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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*12月28日*フィーラ誕生日

*アズフィロラ視点

「Hey、読者のみなさん。御機嫌麗しゅう。俺様誰様イズ様なり☆。今日は俺の幼馴染であり、超超クソ真面目なルベライト騎士団長兼ニワトリの称号を持つアズの誕生日。ここは盛大にチョコをかぶせるというプレゼンノオオオオオォォンンンっっ!!!」

 

 勝手に喋っていた男を、殺意を込めた一振りで吹っ飛ばす。
 窓ガラスが割れたが、見事な月夜と星々に剣を鞘に戻すと椅子に腰を掛けた。吹き通る風に怒りを冷やしながら、ゆっくりとしたためる。

 

 イヴァレリズ宛の請求書を。

 


* * *

 


「え~また~~?」

 

 正午前に訪れた宰相室。
 いつも以上、否。部屋すら埋まりそうなほど書類が積み重なっているのは年末だからか。そんな中でも変わらず判子を押し続けているヒューゲバロン様は、俺の書類。特に一番上の請求書を見ると溜め息をつくが、先手を打った。

 

「メラナイトの管轄はアクロアイトですし、イヴァレリズ"個人”もこちらのはずですが?」
「いや~まあ~そうなん~だけど~~……アズフィロラの忍耐が足りないとも言わない?」

 

 にっこりと微笑まれ、にっこりを返す。
 判子を押す音だけが響くが、しばしの間を置いてヒューゲバロン様が降参した。

 

「わかったよ……あとでヒナタちゃんに手配するよう言っておく」
「お願いします。ついでにイヴァレリズにハリセンを落としてくれと伝えてください」
「そんなのいつもの……あ~そう言えば~今日~アーちゃん~誕生日~だったね~おめでと~~」
「ありがとうございます」

 

 口調を戻したのに構わず頭を下げる。だが、なぜここで思い出したのか疑問に思っていると、くすくす笑いながら答えをくれた。

 

「ヒーちゃんだよ~いつも~誰かの~誕生日の時は~報せて~行くからね~~……そう考えると、彼女が墜ちてきたのは昨日だったわけだ」
「……ですね」
「今年も屋敷で誕生会があるのかな?」

 

 意地悪な問いに肯定の苦笑を返す。
 今日は俺の誕生日。騎士団長と四天貴族の身であるせいかおかげか、ルベライトの民であれば知っている情報。今朝から祝いの言葉や贈り物をいただき、夜には屋敷でパーティが行われる。

 

 毎年恒例で、いつも催さなくていいと言うのに開催されるパーティ。
 気疲れするが、ある年を境に少し楽しみになった。否、楽しみと言うよりは思い出し笑いするのだ。前日に奇怪な登場で降り立ち、パーティを賑やかにした──ヒナタに。


 

「ああ~、あれは面白かったな。空中でお前をハリセンで墜としたとか、ケンカしたとか。あまつさえ、庭園でキスとか真面目な騎士様が「斬るぞ?」

 

 殺意を含んだ声と視線に、向かいに座る漆黒の男──イヴァレリズは笑みを浮かべるとグラスを手に取った。

 

 もうじき吹っ飛ばしてから一日が経過しようとする時間。
 屋敷のパーティも終了し、騎士団長としての仕事も終えた俺を待っていたのは、相変わらず無断侵入していたイヴァレリズ。その手には上等の酒とグラスを持ち、溜め息をつきながらも月夜が見える窓際で晩酌していた。が、余計な過去をほじくり返され苛立ちが増すばかり。

 

「そもそもお前がチョコなんぞ渡したせいだろ」
「キレるアズを止めるには良いアイテムじゃねぇの。ほら、カレスからのチョコも食っていいんだぜ?」
「いらんっ!」

 

 くすくす笑いながら、ティージから貰った『ナオ』のチョコを見せられるが断る。代わりにエジェアウィンから貰ったササミの和え物を摘まみに食べた。『共食いなり~』など言われるが、美味しさが上。

 伝令ヒナタのおかげかせいか、ティージのチョコにエジェアウィンの和え物他、ラガーベルッカ様からは家庭菜園の本を、ヒューゲバロン様からは植物をいただいた。植えたらヤバい気がするが、ルベライト外の者から祝われるのは悪い気はしない──むしろ。

 

「……楽しそうだな、アズフィロラ」

 

 グラスに入った酒を回す男は赤月の瞳を細める。
 その口元は深い弧を描いているが、一息吐いた俺はグラスに御酒を注いだ。

 

「……違う」

 

 否定に、赤月が満月のように丸くなる。構わずグラスを取ると訂正した。

 

「楽しいではなく、嬉しい……だ」

 

 視線を合わせた俺に、イヴァレリズは虚を衝かれたのかいっそう目を丸くした。が、すぐ喉を鳴らしながら笑う。

 

「っはは……そりゃそうだ。夢が叶って良かったじゃねぇか、赤騎士様」
「フン、斬るぞ」

 

 鼻で笑う男にそっぽを向くが、自然とグラスを持つ手が上がり、重なったグラスが小さな音を鳴らした。誕生日とは違う祝いの音を。


 

 

 

 


「くっそ……イヴァレリズのヤツ……」

 

 壁に手をつけたまま覚束ない足取りで寝室へ向かう。
 明日も朝から仕事があるというのに容赦なく飲まされ『おめっとなり☆』と、飲ませた本人は片付けもせず去って行った。苛立ちはあるが今は横になるのが先。

 

 なのだが、玄関扉を開く音と駆け足が聞こえた。
 玄関の結界を通り抜ける力と聞き覚えのある足音に顔を青褪めるのは、今の身体と頭にはマズい相手だからだろう。だが、そんなこと知る由もない声が廊下に響いた。

 

「フィーラ~っ! 誕生日おめでとうっ‼」
「ぐふっ!」

 

 姿が見えたと思った瞬間、夜なのに元気な彼女、ヒナタに抱きしめられた。

 

「いや~、すまんすまん。甘くないクッキーやプレゼント用意してたら遅く……ん? フィーラ?」

 

 あまりの締め付けに身体が耐え切れず、膝を折った……気持ち悪い。おえっ。

 


「珍しいな、貴様が飲みすぎるなんて」
「イヴァレリズのペースに乗ってしまったんだ……」

 

 寝室のベッドに座る俺の背を擦るヒナタに一息つく。だが、イヴァレリズの顔が浮かぶだけで腹が立ち、相手が彼女ならと悪態をついた。
 

「あいつは自分が好きな酒だと酔わないから、祝いを言い訳に俺を酔い潰す気だったんだろ。本当……嫌な男だ」

 

 呟きに、ヒナタの視線が刺さるが口元は笑っている。
 それは『嫌な男』と言いながら、さほど嫌そうな顔をしていないからだろう。が、大きな息を吐いた。

 

「食っていった分の料金請求してやる!」
「あっははは! フィーラらしいな。いっぱい取れ取れ。バロンには私から言っといてやる……が」

 

 大笑いしていたヒナタに後ろから抱きしめられる。
 先ほどとは違い、優しく包み、頭も撫でられると耳元で囁かれた。

 

「私がいるのにイズの話とは妬けるな」

 

 撫でる手とは違い不満気な声。
 振り向けば赤めている頬が少しだけ膨らんでいるように見えた。自然と笑みが零れると顔を寄せる。

 

「バカを言うな……愛する姫君(キミ)が一番のプレゼントに決まっているだろ」

 

 抱きしめ返すと口付ける。
 ピクリと反応されるのは酒の味が混ざっているからだろう。それでも頭を固定すると唇を重ねては舌を挿し込み、酒を、俺の味を渡す。

 

「ふっ……んんっ、フィー……ンンっ」

 

 一分以上続けているせいか、さすがのヒナタも身じろぐが、許さないと重ねる。次第に背中を叩く手が強くなり、唇を離すと同時にベッドに押し倒した。

 

「っはあ……はあ……もう、貴様んん!」

 

 涎を零しながら睨まれるが、また口付ける。
 今度は軽く、リップ音を鳴らしながら上着も下着も捲ると、柔らかな乳房を揉んだ。大きく容(かたち)を変えては揉み込み、先端を引っ張る。

「っひゃ! あ、ま……ンンっ‼」

 

 ビクリと跳ねるヒナタの唇をまた唇で塞ぐ。
 酒のせいか、剣がないせいか、今はただの男として姫君を求めていた。

 

「っはあ……やはり、ヒナタのプレゼントが一番だな」
「私は自分をプレゼントにした覚えはぁ……あうっ!」

 

 酒のせいか、キスし過ぎたせいか、ヒナタの顔は真っ赤。
 その目には同じように頬を赤めた自分が映り、いっそう嬉しくなった。弄り続けていた先端が赤く勃つのがわかり、搾り上げるとしゃぶりつく。

 

「ふゃあああぁ! イズみたいなことを……あああぁっ‼」
「っは……心外だな……イヴァレリズより俺の方が上手いと思うが?」

「ああああぁぁっ!」

 

 口に含んだ先端を舌先で転がしては吸い上げる。
 その度にヒナタの腰が浮き、簡単にズボンもショーツも下ろすことが出来た。秘部に触れればすぐに蜜が零れ、指を挿し込むと混ぜる。

 

「ああぁ……フィーラ……掻き回すなぁぁ」
「説得力がないな……こんなに零して……美味しそうだ」
「ちょ、待っ、待てえぁあああっ!」

 

 伸ばされる手を無視し、股間に顔を埋めると秘部にしゃぶりついた。
 溢れる蜜を舐めては吸い上げ、秘芽を唇で食んで引っ張る。いっそう跳ねたヒナタが達したことがわかるが、構わず舐め続けながら自身のモノ、肉棒を取り出した。息を切らす彼女の耳元で囁く。

 

「ほら、ヒナタ……挿入(はい)るぞ?」
「わ、わざわざ……っはぁ……聞くな……バカぁ」
「キミのその顔が見たかっただけだ」
「っ!」

 微笑むと、ヒナタの顔が羞恥で真っ赤になる。
 すると、震える両手で両脚を広げ、視線を合わせた。

 

「意地悪するなら……ナカでシてくれ」
「……ああ」

 

 扇ぐのが上手な姫君に酒以上の熱が身体を支配し、充分に勃った肉棒を秘部に宛がう。

 

「美味しくいただこう……ヒナタを」
「っ──!」

 

 腰を持ち上げると、焦らすことなく挿入する。
 滑るナカは広く、すぐ最奥を亀頭が突くと、腰を打つ速度を速めた。

 

「あああぁあ……フィーラ……イい……そこぉお!」
「ああ……知ってる。ココだろ?」
「ひゃあああぁああんんっ!」

 

 敏感なところを攻めれば攻めるほど嬌声と蜜が噴き出し、ベッドが揺れる。が、もっともっとと俺も彼女も求めているのがわかり、加減なく突いた。

 

「ああぁ……イくうぅ……!」
「まだ……まだダメだ……ほら、こっちも」
「あぁ……意地悪するなぁあっ」

 

 違うところを突くと、ヒナタは涙目ながらも睨む。
 それでも突けば突くほど嬌声を響かせ、次第にナカを締めていった。その気持ち良さに、ぐっと繋がりを深くすると子宮の奥を突く。

 

「っ……──!」
「ああああぁぁあ゛あ゛あ゛っ!!!」

 

 互いに限界を超えると、嬌声と共にナカで熱いモノを噴き出す。
 当然それは一度では終わらず、0時を過ぎても飽きることなく抱き続けた。愛の言葉と口付けも忘れずに──。


 

「や~ん、なんで俺を苛めるなり~」
「度数の高い酒を持ってきたせいだ!!!」
「フィーラ、イズー、あんまり壊すなよー」

 

 翌朝、つまみ食いに出てきたイヴァレリズを追い駆け回す。
 ヒナタは元気だが、俺の顔は真っ青。
理由は、飲みすぎると年下好きと年上嫌いが逆転するという彼女の酒癖の悪さが口移しだけでも発揮されたからだ。年下扱いするなと普段いっているが、あの冷たい視線を誕生日の日に向けられるのは耐えられない。

 みんなも、飲みすぎには充分注意してくれ────。

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