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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*素敵なお年玉

 今日は新年。一月一日。元旦。
 何よりもめでたい日……なのに。

「フィーラのバカヤロウ……」
「母様……」

 

 頬を膨らませたままソファに寝転がる私に、向かいに座る息子は一息つく。
 当に初日の出を迎えたお天道様も真上にあり、ルべライトの街も賑わっているのに、セレンティヤ家は静寂に包まれていた。普段から静かではあるが、家主で旦那のフィーラがいないだけで私の気分も落ちるものだ。

「夕方には帰ってくると言ってましたから、もうすぐですよ」
「長い~あの仕事バカめ~元旦ぐらい休めってんだ~チョコチョコにしてやる~」
「酔ってるんですか?」

 

 向かいからの顰めっ面に頭を振るとクッションを抱きしめる。
 窓から射し込んでいた暖かな光が塞がれ、自然と瞼が重くなってきた。朝からお節の確認したりと忙しかったせいだろうかと考えるが、持ってきてもいなかった男を思い出すとクッションを握る手が強くなる。

「フィーラの……バカ……」

 

 呟きに少しの間が空くと、溜め息と一緒に何かが掛けられる。僅かに開いた目に毛布が映るが、それ以上開けることは出来ず、安らかな眠りについた。

 


* * *

 


 ふわふわと浮遊感が漂う。
 大切なものを扱うように優しく包んでいるが、どこかに運ばれているのがわかる。


 ──こら、勝手に連れて行くな。

「あそこにいては風邪を引いてしまうだろ」

 

 返ってきた声は溜め息交じりで、一人の男を思い出すとムっとした。
 

 ──いいんだいいんだ。風邪を引いて、仕事を休ませたフィーラに看病してもらうんだ。

「ほう、ついに強行手段に出るか。キミは相変わらず寂しがり屋だな」

 くすくすと楽しそうな声で指摘されると頬が熱くなる。
 

 ──だって……行ってもいないとか寂しいじゃないか。笑顔で迎えてくれると思ってたのに。

「そうだな……俺も帰宅してキミがいないのは寂しく感じる。だからこそ仕事で紛らわそうとしているんだ」

 内緒話をするような苦笑が聞こえると、ゆっくりと柔らかい上に下ろされる。
 頬を撫でる手は優しく、そっと重ねられた唇は暖かくて気持ち良い。それはよく知る口付けに似ていて、伸ばした両手を首に絡ませると頭を浮かした。深く深く、もっともっととねだるように、寂しさを忘れるように。

 

「積極的だな……そんなに寂しい思いをさせてしまったのか……ん」

 

 離れた唇にダメだと言うようにまた重ねる。
 重なった唇は徐々に弧を描き、私の頭の下に手が潜るといっそう深くなった。自然と唇を開けば舌が差し込まれ、ちゅくちゅくと小さな音を鳴らしながら口内を熱くさせる。


 ──ん、気持ち良い……。

「それは良かった……脱がすぞ?」

 

 艶やかな囁きに頷く。
 了承の意だと捉えた手で服を優しく脱がされるが、その間も口付けは続けられた。熱くなる身体に僅かな冷気を感じるのは、下着から解放された乳房が外気に触れたからだろう。

 

「先端が赤い果実のように勃っているぞ……寒いのか? それとも……」
「あっ……ん!」

 

 くすりと笑いながら片方の先端を摘まれる。
 それだけで腰が浮いてしまったが、喘ぎは口付けによって止められた。ゆっくりと先端を捏ねては引っ張り弾く手は遊んでるようにしか思えない。

 

 ──こら、焦らすな。

「寝言でも命令なら従うべきだろうか……」

 

 自問自答しながら手が離れると、今度は反対の先端で遊びはじめた。
 だが、弄りながら首筋に肩に吸いつかれ、胸の谷間に舌が這う。小刻みに揺れる身体を利用しながら、空いた手がズボンを下ろし、ショーツ越しに親指で秘芽を押し込んだ。

 

 ──また焦らす~!

「その割に濡れてるじゃないか。小さな明かりだけでも、ショーツにシミが出来ているのが見えるぞ」

 

 指摘は甘く、恥ずかしさでゾクゾクする身体はいっそうに蜜を零した。
 くすくすと笑う声が聞こえるとショーツを割って、指が愛液を零す秘部に挿し込まれる。だがそれは一本だけ。しかもゆっくりゆっくりと回され、指先を少し動かすだけのもの。

 

 ──バカ~!

「そんなに嫌ならいつものように命令を下せばいい……我慢出来ないからもっと淫らな蜜を零すほど激しく気持ち良くしてほしいと」

 

 耳元で囁かれる声が頭の中に巡る。
 そんな卑猥なこと“彼”が言うはずない……そう思っているのに、熱くなった身体とジンジンする下腹部に堪えは効かなかった。息を乱しながら、そっと口を開く。

 

「が……我慢出来ない……ん、から……もっと淫らな蜜……零させて……激しく気持ち良くさせろ……フィー……ラっ」
「……甘えではなく、命令のような言い方をするのはヒナタらしいな」

 

 僅かに開いた目には、薄暗い中でも綺麗な赤髪と目を持つ男が映る。
 一瞬喉を鳴らすような音がしたが、すぐ両脚を屈曲させられると、熱い舌先が零れる愛液を舐めた。

 

「あっ、ああ……」
「我慢せず出していいぞ」

 

 股に顔を埋めたまま舐める彼の舌は速い。
 だが『我慢するな』と言われてしまっては抑えることなど到底無理で、卑猥な水音を鳴らしながら愛液が蜜口から零れていく。それをすべて受け止めるように舌で舐め、吸い取られる音もまた響いた。

 

「ひゃぁぁ……んっあ、ああ」

 

 身じろいでいると両脚を持っていた両手が外側から回り、揺れる乳房を掴む。その手も暖かく、両先端を摘まれても甘い吐息しか漏れない。

 

「あんっ、あ、あぁぁ……あっ!」

 

 喘いでいると股から顔を離した男は胸の先端に吸いつく。舌先で舐めては甘噛みし引っ張ると、チリっと痛さを感じた。

 

「あっ、フィーんんんっ!」

 

 訴えは唇で塞がれた。
 その口からは彼、そして私の蜜の味がする。入り混じったものが快楽を増幅させ、愛液を零す蜜口には指が三本挿し込まれた。すると胸の谷間に何かが挿し込まれ、その先端が私の唇につく。何も考えずただカプリと食いついた。

「っ……気持ち良くなってきた証拠だな」
「んっ、んん……ん、ん……」

 

 呻きのようなものが聞こえたが、構わず先端の割れ目に舌を這わせ全体を舐めていく。ゆっくりゆっくりと動くモノは谷間に引っ込んでは出てきて、その度に咥えようと舌を伸ばした。

 それを何度も繰り返していると蜜口のナカにあった手が止まる。
 

 文句を言おうと視線を上げたが、反対の手で頭を押さえられると肉棒を喉奥まで挿し込まれた。瞬間、熱い飛沫が口内で飛び散る。

「んっ、んんンンンっ……っぷはあ、あ!」

 

 途中で抜かれると、顔に飛沫がかかる。
 口内にあるモノを飲み干しながら顔についたモノも舐めると、同じように舐め取る舌が頬に触れ、顔を合わせれば口付けられた。

 

「んっ……」
「すまない……少々急ぎすぎたな」
「なんだ……貴様の方が我慢出来てなかったのか」

 

 苦笑混じりに言うと、バツが悪そうに顔を逸らされた。
 そのまま両脚を屈曲させ胸元まで上げると、白濁を零した先端が宛がわれる。ヌルリヌルリと私の蜜と絡む音がすると動悸が速くなるが、ポツリと呟きが聞こえた。

 

「他の団員が楽しそうに家に帰るのを見たら会いたくなってな……なのに帰ってみればキミはくーすか寝てるし」
「遅かった……ん、貴様が悪い……」
「寝言と喋る身にもなってくれ……」
「寝言……?」
「まさか……まだ寝ているのか?」

 

 ぼやぼやとする頭に不機嫌な声が響く。
 同時に宛がわれていた先端が離れた気がしたが、嫌々と身体を動かすと溜め息が落ちてきた。

 

「まあ……どのみち夢か現(うつつ)かわからなくするのだから一緒か──っ!」
「あ、ああぁぁぁあーーーーっ!!!」

 再び宛がわれた肉棒は迷うことなく貫いた。
 さっき吐き出したばかりだというのに硬さも変わらず更に膨張している。腰を動かされる度に抉られる膣内は止めようもない蜜を零し、卑猥な音を立てながら私を攻め立てていく。

 

「ああっ、あっ……や……フィーラ……っ!」
「なんだ……」
「んあ、あ……気持ち良い……もっと」
「我侭な姫君だな……!」
「あああぁぁっ!」

 

 呆れではない声が落ちると屈曲の脚が離され、貫いたままうつ伏せにされる。大きな刺激に声を上げるが、更に深く深く突くように腰を動かされ、両手でシーツを握りしめた。

 

「あ、あああぁ……激しい……イっく……ぅ」
「ああ、いいぞ……イっても直ぐヤってやる……」
「ゃあ……イってる時にされちゃ……ああっ」
「いなかった分を埋めるなら当然……それともギリギリで止めようか?」
「意地悪ぅ……あ、ああぁん!」
「冗談だ」

 

 くすりと笑う声と同時に、大きく動いた腰が最奥を突く。
 騎士から愛すべき旦那へと変わった男はただただ快楽の海を連れ、私を呑み込む。いなかった分だけでなく、自分という男を全身に刻み包むように、命令通り激しく気持ち良くしてくれた。


 しかしまあ、あまり覚えてなかったのも事実。
 腕に抱きしめられたまま『すまん』と呟けば、カーテンから挿し込む太陽に負けない笑顔で言われた。

 

 

「それじゃまずキスの雨を降らし、耳元でキミがねだったことすべてを囁こう」

 

 

 それだけはやめてくれええええぇぇぇーーーーーーっっ!!!

 という、お年玉にしてはえらく豪勢なものを貰ってしまった────。

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