異世界を駆ける
姉御
番外編*もしも世界~竹取物語編~
もしも姉御達が竹取物語の人物だったら?
そんな、パラレルワールド。当然180度違う展開&語り口調でお届けします
昔々あるところに『竹取のバロンさん』と呼ばれる、多分竹取が上手い男がいました。今日は気分を変えて隣のレウおじさんの山へ向かうと、キラキラ光る一本の竹を発見。眼鏡のブリッジを上げました。
「なんだろ~まあ~切っちゃえば~いいか~せいやっ!」
バロンさんは満面笑顔、気合の入った剣で竹を横に真っ二つに切りました。
切ったはずです。なのに丁度真ん中で剣が止まり『おや?』と一度抜くと、ちょっと上で切り直しました。今度は綺麗に切れた竹から七色に輝く光。
覗き込んでみると漆黒の髪に瞳、七色の十二単を身に纏った手の平サイズの女の子が口をへの字にして入っていたのです。女の子はバロンさんを叱咤しました。
「きさま、あぶないだろ! あやうくわたしのからだがはんぶんになるとこだったぞ!!」
「いや~だって~普通~人が入ってるって~思わないでしょ~というか~どうやって~防いだの~~?」
「うむ、この『おうごんハリセン』にふかのうはない!」
手に持っていた金色に輝くハリセンで女の子はバロンさんを指します。
一センチほどしかないハリセンをバロンさんは触ろうとしましたが、すかさず叩かれてしまいました。『パキッ』と素敵な音つきで。どうやら叩かれた指の骨が折れたようです。
「「…………」」
沈黙が包む中、バロンさんは反対の手で女の子を触ろうとしましたが、顔を赤くした女の子にハリセンで叩かれてしまいました。今度は『ゴキンッ』という音つきで。どうやら手首が曲がってしまったようです。
顔を青褪める女の子にバロンさんはニッコリ笑顔。
「これじゃあ~当分~仕事~無理だね~~」
「す、すまん」
「ん~じゃあ~治るまで~キミに~身の回りの世話~してもらおうかな~~」
「こ、こんなさいずのわたしになにができる!?」
「ハリセンで物が切れる。片手が使えない僕には充分だし、キミも行く所がないだろ?」
口調を変え、ほくそ笑むバロンさんに女の子は背筋に悪寒がしました。しかし罪悪感と、行く宛もない途方感に渋々バロンさんの肩まで登り、ちょこりんと座りました。不貞腐れた様子で『せわになる』と呟く女の子にバロンさんは笑います。
「まあ~二人~仲良く~暮らそうよ~~」
「きさま、ひとりみか?」
「そうそう~だから~……よろしくね、ヒナタちゃん」
薄っすらと開かれたバロンさんの金色の瞳が女の子を捉えました。女の子は先程の悪寒とは違うものを感じましたが気付きます。
「ヒ、ヒナタってなんだ!?」
「ん~キミの~名前~思いつき~だけどね~あ~ちなみに~僕のことは~バロンて~呼んでね~」
「そ、そうか……よろしく……バロン」
照れくさそうに頬ずりする小さなお姫様=ヒナタ姫に、バロンさんは嬉しそうに笑いながら帰路へつくのでした。しかし、そこからが大変。外の世界がはじめてなのか、ヒナタ姫は田園風景の中に一軒ぽつりと建つ合掌造りの家に感動し、家中を駆け回ります。終いにはサイズが小さく行方不明。
「ちょ~ヒナタちゃ~~ん!!!」
帰宅早々バロンさんの悲鳴が響きました。
意外とヒナタ姫が御転婆だとわかったバロンさんは彼女の片足と自分の手首を縄で繋ぐことにしました。クッションに座るヒナタ姫は不満そうに縄を見つめます。
「こんなのヤだ……」
「おとなしくしないキミが悪いんだよ。虫や鳥に捕食されたらどうするのさ」
「くっぷくさせる!」
「無駄にカッコイイね……Gとか出ても~助けないよ~」
自信満々にハリセンを掲げるヒナタ姫に溜め息をついたバロンさんは床に就きました。その夜。
「ぎぃやあああぁぁーーっ!!!」
大きな悲鳴が響き渡っても微動だにしないバロンさん。
そんな彼のもとへ縄を辿ってやってきたヒナタ姫は大粒の涙を零しながらペチペチ頬を叩きます。
「バロン、バロン! よるのだいぼうけんにでたら、まっくろでしょっかくまるんのあしがいっぱいあるのが~!!」
「Gだろ……屈服させるんじゃ……なかったの」
「あんなの、ヒナタランドのじゅうみんにはいらない!」
「どんな野望もってたのさ」
ツッコミを入れたバロンさんでしたが、涙が止まらないヒナタ姫に一息つくと、舌先で涙を舐めました。突然のことにヒナタ姫の身体はビクリと跳ね、涙が引っ込んだ顔が真っ赤になります。
「な、なにをする!?」
「ん~、慰めとお仕置き? 特に夜は危ないんだから、僕から離れないことだね」
くすくすと笑いながら縄を引っ張るバロンさんにヒナタ姫は頬を膨らませましたが『カサカサ』と聞こえる音に慌てて彼の胸元へ駆け寄りました。そんな彼女の小さな額にバロンさんは口付け、共に眠りについたのです。
しかし、御転婆なヒナタ姫はやはりジっと出来ない様子。
翌日には包丁の刃で縄を切り、仲良くなったスズメと共に自由な大空を飛び回りました。当然バロンさんが放った縄に捕まり墜とされ、こっぴどく叱られてしまいましたが。
それでもめげないヒナタ姫はニワトリ、トラ、ウサギ、イノシシと次々に動物達を従え、ヒナタランドと称されたバロン家の外は賑やかになりました。
「明らかに~おかしいの~いるよね~~」
「む、そうか? ケンカはしないし、他者に迷惑はかけないし、食料は自分達で調達してくるからいいだろ」
「まあね~……じゃあ、寝ようか」
「う、うむ」
語尾を伸ばさなかったバロンさんが差し出した手を、ヒナタ姫は恥ずかしそうに取ります。
彼女が竹から現れ早三ヶ月。驚くことに、手の平サイズだったヒナタ姫は成人女性のように大きく美しく成長していました。御転婆でハリセンを振り回すのに変わりはありませんが、例のGが怖く、夜はバロンさんと共に寝ているのです。でも、ただ“寝る”だけでは終わりません。
「っん……あん」
「ああ、また大きくなったね……ん」
当に治ったバロンさんの手がヒナタ姫の服を脱がし、華奢な身体に合わないほど大きく実った乳房に吸いつきます。尖った先端を舌先で転がされ、何も纏っていない下腹部に手が這えば、ヒナタ姫はいっそう喘ぎを漏らしました。
「はぅっ……あ、バロ……ん!」
「ん、動くと……痕がついちゃうよ」
動けば動くほど縄で後ろ手に結ばれたヒナタ姫は痛みを覚えます。けれどすぐ股間に顔を埋めたバロンさんに秘芽と蜜を舐められると快楽に変わりました。
「あああぁっ!」
「ホント……その声と身体……何より匂いは情欲を増幅させるよね」
口元に弧を描き、舌先から白い糸を垂らすバロンさんが見下ろすのは喘ぎ、蜜を零す姫。その身体は暗闇でもわかるほど淡く光り、甘い香りを発しています。出逢った時からバロンさんはそれに囚われ、無垢なヒナタ姫を夜な夜な抱いていました。
漆黒の髪を一房手に取ったバロンさんは息を整えるヒナタ姫に問います。
「はじめて抱いた時もそうだけど……嫌がらないのはなんでかな?」
「そ、それは……」
「とても気持ち良いから?」
頬を赤めたまま小さく頷くヒナタ姫をバロンさんはくすくす笑いながら抱きしめます。そのまま柔らかな肌に、潤んだ瞳に、艶やかな唇に口付けました。
「んっ、あふ……んっ」
「それならもっと気持ち良いのを……教えてあげるよ」
妖しげな笑みを浮かべるバロンさんにヒナタ姫は首を傾げます。
すると両足を屈曲させられ、愛液を零す秘部に大きなモノが宛がわれました。はじめてのモノにヒナタ姫は身体を捩りましたが、縛られた両手と跨ったバロンさんの手に止められてしまいます。
はじめて見せるヒナタ姫の怯えた姿に、バロンさんは耳元で優しく『大丈夫』と囁きました。
「痛みもすぐ……快楽に変わるから……ね」
「バロ……あ……ふあああぁぁーーっっ!!!」
大きな肉棒という名の楔が、まだヒナタ姫の小さなナカを貫きます。
バロンさんが腰を動かす度にヒナタ姫は声を上げましたが、時間が経つに連れ、悦びへと変わりました。自分を呑み込む快楽を知り、沈んだのです。
そんな姫を抱きしめるバロンさんはただ微笑を浮かべていました。
ある日、ヒナタランドにお客様がやってきました。
息を荒げ鋭い目を玄関先から向けるのは、赤髪、銀髪、青髪、茶髪の四人のイケメン達。四人は本を読むバロンさんではなく、竹籠を編むヒナタ姫を見て一斉に口を開きました。
「「「「見つけた! お嫁になってください!!」」」」
「「は?」」
二人は素っ頓狂な声を返しました。
突然の訪問者。しかもどこの誰かもわからない男達をバロンさんが家に入れるはずはなく、玄関先に正座させたまま自己紹介を促しました。
すると、赤髪の男はフィーラと名乗り、上流貴族の当主だそうです。
次に銀髪の男はベル。フィーラさんさんと同じ上流貴族の嫡男ながら本屋を経営しているそうです。次に青髪に黒ウサギのヌイグルミを持ち、前者二人と違って着物が破けているのはスティ。浮浪者(ホームレス)。最後に茶髪に赤いハチマキを巻き、片腕を出しているのがアウィン。反対山で木樵をしているそうです。
「つーか、オレとは面識あんだろバロン! 最近竹取サボってやがると思ったら女を連れ込んでたのかよ!! しかも女が働いてるし!!!」
「うるさいな~木樵は木樵らしく~木に求婚すれば~いいじゃんか~だいたい~他との面識~僕~ないよ~~」
「はい。俺とベル様は互いに面識ありますが、貴方や他の二人とは初対面です」
「フィーラ君とも、この家の前でバッタリ会っただけですよ。他の名も知らない二人とも」
「……………………でも、お姉さんとは面識……ある」
長い前髪から藍色の瞳を覗かせたスティくんの言葉に、全員がヒナタ姫を見つめます。その目にヒナタ姫は考え込むように唸りました。
「ん~、赤髪と青髪の二人は記憶にあるが」
「え、ちょ、ヒナタちゃん。いつの間に顔を合わせたのかな?」
「ヒナタさん、とおっしゃるんですね。ぜひとも私のお嫁さんになってください」
「いや、だから貴様と茶髪の男は知らんって」
「はいはい~どこで出逢ったか~教えてね~」
苛立ったように訊ねるバロンさんに、フィーラさんから順に出逢った思い出を話します。
「三ヶ月ほど前、スズメから墜ちてきた彼女を助け、一目惚れしました」
「同じく三ヶ月ほど前『ひゃっほー!』とスズメに乗った彼女が颯爽と駆ける姿に一目惚れしました」
「三ヶ月前……ドブ共に絡まれてたとこを……スズメに乗ったお姉さんがハリセンで助けてくれて……惚れました」
「ウチの凶暴イノシシ共を颯爽と従わせ連れて行く姿に惚れた」
頭を抱えるバロンさんに構わず、ヒナタ姫を真っ直ぐ見つめ告白する四人の頬は赤いように見えます。その瞳にヒナタ姫も一瞬顔が赤くなりましたが、暫しまた考え込むとハリセンを握りました。
「悪いが言葉や金だけの男に興味はない! 私が好むのは自分だけの力を芸を見せるものだけだ!! もし本当に私を娶りたいと言うのなら、自分はお得物件だと身体で証明しろ!!!」
ビシリとハリセンで男達を指したヒナタ姫の背景からは神々しい七色の光。
しかしバロンさんは頭を抱えたまま大きな溜め息をつきました。そして沈黙していた男達は一斉に立ち上がると着物の襟を引っ張り、たくましい身体を露わにします。ヒナタ姫は目をパチクリ。
「なんだ? 揃って体力自慢なのか? ボディビルダー選手権?」
「そうだな、貴族であろうと体力には自信がある」
「姫がそんなに厭らしい方とは思いませんでしたが嫌いではありません」
「むしろ好き……得意」
「お望み通り、身体で証明してやるよ」
「え? ちょ、え?」
見事にヒナタ姫の言葉を別に捉えた男達は彼女に手を差し出します。
引っ張るのではない、無理強いでもない、選択させる手と何かを含んだ笑み。その意味を理解出来ていないヒナタ姫は戸惑った様子で手を出します。目の端に映るバロンさんの瞳が一瞬鋭くなったのが見えましたが、四人の手と身体が重なり、見えなくなってしまいました。
そして、まだ知らない未知の世界があることを彼女は身を持って知ることになるのです。
辺りが真っ暗闇に包まれる中、静かな山には声だけが響きます。
とても甘く、時に張り上げ、懇願する声ですが、それ以上に荒い息を吐き、汗と蜜を零していました。ヒナタ姫だけではなく、彼女を囲う四人の男達も一緒に。
「んんっ……ああああぁっ……ダメ……だ……ダメ……っ」
「駆け上ってきたか?」
「いいですよ……イく顔……見せてください」
「こっちも……いっぱい……出して」
「気持ち良いって……言えよ」
後ろから抱きしめるフィーラさんの口付けを受けながら、左右に座るベル様とアウィン君の肉棒を手に持ち、胸を愛撫されるヒナタ姫。その刺激から溢れる愛液をスティくんがゆっくりと舌先で舐め取り、ヒナタ姫はそれ以上零すのを堪えていました。
揺れる瞳で見つめる先には口元に笑みを浮かべ、男達に愛撫される自分を見つめているバロンさんがいます。自分の身体を調教した本人が。
「バロ……」
「おや、やはり恩人の方が好みですか?」
「ダーメ……」
「っああぁっ!」
不機嫌そうに前髪を掻き上げたスティくんは長い指先を秘部に挿し込み素早く動かします。その勢いに堪えていた愛液は噴き出し、スティくんは嬉しそうに吸いつきました。
「そ、そんな汚いのっあ……ああぁあ!」
「んっ……全然汚くないですよ……狂いそうになるほど……甘い」
「匂いだけでも……ヤベぇな」
「これでは……ナカに入った時がどうなるか……」
「想像がつきませんね……っ」
手に持つ男のモノがドクンドクンと脈を打ち、先端からは白液が零れます。それがなぜ出てくるのかわからずヒナタ姫は手を離そうとしました。
「メ、だよ、ヒナタちゃん」
「っ!」
淡々と、けれど抑制を込めた声に肉棒を強く握りしめてしまいました。
二つの肉棒から射出された白液が、淡く発せられた彼女の頬に、胸元に、両手につくと、いっそう美しく魅せます。その姿に四人の男達はゴクリと唾を呑み込み、眺めていたバロンさんがゆっくりと近付いてきました。
顎を持ち上げた手の指先が白液を拭い、息を荒げるヒナタ姫にバロンさんは口付けます。
「夫婦を望むなら身体の相性は大事だよ……一人ずつ……ゆっくりじっくり……全部を繋げて良い人を見つけなきゃ」
「き、貴様は……入ってない……のか?」
ズキリと痛むヒナタ姫の心は数ヶ月でも共に暮らし、育んでくれた情なのか。
目尻に浮かぶ涙をフィーラさんとベル様は舐めながらバロンさんを睨みますが、彼はニッコリ笑顔を返し、胸の先端を両手で捏ね回します。
「あああぁんっ!」
「僕を求めるなんてMっ娘だね……相性が良いことなんて理解してると思ってたのに……まだまだ教育が必要みたいだ」
「ひゃああっ!」
捏ねていた先端を摘んだバロンさんは勢いよく引っ張ります。
四人に充分愛撫されていたヒナタ姫には絶大な効果を与え、求める“女”と化しました。そんな二人に、四人が息を呑んだのは言うまでもありません。
「すんげー鬼畜……」
「数ヶ月という差は大きいですね。これはマズい」
「大丈夫……とっとと殺して……自分のを覚えさせれば」
「物騒なことを言わなかったか?」
スティくんの藍色の瞳が獲物を狙う狩人に変わった気がしますが、バロンさんが言ったように一人ずつ入念にヒナタ姫と身体を重ね合います。
「っヒナタ……もう少しナカを緩め……」
「ひゃあ、ああぁんっ……フィーラ……痛……んんっ!」
まだ慣れない痛みに涙を零すヒナタ姫を慰めるようにフィーラさんは口付けます。それはとても優しく、締めていたナカを解しては彼を受け入れました。
「あああぁっ……ベル……大き……すぎだああンっ!」
「それじゃもっと……広げないといけませんね」
フィーラさんともバロンさんとも違うベル様の大きさにヒナタ姫は声を上げますが、後ろから抱きしめられると不思議と落ち着くようです。そのまま腰を落とされては上げられ、彼のためにナカを広げていきました。
「後ろも……広げないと……ダーメ……ですよ?」
「んんんっ、スティ……っあ、ああん!」
俯けにされ、突き出したヒナタ姫の腰を持つスティくんは笑みを浮かべたまま挿入します。零れる愛液を舐める刺激も忘れずに。
「んっ、アウィン……これで良いのか?」
「ああ……でも、もうちょい胸寄せ……っああ」
アウィン君の肉棒を胸に挟み、先端に吸い付くヒナタ姫。
同時に亀頭からは白液が出され、最初は苦いと言っていたのに今は嬉しそうに吸っていました。
「でも……やっぱり今のとこ……僕のが気持ち良いんだろ……ねえ?」
「あっああ……バロ……ンンっ!」
両手を縛られるのには慣れているヒナタ姫でしたが、股まで縛られるのははじめてです。その隙間からバロンさんのが挿入されるといっそう腰を振り、快楽を上らせました。
男達の愛の囁きを、快楽を、奥底を突く肉棒は明け方になっても止まることはありません。ヒナタ姫がどれだけ真っ白に意識を飛ばしても狂ったように男達は貪ります。
そのせいか、誰のが一番かわからず結局誰のお嫁さんになることも出来ませんでした。
しかし、諦める男達ではありませんでした。
ヒナタ姫が誰かに決めるまで、否。共にあることを望むように彼らはヒナタランドに住むことにしたのです。フィーラさんは貴族を辞め御百姓さんに、ベル様は実はトラの飼い主だったらしく本を片手に狩に、スティくんはヒナタ姫のマスコットキャラに、アウィン君は本業の木樵で収入を得ています。
「いや~マスコットに~収入って~ないでしょ~~」
「私のお手伝いだ! どこに行くにも付いてきてくれて可愛いんだぞ!! 癒される!!!」
「はい……どこまでもヒナさんに……付いて行きます」
微笑むスティくんに甘いヒナタ姫はメロメロです。
しかし他の男達は知っていました。スティくんが夜な夜な近隣に現れる山賊を殺し、役場でお金に換えていることを。とてもとても危ない男だということを。けれど護衛だと思えば誰も文句は言いませんでした。
そして、毎夜交代でヒナタ姫は男達に抱かれ、身体と心に彼らを刻まれるのです。
そんな賑やかな日々を送るある日、ヒナタ姫の元に一通の文が届きました。黒い鴉で。ツッコミに迷ったヒナタ姫は取り合えず文を広げました。そこには一文だけ。
『スリーサイズ教えてなり』
ヒナタ姫はハリセンで鴉を叩き潰しました。人間にも動物にも優しくしましょう。
その行動が幸か不幸か、ひょっこりと礼服を着た男が遊びにきたのです。ヒナタ姫と同じ綺麗な漆黒の髪と瞳を持ち、口元に弧を描いた男は手を挙げ言いました。
「どもども、俺様誰様帝様イズ様なり! 俺の鴉を潰した勇ましくエロボディをお持ちのヒナ姫はどこなりか!?」
玄関越しに帝と言う男は四人の男とバロンさんによって袋叩きにされました。どうやら彼らは面識があるようです。しかしそんなこと露知らないヒナタ姫が止めると、彼女の着物から覗く胸の谷間に帝は釘付け。終いには抱きつき、顔を埋めました。
「ぎゃあああぁあっ!!!」
「おお、この大きさに弾力、乳首のツンツン具合……」
「何をする変態!!!」
勢いよくハリセンで帝を叩きますが、まったく効果がないのか平然と揉まれます。その手はたわわに実った乳房を優しく包んで捏ね、味見するように薄いピンクの先端に吸い付きました。
「はああぁあ……ああっ!」
他の五人とは違う刺激ある吸い付きに、ヒナタ姫は官能的な声を上げ、甘い香りを発します。その匂いに男達のモノは膨れ上がり、口を離した帝は親指を立てました。
「GJ☆! 最っ高にイい乳なり!! 俺の嫁になれ!!!」
「「「「「乳だけなら帰れ!!!!!」」」」」
モノよりも怒りが爆発した男達はまた帝を|袋叩き《リンチ》にしました。しかし伊達に帝の名を持っていないのか、とても丈夫で、彼もまたヒナタランドの住民になったのです。
高級お菓子を土産(えさ)に、夜の営みにも交ざって。
そんな騒がしい男が増えてから数日。ヒナタ姫は不思議な夢を視ました。
太陽も月も隠した空に浮かぶ一人の男。彼は静かに、けれどハッキリとした口で『迎えに行く』と伝えたのです。そのことを朝食の席でヒナタ姫が語るとベル様が帝を指しました。
「この方が『おっぱいおっぱい』言っているのではなく?」
「いや、それだったら即座にハリセンで叩くし、何より声がバリトンだった」
「帝様は……まだウグイスが練習してるような声ですもんね」
「おっぱ~♪「斬るぞ」
「ロジじいっつー、木樵仲間が祈祷師してっから頼んでやろうか?」
「木樵じゃ~ないの~~?」
魚の骨をバリバリ食べるアウィン君にバロンさんがツッコミます。
すると突然、黒ウサギを握ったスティくんが立ち上がり、天井を見上げました。鋭い藍色の瞳に何かを察した男達が急いで外に出ると、ヒナタ姫に服従する動物達が威嚇の声を空に上げています。その空は朝だというのに暗い。いいえ、太陽すら隠す暗闇が覆っているのです。
「どうなってんだ!?」
「………っ、何かいるぞ」
暗闇から漏れ出す神秘的な光。その光はヒナタ姫から発せられる光に似て異なり、黒い雲がヒナタランドの上へと降りてきました。雲に佇むのは褐色の肌と赤の瞳を持ち、漆黒の跳ねた髪と黒の装束を纏った体格の良い美男子。肩に乗る黒ヘビの顎を撫でながら男は口を開きました。
『迎えにきてやったぞ、我が妻(アモル・ウクソル)』
「妻……?」
戸口から顔を出したヒナタ姫ははじめて聞く言葉を理解しているように呟き、男達は驚きます。ただ一人、帝だけは口笛を吹き、漆黒の瞳で男を捉えました。
「お前、裏月の王だな」
「知っているのか?」
眉を顰めたフィーラさんの問いに、帝は続けます。
「金貨のようにすべての物には表と裏がある。それは月も同じで、世界のバランスを取るため絶大な輝石(ひかり)を持つ姫と、輝石を補う裏月の王が契りを交わし安定を保ってる……って、伝説だ」
「つまり実はヒナタさんは月の姫君で、彼は婚約者になるのでしょうか」
「どっちでも……殺す!」
殺気を放ったスティくんがすかさず懐から取り出したナイフを投げましたが、当たるよりも先に大きく逸れてしまいました。臨戦態勢を取る男達にヒナタ姫は慌てて裏月の王に問います。
「わ、私は絶対に貴様の妻にならねばならんのか!?」
『それが運命(さだめ)であるが主は特殊だ。本来なら幼き日から共にあるべき我ら。なのに迎えの日にハリセンで開けた雲穴に墜ちて行方不明になったのだ』
溜め息をつく裏月の王に全員がヒナタ姫を見つめました。
どうやらドジを踏んで墜ちた挙句、竹の中に嵌ってしまったようです。そして裏月の王が助けるより先にバロンさんに拾われ今に至ると。
顔から火が出る思いのヒナタ姫を他所に、裏月の王は続けました。
『数の時が経ち、香りを嗅ぎ付け参ったが……既に傷物にされているとはな』
「傷物って言うなーーっっ!!!」
大変不名誉な名と呆れ顔に、ヒナタ姫は顔を真っ赤にしたまま怒るしかありません。そんな彼女を意地の悪い笑みを浮かべる六人の男達が遮りました。
「女性に対して不適切な表現だとは思うが」
「我々にとっては好都合です」
「傷(ボクの)物なら……キミはいらないよね……?」
「Uターンしちまへ!」
「彼女は~責任もって~育て~……食べるよ」
「バイビー」
不幸中の幸いとでも言うように男達は手を振り、鋭い目を向けます。それはどこか勝ち誇ったような顔付きにも見えますが、口元に手を寄せていた裏月の王は同じように口元に弧を描きました。
『いや、逆に礼を言おう』
「は──っあ!」
一度の瞬きでヒナタ姫の背後に回った裏月の王は姫を抱きしめ、首筋に噛み付きました。痛みに喘ぎが漏れ、裏月の王が首筋から口を離すと甘い香りが辺りを包みます。男達は怒りではなく、欲情が頂点に達しました。
しかしそこで襲うほど獣ではありません。なんとか理性を堪えるフィーラさんが声を振り絞りました。
「この匂いは……なん……だ…」
『輝石から発せられているのは“誘惑の香(セードゥクティオー)”。性への気持ちが昂れば昂るほど増す匂いは月を酔わせ、輝きを与え続ける。だが、今の状態で月に戻れば逆に酔わせ過ぎて墜ちてしまうな』
「じゃ、じゃあ戻らなくともっんん!」
嬉しそうに振り向いたヒナタ姫の唇に裏月の王は唇を重ねたばかりか口内に舌を挿し込みました。その舌はヘビのように長く、奥まで蹂躙されます。それだけでヒナタ姫の下腹部はゾクゾクし、香りが増しました。男達は一斉に裏月の王に攻撃しましたがヒラリと避けられ、屋根の上へと着地。
『人間相手には然程効果がない香りが効いている主らはよっぽど輝石と相性が良いようだ。このままシ続けてくれるなら月に戻らずとも安定は保たれるだろ』
「じゃあ、とっとと失せやがれ!」
『誰が我は還ると言った』
「え?」
地上にいても良いというお許しが出たというのに、ヒナタ姫はどこか喜べません。むしろ悪い気がするのは女の勘でしょうか。
訝しい目で男達と共に裏月の王を見つめていると、彼は澄まし顔を向けました。
『我も遊戯に交ぜてもらう。一応我でも濡れるようだしな』
「なっ!?」
裏月の王の指先には雫、口付けと同時にヒナタ姫の下腹部から零れた愛液がついていました。それを舌先で舐める彼にヒナタ姫の全身は顔を出した太陽のように熱く、湯気が出ているように見えます。
その光景を裏月の王は面白がるように笑い、宣言しました。
『安心せい。我はどちらかと言うと秘密裏に襲い啼かすのを好む』
「や~ん、あいつぜってぇ昼ドラ好きだぜ」
「斬る!」
「墜ちろ」
「殺す!」
「ブっ飛ばす!」
「ああ~また~面倒な~ことに~~」
頭を抱えるバロンさんとニヤニヤ顔の帝以外は屋根に立つ裏月の王に向かい、ヒナタランドは戦場と化してしまいました。激しい斬撃音と倒壊音と土煙を呆然と見つめるヒナタ姫は叫びます。
「やっぱり月に還るーーーーーーっっっ!!!!」
「「「「「「『無理」だ」ですね」ですよ」だぜ」だね」なり」だな』
「コンニャローーーーっっああああんん!!!!」
こうしてヒタナ姫は四人の男と養い主と帝。たまに裏月の王も交ぜて仲良く暮らしましたとさ────おしまい。
「って、これのどこが『竹取物語』だああああ!!!!」