異世界を駆ける
姉御
番外編*キスシリーズ「腿」
*魔王視点(蛇姦有)
闇の中に響くのは、大股で駆ける音。
男のような走り方だが、耳をすませばブーツ音だと、これだけ全速力で走れる者はこの世界には一人だけだとわかる。
瞼を開くと、膝にいたヘビと共に振り向く。
漆黒の旗を揺らす下、階段から勢いよく女が跳び出してきた。
「魔王~~~~っっ!!!」
見上げるほどの高さ。
魔法も使わずあれだけ跳べるのは賞賛に値するが、強張った顔と声に嫌な予感しかしない。着地した輝石とは反対に影へ潜ろうとしたが抱きつかれてしまった。
「待て待て! 潜るなら私も連れてってくれ!! 頼む!!!」
『主が嫌いな闇の中だぞ?』
「出来れば城から離れた明るくてヤツらに見つからないとこが良い!」
『頼るわりに注文が多いな』
呆れるしかないが、輝石は忙しない様子で階段をチラチラ見ている。耳をすませば、大勢で上ってくる音。アヤツらを推測していると、輝石の首に移ったヘビが機嫌よく頬擦りした。
「おお~ヘビ、わかってくれるか!」
『……仕方あるまい。しばし、目を瞑っておけ』
「うむ!」
溜め息混じりに言うと、抱きしめる腕を強めた輝石は素直に目を閉じる。
相も変わらず我という存在を忘れているようだが、ヘビ同様甘いのか、急ぎ『影』へと潜った──。
* * *
「魔王……確かに私は城から離れた明るくて見つからないところと言ったが……」
『? 叶えたであろう』
「うむ、そうだな……だが『天命の壁』の真上はないだろっ!!!」
真っ青な顔で叫ぶ輝石だが、大きな向かい風に慌てて竿に捕まる。
アーポアク城から移動した我等がいるのは国を囲う『天命の壁』。ちょうど南方の旗の下。
『南(ここ)の連中はアホいから気付かぬ』
「謝れ! アウィンに今すぐ謝れ!! 安全もつけるべきだった!!!」
『そうだな。魔物もくるし』
「ぎゃあああぁぁーーーーっ!!!」
絶叫と共に現れたのは大型の鳥魔物。
『空気の壁』があるとはいえ、恐怖するのは当然かと、振り上げた腕を下ろす。真っ二つに裂かれた魔物は、青飛沫を散らしながら墜ちていった。目を丸くしている輝石に首を傾げる。
『なんだ?』
「いや……容赦ないな。同族だろ?」
『ほう、いちおう我を魔だとは認識しておったのか』
感心よりも笑ってしまうのは、認識しているのに、先ほどの魔物とは違い、我を見る目に恐怖がないせいか。だがそれは輝石に懐いているヘビや我も然り。
我等にとっては食うべき存在である人間。特に“輝石”であるコヤツは、我がもっとも欲すべきモノのために必要な存在……なのだが。
『同族であろうと、主が恐怖するなら構わず切り捨てるさ』
「なんだ、えらく私の待遇が良いな」
『ほう、そう聞こえるか?』
口角を上げると指を動かす。
反応するようにヘビが旗の竿と一緒に輝石にとぐろを巻き、括り上げた。突然のことに慌てる輝石の傍で片膝を折ると、肌の見える脚に触れる。
「んっ!」
『感度がいい……ああ、アヤツらと少し戯れてきて逃げてきた……だから“のーぱん”なのか』
くすくす笑いながら輝石のズボンを下ろせばショーツはなく、秘部が丸見え。太腿には蜜が伝っている。上着を捲れば同じく“のーぶら”。ヘビが嬉しそうに腹で胸の先端を擦れば、輝石の頬も赤くなった。
「あ、ん、こら……ヘビ」
『同族を切り捨てるのはな……主を喰っていいのは我等だけだから』
揺れていた漆黒の瞳が丸くなる。
くすりと笑うと同時に伝っていた蜜を舌で舐め取ると、秘部へと顔を埋めた。ヘビもまた胸の先端にしゃぶりつく。
「ひゃあぁっ!」
甘い嬌声に応えるように蜜を舐めては吸い、秘芽に噛みつく。
さらにヘビがしゃぶる胸とは反対の胸を揉めば、輝石は激しく身体を揺すった。
「ああンン……ダメだ……激しくされたら」
『激しいのが好みか……なら、ヘビ』
何度かアヤツらにイかされたのか、感度が良すぎる。
それならばと、胸から下りてきたヘビに秘部を指すと、頷いたヘビは元気よく蜜が溢れる秘部に頭を突っ込んだ。
「あああ゛あ゛ぁぁーーーーっ!!!」
高らかな嬌声を上げながら涙を落とすも、その目に恐怖はない。
仕込まれすぎていることに苦笑しながら、乳房をしゃぶっては指で先端を弾いて抓る。すると、輝石は大きく股を閉めた。
「ああ゛っ……ヘビ……それ以上いく……な……イっちゃ」
『イかせてやれ』
「ンああああぁぁっ!!!」
命令にヘビが奥を突いたのか、潮が噴かれる。
ヘビを引っこ抜けばその勢いも増すが、地面よりもヘビがびしょ濡れ。だが、機嫌良く上ってくると輝石の口へと口付けた。呼吸が速い輝石は虚ろな目を向ける。
「ヘビ……やりすぎだ……」
『そのわりに主も嬉しそうな顔をしているが』
「違……あ、こらっ」
真っ赤な顔での否定を他所に、輝石の片脚を持ち上げると、秘部に自身のモノを宛がう。先端で突けば、止まっていたはずの蜜がまた零れ、止めるように挿入した。
「は、ああぁっ!」
『なんだ、ヘビだけでは満足しきれてなかったのか』
「やっ、んっ、は、ああぁんんぅんっ!?」
文句でも言おうとした口の中にヘビが入り込む。
自身が零した蜜を拭ってもらうように動き、我もまた腰を打った。
「んっ、んんんっ、ふんんんっっ!」
『ん? 『なんでこんな激しいか』って? そうだな』
ヘビを口に含んでいても喋る度胸に免じて腰を緩やかにする。だが、口角を上げると腿へ──キスを落とした。
『主を『支配』したいからだ』
アヤツら以上に支配したい。
それは魔としての欲でもあるが、一番は我自身が願っていた。男として女を支配したい、人間(ヒト)のような願い。ナカで噴出した願い(それ)に聞こえた声は確かに甘美で、心の臓の奥が震えた──。
「こらーっ、魔王ーっ、ヘビーっ、出てこーーーーいっ!!!」
『怒られるのは輝石だけでよい』
裂いた魔物を南の連中は見逃さなかったようで、アヤツらに見つかったようだ。
当然我はとんずらするがな────。