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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*キスシリーズ「手の甲」

*アズフィロラ視点

 午後になり、見回りのため部下数名を連れて街へと赴く。
 労う者、プレゼントを渡す者、近況を話してくれる者。様々な住民に迎えられるが、皆、笑顔だ。それは今まで築き上げてきた信頼の証で、ほっとする。

 

「ア、アズフィロラ様っ、大変です!」

 

 騎舎に戻ろうとしたところ、部下の一人が慌ててやってくる。振り向く俺に、息を整えた彼は敬礼を取った。

 

「広場で小競り合いが起きてます!」
「小競り合い? 珍しいな……止められそうにないのか?」

 

 事を荒立てる住民が早々いないせいか驚くも、小競り合い程度で団長が出るのもどうかと考える。すると、目を右往左往と、騎士らしかぬ仕草を取った彼は口籠りながら言った。

 

「無理です……相手の一人がその…………ヒナタ様で」

 

 その名に超特急で向かった。


 

* * *

 


「あ、フィーラ! いいとこに!! 聞いてくれ!!!」

 

 着いた時には遅かった。
 昼時なのもあり、野次馬も多く集まった中央広場で息巻くヒナタの手にはハリセン。そして屈んだまま頭を押さえている男達に大きな溜め息を吐いた。

 

「ヒナタ……話し合いで解決する方法はないのか」
「むっ、まるで私が悪いみたいな言い方だな」
「彼らは娼婦館の者だ。あながちスカウトされ、子供も多い昼時にアホをぬかすなと叩いたんだろ」
「き、貴様エスパーか!?」

 

 慌てふためくヒナタと同時に、住民と男達から拍手が贈られた。
 また溜め息を吐く俺に、ヒナタは口を尖らせる。

 

「厭らしい目で見る上に『ちょっと来てもらおうか』って引っ張られたら無理だろ。ちっとも女性の扱いがなっとらん」

 

 細めた目を男達に向けると、顔を真っ青にし、何度も土下座する。
 紳士的な行動ではないのとは別の苛立ちが募るが、不貞腐れているヒナタの元に足を進めると片膝を折った。

 

「それは大変な無礼をした。申し訳ない。後でゆっくり言い聞かせておこう」
「いや、貴様が謝ることでは……!?」

 

 戸惑う彼女の手を取ると、ゆっくりと顔を寄せる。そして視線だけ上げ、漆黒の瞳を捉えた。

 

「ヒナタという女性は俺の──姫君(プランセッス)だと」

 

 証明するように──手の甲へ口付ける。

 周囲は騒然とし、ヒナタは金魚のように真っ赤な顔で口をパクパクさせる。くすりと笑みを浮かべた俺は腰を上げると、広げたマントで彼女を覆った。

 姿を、唇への口付けを隠すように。

 


* * *

 


「あ、ん……こら、フィーんんっ」

 

 賑やかな広場とは打って変わり、静寂が包む我が屋敷。
 だが、寝室には甘やかな声と水音が響いていた。塞いでいた唇を離した俺は、ベッドに寝転がるヒナタを見下ろす。

 

「なんだ? 優しくしているはずだが、まだ何か不満があるのか?」
「あ、あるんんっ!」

 

 息を荒げながらも矯声を漏らす彼女は裸。
 だが、服を着たまま跨がっている俺は、大きな乳房をゆっくり揉みながら先端にキスを落とす。さらに片手を股に挿し込むと秘芽を擦った。ヒナタは身体を左右に揺する。

 

「バカっ……ちまちましすぎだ……あっ」
「紳士的だろ?」
「これじゃただの意地悪んんっ!」

 

 胸の先端を口に含むと軽く引っ張って離す。そして、指を第一関節まで秘部に埋めると、ヒナタは大袈裟なほど跳ねた。
 広場での無礼を代わりに詫びているのだが、どうにもお気に召していないようだ。その理由はわかっているが、気付かない振りをしながら首筋を舐める。と、首に腕を回され、抱きしめられた。

 

「もうっ、“騎士”はやめて犯してくれ! 我慢できない!!」
「可愛いことを言ってくれるな……いいだろ」

 

 素直な懇願に笑みを浮かべると口付ける。
 軽く、深くを何度も繰り返しながら自身の服を、騎士ではない証を脱ぐと、ぎゅっと強く乳房を揉み込み、膣内の奥まで指を挿し込んだ。

 

「あああ゛あ゛ぁぁーーーーっ!!!」

 

 待ち望んでいた刺激に、ヒナタは高い矯声と涙を零す。
 だが構わず胸の先端を指で弄りながら反対の胸をしゃぶると、指で膣内を掻き回した。

 

「あっ、あ……フィーラ……」
「なんだ? もっと優しくか?」
「もっと……激しくだ」

 

 汗を落とす俺の頬を撫でたヒナタは微笑むと口付ける。
 高鳴る動悸に口付けを深く、荒くすると、両脚を持ち上げた。既にシーツを濡らすほど愛液を零す秘部に、躊躇いもなく挿入する。

 

「あ、ああぁぁっ……フィーラの熱い……挿入(はい)っんん!」
「ああ、欲情しているヒナタを見てるだけで熱くなるな……もっと見せてくれ……っ!」
「うあ、あ、あ、あああっ……激し……イいぃんんん゛っ!!!」

 

 一番奥を突くように大きく腰を動かせば、ヒナタは快楽に溺れた表情を見せる。それはきっと俺もだろう。
 周囲の前では敬愛の甲にしか口付けできない。だが、騎士ではない“俺”を知る女性の前では、ただ愛欲に溺れた男と化す。

 愛する姫君(アムール・プランセッス)──ヒナタだけだ。


 

「や~ん、騎士団長様が厭らしいことしてるなり~」
「斬るっ!!!」
「フィーラ、イズー、あまり壊すなよー」


 もう一人、“俺”を知る男(イヴァレリズ)は全力で斬るのみ────!

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