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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*3月30日*アウィン誕生日

*エジェアウィン視点

「アウィンちゃん、誕生日おめでとう」
「エジェ兄ちゃん、おめでとー!」
「兄貴ぃ、生誕おめでとうございまっす!!!」
『『騎兵(エクェス)』、きょうもやらせろ』
「あん? またかよ」

 朝から途切れることない祝辞とは別の声に、額の汗を拭ったオレは眉を上げた。
 反対に、魔王と、お供の黒ヘビは、楽し気にオレが手伝う野菜畑を見つめている。一息吐くと、畑の主に許可を貰い、OKを出す。
 さっそく中腰になった魔王は大きな葉を、黒ヘビは根っこに絡みついた。

 

『せー……のっ!』

 

 阿吽の呼吸で両腕と腹(?)に力を入れた一人と一匹は、見事な大根を引っこ抜く。どてんと尻餅を着き、互いの鼻に付いた土が面白いのか笑うが、また大根を抜くの繰り返し。
 なんか、抜く瞬間が好きらしく、最近しょっちゅうやってくる。そんなに楽しいかと、抜いた大根を集めながら訊ねると頷かれた。

 

『男のモノを抜くのとはまた別の愉しさがあるぞ』
「おまっ、そういう下ネタいうのやめろよっ! 大根に謝れ!! 黒王もニヤニヤ笑ってんじゃねーよっ!!!」

 

 とんでもない発言に顔を真っ赤にすると、規格外で売れない大根を投げつける。
 魔王の方は黒ヘビがキャッチするも、カラフルパラソルの下でドーナツを食べていた神出鬼没の黒王には大ヒット。しかし、ショリショリとナイフで皮や葉を落とし、大根スティックにして食べた。が、ハート型のサングラスを取ると、しょんぼりした様子でオレを見上げる。

 

「エジェアウィン……ドレッシング、欲しいなり」
「知らねーよっ!!!」

 

 ツッコミながら大根を籠に入れると、畑主から借りたドレッシングを黒王に渡す。『や~ん、やっさしい』と、腰をくねらせながら礼を言われるが、呆れるしかない。
 そんなオレのとこに小走りでやってきた畑主が、野菜と酒が入った紙袋を差し出した。笑顔で。

 

「団長、いつもありがとうございます。あと、誕生日おめでとうございます」
「お、おう……サンキュ」

 

 今日三月三十日は、オレの誕生日。
 今朝から団員、教会のガキ共、嫌々顔のミレンジェとテット兄、わざわざ訪れてくれたアズフィロラ、たまたま会ったラガーベルッカ、知らない女と歩いていたカレスティージ、魔物討伐に加わっていたヒューゲ。そして、ロジエットからお祝いされた。

 

 街に出れば、今みたいに住民からも祝いの言葉だけでなくプレゼントも貰い、こそばゆい。頬をかきながら黒王からもドーナツを貰っていると、満足したらしい魔王が土手に座り込んだ。

 

『あいもかわらず、『騎兵』は『赤騎士(ルベル)』よりもウブで、おひとよしな男だ』
「貶してるようにしか聞こえねーぞ」
『褒めておる。我と話す『四大の騎士(エクイタートゥス)』は主だけだからな』

 

 喉を鳴らしながら笑われ、そっぽを向く。
 確かに、魔王は魔物で敵。オレ自身こいつのせいで死にかけたこともあるし、女の件で忌み嫌ってもおかしくない。けど、不思議と他三人と違ってさほど恨んでなかったりする。
 女も無事で、過ぎた話。何より、話してみると他の連中よりまともだったからだろう。

 

『ほう、寛大だな。女にも手をだしておる我なのに』
「てめー、ケンカ売ってんのか?」

 

 嫌味ったらしい発言に、ドーナツを食べながら眉を顰める。
 オレが投げた大根を生でバリボリ食べる魔王は、なんでもないように続けた。

 

『そういう嫉妬もだいじだといっておるのだ。優しいのは主の得であるが、優しすぎるのもヒトとしては面白味にかける』
「『アウィンは優しくて可愛い』が、ヒナの口癖なりからね~。あんま男として見られてないなり?」

 

 似た者同士の意地悪い笑みと目に、言葉が詰まる。
 自分では思わないが、他からはよく『優しい』と言われる。特に黒王が言うように、女からは『可愛い、優しい、私の嫁!』と、太鼓判を押されるほど。文句いっても意味がないのは知っているが、ドラバイトにきてもガキ共ばかりの女が浮かぶと無性に腹が立った。

 

 ニヤニヤ顔の二人の方が上だったが。

 

 

 


 陽が傾いた夕刻。
 ガキ共と作ったケーキの箱を手に、騎舎へ戻るための田んぼ道を歩く。

 

 いつもと同じ道なのに寂しさを覚えるのは肌寒さじゃない、さっきまで賑やかだった声がなくなったからだろう。持ち上げすぎだと恥ずかしがっても、団員と住民にお祝いされるのは団長冥利に尽きる。

 

「んでも、なんかなー……」

 

 嬉しいはずなのに気分が晴れ晴れしないのは、黒王と魔王を思い出すからだ。誕生日になら絶対くるだろう、きたら文句を言ってやると思った時に限って来ない女に、呟きを漏らす。

 

「ヒナタの……バカヤロー」

 

 誰も聞いていない、小さな呟き。
 だが、それとは違う音が聞こえた。しかも徐々に近付いてくる。ガラガラという音と声が。

 

「おーいっ! アっウィーン!!」

 

 知った声に振り向けば、ヒナタが猛スピードで突っ込んできた。リアカー付きで。

 

「ようっ、元気か?」
「て、てっめーは、ホントいつも突然だな! つーか、なんでリアカー!?」

 

 笑顔で急ブレーキをかけたヒナタとは反対に後退りする。
 ツッコミ満載に心臓が飛び出すほど驚くが、なんでもないようにヒナタはリアカーの荷物を漁りはじめた。

 

「いやあ、子供達とケーキ作るって聞いてな、いろいろ持ってきた。フルーツにクリームに「もう……終わったよ」

 

 遮った声は自分でもわかるほど低い。嬉しそうに話す顔が嫌だと、やっぱりコイツはガキ共が一番だと、持っていた箱をぎゅっと握った。

 

「ヒューゲがいたのもあって、すぐ戦闘終わってな……菓子作りも早めに出来たんだ。リアカーまで持ってきて悪いけど、意味なくな「あー、違う違う」

 

 今度はオレの声が遮られる。
 顔を上げれば、ヒナタは笑顔で中身を見せるようにリアカーを傾けた。

 

「リアカー(これ)ほとんど、アウィンへのプレゼントだ」
「は?」

 意外な返答に虚をつかれる。
 よく見れば、ケーキの材料となるのは少数。大半は肉や野菜、コーラ樽と、オレの好きな物が積んであった。住民から貰った物もあるが、当然知らないヒナタは笑いながら話す。

 

「好きそうなのを買って値引き交渉してたら、こんな時間になってな」

 

 顔を伏せているオレの目に、ヒナタの靴が映る。次いで同じハチマキを巻いた腕が回され、抱きしめられた。

 

「遅くなったが、誕生日おめでとう」

 

 優しい声と一緒に胸に顔を埋めたヒナタが、笑顔でオレを見上げる。
 それだけで全身が熱くなった。拗ねてたのも、恥ずかしいのも、全部どうでもよくなるほど嬉しくて──。

 

「ん? どうした、アウィ……んっ!」

 

 抱きしめ返すと顔を寄せ、口付ける。
 落としたケーキなど気にせず、身じろぐヒナタの唇を追ってまた口付ける。次第におとなしくなり、唇が重なると舌を挿し込んだ。

 

「ん、っふ……アウィン」
「……好きだ」
「っ!」

 

 唇を離すと、耳元で囁く。
 意外だったのか、ヒナタは顔どころか耳まで真っ赤になる。それだけでいっそう身体が、下腹部が熱くなった。それはヒナタも同じのようで、ポンチョの中に潜らせた手で胸を揉めば、敏感な身体がビクビク動く。

 

「ちょ、こんなとこで……」
「場所を気にするてめーじゃねーだろ」

 

 ポンチョも上着も捲り、下着のホックを外せば、大きな乳房が露になる。
 解放された胸は大きく揺れ、外気ではなく羞恥で赤くなったであろう乳首が丸見えになった。それを指で摘む。

 

「ひゃっ! や、やめ……」
「臍を突かれるのと、どっちがいい?」
「うう~」

 

 お腹に手を持ってくると、ヒナタは恥ずかしそうに胸を隠していた両腕を離す。さらに、リアカーの縁に両手を乗せるなど、他連中に“仕込まれている”ことに苦笑しながら頭を撫でた。
 振り向いたヒナタは赤めた頬を膨らませている。きっといつもの自分の姿だろうと、愛でるヒナタの気持ちになりながら口付けると、後ろから乳房を揉んでは引っ張った。

 

「ふっ、ああぁ……」

 

 刺激に身体が大きく揺れるが、決して両手を離そうとはしない。
 いつもならオレに捕まれとか、それなりに優しく言うだろうが、今日はしない。絶対。

 

「ひゃっ!」

 

 腰を屈めたオレは、ヒナタのズボンもショーツも下ろす。
 胸とは違う柔らかい尻を撫でながら顔を埋めると秘部を舐めた。舌先で舐めれば舐めるほど蜜と嬌声が響き渡る。

 

「はっ、ああぁ……アウィン」
「ん、ほら……むっちゃ濡れてんじゃねーか……外でされるのが嬉しいんだろ」
「い、意地悪~」

 

 涙目で睨まれるが、気にせず舐めながら指をニ本、秘部に挿し込んだ。
 ぐりぐりと、ナカで指を回す。その中で一番声が良かった場所を突いた。

 

「ひゃあああぁぁ!」

 

 予想通り、甘い嬌声と一緒に蜜が噴き出た。
 気持ち良さに腰が立たなくなったのか、ヒナタは屈み込むが、秘部からはまだ蜜が零れている。蜜溜まりに息を荒くするオレも熱いモノを解放するため、ズボンから肉棒を取り出すと、ヒナタの腰を持った。

 先端を秘部に近付けると、ビクッと反応したヒナタは振り向く。
 まだ涙目ながらも、その奥に映るオレと同様、期待しているのがわかる。それでもそっと問うた。

 

「挿入(いれ)て……いいか?」
「……聞くな、バカ」

 

 返ってきた声と笑みに、絶対優しくしないと決めた誓いが早くも崩れ去る。そんな自分に苦笑しながら、好きだ、大好きだ、愛してる姫君に口付けると肉棒を挿し込んだ。

 

「あ、ああぁ……!」

 

 熱く、ぬめったナカに肉棒も悦ぶかのように大きくなり、苦しくなる。だが、もっともっとと腰を動かせば締まりも強くなり、辿り着いた最奥を勢いよく突いた。

 


「ああああああぁぁぁぁ!!!」

 


 一番の嬌声と共に、愛液と白濁が地面を染める。
 それはケーキよりも甘く、誰よりも嬉しい誕生日プレゼント──。


 

「貴様が食べろ! 主役だろ!?」
「いや、ダメにしたのはオレなんだから、おめーが食べろ!」
「よーし、ならば一緒に食べよう!」
「おう、いいぜ!」
「優しい世界じゃな」

 

 潰して、無駄にしてしまったケーキを互いに作ったオレ達。
 その横で呆れていたロジエットの指摘に、ヒナタのケーキを頬張っていたオレは首を傾げた。

 オレは優しくなんかねーよ────?

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