 疲れている様子のアズフィロラ様と怒っているルーファスが入室してくる。そんな二人に向かってヒナタ様は笑顔で両手を広げた。

「フィーラ、浅葱少年、トリックオアトリート!」
「は?」

 

 眉を顰めたルーとは違い、アズフィロラ様は懐からチョコレートを取り出す。それを受け取ったヒナタ様は笑顔で頭を撫でるが、何も出さないルーに意地悪く笑うと、あろうことか剣を奪い取った。

 

「ちょっ!?」
「むっははは! 貴様の剣はいただいたー!! 返してほしくばユフィと一日中一緒にいろーっ!!!」

 そう高らかに笑いながらヒナタ様は去って行った。ルーの剣を持ったまま。
 私もルーも呆気に取られるが、我に返ったルーが慌てて追い駆ける。前に、アズフィロラ様に遮られた。

 

「残念だが、全速力のヒナタを捕まえるのは極めて困難だ。ここは私に任せて、御二人は大人しく待っていてくれ」
「し、しか……わかりました」

 アズフィロラ様の笑顔に威圧感を覚えたルーも私も頷くと、一礼した彼を見送る。ゆっくりと扉が閉じられ静まり返った室内に、また溜め息が落ちた。

 

「まったくなんなんですか……しかも剣を奪われるなんて」
「油断大敵、ですね」

 

 意地悪く言うと、眉間に皺を寄せたルーに睨まれるが、慣れている私はヒナタ様が言っていた謎の呪文を思い返す。

 

「とりっくお……あ……とりーと、でしたっけ? チョコレートを渡さないと剣を奪われるイベントでしょうか?」
「迷惑すぎでしょ。バカでももう少しひねってもらいたいですね」

 

 いつもより刺々しい言い方に口を尖らせるが正論なので考え込む。
 最初いらしたヒナタ様は『ハッピーハロウィン』と言っていた。つまり本来は良いイベントということ。そして、チョコレートを渡したアズフィロラ様は頭を撫でられ、何もしなかったルーは剣を奪われた。剣を奪うは極端かもしれないが、選択肢は二つということ。

 

「真面目に考える貴女は本当のバカですね。ヒナタ様に付き合うだけ損「ルー!」

 

 溜め息混じりのルーを遮ると、真剣な眼差しを向ける。
 少し驚いたように目を瞬かせる彼に両手を差し出すと、ゆっくりと言った。

 

「と、トリックオア……トリート!」
「……ですから私はチョコレートなんて「持ってませんよね!? な、なら好きにしますよ!」

 

 また遮ると、勢いよく抱きつく。
 最初は激しかった動悸も久々の匂いに落ち着き、恥ずかしいのとは違う音を鳴らす。しばらくして、溜め息と一緒に抱き返された。

「まったく……甘い物を持っていたら許される、けれど持ってなかったら好きにされる……なんて、貴女らしいヴァーカな考えですね」

 

 あっさりと見破られ、ぐうの音も出ない。
 本当に嫌味な人だとまた頬を膨らませていると、その頬を長い指で突かれた。

 

「ユフィ……トリックオアトリート」
「えっ!?」

 

 まさかノってくるとは思わず顔を上げる。
 ルーはどこか意地悪そうな笑みを浮かべていて、赤くなった頬をまた突きながら囁いた。

 

「ユフィ……お菓子は?」
「も……持って……いません」
「では……好きにさせてもらいます」

 

 視線を逸らすも、頬を突いていた手に顎を持ち上げられる。気付いた時にはルーの顔が目の前にあり、唇と唇が重なった。

 

「っん……」

 

 唇全体を覆うように重なり、上唇も下唇も舐められると歯列を割った舌が入り込む。長い舌先がチロチロと私の舌をくすぐり、応えるように伸ばすと絡めた。

 

「っふん、んっ……」
「んっ……ユフィ、トリックオアトリート?」
「あっん!」

 

 唇が離れると同時に囁かれ、首筋に吸い付かれた。
 キスの刺激も相まって、ぐらついた身体を支えるようにデスクに両手をつけるが、吸う力は強くなるばかり。そればかりか、服越しに大きく胸を揉まれた。

 

「っああ……ルー」
「トリックオア……トリート」

 

 お菓子を持っていないのを良いことに、魔法の呪文を囁くルーはドレスの紐を落とす。まだ太陽がある内に肌を見せるのは殆どなくて恥ずかしい。特にジっと見つめられるのは慣れず手で隠そうとするが、両手を掴まれてしまった。
 それからすぐルーの顔が近付き、尖りを主張している胸の先端をしゃぶられる。

 

「はあぁんっ……あんっ、ルー……あまり吸わないでぇ」
「ヴァーカ……これだけツンツンさせといて……こっちも」
「あああっ……!」

 

 反対の胸をしゃぶられながらドレスの裾を捲られると、シミのついたショーツを指で擦られる。それだけで濡れていくのがわかり、きゅっと股を閉じた。ルーの熱い視線に声を振り絞る。

 

「ル、ルー……もう」
「やめてください、ですか?」
「~~っ、トリックオアトリート!」

 

 顔を真っ赤にすると、ルーの股間に手を挿し込む。
 それは予想以上に大きくなっていて目を瞠った。すると、少しだけ呻いたルーに抱き上げられるとデスクの上に押し倒される。いつもなら怒るし怒られもするが、大きく両脚を開かされた。その間からネクタイを解きながら息も汗も零す夫が見え、お腹の奥が疼く。

 

 跨れると同時にショーツも落とされ、秘部に硬いモノが宛がわれた。
 彼の首に腕を回すと、互いを目に映したまま口を開く。

 

「「トリックオアトリート」」

 

 魔法の呪文が重なったように、身体も繋がる。
 解してないせいか痛みがあるが、口付けられると緩み、最奥へと招いた。

 

「あぁあぁっ、ルーんんんっ、あぁああんっ!」

 

 腰を持ち上げられるといっそう深く繋がり、突き上げられる。
 それを何度も何度も太陽の下で繰り返し、絶頂する自分ばかりか、愛しい彼の表情も見ることが出来た──。

 

 

 


「ヒナタ様とアズフィロラ様……遅いですね」
「私の剣……本当に戻ってくるんでしょうか」

 


 翌日、来ない待ち人に私達は深い溜め息をついた────。

  / 物語 /

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