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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*初夢は屋上で

 今日は新年……なのに。

 

「こらーっ、イズーーっ! どこだーーーっ!! 出てこーーーーいっ!!!」

 

 螺旋階段を上りながら、十階ずつ顔を出しては声を上げる。
 新年の挨拶は家族全員でしなければならないのに、珍しく菓子でも出てこないイズのせいで探す羽目となっていた。他国に出張かとも思ったが、0時と同時にフィーラの頭に粘土おっぱいを置いたと言うし帰国しているはず。
 そんな溜め息をついている内に屋上まで来てしまった。

 

「はあ、こんなとこにいるなら誰かが気付……あ」

 

 強風に、頭上で大きな音を立てながら黒竜の旗が揺れる。
 私の漆黒の髪も軽く浮いたが、どんな黒にも叶わない黒がいた。悠々とお天道様の下で大の字で寝転がり、笑みを浮かべたまま寝息を立てているアーポアク王──イズ。

 すやすやと気持ち良さそうに眠る男に魅入ってしまったのか、声もかけず、そろりと足を進める。
 恐らく他のヤツらにはバレない結界でもあるのだろうが、そこは異世界人チート。ゆっくりと横に座ると、憎ったらしいほど綺麗な顔を覗いた。

 

「意外と睫長いな……」

 

 呟きながら、触れないよう睫をなぞる。
 ちょろちょろするせいか、何気にマジマジと顔を見たことがないかもしれない。二十歳の身体付きのせいか筋肉は少なく、鼻も小さいが唇。特に漆黒の髪は艶やかで羨ましい。

 

「でも……目は赤だよな」

 

 今は閉じられている瞳。
 その色は私と同じはずなのに、開かれても違う色だろう。

 

「や~ん、そんな見つめられると恥っずかしい~」
「っ……!」

 

 呑気な声とパッチリ開かれた瞳に顔を上げそうになるが、自分を映す瞳が漆黒なことに止まる。と、伸ばされた手が後頭部を押し、柔らかな唇と重なった。
 それは一瞬で、離したイズは寝転がったまま私を見上げる。その瞳はやはり漆黒。

「あけましておめっとさん」
「あ、ああ、おめでとう……貴様、目の色……あ」

 

 戸惑っていると、漆黒が深紅に変わる。
 なんのマジックだと瞬きする私に、イズは笑った。

 

「『宝輝』抜かなくても漆黒戻れるって」
「そ、そうだったか?」
「集中すりゃな……じゃなきゃ『第一回こども会』の時に扉を通れるわけねぇだろ」

 

 くすくすと懐かしいことを言われ口を尖らせると、なぜ戻ったのか訊ねる。不思議そうに瞬きされた。

 

「だって、ヒナが漆黒で視てもらいたそうだったから」
「なっ、聞いてたのか!?」
「あんなに見つめられたら気付くって。ヒナだって俺の熱視線感じるだろ?」

 

 急に恥ずかしくなる。しかも見上げるイズの目に映る自分……ん? 映ってないぞ? 映ってるのは私じゃなく大きな山二つ。

「おっぱいか!」
「あったり~!」

 

 気付いた時には満面笑顔でむぎゅりと両手で胸を握られた。
 突然のことに反応が遅れ仰け反ると、後ろに倒れる。『影』がクッションになってくれたおかげで衝撃はなかったが、ダイブしてきた男に鷲掴みされた胸は痛い。

「こら、イズ……!」
「新年から良い弾力なり~さて、大きさと形は……」
「捲るな捲るな!」

 

 上体を起こしたイズはなんでもない様子で上着を捲る。
 慌てて止めようとする両手は片手だけでひと纏めにされ、黒に白のリボンとレースがついたブラが露になった。

「や~ん、黒。そんなに俺に攻められたかったのか?」
「た、たまたまだ……あぁっ」

 

 暴れる両手と身体は『影』で出来た黒い紐で縛られ、ブラのフロントホックを外される。ふるりと揺れる乳房に笑みを浮かべたイズは、両手の人差し指で乳房を寄せた。それを離してまた寄せるの繰り返し。
何がいいのかわからんが楽しそうだ。

「弾力OK、大きさOK、形OK、揺れ具合OK」
「貴様……本当に好きだな」
「おう、デカすぎず小さすぎず……お、ツン具合もOK。つーかツンツンしすぎじゃね?」
「ひゃっ!」

 指先で両方の乳首を摘まれ声を上げる。
 同時に離され揺れる先端は確かにツンと上を向いているように見えた。そんな乳房を両手で中央に寄せたイズは舌先で両乳首を舐める。

 

「ふぁっ……ぁん」
「こうやって愛撫するだけで……淫乱なヒナは濡らすからな」
「ぬ、濡らさ……んん」

 

 反論は片方の胸にしゃぶりつかれたことで喘ぎに変わった。
 舌先で転がしては吸い上げ、反対の手で先端だけ苛められる。身動き取れない今、小刻みに跳ねるだけですべての刺激と熱が下腹部に降りていくように感じた。
 反対の乳房にしゃぶりついたイズは指先で吸った乳首を突く。

 

「あん、あ……」
「しょういや、ヒニャ。はちゅゆめ見ちゃか?」
「初夢……っあ……確か……貴様らのヌイグルミに囲まれあっ!」
「かっわいい」

 

 答えると同時に胸から口が離れ、人差し指でインターホンのように両乳首を押された。
 そのまま交互で両乳首を押され、身体がビクビク反応する。それでも『んっ』と小さく喘ぐ程度のため、紛らわすように問い返した。

「貴様は……ん、見たのか……?」
「おう、見たよ。アズが全裸で街を歩くとこ、ベルッカが足を組んで俺様になってるとこ、カレスがツルッパゲになったとこ、エジェアウィンが玉乗りしてるとこ、バロンの葬式、魔王が結婚」

 

 えっらい盛りだりくさんな上に、ありそうでなさそうな夢。
 言葉を失っていると、空を見上げていたイズは『あと……』と言って、私に向かってニヤリとした。

 

「屋上の旗棒をヒナが胸に挟んで俺が後ろから挿入してる夢☆」
「は……わっ!」

 

 星がキラリと見えた気がすると、拘束していた『影』が消え、抱き上げられる。そのまま黒竜の旗が揺れる真下まで来ると降ろされるが、背中を押された。胸が細長い旗棒を挟んだ。

 

やっ、冷た……っ!」

「んで、えーと……確か手を縛って」
「こらこらやめろ!」
「夢は叶えるためにあるんだぜ!!!」

 

 力説されてしまい何も言えなくなる。
 その隙に旗棒を握らされた私の両手は『影』で縛られ、ショーツごとズボンを脱がされた。

 

「お、やっぱ濡れてんな。さすがヒナ」
「ほ、褒められている気がしない……」
「そんだけ感じてもらえるとこっちの興奮も高まるもんだよな」
「っあ!」

 

 笑いながら両手で腰を持ち、屈んだイズ。
 舌先で太腿を這う蜜を舐め上げると、濡れ切った股に顔を埋め秘部を舐めはじめた。

 

「ひゃあ、っああ……貴様は……胸だ……ろっ」
「なんで俺ってば胸マニアに思われてんのかね……まあ、間違いじゃねぇけど、んっ」
「ああぁ」

 

 秘芽を舌で突き、零す愛液を吸い取る卑猥な音が響く。
 挟む旗棒の冷たさなど感じないほどに火照った身体に、私はただ喘ぎを漏らすだけ。徐々に足元が不安定になってくると、股から顔を離したイズに抱きしめられる。
 背中やうなじに流れる汗を舐め取りながら両手で乳房を揉むのを忘れない男は、息を乱しながら呟いた。

 

「俺が胸目当てで結婚したとか思ってんのか?」
「……それか、デキ婚?」

 

 他の連中よりシた回数は少ないのに、一番最初に子が出来たのはイズ。
 同じ異世界人としての血があるなら相性が良かったのかもしれないが……胸ばっかで不在ばっかのこいつでは疑いたくもなる。
 そんな素直なことを答えると、耳元で大きな溜め息をつかれた。

 

「じゃあ、これはどうなんだ……」
「っあ!」

 

 いつもより低い声と一緒に、愛液を零す秘部に硬いモノが宛がわれる。
 他の男達と変わらない熱さに見下ろせば、充分に上を向いた肉棒が見えた。その亀頭から滲み出ているモノもある。驚くように背後の男を見れば、珍しく頬を赤くし、そっぽを向いていた。
 しばらく呆然としてしまったが、ついにはそれがおかしくて新鮮で、お尻を突き出す。

 

「ぅあっ……ヒナ」

 

 自分から肉棒の先端を食い込ませた私にイズは目を見開く。緩やかに腰を動かしながら私は言った。

 

「ちゃんと……んっ……言ってくれなきゃ……わからんぞ……」
「……それはどっちだよ」

 また溜め息をつかれるが、その口元は変わらず意地の悪いものに変わっていた。
 するとさっきよりも強く、けれど包み込むように優しく抱きしめたイズは頬を寄せる。漆黒へと変わった瞳には私しか映っておらず、ゆっくりと唇が動いた。

 

「好きで愛してるぜ……ヒナ」
「ん……私もだ」

 

 嬉しがるように口付けると、肉棒が一気に最奥を貫く。
 滅多にない男の愛は不安になる。だが、四方に広がる国に目を奪われることなく、頭上で揺れる旗の音さえ聞こえず、ただただ本当に好きだという愛を受け止め知った。
 やはり私もイズも互いが好きで愛しているのだと。

 

 家族が揃った年始の挨拶で『アンアン嬉しそうに啼くヒナと新年早々ヤれて良い一年になりそうなり☆』と暴露された時は早くも愛を疑ったがな────。

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