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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*淫欲と魅惑

*アズフィロラとラガーベルッカと

 日暮れと共に店仕舞いがはじまる西方ラズライト。
 替わるように楼閣の提灯を灯した『宝遊郭』の門が開かれた。

 

 時間が経つに連れ、玄関には大勢で案内される客、番台に内緒話のように耳打ちをする個人客に別れる。前者は三階まで、後者はそれより上の階を目当てとしている者達。三階までなら女性客も入れるが、四階からは従業員以外の女人は禁止。
 しかし、向日葵生地の着物の私には特別許可があるせいか、階段を塞ぐ男衆に一礼されると通される。

 

「うむ、いつもご苦労さ……ん?」

 

 労いながら階段に足を掛けると、宴会場の一室から何かが壊れる音と騒がしい声が聞こえた。襖を壊す音にも似ていたせいか、青ウサギの我が子+客=乱闘の式が成り立ち、顔を青褪める。
 慌てて駆け寄ると案の定三枚の襖が壊れ、一人の男客が立っていた。

 

 しかし、幸いにも我が子の姿はない。
 安堵の息をつく一方、酔った様子の男は膝を着いた従業員女性を睨みつけていた。

 

「てっめぇ……客の注文が聞けねぇってか!?」
「で、ですから……ここでの性行為は禁止されて……」
「文句言わず、俺様の相手をしろっ!」

 

 震える女性の手首を乱暴に握った男に、怒りの炎を燃やす私は髪留めに手をあてる。が、ハリセンよりも先に男の手首を掴む者がいた。

 

「っぎゃあああ!!!」

 

 悲鳴と共にゴキリっと、明らかに骨が外れたか折れたような音に周りが息を呑むが当然の報いだ。女性を離した男は怒りの形相で振り向くが、射抜くような赤い瞳と髪の男に肩を揺らす。

 

「そんなに相手が欲しいのなら俺が引き受けよう。ただし、加減は一切しない」

 

 地を這うような声の主は蘇芳色の着物に黒の帯。
 袖は襷掛けされ、腰には和装には不似合いな洋の剣。男の手首を握る反対の腕には徳利を数本乗せた御膳台を抱えた──フィーラ。

 

「ふざっけんじゃねぇっ!!!」

 

 手を離したフィーラに身体を捻った男は殴りかかる。が、ひらりと交わされた挙句、足を払われ転倒した。鮮やかな動きに自然と拍手が送られる。
 そこに男衆達が現れ、先頭の薄い菫髪の男は瑠璃の瞳を見開いた。

 

「これは……アズお兄さん?」
「ああ、フォンテ殿。すまないがその男に灸を据えてくれ。婦女子に手を上げたのでな」
「そうですか……お手数お掛けしました」

 

 御前台を置いたフィーラよりも一回りほど背が低い男衆の頭目。チェリーさんの息子であるフォンテ君は一礼すると部下達に指示を出す。
 その声に周りも散りはじめ、礼を述べる女性と入れ替わりでフィーラに声を掛けた。

 

「よっ、さすがだな」
「ん? ああ、ヒナタより先に止めることが出来て良かった」
「うむ、あと数秒遅ければハリセン地獄舞を見せることが出来たのに……残念だ」

 

 当然いるのを知っていたかのように苦笑するフィーラに腕を組んだ私は頷く。そこでふと訊ねた。

 

「ところで何してるんだ? 今日はアウィンと『四天貴族』の会議を城でやると……ま、まさか、それを名目に内緒で他の女と「生涯ない」

 

 告白のような一言で遮ったフィーラは御前台を抱え直し、呆けている私を一瞥する。我に返ったように彼の背中を追い駆けると、階段を上りながら話しはじめた。

 

「城に行ったらチェリミュ様の体調が優れないと聞いてな。急遽『宝遊郭(ラズライト)』で行うことにしたんだ」
「え、チェリーさん大丈夫なのか?」
「太夫ならではの疲れというヤツだろ。会議後自宅に戻られたが、いつもと変わらないとフォンターナ嬢から連絡を受け取っている」

 

 五階へ掛ける足を止めたフィーラの安心しろと言うような笑みに胸を撫で下ろす。
 帰りに見舞いに寄ろうか考えると、再び階段を上りはじめたフィーラと他二人が飲んでいるのではと推測、閃いた。

 

「つまり義弟とアウィンがいるんだな!?」

 “残り”の『四天貴族(ふたり)』に花畑満開。ついでに目を輝かせると、五階へ辿り着いたフィーラは後退りどころか柄を握った。が、すぐに溜め息をついた。

「残念だがエジェアウィンはヒューゲバロン様に呼び出され、オーガット殿は騎士団の会議と重複したため代理人を立てられていない。ついでに言うとティージも裏仕事で国外に出ている」
「え~!」

 

 容赦ない鉄槌に年下天国が崩壊する。
 へなへなと腰を落とした私は力なく言った。

 

「なら貴様も帰れば……ん? じゃあ、北方の代理人って誰だ?」

 

 ふと思い出すのは『四方の扉』。
 昔と違い通れる者が増えたとはいえ、義弟さえたまに引っ掛かってしまう扉を誰が通ってこられるのか。小首を傾げるよりも先に、フィーラが襖を開いた。

 

「当然この御方だ」
「え?」

 

 珍しい敬語口調に顔を上げる。
 夜と溶け込むように淡い提灯が灯る大広間は普段楼閣主か藍色の瞳を持つ黒ウサギ様の二大妖艶人が迎える。が、今夜はどちらの姿もない。

 

 代わりに堂々とローソファの真ん中に座るのは暖色に染まった室内に映える銀色の髪。萌黄の着物は割れた腹筋が見えるほど開け、足を組んだまま優雅に本を読んでいる男。
 立ち上がる私に気付いたように翡翠の瞳が本から上がると、いつもの笑みを向けられた。

 

「おや、ヒナタさん。いらっしゃい」
「なんだ、ベルか……」
「ものすっごいテンションが下がったな……」
「悲しいですね」

 

 肩を落とす私に『四天貴族』であるフィーラとベルは苦笑しながら互いを見合う。
 考えれば北方をまとめるヴェレンバスハ家の当主は本来長男であるベル。ついつい書庫ばかりで結びつかなかったが適任であることに違いはない。内心『面倒くさい』とかぼやいてそうだが。
 それよりも十は越した空瓶が放置されていることに溜め息をついた。

 

「貴様ら飲み過ぎだぞ。ちゃんと代金払うんだろうな?」
「楼主なのでタダです」
「は?」

 

 タダよりも違和感のあった言葉に瓶を起こす手が止まる。
 首を傾げたまま振り向くと、膝を着いたフィーラが徳利の他おつまみを白い扇子で扇ぐベルに差し出していた。

 

「フィーラ……いつの間に主人を替えたんだ?」
「なっ! 失礼なことを言うな!! 俺はヒナタ以外はい「アズフィロラ君、女の子大好きなヒナタさんのために妓女を数人呼んであげてください」

 

 カッコイイ台詞が来る前に被せられた“命令”に、慌ててフィーラは広間を出ていく。
 私は女の子女の子と背景が桃色になっていたが、扇子で手招きされているのに気付き、近寄ると徳利を手渡された。畳に座ると眉を顰めるが、盃を差し出される。

 

「注いでいただけますか?」
「む、なんでそう上からなんだ?」
「私が今『宝遊郭(ここ)』の主人だからです」
「はあ?」

 

 素っ頓狂な声を上げると、ベルはパンっと扇子を閉じ、ソファ背に肘を置いた。袖から見えるのは普段厚手の服に隠れた腕。視線を落とせば胸板もあり、見慣れてないせいか目のやり場に困る。
 すると、戻ってきたフィーラが躊躇った様子で言った。

 

「実は……チェリミュ様に楼主を代わりにしてくれと言われてな」
「は? そこは普通フォンテ君じゃないのか?」
「指名がなかったのでジャンケンすることにしたんです。で」

 

 笑顔でチョキチョキするベルに、目を逸らしたフィーラは小さく手を挙げた。どうやらハサミに負けた紙がパシリに遣われているようだ。
 開いた口が塞がらない私にベルは再び盃を差し出す。

 

「ですのでヒナタさん……注いでいただけますか?」
「うっ……」

 

 ジャンケンしてない私は関係ない。なのに何かを含んだ笑みと双眸に身体が硬直し、気付けば徳利を傾けていた。注がれた盃を優雅に口元へと運んだベルは静かな喉音を鳴らす。飲み終えると笑みを向けられた。

 

「美味しいです。では、次はここに注いでください」
「ここ……っ!」

 

 扇子が突くのは胸の谷間。
 ぎょっと目を見開くと、背後から勢いよくフィーラに抱きしめられた。

 

「お戯れはよしてください……」

 

 耳元で聞こえる声は怒気を含んでいるが、振り向かなくとも顔が真っ赤なのが想像出来た。しかし両腕の強さに胸が圧迫され、止めようと口を開く。

 

「アズフィロラ君、そのまま動かないでくださいね」
「「へ?」」

 

 先に越された上、フィーラとハモる。
 私から徳利を奪ったベルは肌着も纏っていない胸の上へ持ってくると傾けた。トロリと、生温くなった酒が注がれる。

 

「あ、ちょっ……」
「ああ、美味しそうですね。アズフィロラ君、溢さないようちゃんと抱きしめててください」
「え? え? ええ?」

 

 狼狽するフィーラは慌てて抱きしめる。
 中央に寄せられた谷間に出来た溝に酒が溜まり、振動によって零れる。それを舐め上げながら酒に唇を付けたベルは吸い取るように飲みはじめた。厭らしい水音に身体が小刻みに震える。

 

「ん……寒いんですか?」
「バ、バカあ……」
「アズフィロラ君、妻が寒いそうです。暖めてあげてくださいね」
「……わかりました」

 

 さっきまでとは違い、一息ついたフィーラは別の徳利を手に持つ。それを直で飲むと、息を漏らす私に口付けた。流し込まれる酒は甘い。

 

「んっ……フィー……ん」

 

 飲み込むことより、流し終えた舌に蹂躙されて気持ち良い。もっととねだるように唇を押し付けると、フィーラの腕が弱まり、谷間にあった酒が零れていく。
 気にもしないベルはそれらを舐めながら私の襟を広げた。

 

 露になった乳房の先端は尖り、その上に流れてくる酒をベルは舐める。
 ピクリと揺れる身体に唇を離すが、すぐフィーラに塞がれた。ベルは流れてきた酒と一緒に先端を口に含み、反対の先端は扇子で擦る。

 

「あふ、ん……んんっ」
「アズフィロラ君……注いでくだ……と」

 

 ベルの命にフィーラは口付けたまま持っていた徳利を傾ける。
 注がれる酒は高さがあったせいか胸元で弾かれ、ベルの顔や身体にも掛かった。乳房を揉むベルはくすくす笑う。

 

「ウサギとは違った仕返しですね。では、アズフィロラ君、ヒナタさんを脱がしてください。そしてヒナタさんは私についたお酒を舐め取ってくださいね」

 

 声は甘いのに、唇を離した私の顎を持ち上げるのは扇子だ。
 息を荒げながら見下ろせば、ベルの頬と開いた胸元には汗とは違う雫。すると、フィーラが私の帯を解きはじめた。

 

「あっ……フィーラ……」
「楼主の命令だからな……逆らうな」

 

 耳朶を甘噛みしながら帯を投げ捨てたフィーラは着物を脱がし、ゆっくりと私の背中にのし掛かる。押されるように落ちた身体はベルの胸板に受け止められ、目に映る雫に喉が鳴った。

 

「隅々まで舐めてください……ね?」

 

 扇子を置いたベルは私の頬を両手で持ち上げると口付ける。フィーラとは違う味。でも甘いのは変わらない。
 高揚感に唇を離すと、頬についた雫を舐めた。次いで首筋を、鎖骨を、胸の先端を舐める。

 

「んっ、ん……」
「さすがヒナタさん……お上手ですね。ご褒美あげましょう、アズフィロラ君」
「ええ」

 

 頷き合ったベルは両手で乳房を揉みしだきながら先端を指先で捏ね、フィーラは私の背中に舌を這わせた。前後の刺激に身体は敏感に反応し、秘部から蜜が零れる。
 フィーラの手が触れようとするが、何かで叩かれる音がした。

 

「まだ早いのでコレで」
「……わかりました」

 

 どこか不機嫌なフィーラにベルがくすりと笑うと、指ではない何か堅い物が秘部に宛てがわれた。

 

「ひゃっ! な、なんだ!?」

 

 咄嗟に振り向けば、フィーラが扇子の先端で秘部を突いていた。食い込んでないとはいえ異物に嬌声を上げる。

 

「あ、あ゛あ゛ぁぁ……っ」

 

 わからない刺激に身体が強張り、涙が零れる。
 痛みなのか不安なのかなんなのかわからないでいると、ふっと宛てがわれる物がなくなった。震えながら振り向けば、フィーラは不愉快そうに眉を顰めている。

 

「…………ラガーベルッカ様。やはり俺はこの類……ヒナタを傷付ける行為は出来ません」
「大袈裟ですね。ヒナタさんは悦んでいるのに……では替わりましょうか」
「だ、誰も悦ん……あっ!」

 

 怒るより先に背中から抱きしめるフィーラに起こされ、頭が胸板に当たる。頬を寄せ、涙を舐め取るフィーラは不満そうに呟いた。

 

「悦んでいたのか?」
「そ、そんなわけ……」
「悦んでますよね?」
「ひゃっ!」

 

 膝を広げたベルは股に扇子を潜らせると、ぐりぐりと秘芽を押し込む。的確に、緩急をつけながら。

 

「あ、ああ……っ」
「ヒナタ、もう一度聞くぞ……気持ち良いのか?」

 

 乳房を手の平で転がしながらうなじを舐めるフィーラの問いはさっきと違う。だが、思考も羞恥も痛みも既に薄まるほど快楽へと呑まれていた。
 

 虚ろな目に宛てがわれていた扇子が映ると、白かった扇面には染みができ、天から蜜が零れている。

 それを微笑んだまま見せるベルに羞恥だけが増し、片足で彼の股を蹴った。当然二人は驚くが、裸足だからこそ明確に伝わる堅さと熱いモノに一番私が驚く。
 引っ込めようとする足をガッシリと掴んだベルは笑顔だ。

 

「私を気持ち良くしてくれる足じゃなかったんですか?」
「足を希望するのか!? 変態か!!?」
「私は別に足でも良いですよ。でも、ヒナタさんが嫌だと仰るなら……もうじきいらっしゃるプロにお願いしましょうか」

 

 濡れた扇子で私の足をなぞるベルは襖に目を移す。
 視線の意味がわからずフィーラを見上げると顔を逸らされた。

 

「また学ばせてもらうのも良いかもしれませんよね、アズフィロラ君」
「同意を求めないでください……」

 

 くすくす笑うベルに、抱きしめる腕を強めたフィーラはバツが悪そうにする。
 学ぶと聞いて浮かぶのははじめてシた時『四天貴族』の教育で受けたという話。そこで先ほどフィーラが妓女を呼んだこと、ここが遊郭であることを思い出す。慌てるように片足でベルのモノを押し、片手でフィーラのモノを握った。

 

「「っ!」」
「わ、私以外の女性とヤるのは……み、見たくない……」

 

 しどろもどろで言いながらも足と手を動かす私にベルは扇子を置き、フィーラは片手を着いた。
 服越しで大きさも長さも違うモノ。でも、捏ね、扱く度に硬さを増すモノは紛れもなく男のモノ。良く知るモノだ。

 

「あっ、ヒナ……タ」
「嫉妬なんて……可愛いですね……っ」
「うるさい……」

 

 息を漏らす二人の額から流れ落ちる汗が淡い提灯(ひかり)に重なり輝く。
 荒々しく襷を解いたフィーラは溜まった熱を逃がすように襟元を広げ、ベルも上半身だけ裸になるように脱いだ。普段スティしか着用せず、脱ぐのを見ない衣服のせいか大袈裟なほど頬が熱くなる。

 すると『失礼します』と、襖が開いた。


 現れたのは艶やかな着物を纏いながらも、肩から白い肌を見せる三人の女性達。頭を下げている彼女達の登場にあられもない光景だと気付くが、フィーラに抱きしめられるとベルが扇子で私の顔を隠した。躊躇う女性の声が耳に届く。

 

「あの……?」
「申し訳ないが不要になった」
「え?」

 

 彼女達を見つめるフィーラはふっと微笑むと乳房を揉みしだきながら両先端を摘む。喘ぐ私の股へと手を潜らせ、秘部を指先で弄るベルも彼女達に笑みを向けた。

 

「私達には妻一人で充分ですので……お下がりなさい」
「っは、はい!」

 

 冷ややかだった楼主の声に慌てて襖を閉める音が木霊する。
 だが、ナカへ侵入した指の快楽に身じろぐだけで精一杯だった。扇子を下ろしたベルに口付けられる。

 

「んっ……今の顔、とても可愛かったですよ」
「ああ、他に見せられないほどにな」
「バ、バカ……ん」

 

 ベルが唇を離してすぐフィーラと口付ける。
 そのまま身体を落とされるとフィーラの膝に頭を乗せるが、既に上前が退けられ、聳り立っているモノを目が捉えた。唇を離したフィーラの笑みに何も言わず舌を伸ばす。
 舐めながら両手で扱いてると、私の両脚を曲げたベルは自身のモノを足に挟ませた。

 

「っ、ベル……本当に足がいいんだな?」
「ええ、たまには……大丈夫ですよ、私もヒナタさんを気持ち良くさせますから」
「ああっ!」

 

 両手で太腿を持ったベルは股に顔を埋め、蜜を零す秘部を舐める。
 刺激に身体がビクビク反応してしまうが、見上げる翡翠の双眸に挟んでいるモノを足で扱く。同時にフィーラのモノにもしゃぶりつくと、乳房に酒がかけられた。屈んだフィーラはそれを舐め取り、吸う。

 

「んっ、はあ……フィーラ……ベル……気持ち良いか……んっ?」
「ああ……そればかりか美味いな」
「ええ、酔い痴れるほど……ヒナタさんしか出せない極上の味ですね」

 

 室内に響くのは卑猥な水音と荒い息遣い。
 なのにその声は歓喜していて、自然と足と口の動きを速めると先走るように白濁が飛び出した。雄とアルコールの匂い、どちらにも既に酔っている私はしゃぶり扱くと、顔を離した二人は音を上げる。

 

「あっ、ヒナタ……もう……」
「お上手すぎる妓女(ひと)を……選んでしまいましたね」
「妻だからな」

 勝ち誇ったような笑みに二人の目が丸くなる。
 だがすぐに意地悪な弧を描いたベルに抱き起こされると、有無を言わさず挿入された。

 

「あ、あああぁぁっ!」
「ああ……気持ち良いですね」

 

 揺すられる腰に、首に両手を回すと首筋を舐める。と、勢いよく背中を押され、繋がったまま畳に寝転がされた。

 

「ふあああっ!」

 

 倒れた衝撃に、結合部から蜜と白濁を零すほど嬌声を上げる。
 振り向けば帯を解いたフィーラが私達に跨っていた。開かれた蘇芳の着物からはベルとは違う体格ながらも、均等に鍛えた筋肉と流れる汗。見ないよう視線を落とせば大きくなったモノに、上げれば欲情を宿した赤の瞳と目が合った。

 

「俺も……キミが他の男とヤっているのは見たくないからな……交ざるぞ」
「どちらが先にヒナタさんをイかせるか……ですね」

 

 何も返せないでいた私の代わりにベルが微笑むと、フィーラもくすりと、どこか黒いものを含んだ笑みだ。
 了承するかのように私の背中へ口付けたフィーラは腰を持つ。そのまま亀頭から白液を零すモノをベルが挿し込んでいるところではなく、後ろの秘部へと食い込ませた。

 

「ん、あ、ああぁぁ……!」
「っ、アズ……フィロラ君……これはちょっと……」
「まだ……奥へ挿入するぞ」

 

 痛みか快楽が伝わっているのか、ベルは眉を寄せている。
 それでもフィーラは腰を突き動かし、抉じ開けるように進めていく。

 

「あぅっ、あああぁぁっ!」
「これは……負けられませんね……っ!」
「ひゃっ、あ、ベルうぅぅあああ!」

 

 ニ本の肉棒が我先にと支配していく。
 声も涙も汗もすべてが快楽へと変わり、ただただ与えられては蜜となって放出された。どれだけ畳を濡らしても尽きるまで果てるまで達するまで。

 淫欲と魅惑に溢れた遊郭で抑えるモノは何ひとつないのだ──。

 

 


「死ぬの? 死ぬよね? ──死ねっ!!!」
「ちょちょちょ、スティ!」
「ヒナタ、下がっていろ」
「はあ、面倒くさい子が……」


 気が緩んだベルの結界を破壊して帰宅したブラックウサギ様の憎悪も、半壊した遊郭に落ちたチェリーさんの雷も、当然抑えることは出来なかった────。

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