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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*勝者の権限

 年が明けた元旦。どの街も華やかに彩られ、笑顔で溢れている。
 はずなのに、変わらない場所と男がいた。静かな部屋でポンポンと規則正しい判子を押しながら、積み重なった書類を片すアーポアク国宰相──バロン。

「変化のない男め……あっち向いてほいっ!」
「いや~そもそも~ヒーちゃんが~来るまで~正月って~なかったからね~~」
「そうだったか? ったあ!」

 

 苦笑混じりの呑気声に首を傾げるが、息子の指が頬に刺さる。
 ソファに座る私と息子は先ほどまで羽子板、コマ回しなどなどで遊んでいたが、ネタがなくなり、今は『あっち向いてほいっ』をしていた。

 

 しかし私はジャンケンに弱いのか、負けてばかり。挙句、指す方向を見てしまい、ツンツンと頬を突かれる始末。すると書類が終わったのがわかったのか、立ち上がった息子は真新しい印がある束を持って宰相室を後にした。真面目な子だ。

 反対に、ゆっるゆるのバロンが一息つくように隣に座る。と、ぷにっと私の頬を突いた。睨んでも笑みだけが返される。

 

「ヒーちゃん~ゲーム~弱いね~~」
「た、たまたまだ! 羽子板とコマは私が勝っただろ!?」
「ん~どうでもいいけど~室内でしちゃ~ダメな~遊び~だよね~~」
「す、すま……んっ!」

 

 つい広い部屋だからと言い訳する声は唇で塞がれる。
 すぐ離れたが、一瞬金色の瞳が細められた気がすると、唇に人差し指を付けられた。

「じゃあ~僕とも~遊ぼうか~~」
「お、するか? 羽子板、コマ、福笑い、イズ上げ……何が良い!?」
「うん、野球拳」
「…………は?」

 

 やっと相手してくれると喜んだが、正月とまったく関係ないことを言われて目を丸くする。そんな私にバロンはまた言った。

 

「野球拳しよ。ただのジャンケンで」
「やややや野球拳!?」
「そ、僕とヒナタちゃんが着ている服はほぼ同じ。新年から脱がし合うっていうのも一興だろ?」

 

 語尾を伸ばさず艶やかな笑みを浮かべる男は自身の詰襟を引っ張る。
 確かに同じ情報部隊で制服の今、着てる枚数は変わらないだろう。だが、それとこれとでは話が違うと口をパクパクさせていると拳を出された。同じように拳を出すと、バロンの拳がパーになる。

「は~い、僕の~勝ち~ヒーちゃん~ベルト~外して~~」
「ず、ずるいぞ!」
「躊躇う~からだよ~ほら~頑張ろうか~~」
「こんのぉ~ジャンケンポン!」

 

 すぐさまベルトを外し、ジャンケンする。
 突然だったせいか、パーのまま止まったバロンに私はチョキ。高らかに掲げた。

 

「むっははは!」
「ずるい~~」
「お互いさまだ! よっし、眼鏡取れ!!」
「いきなり重要装備品いくとかエグい! ていうか眼鏡はなっし!! 着衣ってのがルールだからね!!!」
「こんのぉ~!」

 

 ちゃんとしたルールを知っていたことに私のチョキがグーに変わる。
 眼鏡さえなければ完全に視えないヤツだから全敗してもいけると思ったのに……これは本気で負けられない。こいつのことだから絶対おかしなところから脱がすに決まっている。

 意志を強く持った私はいざ戦のはじまり、グーを出した。


 

* * *

 


 おかしい。絶対おかしい。おかしすぎる。
 あれから数時間が経ち、何十回とジャンケンをした。なのに未だローブと両靴しか脱いでいないバロンに対しなぜ私は……ぶっちゃけ残ってるのがブラジャーとタイツ片方だけなんだ!!?

 

「ヒーちゃん~弱い~~」
「そ、そんなバカな……き、貴様何かズルしてないか!?」
「いや、ジャンケンでどうズルするのさ。イヴァレリズでも出来ないよ」

 

 本気顔の男に、私も本気で顔を青褪める。
 息子相手でもこんなに負けはしなかったというのにおかしい……そして中途半端に残ってるタイツはなんだ! 何が目的だ!! いっそのこと脱がしてくれ!!!

 

「本気で~悩んでるね~はい、ジャンケンポン」
「ああっ!」

 

 思考中にジャンケンされ、また負けてしまった。
 ついにタイツが、それとも意地悪してブラジャーか。ビクビクと身体を丸める私に、くすくす笑うバロンの手が伸びる。と、既に露になっていた秘部に指を挿し込んだ。

 

「ひゃっ! な、何をす……」
「このまま終わっても面白くないからね。服の代わりに今から『触る』を入れようか」
「べ、別に服でも……」
「あれれ~もしかして~諦めてる~? このまま終わっちゃうなんてヒナタちゃんらしくないね」

 

 語尾を変えながら挑発的に言うバロンは指を抜き差しする。
 これはもう『触る』ではない気がするが、確かに肌さえ見せていない男には腹が立つ。唇を噛みしめ、最初のグーを出した私にバロンも笑みを浮かべた。

 


* * *

 


 おかしいおかしい! 絶対おかしい!! おかしすぎる!!!
 あれからまた何度もジャンケンした。なのに未だローブと両靴と上着しか脱いでいないバロンに対しなぜ私は……両手を頭の上で自分のタイツで縛られ、乳房も秘部も露にし、タイツ片方には無数の穴が開いたほぼ全裸なんだ!!?

 

「絶対おかしいぞ! 色々な意味で!!」
「や~だって~ヒーちゃんが~まだ~頑張るって~言うから~終われないな~って。はい、また僕の勝ち」
「う、嘘だああ~~!」

 

 また負けてしまい、目尻に涙を浮かべる。
 そんな私に構わず上半身裸となっているバロンは両手で乳房を揉むと中央に寄せ、両先端を舐めた。

 

「ひゃあ……こら……ん、舐めるのはなし……」
「じゃあ、ジャンケンポン……はい、勝ったから文句ないよね」

 

 先端に吸いつきながらジャンケンに勝ったバロンは、くすくす笑いながら反対の先端を摘む。そしてまた勝利すると、ソファを当に濡らしている蜜口に指を挿し込み激しく動かす。

 

「あっ、あ、ああっ……そんな激しく……っ!」
「だって次はいつ勝てるかわからないからね……ほら、僕の負けだ」

 

 久々に勝った私に、バロンは苦笑する。
 これでどこかを脱がせる……はずなのに、動かされる指と乳房を舐める刺激のせいで早くイきたい。もっと気持ち良くなりたいと思ってしまう。
 頬を赤めた私は、息を乱しながら呟いた。

 

「ズ、ズボン……脱いでくれ……っあ!」
「はいはい、ズボンね~~」

 

 胸の愛撫も蜜口の指も抜いた彼は躊躇いもなくズボンを下ろした。
 下着越しに何か大きなモノが目に入り動悸が増すが、必死に顔を逸らす。すると『ジャンケーン』と急に言われ負けてしまった。

 

「あっ!」
「はい、僕の勝ち~じゃあ~……キスね」
「え……んんっ」

 

 顔を戻した時には既に唇は塞がれていた。
 でも離れることはせず、くっつけたまま何度も角度を変え、舌先を差し込まれる。それを悦ぶように私も舌を絡ませるが、すぐ唇と一緒に離れていってしまった。

 

「や……」
「残念。勝ったのは僕だからね……長くするのも早く終わるのも僕次第」
「い、意地悪め……ジャンケンポン! よっし!!」

 

 両手を縛られてのジャンケンなのに、ついガッツポーズを取った。
 そんな私をバロンは楽しそうに見つめ『ご命令は?』と訊ねる。瞬間『キスをもう一度』が浮かぶと蜜が零れた気がした。それが余計疼きの原因となり、頭を振ると恥ずかしそうに言った。

「し、下着……」
「うっわ、靴下残しての裸ってカッコ悪いな……苛めだ~~」

 

 どっちがだと反論したくなるが、下着が脱ぎ捨てられ現れたモノに目を見開く。当に自分は脱がされているというのに、男のモノを見るというのは別の意味で心臓に悪い。そして、ジャンケンするとバロンが勝った。
 動悸が速まる中、彼は考え込んだ様子で私を見る。

 

「じゃあね~せっかく~出したことだし~……パイズリで」
「え……ひゃあ!」

 

 笑顔を見せたバロンは胸元で跨る。そして乳房を広げ肉棒を挟むと、上下に動かしはじめた。

 

「あ……ああぁぁぁ、ああっ!」
「先端に口付けちゃダメだよ……ただのパイズリなんだからさ」

 

 ぬちゅぬちゅと顎に当たる肉棒の先端。
 それを見るだけで口を開きそうになるが『ダメ』と言われてしまい、ゴクリと唾を呑み込む。するとジャンケン。私が勝った。

 

「あっあ……欲しい……」
「何が~~?」
「バロンの大きいの……口に……欲しんんんっ!」

 

 頭を撫でられるとすぐさま口に肉棒を挿し込まれる。
 動きもさっきより速くて喉の奥まで突かれるが、今はただ欲しかったモノがあることが嬉しい。するとジャンケン……負けてしまい、着衣最後の一枚だった穴の開いたタイツを剥がされる。
 口内から肉棒を抜いたバロンはタイツを見せながらくすりと笑った。

 

「はい~僕の~勝ち~~」
「ああ……バロ……ン」
「……だいぶんイい顔になってきたね」

 

 息を乱しながら既にあられもない格好となった私だったが、ただ彼を見上げることしか出来ない。すると私のタイツが放り投げられ、両足を持ち上げられた。

 

「じゃあ、勝ったことだし好きにさせてもらおうかな」
「そ、そんなルール……」
「勝者に文句言うんだ……いいの? 挿入しなくて」
「あ……」

 

 意地悪く笑いながら、蜜口に肉棒の先端が食い込んでは離される。それはもう陥落の証となり、素直じゃなかった言葉がするりと出た。

 

「欲し……ナカにバロンの全部……欲し……い」
「本当……苛めて苛めてねだる時のヒナタちゃんは可愛いね──っ!」
「んっ、んんくああぁぁっ!!!」

 充分に解かれた膣内は滑るように満たすように埋まり、何度も何度も熱い飛沫を出しては私を絶頂へと導いた──ちなみに。

「母上のジャンケンにはパターンがありますので、何回かしていると読めますよ」

 という息子のカミングアウトに、新年早々ハリセンで旦那を追い駆け回した────。

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