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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*もしも世界~空騎士と騎兵攻略編~

もしも男達が18禁乙女ゲームのキャラだったら?

空騎士ベルと騎兵アウィンを画面越しに攻略する姉御をお届け。

※内容的に死亡・無理矢理などがありますので、ご注意ください

 瞼を開くと眩しい光。
 カーテンの隙間から溢れるものだと分かると上体を起こし、掛け時計に目を移す。時刻は十一時。

 

「ふあ~……やはり明け方に寝るのはダメだな……」

 

 大きな欠伸をしながら背伸びをする。
 夜更かしの原因は閉じたノートパソコンの上に置かれたゲーム。週末、連休、新作ゲーム。しかも、攻略した二人が夢にまで出てくるとは……とんでもない乙女罠(トラップ)だな。

 

 熱くなった頬を冷ますように洗面を終えると半袖短パンに着替え、トーストに目玉焼きを乗せた朝食を食べる。いつもなら朝のロードワーク後に食べるのだが寝坊してしまったからな。慣れない時間に走ってリズムが狂うのは好きじゃないし、夕方に回そう。

「さて、その間に残りを終わらせようか」

 

 アイスコーヒーを手にパソコンの前に座ると起動させる。
 朝からゲームとか贅沢だが、これぞ休日。攻略キャラも一応残すとこ銀髪とハチマキ男だが、オープニングを見ながら溜め息をついた。

「年上かー……」

 

 興味ないせいか、年下のハチマキ男からしようかと考えてしまう。だがスティの件もあり、マウスを持つ手が止まった。

 

 しばしの沈黙後『書』をクリック──。

 


*ラガーベルッカ攻略*


 読書家のヤツがベルデライトではなく書庫にいることは初回プレイから判明している。
 所狭しと本棚が並ぶ場面に移ると、案の定、本を読んでいる銀髪。即、Shiftキーハリセンをお見舞いした。これしないと気付いてくれないんだ。そして、気付いてくれた彼の第一声がこちら。

[ラガーベルッカ:こんにちは、ヒナタさん。良ければ私のお嫁さんになりませんか?]

 

 爽やか笑顔でとんでもない台詞。
 だが、御丁寧に[Yes!*No!]の選択肢が出る。当然年上との結婚は御免なため[No!]を選択してきたが、攻略のことも考えはじめて「Yes!」を選択。すると銀髪は目を丸くした。

 

[ラガーベルッカ:本当によろしいんですか? ウソ偽りなく、私は貴女を欲しがっているんですよ。可愛らしいヒナタさんを]

 

 次いでまた[Yes!*No!]の選択肢が出てくるが、今の私は聞き慣れない『可愛い』のせいで、Shiftキーを押したくてたまらない。アハン場面もそうだが、ゲームだと分かっていても恥ずかしい。初回特典の囁きCDとか絶対聴けんな。
 顔を真っ赤にしたまま震える手で[Yes!]を押す。銀髪は微笑んだ。

[ラガーベルッカ:では、“ベル”と呼んでください]
[ヒナタ:……ベル?]
[ラガーベルッカ:はい、我が姫君(リーベ・プリンツェッシン)]
[嬉しそうに微笑むベルの頬は赤く染まり、本を手放した手が私を抱きしめる。暖かく大きな身体に応えるように私も抱きしめると、そっと瞼を閉じた──]

 光に包まれるとED曲が流れ……え、終わり? え? え?
 戸惑っている間に曲が終わると、タキシードを着た銀髪がウェディングドレス主人公を姫抱っこしたスチル。タイトル画面に戻ると、ENDリストに【風は突然に】を確認。

「…………本当に終わった」

 

 唖然とするしかない。
 忠誠イベントどころか魔王と会うことも、異世界人について知ることも、果てにはベルという男がどういう男か知ることなく、出会って数分で結婚(エンディング)。主人公(私)は異世界に婚活しにきたのか?

「はあ~、一目惚れというやつかもしれんが、分からんな……」

 

 ぼやきながらアイスコーヒーを飲む。
 別に出会って直ぐ互いが良いと思ったらスピード結婚もありだと思うが、初回でこのルート行ったら疑問しか浮かばんぞ。まあ、ちゃんと主人公を愛してくれる男だと分かっただけ収穫ありか。最初は結婚詐欺師か軟派な男だと思ってたからな。嫌々でもプレイしてみると印象が変わるものだ。
 そう頷く私のベル好感度が少し上がった。

「よっし、じゃあ進め……そう言えば、ハリセン落とさずにいるとどうなるんだ?」

 

 出会い頭のハリセン攻撃。
 短気な私は直ぐハリセンを落としたが、誰にもハリセンを落とせとは言われていない。普通ならスティの幸福ENDのように気付かないかもしれないと、再プレイはスルーしてみた。

 五回ほど[呼びかける*呼びかけない]の選択肢が出るが、どっちを押しても気付いてくれない。終いには[ヒナタ:次の場所に行こう……]。一抹の不安が過ぎるのは昨夜の二人のせいだろうか。

 

 不安は的中した。
 ベルと一度も会話することなく物語は進み、ハチマキ男が魔王に襲撃されるイベントが起こる。主人公は『宰相室』から『研究医療班』に向かうため螺旋階段のポールを使うが、途中で手を離してしまい──墜落死。

「あ、ああー……」

 

 強制的にタイトル画面に戻され、テーブルに頭を乗せた。
 ポールから手を離し落ちるのは毎回のこと。他のキャラのルートに入っていれば、そのキャラが助けてくれるし、ルートに入ってなくとも通常ルートとしてベルが助けてくれる。ハリセンで叩いていた今までの彼なら。

 

 だが今回『うわっと!!!』いう悲鳴も『一大事な時ほど自分ペースでいないと』と笑う男の助けはなかった。代わりに【届かない手】という名が、ベルのENDリストに追加されている。

「ちょっと……寂しいな」


 年上相手にこんなことを思うなど自分でも驚くが、当たり前のようにあった手と笑顔がないのは切なくなる。しかしこれでは制覇出来ないと、気合いを入れ直すようにアイスコーヒーを一気飲みした。

「よっし、幸せになるぞ!」

 

 ゲーム内ぐらい、年上との結婚も許そうと再プレイ。
 ちゃんとハリセンを落とし、プロポーズも『NO!』を選択、苦笑する彼と共に粉雪が降るベルデライトへ向かう。そこに現れたのは笑顔ソックリな彼の弟であり副団長の男。私の年齢レーダーがピンピン跳ねる。

 自己紹介で同い歳というのは分かったが、出来れば誕生日も知りたい。そして願わくば私より後でいてほしい。いや、絶対に後だと信じよう。ここで兄と同じように『俺のお嫁さんにならないっスか?』とか選択肢出れば迷うことなく[Yes!]を押すというのになぜだ、なぜ出ない!バグか!?  くそっ!!!

 握り拳を作った両手でテーブルを叩いた。はて、私は何を目指していたのだったか。

 

 魔物の襲撃にやっとのこと我に返り、忠誠を誓うイベントが発生。
 不真面目そうに戦っていた男がいきなりキリっと戦う姿は妙にドキドキするし、魔王襲撃によって敗れた時は少なからず胸が痛くなった。頬が熱くなるのを感じながら、怪我をした彼の見舞いへと向かうが、現れたのはジェビィさんだった。

[ジェビィ:ラっちゃんなら、実家に連れ戻されたわよ]
[ヒナタ:え?]

 主人公と同じ声を上げた。
 そこで『四天貴族』の嫡男であったことを思い出すが、弟が継いでいるはずではと疑問符を浮かべる。補足するようにジェビィさんは答えてくれた。

[ジェビィ:オーちゃんでも問題ないでしょうけど、やっぱりご両親的にはラっちゃんにも手伝ってもらいたいんでしょうね。本の虫と言っても頭の回転は凄く速い子だし]

 ベルを子供扱い出来るって凄いなと内心思いながら[ベルに会いに行く*行かない]の選択肢。当然前者を選び、北方にある彼の実家へと向かった。が、門前払いを食らった。執事らしい爺に理由を述べられる。

[執事:貴女のような気品の欠片もない方など旦那様達はお会いになりません。どうぞお引取りを]

 

 辛辣なお言葉に画面が真っ暗になると、自室に戻っていた。
 好感度画面を見れば、ベルが攻略不可。ついでに自身のステータスも確認。

 

「しまったあああーーーー! 完っっ全に体力重視で上げてたあああーーーー!!」

 

 フィーラの時ではあるまいに、体力、速さ、運がピカイチに対して心遣いやおしゃれは半分以下。慌ててプレイし直し、知力、心遣い、おしゃれを上げまくる。『買』ではちょっとお高い貴族服も購入。おほほほ、これでどうかしら!!?

[ラガーベルッカの母:まあ、なんて可憐なお嬢様なのかしら]
[ラガーベルッカの父:ああ、キミならオーガットの妻として家を支えてくれるだろう]
[オーガット:俺っスか!?]
[ヒナタ:い、いや、私はベルと……]
[ラガーベルッカの父:残念ながらベルには頑なに拒否されてしまってね。問題ないだろ、ベル?]
[微笑むご両親のように私と弟も壁際に立つ男に目を移した。腕組みしていたベルは微笑む]
[ラガーベルッカ:どうぞ。私はタイプのお嬢さんではないので]
[その微笑はどこか冷ややかだった──]

 画面が真っ暗になるとED曲が流れ、終わると『リンゴーン』と鐘の音。
 薄暗い部屋で変わらず本を読むベルの後ろでは、主人公達が結婚式している様子が見えるスチルが出た。タイトル画面に戻ると【風のない福音】がリストに加わっているのを確認。カチコチと時計の音を数分聞くと、大きく首を傾げる。

「なぜだろ……嬉しくない」

 念願の弟と結婚出来たはずなのに嬉しさが込み上げてこない。
 さっきも寂しいと思ったり、年上相手におかしいな。笙子や洋一に言ったら病院行った方がいいとか言われるレベルだな。でも今日休日で開いてないしな。

「ではなくて……えっと、もしや会いに行っちゃダメなのか」

 冷静さを取り戻すように額を押さえ、もうパターンの選択肢があったのを思い出す。そこで[会いに行かない]を選択すると、夜、ベルが部屋を訪れてくれた。団服ではない彼に新鮮さを感じる。

[ラガーベルッカ:ご心配をかけてすみません。寂しかったですか?]
[ヒナタ:ま、まあ、自分の騎士がいなくなったら……ちょっとはな]
[頬を赤くしたままそっぽ向く私に、くすくすと笑うベルの手が頬に触れる]
[ラガーベルッカ:本当にヒナタさんは可愛いですね……そんな貴女にお願いがあります]
[ヒナタ:な、なんだ?]
[ラガーベルッカ:私と駆け落ちしてください]
[ヒナタ:は?]

 また主人公と同じ声を上げる。
 こ、こいつ『結婚してください』に続いて何を言っとるんだ。しかも駆け落ちって……。
 戸惑う私とは反対にベルは続ける。

 

[ラガーベルッカ:護るべき主人がいると言ったのですが、一向に聞いていただけなかったので……]
[ヒナタ:そ、それで駆け落ちは違うんじゃ……]
[ラガーベルッカ:いいえ]
[否定の言葉と一緒に大きな両腕が身体を、私を包む。困惑する私の耳元でベルは囁いた]
[ラガーベルッカ:私にとって貴女は主人以上の存在なんです。頬を赤くしたその表情も、唇も、肌も、心も……すべての貴女が愛おしく、欲しい。共にいたいのです]

 バッタリと床に倒れた。ピクピクと小刻みに身体が震える。
 台詞だけだと言うのになんだ、このフィーラとは違う羞恥は……イヤホンしてなくて良かった。この男、絶対囁き魔だろ。危険すぎる。

 顔を真っ赤にしたままなんとか起き上がると[一緒いる*ダメだ]の選択肢。普通ならば前者だろう。だか私的には後者で、意を決して押した。ベルの眉が下がる。

[ラガーベルッカ:なぜですか?]
[ヒナタ:国の非常時に出て行くことなど……!]
[指摘する声は唇によって遮られ、押し倒される。抵抗すればするほど荒々しい口付け。離れた時には息を荒げたまま、ただ見下ろす翡翠の双眸を見つめるしかなかった。耳元に唇が寄せられる]
[ラガーベルッカ:だからこそです。こんな危険な国に貴女を置いてはおけない……私が全てのものから護ります。だから貴女はただ傍にいてください……ずっと]
[向ける冷笑は怪しく映るが、落ちる口付けと包む身体は優しい。隠すように、護るように抱きしめた彼から逃れる術はなく、ただ傍にありつづけるだけだ──fin]

 画面が真っ暗になり、タイトル画面に戻る。
 リストには【優しさの裏の笑顔】が追加され、私は笑顔で頷いた。『やっぱりね☆』と。人の顔はひとつではないな、うむ。

 

 てなわけで、駆け落ちしてみようか。
 ロードし直すと[一緒いる]を選択。先ほどとは違い、はにかんだ様子でベルは微笑んだ。

 

[ラガーベルッカ:ありがとうございます……とても嬉しいです]
[どこか子供のように微笑み抱きしめる腕は優しく、動悸を激しくさせる。それは顔を寄せられても抗うことなく口付けたように、私も彼と共にありたいと願っていた証拠だ──]

 画面が真っ白になると、ED曲が流れる。
 その間にアイスコーヒーを注いでくると、枕を握り準備万端。

 

[ヒナタ:あんっ……あ、ベルぅ……]
[ラガーベルッカ:はい? ああ、すみません、もう少し激しくですね]
[背を向けて膝に座る私の乳房を揉みしだいていた男は、勢いよく先端を摘む。そのまま上下に揺さぶりながらうなじを舐めた]
[ラガーベルッカ:予定外の泊まりになったので、寂さで可愛い頬を膨らませていたんでしょ?]
[ヒナタ:バッ、バッカああぁ……!]
[図星なのに、向けられる笑顔には否定の声を上げる。アーポアクから離れた冬島の静かな町村では響くかもしれないほど大きな声。けれど、ショーツを剥がされ、濡れきった秘部に大きなモノが宛がわれると、周りなど気にせず貫かれた]
[ヒナタ:あああぁぁーーーーっ!!!]
[さっき以上の声を上げても、激しく揺すぶられても、耳朶を舐められても、乳房を弄られても、噴出すモノがあっても、外に漏れることはない。護られている。耳元で囁く彼の力によって]
[ラガーベルッカ:私の妻は可愛いですね]
[ヒナタ:ひゃあああぁぁーーーーっ!!!]
[甘い声は激しい刺激と快楽と一緒に全身を駆け上る。夫となった彼との秘密の場所で──fin]

 ロッジのような場所で裸体の主人公を愛でるベルのスチル。
 BADの次に見ると妙な気分になるが、男だけ服を着ているのが逆に厭らしさを感じてしまい、赤くなった顔を枕に埋める。リストには【二人だけの家】が追加されているが、ポツリと呟きを漏らした。

「また……本編と絡まなかったな」

 

 スピード結婚同様、本編と大幅にズレたEND。
 フィーラとスティを見る限り本編絡みがないとは思えないし、リストもまだ空いている。

 

「もしや……実家の方か?」

 

 浮かぶのは弟との結婚END。
 実家に行った際、訊ねる両親に彼は『タイプではない』と言った。あの時は完全清楚系でいったが、ステータス調整すれば違うかもしれない。そもそもハリセンで叩き続けてきた女が突然おほほ清楚って不気味だしな。よっし、私は私らしくいくぞ! ちょっと清楚という名の偽りも混ぜてな!! 女は隠してナンボだ!!!


 妙な気合を入れ、ステータス調整を開始。

 最初の内は帰されたが、体力・知力・心遣いを上げたら、会話に変化があった。

[ラガーベルッカの父:残念ながらベルには頑なに拒否されてしまってね。問題ないだろ、ベル?]
[ラガーベルッカ:大ありですね]
[ご両親と同じように微笑みながらも、答えた彼の口は強く、私の後ろへ回ると抱きしめた。それはいつもと同じ腕と暖かさで、いつものように私も振り向く。そこにあるのは久し振りに見る笑みと口付け]
[ヒナタ:んっ!]
[両親の前など構わず奪うように強く、舌まで入れられる]
[ラガーベルッカの母:ベ、ベル、やめなさい!]
[慌てふためく声に我に返るが、ベルは離そうとしない。こ、これはマズいよな!?]

 母親同様慌てている心情の主人公に[ハリセンを落とす*身を任せる]の選択肢。コンマ三秒で見事なEnter&Shiftキー同時押しをしてやった。顔を真っ赤にして。

[ラガーベルッカ:さすがヒナタさんですね。素晴らしいハリセン技です]
[ラガーベルッカの母:な、何を言っているのベル!? そ、そんな野蛮なお嬢さんなんてすぐに追い出しなさい!]
[ラガーベルッカ:ええ、いいですよ。どうぞ私と一緒に追い出してください]
[いつもとは違い、どこか冷ややかな微笑を向ける男の言葉に、場が凍りついた。だが、私に向けられる眼差しと微笑は変わらず優しく、気付けば抱き上げられていた。高くなる視界は周りを映すことなく、ただ真下で微笑む彼だけを捉える]
[ラガーベルッカ:私が傍に欲しいのはヒナタさんだけです。騎士としても、一人の男としても、誰に認められることがなくとも私はヒナタさんを愛しています。だからこそ私以外の男との結婚など許しはしません]
[真っ直ぐな瞳と想いは全身を支配するように熱く甘く、それらを受け止めるように彼を抱きしめた。目尻からは涙が零れ、大きな手に頭を撫でられる]
[オーガット:だ、そうっス。父さん、母さん。未熟な俺じゃ、ヒナタさんを護ることもベル兄に勝つのも無理なんで、諦めてくっさい。そもそも、一度言ったら聞かないのは良く知ってるでしょ]
[ラガーベルッカの父:……だな]
[苦笑する弟に御両親も一息つくと、よく知る笑みを向けるが、顔を寄せる彼には敵わない。笑う私に、ベルもいつもの笑みを向けた]
[ラガーベルッカ:これでもう、なんの障害もなく私のお嫁さんになれますね]
[ヒナタ:バカ……その前に『宝輝』を取り戻すのが先だろ]
[ラガーベルッカ:はい……愛する姫君]
[そう苦笑を漏らしながら返事をしたベルは、頬を赤めた私の唇を塞いだ]

 家族の前で口付けるスチルが出たが、その後は本編に戻り、魔王と共に去る。当然助けにきてくれたのはベルで、抱きしめられると同時に画面は真っ白になり、ED曲が流れた。
 その間に枕を抱きしめた私は準備万端。こいやー!!!

 

[ヒナタ:んっあ……ああ、もうっ]
[ラガーベルッカ:早いですよ。まだ全然埋まっていません]
[白いシーツを握りしめたまま俯けになる私に跨った男は、乳房を揉みしだきながら突き出したお尻に楔を打ち込む。国を去ってしまった分を埋めるためと言いながら、もう何日何度目か分からない。それでも激しく揺すぶられると、蜜は止まることなく零れる]
[ヒナタ:ひゃっ、ああっ……んんっ!}
[ラガーベルッカ:日に乱れる姿が可愛さを増してますね……っ]
[ヒナタ:う、うるさっんん!]
[ラガーベルッカ:はい、分かってますよ……私だけの姫君]
[締めつけに応えるように熱いものがナカで噴出すと、顔を寄せ合い口付ける。それは騎士の守護よりも強く甘い、私だけのもの──fin]

 ベッドで交じり合う二人は【幸福の風は傍に】のようにとても幸せそうだ。が、私はゴロゴロゴロゴロ転がっていた。耐性がついたとはいえ、やはり囁き魔のこの男はダメだ。年上なのを差し引いても恥ずかしすぎる。
 

 ちなみに両親の前での口付けを止めなかったら、弟に止められるが【兄弟喧嘩】が勃発。気付けば……うむ、察してくれ。やはりBAD要素は先に見ておくのがいいと思った。

 ともかくこれでベルは揃った。残るは──。

 


*エジェアウィン攻略* 


 昼食を終えると、最後の騎士である年下ハチマキ男に向け出陣。
 王道元気系で、少しツンデレ要素もありそうな子は性格のように攻略も単純かと思えば意外とそうでもなかった。すまん。

 まず、ドラバイトに行っても門前払いを食らう。

 朝、昼、夜、いつ行っても苛立った様子で 『帰れ』の一言。他者を寄せ付けない子かと思ったが、夜訪問時は『女がこんな時間に出歩くんじゃねーよ!』と言いながらも、律儀に部屋まで送ってくれた。両手と肩が震える。

「くっ……なんと可愛いヤツだ……」

 

 顔は完全にニヤけ、悶えてしまう。
 ああ、やはり年下は可愛いな。特にこの反抗期ながらも根は優しいというギャップ感は最高だ。よっしよし、お姉さんは大人だからな。夜以外にこよう。
 そんなストーカー効果があったのか条件でもクリアしたのか、教会を背景に、ハチマキ男は頭を掻いた。

[エジェアウィン:会わしたいヤツがいるから中に入れ]

 

 嫌々ながらも、許可を貰えたことにガッツポーズを取る。本番はこれからだが、進展があると『キターっ!』とテンションが上がるな。まあ『四天貴族』であるロジーさんに、過去の異世界人のことを聞いて落ち着いたが。


 世界平和のため、それが王の仕事であることは今までのPLAYで分かっている。だが、他の異世界人についてははじめて聞いたせいか、暗い表情をするロジーさんに私も枕を抱きしめた。そんな彼の体調を気遣い、今まで門前払いしていた様子のハチマキ男ことアウィン。
 ロジーさんとの会話後は最初の頃よりも表情が柔らかくなり、文句を言いながらも相手してくれる。住民や団員達からも慕われているようで、ただの恥ずかしがり屋だと分かると私のトキメキポイントは上昇するしかない。

「ああ……どうしよう……最っ高に可愛い」

 

 枕を抱きしめたまま、ウフフと床に寝転がる。
 こんなんだから周りに引かれたり、彼氏が出来ないんだろうな。いいんだいいんだ、今は嫁(アウィン)がいるから。フン。
 現実逃避するように進めると魔王襲撃イベントが発生し、最初にやられてしまったアウィンは地下の『研究医療班』に運ばれた。そのまま帰らぬ身に……え?

[ジェビィ:ごめんなさい……運ばれた時にはもう手遅れだったわ]
[ヒナタ:そん……な……]
[目尻から零れる涙を指先を拭ったジェビィさんに、私は目の前が真っ暗になった──fin]

 同様に真っ暗になった画面はタイトルページに戻り、リストには【暗夜に消えた騎兵】が追加された。カチコチと時計の音が響き、枕が床に落ちる。

「よ……嫁がああああぁぁーーーーーっっ!!!」

 大絶叫を響かせ、慌てて電話をかける。
 なぜだ、なぜだ、なぜだ! 今までだって最初にやられていたが、死んだことなんてないぞ!! なのになぜ……なぜだーーーーーっっ!!!

『好感度が足りなかっただけー』
「ウソだろ!? 私はアウィン一筋だったんだぞ!」
『死んだってことは騎兵くんのルートに入ってるってことだけど、彼は門前払いプラス最初にやられるから、会話だけじゃ足りないんだよ。本命落としたければ真剣に恋しなよ、ひななん』

 現実逃避していた罰とでも言うのか、笙子様のお言葉が胸に刺さる。
 つまりは貢ぎに貢げ、貴方の傍を離れません、独占方になればいいんだな。よっし、完璧なストーカーになってやろうではないか!!!


 気合いを入れ直す私に笙子は何か言いたそうにしていたが、応援だけで通話を切った。

 再プレイすると、また門前払いを食らい泣きそうになるが、通い続けに続け、ロジーさんと対面。そこから毎日訪問に加え『買』で彼の好きなコーラやオニギリなどを差し入れた。なんか部活のマネージャーみたいだな。学生時代の可愛いマネージャー達をウフフと思い出していると、アウィンが昼に訪ねてきた。

[エジェアウィン:よう。暇ならどっか行かねーか?]

 

 承諾すると、照れくさそうだった彼は『サンキュー』と笑顔を向ける。悶え死にそうだ。
場所はドラバイトの大通りで、露天を回っての買い食い。フィーラの雑貨屋巡りも良かったが、アウトドアの私としてはアウィンの方が楽しいな。下着屋巡りのベル、夜型のせいか一度も誘いがなかったスティは除外。

 気付けば週に三、四回。多い時は朝昼晩ともアウィンと過ごしていた。
 怒っていた顔も次第に少なくなり、無邪気な笑顔はスティよりも子供に見える。だが、ガラの悪い連中に絡まれば威厳ある態度で護り、顔に似合わず気遣いもエスコートも出来る男。こいつも実は『四天貴族』ではないかと疑っていると、家族構成の話で疑問が解けた。

[エジェアウィン:オレん家(ち)、役所やってんだよ]
[ヒナタ:役所……ってことは貴族じゃないか! 騎士団長なんてしてていいのか?]
[エジェアウィン:別に、口うるせー兄貴がいるし……オレはヒーローになりたかったからいいんだ]

 

 はにかんだ笑みを向ける彼に一瞬心臓が跳ねた気がした。
 枕を抱きしめたまま彼の話を聞く。それは幼心に憧れた絵本のヒーロー。そして、彼を助けてくれた“ロジエット”というヒーロー。

 

[エジェアウィン:だから今度はオレがジジイ達を護ってやんだよ……]
[後ろで照らす夕日がハチマキを外した男を、真っ直ぐな瞳と微笑を向ける男を一層に輝かせる。それがとても綺麗でカッコ良くて──見惚れた]

 主人公に同調したかのように、私の頭からも湯気が出る。
 ベルとスティは大人の小説を読むかのようなエロさがあるが、フィーラとこいつは少女漫画の甘さだ。ヤバい。私的にこのテは弱いかもしれない。年下ウフフって言えなくなってきた。それとも三騎士のせいで感覚が可笑しくなったのだろうか。実は言葉攻めに弱かった?

 

 いやいやと頭を振りゲームに集中するが、翌日アウィンに会えなかった。
 行って必ず会える訳ではないため特に気にしなかったが、その次もその次も、いつ行っても会えない。さすがに戸惑いはじめていると、教会で宰相と会った。

[ヒューゲバロン:やあ~何~してるの~~?]
[ヒナタ:貴様こそ、なぜドラバイトにいる]
[ヒューゲバロン:あれ~言って~なかったけ~僕~ドラバイト~この教会の~出身なんだよ~~]
[ヒナタ:そうなのか?]
[ヒューゲバロン:そう~それで~今日は~ロジじいちゃんが~危篤って~聞いて~きたんだよ~~]
[ヒナタ:えええぇぇーーーっっ!!?]

 

 同じ悲鳴を上げた。
 宰相がドラバイト、教会の出身と言うのも驚いたが、ロジーさんが危篤ってなんだ!?
 困惑する私に宰相は教会に入るが、しばらくしてアウィンを連れてきてくれた。彼の表情は雲が掛かったように暗く、重苦しさを感じる。『ごゆっくり~』と言う宰相を叩きたい。

[エジェアウィン:悪ぃ……何回かきてたんだろ……]
[ヒナタ:いや……私よりその……大丈夫なのか?]
[何に対しての心配なのか自分でも分からないが、無意識に手が伸びる。けれど、拒むように背を向けられた]
[エジェアウィン:もう……てめーとは会えね……]
[ヒナタ:な……んで]
[突然の言葉に身体が震えるが、それはアウィンも同じだった。震える手が握り拳を作るのを見つめていると、歯軋りのような音]
[エジェアウィン:おめーといるのが……つい楽しくて……自分の仕事を忘れちまってた。オレが護らなきゃいけねーのは……]
[いつもの彼からは想像出来ないほど小さく、重い声。赤いハチマキを揺らしながら教会へと姿を消す男に私は何も言えず、ただ扉が閉じる音だけが響いた。胸の奥底で芽生えていた恋情が崩れる音と共に──fin]

 真っ暗になった画面はタイトルへと戻り【閉ざされた扉】が追加された。
 カチコチと時計の音を数分聞くと、電話を掛ける。

 

『今度はな「嫁をロジーさんに盗られたーーーーっっ!!!」

 また発狂する私に笙子は溜め息をつくが、何がなんだか分からない。死亡以前に、また門前払いとかなんなんだ。いったい何が起こったというのだ。
 うぐうぐとしゃくり上げていると、まるで予期していたかのように笙子様は仰った。

『好感度上げすぎー』
「ウソだろっ!!?」
『恋は盲目って言うでしょ。固執過ぎると何かを失うリスクが伴うのが恋愛なんだよ』
「しょんなリアリュ……ひっく、いりゃん……うぐ」

 電話口で慰めてもらい、涙をタオルで拭いながら再プレイ。
 今度は適度な距離を保ちながら進めると、ヒーロー会話後のアウィンの台詞が[だから今度はオレがジジイ達を護ってやんだよ……しゃーねーけど、ついでにいたてめーもな]に変わった。ロジーさんについても体調は悪いが大丈夫だと副団長ちゃんに教えられ、魔王襲撃に敗れはしても入院。最悪な事態は回避された。

 

 安堵の息をつき『茶』ではなく『研』を押して見舞いへと向かう。
 すると、知らぬ男がジェビィさんと話していた。黄茶の前髪を上げ、眼鏡をした男。紫の瞳とムッスリ顔が誰かに似ていると思ったらアウィンの兄だと紹介される。

[エジェアウィンの兄:キミが例の……初めまして。アウィンの兄のテヴァメットスだ。歳は二十九]

 弟とは違い、冷たい雰囲気の兄に主人公はよろしくと握手を交わすが私は無心。理由=年上だから。年齢だけで人を判断するのはよくないが、アウィンの可愛さを知っている私としてはお断りだ。

 頬を膨らませている間にスティも魔王に敗れ、久し振りにアウィンとの対面が叶う。
 トレードマークのハチマキはなく、右腕はギプスで固定され痛々しいが、いつもの無邪気な笑みに迎えられると胸のつっかえがなくなる気がした。だが、その笑みも現状を話すと曇る。

[エジェアウィン:そっか……カレスティージも……おめーは大丈夫なのか?]
[ヒナタ:いや、私よりアウィ……!]
[どこか悔しさを滲ませる彼に手を伸ばすが、ギプスのない手に捕まる。そのまま引っ張られると、倒れる身体は堅く包帯の巻かれた胸板へと落ちた。優しく髪を撫でられる私は再度訊ねた]
[ヒナタ:なぜ貴様が心配するんだ?]
[エジェアウィン:あん? 心配しちゃ悪いのか……あーいや、そう言う意味じゃなくてよ]
[ゆっくりと顔を上げた先には眉を寄せながらも、頬を赤くしたアウィン。つられるように自分の頬も熱くなってくるのが分かるり、二人して顔を真っ赤にする]
[ジェビィ:あらあら、初々しいわね]
[テヴァメットス:ガキか……ああ、ガキだったな]
[ヒナタ&エジェアウィン:わああああーーーーっっ!!!]

 まさかのジェビィさんと兄に二人の悲鳴が上がるが、私は既に枕に顔を埋めていた。
 アハンなこともしてないのに恥ずかしくなるとは、私は恋愛に向いてないかもしれない。それにしても、ここでキスも出来ないとは、フィーラ以上に初心(うぶ)だな。可愛いヤツめ。

 

 しかし、アウィンと兄は仲が悪い。
 何度か見舞いに行くと会うのだが、毎回口喧嘩ばかりしている。ベル兄弟では見ないせいか新鮮ではあるが、血が上りやすいアウィンとは相性が悪い。そんな気持ちを代弁するかのように、帰り際、地下ホールで主人公が兄に訊ねてくれた。

[ヒナタ:なぜ喧嘩すると分かっておきながら見舞いにくる?]
[テヴァメットス:ヤツがバカだからだ]
[即答した男に目を丸くすると、彼は眼鏡の真ん中を押し上げた]
[テヴァメットス:アイツは気は短いが後を考える人間だ。いつもなら俺に食ってかかってくるが、大怪我の今それは出来ない。その悔しさからさっさと回復して全力で殴ってやるという方に頭が回るんだ。あとニ、三日もすれば動けるだろ]
[予定よりも早い退院予想に何も言えなくなるが、弟と同じ紫の瞳は真っ直ぐ私に向けられていた。だが、直ぐに冴えない顔になる]
[テヴァメットス:もっとも……]
[ミレンジェ:ちょっと、退いてくださいっ!]
[慌てた様子で階段から出てきた副団長に私と兄は目を見開くが、彼女は顔を青褪めた様子でアウィンがいる部屋へ向かう。慌てて追い駆けると、アウィンが起き上がっていたが、ギプスは取れたと言っても身体は震え、足も覚束ない]
[ヒナタ:どうしたんだ?]
[エジェアウィン:あの黒いヤツがまたドラバイトに現われやがったんだよ!]
[ヒナタ:えっ!?]

 魔王ーーっっ! 訪問先を間違ってないかーーーーっっ!?
 今までなかった展開に枕を床に落とし、動悸を激しく鳴らしながら画面を食い入るように見つめる。止める主人公と副団長に構わず、アウィンはふらふらの状態で部屋から出て行くが、兄が道を塞いだ。

[テヴァメットス:その状態で行っても足手まといだと分かっているのか?]
[汗を流すアウィンの前を遮る兄の瞳は鋭い。それはアウィンも同じだが、瞼を閉じると彼の横を通り過ぎようとする]
[エジェアウィン:……オレの仕事はドラバイトを護る騎士団長なんだ。その後のことは……任せた]
[ヒナタ:アウィン!]
[慌てて伸ばした手は包帯が巻かれた手に掴まれるが、目先の彼は笑みを浮かべていた。その微笑に動けずにいると口付けられる。それは一瞬触れ合うだけの小さなもので、頭を撫でられた]
[エジェアウィン:じゃあな]
[ヒナタ:アウィ……っ!]
[駆けていく彼にまた手を伸ばすが、兄に抱き留められる。必死に身じろいでも男の力に敵うはずもなく声を張り上げた]
[ヒナタ:アウィ……ン……アウィン……アウィーーーンっっ!!!]
[涙を零す悲鳴と共に地鳴りが響く。断続的に続く音よりも、抱き留める男の呟きの方が耳に届いた]
[テヴァメットス:治っていない状態でも街のためとか……本当、バカな弟だ]
[眼鏡の間から見える紫の瞳と抱える腕は震えている。その腕を強く抱きしめた私は現実から背を向けるように瞼を閉じた。浮かぶのは、街を救いに飛び出したヒーローの背中──fin]

 兄と抱き合うスチルが出るとタイトル画面に戻る。

 リストには【最期の背】が追加され、呆然と見つめたまま電話をかけた。何も言わない私に電話主は溜め息をつく。

『年下に苦労してるね』
「じょうご~~!」

 

 スティといい、なぜ大好きな年下と結ばれないんだ。なぜ離れていく。
 挫けそうな私に笙子様は『ヒーローに足りない物があるでしょ』と言い残し、通話を切った。ぐすぐすと涙を拭いながら、入院したアウィンのところまで再プレイする。そこで躊躇いはするが見舞いには行かず、ドラバイトへ向かうことにした。現れたのは副団長ちゃん。

[ミレンジェ:バカ団長が目覚めたら渡してください]
[差し出された彼女の手から受け取ったのは、土埃も穴も開いた赤いハチマキ。アウィンの物だ]
[ヒナタ:いいのか?]
[ミレンジェ:バカ団長が寝ている分、働かないといけませんので。それに……貴女から受け取る方が良いと思います]
[どこか柔らかい笑みを向けているようにも見える副団長に私は頷き受け取った。ヒーローの大切なハチマキを]

 その後、何回か見舞いへ向かうと、また黒いモノが現れたと副団長ちゃんがやってくるが今回は違った。兄の予想通り、アウィンは全快。主人公は赤いハチマキを差し出した。

[ヒナタ:ほら、頼んだぞ、ヒーロー]
[エジェアウィン:……おう]
[どこか照れた様子で受け取ったアウィンは手早く額に結ぶ。久し振りに見るヒーローに頬が緩んでいると、抱きしめられた。顔を上げれば優しい紫の瞳]
[エジェアウィン:行く前にさ……頼み聞いてもらっていいか?]
[ヒナタ:な、なんだ?]
[エジェアウィン:オレをさ……お前の騎士(ヒーロー)にしてくれよ。オレ、お前が……ヒナタが好きなんだ]
[地鳴りが響いているはずなのに、その言葉が胸の奥底まで届く。優しかった眼差しも真剣に代わり、目尻から涙を零す私は小さく頷いた。想いを、願いを言葉にする]
[ヒナタ:ああ……なってくれ、私だけの騎士(ヒーロー)に……そして帰ってきて、また抱きしめてくれ]
[エジェアウィン:おう、お姫様の声とハリセンがあれば負ける気しねーよ]

 膝を折った男は忠誠を誓い、ドラバイトへと向かった。
 私的には死亡フラグのようで嫌な動悸が鳴るが、約束通り彼は帰ってくると抱きしめてくれた。そのままストーリーは本筋通りに進み、魔王城に助けにきてくれたのはアウィン。はじめて見る金茶のマントに驚きながらも、最後は抱き上げてくれた。

 やっとのこと画面が黒ではない、白になるとED曲が流れてくる。
 気付けば外の日が傾いているが、タオルで涙を拭う私の瞼は当に真っ赤で、メールで笙子様に報告&礼を送るので必死だった。そのせいか、久々に聞く声に反応が遅れる。

[ヒナタ:んっ……あ、アウィ……ンんっ!]
[エジェアウィン:ほら、もっと腰動かせって。お姫さんは激しいのが好きだろ?]
[ヒナタ:騎士のくせに……私に……んっ、させる気か……ああんっ!]
[肩に埋めていた顔を上げれば、胸に顔を埋め、先端を舐めていた男も顔を上げる。その口元には意地悪な笑みがあった]
[エジェアウィン:そういう“命令”したのはおめーだろ?]
[ヒナタ:うう゛ーー……]
[何も言えない私は抱きしめる腕を強くすると、同じようにアウィンも抱きしめる。そのまま激しく上下に揺らし、既に貫いていた楔をまた何度も打っていく]
[ヒナタ:ああっ……あああっ]
[エジェアウィン:まだまだ……降参するのは早いぜ]
[汗を流しながらも愉しそうに笑う男は繋がったままシーツに沈むと、私の両手と足を赤いハチマキで縛った。待ったをかけるよりも先に勢いよく楔を打ち込まれ、快楽を与えられる]
[ヒナタ:ああ……っあ、気持ちい……アウィ……ン、もっ……とんんっ!]
[エジェアウィン:了解っ……愛する姫君(ビーラブド・プリンセス)]
[笑みを向ける彼の口付けを受けると、願いを叶えるように絶頂へと導く。求め求められるがまま、たった一人、私だけの英雄《ヒーロー》と共に──fin]

 嬉しそうに抱き合ったまま愛し合う二人に顔は真っ赤になる。
 だが、リストに『四聖宝』最後の【英雄と姫君】が追加されているのを見て頬が緩んだ。震える両手に握り拳を作ると高く掲げる──

 

 

 

 

「騎士フルコンプ~~~~~~!!!!」
「「は?」」

 大きくバンザーイをする私に、白銀と茶髪を揺らす男二人が顔を覗かせる。
 それは先ほどまで画面越しに見ていた顔、ベルとアウィン。窓からは夕日が差し込み、カラスが家に帰る声が聞こえるここは私の部屋ではない、異世界アーポアク城にある『子供部屋』。

 タオルケットを掛け、ソファに寝転がる私の瞬きに、仕事から帰ってきた様子の二人は上着を脱ぎはじめた。ベルは変わらず微笑み、アウィンは呆れているように見える。

「アズフィロラ達は寝てるっつってたけど、ホントに寝てたのかよ?」
「私としては、もう少し寝顔を見たかったですね」
「寝顔……!」

 瞬間、再び鮮明に浮かんだ内容に、勢いよく二人を抱きしめる。突然のことに目を丸くされるが、私は泣き叫んだ。

「ベル~! ちゃんと愛してるから義弟とは仲良くしてくれよ~!!」
「はあ……嬉しいような複雑のようなですね」
「アウィ~ン! 私は絶対貴様が死んでも手羽先となんて再婚しないからな!! て言うか選択肢が一個も出ないってなんなんだ!!!」
「何わけわかんねーこと言ってんだよ……しかも不吉なことまで」

 二人もフィーラとスティのように分からないといった様子で互いを見合っている。だが寝過ぎたせいか、また瞼が重くなり、二人の腕に頭が落ちた。真っ暗な暗闇の中で浮かぶのは長いミントグリーンの髪を揺らす男と『な~りな~り』と跳ねる男。あと、蛇を連れ……。

 嫌な予感しかしないのはなぜだろう────。

*次話、隠しキャラの攻略編

*一部内容は許可を得て、某親衛隊様にご協力いただきました(ありがとうございます)

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