top of page
破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*10月11日*バロン誕生日

*ヒューゲバロン視点&食虫有

 ポンポンポンっと、規則正しい音が響く。
 毎日飽きもせずと言われるが、実際は飽きる作業。いや、マジ代わってよと思わなくもないが、それが僕の仕事であり、楽しみでもあるのだ。

 


『ほう? ドSを自称しておきながら心はMであったのか』
「いや~社畜って~こんなもん~だと~思うよ~~」

 

 溜め息まじりに言うと、向かいに座る魔王くんは首を傾げつつも酒瓶に口をつけた。

 

 夜三時を回った、アーポアク国の宰相室。
 時間に関係なく爆音や騒ぎが聞こえるのも、対峙している魔物の頭領と呑むのもいつものこと。『四聖宝』とは違い、恨みがない僕にとっては良い晩酌相手だ。政治の話を含めて。

 

『となると、次の『会議(コンロクィウム)』にはアヤツが必要か』
「ま~頃合いだと~思うよ~」
『しかし、我には騒動をおこす図しか浮かばぬな』

 喉を鳴らして笑う彼に『うむ!』と、笑顔で頷く話題主が浮かぶ。
 口元は笑っているのに笑えない僕はやはり社畜のようだが、なんとかなる精神で酒に手をつけた。すると、瓶を置いた魔王くんが立ち上がる。さほど時間は経ってないはずだが、細められた目と近付く気配に察した。

 

「カーくんか~」
『『四大』のなかで、もっとも厄介だからな。今夜は失礼する……と』

 

 くわばらと呟く彼は何かを思い出したように足元を叩く。と、影の中からにゅるりと黒ヘビくんがワインにとぐろを巻いて出てきた。

 

『南(メリーディエース)のだ。美味いぞ』
「ありがと~でも~なんで~リボン~?」

 

 美酒が揃う南国の土産は嬉しいが、なぜかコルクに小さなリボンが巻かれている。首を傾げると、魔王くんと黒ヘビくんも同じように傾げた。

 

『なんでって、今日は主の生誕日なのであろう? 輝石が『バロン、おめでとー!』て言いながら、ベッドに沈んだぞ』
「我慢して0時を待つより、祝いにきてほしかったね」

 

 ヒナタちゃんの根性ってわからないと、眉間の皺を押さえる。
 すると、ワインをテーブルに置いた魔王くんは、くすくす笑いながら影を纏いはじめた。

 

『主をそんな顔にできるのは、前王と輝石ぐらいのものだな』

 

 意味深な言い方を問うよりも先に影へと消え去る。
 入れ替わりで浮き上がった影からはカレスティージが現れ、長い前髪から覗かせる藍色の目を瞬かせた。

 

「なんです? ……気味悪い笑顔して」
「血まみれの~キミに~言われたく~ないかな~」

 

 裏仕事の後だとわかるぐらい、青髪や服が血に染まっている。
 だが、見慣れている僕は笑うだけ。いつものようにマイペースに語尾を伸ばして書類に判を押す。忘れていた誕生日だからといって変わりはない。

 


 

 

 


 ──と、思っていたが、斜め上の連中が多いことを忘れていた。

 アズフィロラは真面目に書類と一緒に誕生日プレゼントを持ってくるも、なぜか卵型のカスタードプリン。そのネタはヒナタちゃんだけでいいよとツッコミたかったが、バンジージャンプで横切るイヴァレリズを斬るのに遮られた。
 

 廊下で会ったラガーベルッカに書類はと聞けば笑顔で逃走。『ストレスにならない本』を置いていくとか憎ったらしくて、発散方法として書かれていた魔物惨殺をドラバイトで決行。スッキリはしたけど、著者が『なり男』だったのは微妙な気持ち。カツ丼を奢ってくれたアウィンとの会話で忘れたけどね。

 

「すごいねー。昔のーバロンーだったらー誰もー近付かなかったーのにー」
「あれは~呼び名が~悪すぎ~なんだよ~」
「えー、『死神騎士』ピッタリじゃない」

 

 ワザとらしい言い方に、片眉が上がったのが自分でもわかる。
 そんな僕を一挙一動させることが出来る数少ない一人。向かいに座る親友ミライラくんは、変わらずのアイマスクを物ともせず、ワインの入ったグラスを手に取った。

 

「そんな『死神』を愛してくれた姫君はまだこないの?」
「大人しくしてる姫君じゃないからね~。寝る前……そろそろ来るんじゃない?」
「祝いに来るって、信じて疑わないんだね」

 

 指摘に、時計を見たまま固まる。
 視線だけ移すと、親指でアイマスクを上げた親友が笑っていた。深緑の瞳もどこか楽しげで、ちょと悔しくなっていると、ワインを飲み干したミライラくんは立ち上がる。

 

「親友としては嬉しいから、今度会う機会つくってよ」
「……ミレちゃん~餌に~して~いいならね~」
「本人が良いって言ったらねー……じゃ、これプレゼント。またね、バロン」
「ありがと~」

 

 包装された箱を受け取ると手を振る。
 ひらりとコートを翻したミライラくんも手を振り返し、纏った影と共に消えた。自分の表情を崩すことが出来る人達は食えない者が多いと、一息つきながらプレゼントを確認する。

 

 と、聞き慣れた駆け足が聞こえてきた。
 そして、開かれた扉と同時に元気な声が響き渡る。

 

「バっロ~ン、元気か~!?」
「ヒーちゃんには~負けるけど~元気~だよ~」

 

 予想通り、現れたのはヒナタちゃん。
 ミライラくんと入れ違いが多いなと頭を悩ませる僕など知らない彼女はスキップでやってくる。両手には大量のお菓子を持っていて、むふふと締まりのない顔だ。

 

「四方の子供達に貰ったんだ。でもさすがに量が多くてな、仕方ないから貴様におすそ分けしてやろう」
「おすそ~分けね~それが~……僕の誕生日プレゼントなのかな?」

 

 語尾を解いた声で問う。と、ヒナタちゃんは笑顔のまま固まり、持っていたお菓子をすべて落とした。沈黙が続く中、少しばかりの冷や汗をかきながら問う。

 

「もしかして……忘れてた?」
「わ、忘れてないっ! 忘れるわけないだろ!! 誕生日おめでとうっ!!!」
「うっわ、心こもってな~い」
「うるっさいっ!」

 

 威張っておきながら慌てている彼女は明らかに忘れていたようで、言い訳をはじめた。

 

「あ、朝は貴様が寝てたから後にしようと……ちゃ、ちゃんと用意はしてある! してあるから取ってくる!! だから落ち着こう!!!」

 

 必死に止めるのは、僕が立ち上がったからだろう。
 顔を真っ青にした彼女は涙目で自室に戻る意思を示すが、自然と伸びた手が彼女の顎を持ち上げた。口角も一緒に。

 

「いいんだよ~……ヒナタちゃんがプレゼントでも?」
「まっ……うわああああぁぁあぁあんっっ!!!」

 

 反対の手で指を鳴らすと、ミライラくんから貰った箱が破ける。そして、勢いよく伸びた蔓がヒナタちゃんの四肢に絡まり、持ち上げた。

 

 親友からのプレゼントは食人植物。
 南国にしか生息しておらず、名の通り『人間』を養分にする種類だ。と言っても、本当に人間を食べるのではなく、汗や唾液が好きなだけ。大人しく摂取させておけばすぐ離してくれるが、魔法で急速成長させたせいでお腹が減っているのか、荒々しくヒナタちゃんの服の中に蔓や葉が潜り込んだ。

 

「ちょっ、あっ……な、なんか……甘い匂っ……!」
「逃がさない~ように~だよ~」

 

 下着ごと服が持ち上げられると、大きな乳房が露になる。
 葉が胸の先端を擦れば、僕でもわかるほど甘ったるい匂いが漂ってきた。獲物を逃がさないよう、また感度を良くさせる匂いを植物が発しているのだ。当然、擦れば擦るほど匂いと感度は増し、頬を赤めたヒナタちゃんは腰をくねらせる。

 

「っあ……はぁん」
「ヒーちゃん、気持ち良くなるの早くない? それとも、僕より食人プレイの方が好きなのかな?」
「ち、違……あああぁあっ!」

 

 ズボンとショーツを下ろした蔓が秘部へと入り込む。特に精液が大好きだからだ。
 ぐちゅりぐちゅりと水音を鳴らしながら餌となる蜜が零れ、葉の先に黄色の蕾が出来る。さらに蕾はヒナタちゃんの両乳首に被さると、吸引するように引っ張った。

 

「ひゃあああぁああぁぁっ!」
「うっわ、すごい匂い……そんなに美味しいのかな?」
「や、やめ、バあああぁ!」

 

 蕾の一本を胸から剥がすと、先端からポタポタ零れ落ちる蜜と一緒に口に含んだ。植物の蜜だろうが、ヒナタちゃん自身に味がついているかのように甘く、舌で転がしては吸い上げる。
 その度にヒナタちゃんの身体はビクビクと跳ね、秘部から愛液を、口からも唾液を零す。そんな唾液を舌先で舐め取ると口付けた。

 

「んっ、んんっ……」
「ん……トロトロだね」

 

 白糸を垂らしながら顔を寄せると、ヒナタちゃんは虚ろ……否、欲情の目を見せた。そこでズボンから肉棒を取り出した僕は、彼女の前に持ってくる。すぐに口を開いた彼女は肉棒にしゃぶりつき、舐めては吸い、喉奥へと咥え込んだ。

 

「っああ……さすが、ヒナタちゃん。でも、挿入はしてあげないよ」
「んんんっ!」

 

 文句が聞こえたが、気にせず彼女のお尻を持つと、大きく股間を広げる。
 当に愛液を零す穴を悦ぶように、何本もの蔓が我先にと秘部へとツッコんだ。

 

「ふんんんンンっ!!!」

 

 あまりの衝撃にヒナタちゃんは大きく目を見開く。
 だが、ずちゅるずちゅると、なんとも言えない音を響かせる秘部からは胸以上に甘ったるい匂いが漂い、ヒナタちゃんの表情が若干嬉しそうになる。

 

 それは僕も同じ。
 植物のせいか、彼女自身のせいか感度は上がる一方で、両手で持ち上げた胸の谷間に肉棒を挟んで扱く。彼女の口と一緒に動かせば膨れ上がった先端から白液が噴き出し、餌だと狙う植物に揃って囲まれた。
 気付けばしないと言った挿入もするほど昂った気持ちに、彼女の前でしかしない締まりのない顔と笑みを浮かべる。
誕生日というのは、色々と歯止めが効かないものだと──。

 


「あの植物を用意した男に会わせろー! たとえ眼鏡女子の兄だろうが、年上なら容赦せーんっ!!」
「はいはいは~い」

 親友を紹介するのもだいぶん先になりそうで、今日も書類に判を押した────。

bottom of page