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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*見舞いの姫初め

 今日は新年。
 数日前から御節を作り、夜の営みも極力極力抑えてもらい、皆で新しい年を迎える。何よりもめでたい日──なのに。

 


「うん、風邪ね」
「しょ、しょんな……へっくち!」

 

 ぶるりとした寒気に、くしゃみをする。
 今朝からどれだけティッシュで拭っても鼻水は落ち、喉はガラガラ、視界もぼんやり。まさかと、ジェビィさんに診てもらったところ、大当たりの風邪であった。いや、ちっとも嬉しくない。

 

「な、なぜ今日なのだ! 子供達に囲まれたウハウハ新年を迎えるはずが!! 私のバカヤロー!!!」
「それだけ元気があれば充分だけど、今日一日は医療班(ここ)に監禁されててね」
「監禁っ!!?」

 清々しいほどの診断に驚くことよりも、女性(ジェビィさん)に監禁されるというシチュに新年最初のトキメキを感じた。

 


* * *

 


 ぽかぽかと暖かいのは熱のせいだろうか。
 でも、内側ではなく外側から暖めるような感覚で、次第に心地良くなってくる。大切に扱うように優しい、よく知っている手だとわかると、ゆっくり瞼と口を開いた。

 

「……フィー……ラ?」
「ん? 起こしてしまったか」

 

 明かりよりも眩しい太陽の髪と瞳が見えると頬が緩む。
 それだけでフィーラも口元を緩めると頬を撫でてくれた。気持ち良さに自分から頬を動かすと、ほっとしたような声。

 

「その様子だと大丈夫そうだな」
「うむ……だいぶん寝たからな。心配したか?」
「聞いた時はな。だが、キミ相手だとウイルスに同情すっだ!」

 

 失礼なと、指を甘噛みした。
 さすがに予想外だったのか、手を離したフィーラはジと目を向けるが、私はそっぽを向く。ついでに、ジェビィさんがいないことを確認すると、椅子の上に置いてある物に顔を顰めた。

 

「貴様の中で見舞い品というのはフルーツしかないのか?」
「ん? ああ、ビタミンも豊富だし良いと思うんだが……」

 

 私の視線に、フィーラはバスケットに入ったフルーツセットを手に取る。
 覚えのある物は言うまでもなく高級品で、味も文句なし。とても美味しかった。それは認めよう。認めるが、一人で食べるには量があるし、身体が辛い時は誰かに剥いてもらわなければならない。ぶっちゃけ面倒くさい。

 

「てことで、今度からは缶詰を持ってきてくれ」
「それは俺のプライドが……」
「缶切りも忘れるなよ。あと……もうひとつを出せ」

 

 目を細めてしまうのは、彼の見舞い品がフルーツセットだけではないと知っているからだ。口篭ったフィーラは、案の定フルーツの中から赤いリボンが巻かれた卵を出した。

 

「やっぱりな! もうっ、ちゃんとゆで卵だろうな!? 生だったらここじゃ卵かけご飯にしか出来ないぞ!!!」
「ま、待て! 違う!! 最後まで見てくれっ!!!」

 

 両手で顔を覆う私に、フィーラは必死だ。
 視線を上げると、緊張した面持ちで卵の上を持った彼は、パカリ。上部の殻が取れた。だが、現れたのは黄身でも白身でもない、つるんと綺麗なカスタードで覆われた……。

 

「卵型プリンだ!」
「紛らわしい!!!」

 

 余計なネタをぶっこみやがってとベッドを叩く。
 脱力していると、椅子に腰をかけたフィーラは備え付けのスプーンを手に取った。

 

「ほら、あーん」

 

 すっと掬ったプリンを差し出される。
 普通は反対かもしれないが滅多にしてくれることじゃなくて、風邪とは違う意味で頬が熱くなった。見つめる目は口元と同じく優しくて、口を開くとパクリと食べる。とても濃厚で甘くて。

 

「むふ、むふ……美味い」
「それは俺の口付けよりもか?」
「え……」

 

 頬が緩んでいると、目前にフィーラの顔。そして唇が重なった。ちょんと乗せるだけの軽いキスが。すぐ離れたことに瞬きすると、ニッコリと微笑まれた。

 

「答えは風邪を治してから聞かせてくれ」

 

 そう言って、またプリンを掬って差し出す。
 パクリと食べたが、頭に残る微笑に味がわからなくなった。

 


* * *

 


「なるほど、これは負けてられませんね」
「何を見て言っちょんだ」

 

 フィーラが去り、りんごをもぐもぐ食べているとベルがやってきた。
 口元に手を寄せた彼は何かを考えていたが、すぐ笑みを浮かべると椅子に座り、袋を差し出す。

 

「お見舞いです」
「いらん」

 

 即答に、ベルは笑顔のままゆっくりと首を傾げる。
 書庫住まいを考えると、暇潰し用に本を持ってきてくれた。と、思うだろうが、見るからに袋が本の形をしていない。ということは……と、最後のりんごを食べ終えると呟いた。

 

「下着だろ」

 

 そっぽを向くが頬が赤くなる。
 そんな私にベルはニッコリと微笑んだ。肯定だ。

 

「もうっ、そんなのを見舞い品にするなと何度いえばわかるんだ! 風邪の時に着ても寒いだけだぞ!! わかったなら持って帰れ!!!」

 

 一気にまくし立てると、掛け布団を被る。
 突き放した言い方だとは思うが、羞恥の方が勝っているんだ! 耳まで真っ赤なんだ!!

 

「それは残念ですね」
「ひゃっ!」

 

 少しだけ掛け布団が捲られると、耳元で囁かれる。
 慌てて耳を隠そうとするが、大きな手に腕を捕まれてしまった。身動きひとつ取れない耳元で、また囁かれる。

 

「今日のは冬に合わせて、柔らかく、ふわふわした素材なんですよ?」
「あ、あ……」

 

 “柔らかく”と“ふわふわ”を強弱つけて言うと、素材を確かめさせるように気持ち良い布地が頬にあたる。確かにこれは良いなと頬が緩んでいると、さらなる攻撃が落ちてきた。

 

「色は黄色で、可愛いお花の刺繍と、控えめなリボンとレースがあるんですよ。恥ずかしがり屋で可愛らしいヒナタさんにピッタリでしょ?」
「う、うるさい、変態ぃ~!」

 

 ゆっくりゆっくりと耳元で説明され、身体を小刻みに揺らす。
 心臓はバクバク、頬もホカホカ、下腹部なんてグチョグチョだ。なのに今度は着ているところの想像話をされ、何度も何度も苦手な『可愛い』連呼に……限界を超えた。

 

「も、もう……許してくれえぇ……!」

 

 両手で口元を押さえ、涙目で懇願する。くすりと笑ったベルは耳朶に舌を這わせた。

 

「ひゃうっ!」
「では、治った暁には身につけて、私に跨ってくださいね……奥さん?」

 

 甘く優しい声音に、言葉の意味も忘れ必死に頷く。
 それからは頭を撫でられたりと、珍しく年上に甘えた。

 


* * *

 


 ベルが出て行ってだいぶん経つのに、まだ耳が熱い。
 布団に寝転がっても全身にめぐった声が思い出され、ゴロゴロ身体の向きを変えていた。
すると、コトリと何かを置く音。

 見上げると、いつの間にか枕元に皿が置いてある。白飯がちょっと歪な寿司が二貫。どこからだと上体を起こすと、ベッドの端から、もう一皿でてきた。恐る恐るといった両手と一緒に。

 

「…………スティ、出てこい」
『っ!?』

 

 呆れ声にビクリと跳ねた両手が、その場で固まる。
 次いでオロオロするような動きをし、皿を受け取った私は溜め息をついた。

 

「ジェビィさんはいないから、安心して出てこい」

 

 苦手な場所であることを察した言葉に、ほっとした空気が流れた。
 それから両手が引っ込むと影が集まり、人の形を取ると、スティが現れる。が、なぜか黒ウサギで顔を隠していた。

 十年前から持ち続け、今ではボロボロになった大きいウサギで。

 

「何を戸惑っているんだ?」

 

 顔を隠す時の癖に小首を傾げる。
 そっと藍色の目を片方見せた彼は視線をさ迷わせた。

 

「あの……お見舞い……何がいいかなって考えて……スズが寿司って言ったから……」
「食いたかっただけだろうな」
「……やっぱり、クッションにすれば良かった」

 

 独り言のようだったが、つまるところ『寿司じゃ怒られる』と思ったのだろう。他の連中以上に怒られるのを恐れている様子に、ぷっと噴き出した。

 

「あっははは! たかが風邪ぐらいで大袈裟だなあ」
「で、でも……!」

 

 お腹を抱えて笑う私にスティはあたふたするが、手招きにピタリと止まる。
 一瞬躊躇いを見せたが、両手を広げると堪えきれないというように腕の中に収まった。同じように背中に腕を回したスティは胸に頬を寄せ、私は髪を撫でる。

 

「寿司もクッションも嬉しいが、スティが来てくれたのが一番だ」
「ほんと……?」
「まあ、スズとナズも一緒が「ダーメ」

 

 つい本音を言うと首筋を吸われる。
 いつもより痛みはないが、吸われたところを舐められると身体が跳ねた。抱きしめる腕を強めたスティはそっと囁く。

 

「治ってもボクしか見ちゃダーメ……わかった?」

 

 ベルとは違う艶めいた囁きが全身をめぐる。
 それだけで吐息を漏らすと、再び首筋に唇があてられ『返事は?』と促された。ただただ頷くしかない私に微笑む少年はもう大人で男で旦那であると再認識させた。

 

 サーモンを持ってきたと言いながら実はマグロだったオチに、料理が壊滅的だったのも思い出す。


 

* * *

 


「ラガーベルッカもだけど、カレスティージの食知識はどうなってんだ」
「うむ、揃って食えればいいと思っておるせいだろう……その点、アウィンは安心だな。さすが私の嫁っ! 美味いっ!!」
「そりゃどーも」

 

 さすがに十年も言われ続ければ慣れたのか、椅子の上で胡坐をかくアウィンは頬をかいた。そんな彼のお手製、卵粥はとても家庭的な味がして美味しい。

 

「貴様はなぜこんなに料理が上手いのだ?」
「ああー……意外と楽しかったからと、ヒューゲに負けたくなかったから」
「は?」

 

 口に入れる手が止まる。
 なぜバロンの名が出るのだと疑問符を浮かべていると、アウィンはそっぽを向いた。

 

「オレ、箱入り息子で料理なんて全然出来なかったし、女がやるもんだと思ってたんだよ……けど、ヒューゲが普通に作ってて……」

 

 ぐっと拳を握りしめ、歯を食い縛る様子に相槌だけ打つ。
 教会に身を寄せていたのであれば炊事洗濯はさせられるだろうし、バロンは要領が良い。実際作ることは少ないが、美味いのは私自身認めるところだ。昔は彼を敵視していたというし、悔しかったのだろう。
 飲み干したグラスを置くと、彼の頭に手を乗せた。

 

「経緯はなんであれ、今はアウィンの方が美味いし、今日も持ってきてくれて嬉しいぞ。ありがとう」

 

 めいっぱいの感謝を笑顔で伝えると頭を撫でる。
 何やら目を見開いたまま固まってしまったが、構わず撫で回した。しばらく続けても何も言わないため、今日は年始サービスかと、さらに撫で回す。と、勢いよく抱きしめられた。

 

「わわっ! す、すまん!!」

 

 やりすぎたと反省するが、肩に顔を埋めたアウィンは何も言わない。
 むしろ頬を伝ってくるのは熱。横目で、耳まで真っ赤なことに魔が差し、ふっと息を吹きかけた。

 

「のわっ!」
「うひゃっ!」

 

 イタズラにイタズラ返しされるように、臍を突かれ、共にベッドに倒れ込む。だが、胸元に顔を埋めたアウィンは軽い臍連打を続けていた。

 

「ちょ、あ、ああぁ、すまんすまん! ごめんなさい!!」

 

 軽くても苦手なものは苦手で、逃げるように、隠すように、身体を動かしながら謝罪する。しばらくして止まり、荒い息を吐いていると影がかかった。見上げれば跨るアウィンと目が合う。
 真剣な表情に動悸が早くなっていると、結ばれていた唇が弧を描いた。

 

「褒めてもらった分、治ったらイジメにイジメぬいてやるから、覚悟しろよ」
「あ、悪役め~!」

 

 良い子なヒーローは左手首を握ると、ハチマキとブレスレットに口付け落とした。どこか意地の悪い笑みを浮かべていることに、照れ隠しの代償は大きすぎたと反省する。

 


* * *

 


「な~んで~僕~あんな~敵視~されるん~だろ~~」
「なんで私はいつもこんな目に遭うんだああぁあ!!!」

 

 悲鳴を響かせると、椅子に腰をかけるバロンは眼鏡を上げた。
 レンズに映るのは、見舞いだと渡された食中の蔓に絡まっている私。鉢も花も小さかったため油断した。どこまでも蔓だけが伸び、寝転がる私の動きを封じていく。

 

「いやあ~そろそろ~溜まってる~頃かな~って~~」
「な、なんのこと……ぁん」

 

 くすくす笑う声に反論するが、蔓の先が執拗に胸の先端やショーツを擦る。パジャマ越しではあるが、くすぐったい。何より疼いてしまうのは、見舞いに来た旦那達にやられたからだろう。

 

「あれれ~エッチまでは~してない~よね~~?」
「な、なんでそんなのわか……ひゃっ!」
「他の~見舞い品~見れば~……わかるに決まってるだろ?」

 

 視線がフルーツや袋や皿に移る。
 くすりと笑い、訊ねる声はどこか冷ややかで、身体がぶるりと震えた。バロンの指が動けば蔓も動き、パジャマの中に潜ってくると、下着越しに胸とショーツを突く。

 

「ふっ、あ……ん」
「ヒナタちゃん愉し……いや、辛そう、かな?」
「バっ、バッカ……ああぁ!」

 

 蔓が器用にショーツの底とブラジャーをズラし、ぐちゅぐちゅに濡れたナカに躊躇いもなく入り、巻きついた乳房を搾る。愛液とミルクがパジャマの中で溢れた。

 

「あ、ああぁ……やめ……あぁ」
「あれれ~望みを~叶えて~あげたのに~気に入らな~い?」

 

 傍観していたバロンが枕元に座る。
 見上げれば、愉しそうな金色の瞳と笑みがあり、下唇から唾液を落としながら訴えた。

 

「バロ……ン、助け……あぁん」
「やだよ。風邪引きさんじゃないか……だから治ってから助けてあげる」

 

 ニッコリと微笑まれ、涙目になる。
 当然そんな顔をしても、舌で唾液や頬や耳を舐めてくれるだけ。決して唇や刺激を与える場所には手を出さない安定のドSだ。

 


* * *


 

 意識が飛んでいたのか、目覚めたのは深夜だった。
 バロンも食虫もいないことに安心したが、下着は濡れたまま。羞恥と怒りで掛け布団を被った。

 

『おい、輝石。餅を焼いてくれ』
「なんでだ!!!」

 

 突然の声に勢いよく起き上がると、いつ入ってきたかわからない魔王を睨む。すると、ひょっこりと顔を出したヘビが、咥えていた一輪の花を差し出す。咄嗟に受け取ると魔王は背を向けた。

 

『ではな』
「え、あ、あ、見舞いなら見舞いと言え!」
『我ではなくヘビからだ』
「……貴様と違って優しい子だな」

 

 そっけない男にこちらもそっけなくすると、腕を伝って上ってきたヘビと頬擦りする。すると、腕を組んだ魔王は口角を上げた。

 

『ほう、旦那達から貰っておきながら、我にも要求するか。新年から欲にまみれておるな』
「どっかの男みたいに盗み見するな!!!」
『誰かとは、あ、誰のことなり~』

 

 余計なツッコミが仇となったのか、カカカカン、カンっと、歌舞伎のような音がした……気がする。魔王と二人、白い目で床を見ると、集まった黒い影の中から軽快なステップ音と共に男が現れた……当然。

 

「俺様誰様イズ様なり~!」
「で、魔王は何かくれないのか?」
『ふむ、仕方ない輝石だ』
「ガン無視っ!!?」

 

 スルーすると、浮き上がった魔王の顔が目前に迫る。と、口付けられた。

 

「んっ、ふ……!」

 

 今日はじめてのキスに驚くことよりも嬉しさが勝ち、されるがまま繰り返す。

 

「や~ん! 浮気よ浮気~!! 大変よ~!!!」
「っ!?」
『黒王もすればよかろう』

 

 楽しそうにはしゃぐイズに魔王はなんでもない様子でベッドの上に立つと、ズボンから浅黒い男のモノを取り出した。咄嗟に後退りするが、後頭部を押さえられると唇に亀頭がくっつく。

 

「や~ん、ずるいずるい。俺もおっぱ~い」

 

 反応するとこ違うだろと思いながら、胸に跳びついたイズは頬ずりする。だが、何かに気付いたようにパジャマのボタンを外し、気付いた時には下着に収まっていない乳房が露になった。

 

「……エッロ」

 

 舌舐めずりしたイズは両手で乳房を揉む。
 ナマの手に感化されたのか、力を込められるだけでミルクが飛び散った。

 

「バロンが苛めすぎたのか、ヒナが淫乱なのか……」
『両方であろう』
「き、貴様ら見て……んんっ!」

 

 明らかに盗み見ていたことがわかるが、ぐっと魔王に肉棒を咥えこまされ、イズには胸を吸われる。さらに、パジャマズボンどころかショーツの中に潜ったヘビが秘部を舐めた。どれも違うのに、淫らな音が響く。

 

「んっ、んん……んぅ」
『いつもより動きが鈍いな……別に我はウイルスになど犯されぬから安心して喰え』
「よっしゃヒナ、魔王の噛んでやっだだだ!」

 

 容赦なく蹴られているイズが朧気に見える。
 火照った身体は風邪ではなく、気にせず身を任せていいという安堵感と欲だった。魔王のモノを奥まで咥えこむと、両手で寄せた乳房でイズの顔を挟み、股間をぎゅっと閉じる。
 呻きに笑みを浮かべると、二人は汗を落としながら私に目を移した。

 

『発情中の雌は恐ろしいな』
「これは期待に応えねぇとな……あいつらに内緒で」

 

 その意地悪い笑みに、誰よりも何よりもねちっこいことを思い出す。
 だが、弄られ尽くされていた身体は刺激と快楽を求め、内緒の逢瀬を、二人の王を受け入れた。

 


* * *

 


 何やらマズいことをした気がする翌日──。

 

「ふっかあ~つ!!!」

 

 むっはははと高らかな笑いを響かせると、旦那、子供達から拍手が送られる。次いで子供達を一人ずつ抱きしめると、一日遅れた楽しいお正月がはじまった──が。

 


「困った妻だ」

「ええ、本当に」
「ダーメ……だよね」
「待ってた自分がバカみてーだよな」
「ま~わかってた~ことだけど~~……ね」
「なりなりっご!?」

 イズがベッドから落ちる音がした。
 淡い灯りしかない寝室ではよくわからないし意識も定かではないが、落ちる口付け、囁き、吸いあげる唇、押す指、締めつける蔓に刺激された身体は跳ね、何度も蜜を噴き出す。
 あられもない姿を晒しているのに、囲む男達はどこか嬉しそうだ。空気は怖いが。

 

「怖い理由はヒナタが一番よく知っているだろう?」

 

 頭上からフィーラの口付けが落ちるが、いつも以上に深く、差し込まれた舌が荒々しく口内を乱す。

 

「とても可愛いですが、やはりその場で着ていただかないといけませんでしたね……ヒナタさん?」

 

 耳朶を舐めながら囁くベルは、自身がプレゼントしたブラジャーを撫でる。けれどすぐズラすと胸の片方を搾り、ぴゅくぴゅくとミルクを飛ばした。薄暗い中で何本もの線が描かれるのを見ていると、チリっとした痛み。

 

「ヒナさん、こっち向かなきゃダーメ」

 

 首筋を噛まれ、視線がスティに移る。
 さらに吸っては舐めてを繰り返されるが、藍色の瞳はジっと私を見つめていた。瞳の奥に宿るのは冷たい怒りと欲情。

 

「優しくなんでしねーぞ」

 

 アウィンもまた、怒気を込めた指で臍を突きながら片方の胸にかぶりつく。でも、口とは裏腹に片方の手はハチマを巻いた手首を握っている。

 

「やっぱり~エーちゃんは~優しいね~僕には~マネ~出来ないな~~」

 

 くすくす笑いながら、バロンが秘部に指を挿し込む。乳房と脚を縛る食虫の蔓と一緒に。

 

「ぁああっ……はんんっ、あぁっ……!」

 

 数々の刺激に犯される私は、もはや嬌声を響かせることしか出来ない。
 いっそのこと意識を飛ばせたらと思うが許してくれるはずはなく、イいところで寸止めされてしまう。それもこれも彼らより先に受け入れた者達がいるからだろうが、結局最後まではしなかった。だからこそ欲しくて欲しくて堪らない。

 

「あ、ああぁ……挿れて……奥まで……はあ……ンッあ……犯して……」

 

 身を切られる思いに涙を落としながら本音を吐く。
 自分のせいだと、浅ましいと思われても、彼らが本当に与えてくれるモノを知っている身体と心は偽れない。すると、触れていた唇も手も蔓も離れ、五人の男達に見下ろされる。
 その口元は結ばれていたが、次第に弧を描いた唇が開かれた。


 

「「「「「はい、愛する妻」」」」」

 


 呼び方は違う。でも、特別で、私だけの呼び名。
 それがとても愉悦感を膨らませ、大きく口と股を開くと両手を伸ばす。応じるように高ぶった肉棒が差し出され、それらを愛撫しながら濡れ切った秘部に挿し込まれた愛と欲を受け止めた。

 

 一人ずつゆっくりじっくりと刻む姫初めとなった──。


「いやいや、俺もまだまだするなりよ」
『ああ、ゆっくりじっくり……受け入れてもらおうか?』
「待て待て、もう無理っ! もう限界っ!! もうダメえええぇぇ~~~~!!!


 終えた頃にやってきた二人の王に影世界へと連れ込まれると、第ニ段の愛がはじまった。あけましておめで……────。

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