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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*バレンタイン

 今日は二月十四日。バレンタイン。
 なので我が子、女子組であるナツキ、キョウカ、アンナ、ルルと一緒に食事処を借りてチョコを制作中。その間、生後八ヶ月の娘ナズナは目先に座るジェビィさんとチェリーさんに見てもらっている。しかし、和気藹々で話す二人に首を傾げた。

「お二人、知り合いでしたっけ?」

 

 チョコを混ぜながら問うと、青藍の三つ編みに白衣を着たジェビィさんは微笑む。

 

「言ってなかったかしら? 私とチェリーちゃん、同級生なのよ。今でも時間会えばお喋りしてるの」
「ほうほう、十年越しに知る真実ですな。そしてぜひ私も仲間に入れていただきたい」
「ほなら今度、サティ嬢達も呼んでお茶しましょか」

 

 ナズナを抱っこするチェリーさんの言葉に私の背景は花畑に変わり、大きく頷いた。
 ヤッター! まさかの女子会開催だ!! ああ、今から楽しみだな~!!!

 

「母さん、母さん」

 

 呼ぶ声に、勢いよくチョコが入ったボウルを掻き混ぜながら振り向く。今日はキャスケットではない三角巾を被り、エプロンをしたナツキが同じ笑顔を向けていた。が、若干どこぞの王を思い出す笑みに首を傾げると、なぜか“風”で浮き、胸を鷲掴みにされた。

 

「ちょっ!?」
「ん~なるほど……」

 

 父親のような揉み方に、つい怒鳴りそうになるが神妙な面持ちで揉みしだく娘に何も言えない。何度か掬っては落とす妙な光景に、型にチョコを流し込んでいたキョウカが訊ねてくれた。

 

「ナツ姉ちゃん、何してるです?」
「ん~ちょっとね……よっし。ありがとう、母さん!」
「あ、ああ……」
「なんだアイツ?」
「にゃんだろ~」

 

 颯爽と去るナツキに、アンナとルルと三人首を傾げる。
 何をしたいのかわからないのは父親似と言うか、王家の血筋と言うか、よくわからん。そこでふとジェビィさんに訊ねた。

 

「旦那さんにチョコあげないんですか?」
「え?」

 

 コーヒーに口を付ける彼女の両耳には、私の薬指の指輪と同じ黒曜石が付いたイヤリングが光る。イズの異様なチョコ好きにレウさんもではと思うが、あまり甘い物を食べるところが浮かばない。しかし、隠れスイーツ好きとかいるし可能性もなくはない。
 想像をしていると、可愛い瞬きをしながらニッコリ笑顔が返された。

 

「あげたことないわね」
「レウさん、甘い物ダメなんですか?」
「さあ?」

 

 変わらない笑顔で首を傾げる彼女に、これ以上の問いは意味がない気がして、掻き混ぜることに集中した。いやホント、よくわからない家庭だ。


 

* * * 

 


「ああ、御袋。料理ボロクソ下手なりよ」
「そうなのか?」

 

 膝に乗る漆黒の髪を撫でながら目を丸くすると、赤の瞳は私。というより、胸を見ている。“ぽよんぽよん”と下から揺らすイズは珍しく溜め息をついた。

 

「実家の薬屋性質かは知らねぇけど、薬草とか虫を入れる癖があってな。それがまたマズいんだよ」
「実験じゃないよな……?」
「でも、効果はあるんだぜ。前アズにやったら、三日三晩腹痛に襲われながら肩凝りが治ったって」
「ほう、それは良い……か?」

 

 聞きながら三つ編みをするが、すぐ解かれるほどさらっさらな髪に嫉妬する。
 その隙に上着の中に両手を入れられ、ブラ越しに胸を揉んでは揺らされるが、それより三つ編みにしようと必死だった。

 

「ところでヒナ、チョコは~?」
「ああ、そうだった。すまんが他の連中を呼んでくれないか? 貴様ならできるだろ」

 

 思い出せば、ここは一階ホールだ。
 チョコができたからバロンに召集してもらおうと思ったのに、今日に限って留守。まあ、病院なら仕方ないが。
 そんなわけで呼びに行こうとした矢先の胸ダイブしてきた男の頬を引っ張る。

 

「や~ん、人様に頼む態度じゃないなり~」
「料金分は堪能しただろ」
「いやいや、これは髪を触らせる代金で、呼ぶには別料金がいるなりよ」
「悪徳商法か……っ!」

 

 口角を上げたイズは伸ばした手を肩に乗せると、私を前屈みさせ、捲って現れた胸の谷間に顔を埋めた。咄嗟のことに床に両手を着けたのがダメだったのか、左右から揉み込まれては谷間に舌を這わされる。

 

「っあ……」
「お、感度も乳首の尖り具合も良い……けど、ナズに吸われ過ぎてちょっと長乳首になってるな」
「言う……なっん!」

 

 くすくすと笑う声が谷間から聞こえると、パクリと先端に吸い付かれ、反対の先端は指で捏ねられる。
 育児中は夜の営みに制限を掛けているせいか、少しの刺激でも反応してしまう。それを楽しむようにイズは口内に含んだ先端を舌で転がしては甘噛みした。

 

「んっ……あぁ、んっ」
「あーあ……こんな溢して……しょうがない奥さん、ん」
「あぁあ……」

 

 反対で捏ねる先端から飛び散るミルクを止めるように吸い付かれる。きゅっと強く吸い付き、舌先で先端を舐められる度に身体が疼いた。

 

「はあぁ……ん……イズ」
「なーに」

 

 なんでもなさそうな声の主は口を離すと先端をチロリと舐め、顔を寄せると口付ける。滅多にない口付けがいっそう快楽を増幅させ、白糸を繋げたまま言った。

 

「し……て」

 

 懇願にも取れる声に、イズは頬を撫でると指先で唇をなぞり、糸を切る。その口元には笑み。

「いい「「「「わけあるかーーーっ!!!!」」」」

 

 瞬間、丸まっていた身体を大きな両腕に持ち上げられると、イズは影から出てきた足に蹴り上げられる。同時に左右から伸びてきた穂先と斬撃が宙で直撃し、天井まで吹っ飛ばされた。
 それはもう大きな音が響き、壁がパラパラと落ちてくるが、私を持ち上げる男の結界で当たることはない。 

 

「貴様ら……あんまり城を……壊すなよ」

 

 慣れすぎたのか、普通にツッコんでしまった。
 目先の二人は武器を鞘に戻し、一人は影から姿を現す。そして、持ち上げる男から順に口を開いた。不機嫌そうに。

 

「問題ありません。修繕費は防げなかった王から引かれますから」
「絶対…………払わせる……命で」
「つーか、やっぱ逃げられてんじゃねーか!」
「構わん。今はヤツよりヒナタだ」

 

 煙が払われた天井にイズの姿はなかった。
 相変わらず逃げるのが上手いと賞賛したいが、四人の旦那達の視線が痛い。取り合えず聞いてみよう。

 

「えっと……お揃いで……どうした?」
「どうしたじゃねーよ! 黒王のヤツ、ぜってーワザとだろ!!」
「まったく、不快な声を流しおって」

 

 苛立つアウィンは髪を掻き、フィーラは苦虫を噛み潰した顔をする。
 疑問符を浮かべていると、床に座ったベルの膝に乗せられ、私の膝にはスティの顔が埋まった。俯け好きだなあと考えていると、鋭い藍色の目と目が合う。

 

「寝てたら……頭の中に……ヒナさんが啼く声が……聞こえた」
「えっ!?」
「最初は欲求不満からくる幻聴かと思いましたが、王の名前に現実だと知り、参上したしだいです」

 

 どこか冷たいベルの声に顔を両手で覆った。
 ちゃんと約束を守っていたことがわかるが、まさか実況されていたとは……欲求不満のオカズにされていることも含め、恥ずかしい。そこで思い出す。

 

「フィーラ、腹痛は治ったのか?」
「なんの話だ?」

 

 あ、間違えた。これは過去の話だ。
 思考が鈍ってるせいか言いたいことがごちゃ混ぜになっている。えーと……。

 

「ベル、ダージリンさんから野菜は受け取ったか?」
「どなたです? ダジリガさんなら実家の隣に住んでますが」
「スティ、褌の用意はできたか?」
「誰がつけるの……?」
「アウィン、眼鏡女子のシスターコス見たか?」
「いつも通りじゃねーか」
「バローン」
「「「「いないって」」」」

 

 一斉のツッコミに首を傾げる。
 おかしい、何かを言いたかったはずなのに思考が揺れていてわからない。そもそも揺れているのは中途半端に止められたから……あ、そうか。

 

「イかせてくれ」

 

 ポンっと両手を叩いた私に全員が沈黙。凝視される。
 ん、なんかおかしいな。いや、でも身体。特に下腹部が疼いているのは確かで、手を股間に入れ擦る。

 

「っん!」

 

 声を上げると旦那達の肩が跳ねた気がしたが、構わず指を動かす。濡れているのがわかると息を漏らすが、顎を持ち上げられた。目が合うのは、ベル。

 

「厭らしく自分でするヒナタさんも可愛いですが、それを見ていられるほどの余裕は残念ながらないんですよ」
「は……っん」

 

 微笑を浮かべる唇と唇が重なるが、すぐに荒々しくなり、舌が口内を掻き混ぜる。酸素を求めるように身じろぐも、アウィンに両脚を掴まれ、スティの細長い手が瞼を覆った。
 突然の暗さに戸惑っていると、耳元でフィーラが囁く。

 

「怖さは一瞬だ。すぐ、快楽に溺れさせてやる」

 

 甘い声。私を溶かすには充分な声……甘い? 溶かす? あ!
 そこでパッチリと思考が戻った時には唇も瞼も両脚も解放されていた。ついでに場所も元・私室のベッドに移動し、ベルの膝ではなくシーツに埋まる。恐らくスティの影能力だとは思うが……って、違う!

 

「じょ、女子組がチョコを用意して待ってるんだ!」
「そうか……なら本当に早く溺れさせないといけないな」

 

 小さな笑みを向けたまま、マントも剣も下ろしたフィーラをはじめ、残りの三人も脱ぎはじめる。
 その隙に脱出を試みるが、アウィンの片腕に捕らわれ、胸板に当たった。さすが、他より服が少ないだけあると考えていると頬ずりされ、紫の瞳と目が合う。

 

「アンナのヤツ、マシなの作ったか?」
「ああ、見事なサッカーボウルを……んっ」

 

 両手で丸を描くが、顎を持ち上げられ口付けられた。
 ベルよりは荒くないが、口内に挿し込まれた舌と舌を絡ませながら突き、反対の手が上着を捲る。イズによって当に露になっていた乳房の片方はフィーラに、片方はスティの手に掬われ、チロリと先端を舐められる。

 

「っあ!」
「またイヴァレリズに弄られたな」
「でも……ヒナさん……すごく感度がイい」

 

 不機嫌そうな顔と楽しそうな顔。真反対の表情を向けながら二人は同時に先端を舐めた。
 その舌は熱いのと冷たいので異なるが、刺激がいっそう伝わり身じろぐ。が、頭はアウィンに、上半身はフィーラとスティに、そしてショーツまで脱がしたベルに下半身を押さえられてはダメだ。
 屈曲させた股間に顔を埋めたベルは、くすくす笑いながら秘部を指でなぞる。

 

「可愛い蜜がいっぱい出てますね……それこそ、チョコレートより甘そうなものが」
「っ……ベルっあん!」

 

 くちゅりと音を立てながらベルは舌先を伸ばし、零れる愛液を舐める。
 それはゆっくりだったり速かったりと強弱をつける舌で喘ぎを漏らすと、アウィンの肉棒が唇に宛がわれた。その大きさに息を荒げながら問う。

 

「なんで……そん、っあ……大きいんだ……んっ」

 

 白液が出ている先端を舐めると、アウィンの荒々しい手が髪を撫でる。その頬は赤く、ぶっきら棒な回答をされた。

 

「最近、あんましてねーからだよ」

 

 その声に胸に吸い付く二人も、股に顔を埋める男も視線を向ける。瞳には欲情を宿し、溜まっているように思えた。私と同じように我慢していた証拠。

 そんな、どうしようもなく嬉しいことに笑うと、手はフィーラとスティの股を触り、両脚はベルの首に絡ませ、アウィンの肉棒に口付ける。呻きが聞こえたが、構わず懇願した。

 

「焦らさずイかせてくれよ……子供達が待ってるから」
「あん? 自分で煽いでおきながらよく言うぜ」
「ゆっくり……したい」
「まあ、後でチョコレートを掛けて遊ばせていただきましょうか。ねえ、アズフィロラ君」
「なんのことでしょうか……!」
「っああ!」

 

 首筋に噛みついたフィーラに声を上げると、すぐ『ボクの場所!』と怒ったスティも反対を噛む。その声を押さえるようアウィンの肉棒が口に挿し込まれ、ベルの愛液を舐める舌が再開された。

 急かすように、でも、濃厚なチョコレートのような愛液を何度も噴き出しては受け入れる。快楽に沈むまで、時間はかからなかった。


 

* * *

 


「っああン……あっ」

 

 喘ぎが静寂に包まれた部屋に響く。
 灯りが数個しかない中、膣内に沈んでいく音と愛液が擦れ合う音。裸体のままテーブルに両手を付いた私を後ろから抱きしめる手にはチョコが付いている。まだ生暖かいチョコが揺れる乳房に付けられるとピクリと身体が跳ね、耳朶を舐める男は笑う。

 

「あれれ~なんで~今~跳ねたかな~~?」

 

 のほほんとした声だがどこか冷たく、涙目で振り向いた先に映る金色の瞳は怪しい。息を呑むが、膣内に入る肉棒を無理やり進められ、声を上げた。

 

「ひゃああぁ……バロ、ンっ」
「ああ……今日のナカはすごく広いね……みんなに……いっぱい挿入されたから」
「っああ!」

 

 挿入したまま身体の向きを変えられると、ミントグリーンの髪を揺らすバロンに口付けられる。それは一瞬で離れ、頭を下げると尖った胸の先端に付いたチョコに舌を伸ばした。チロチロと舐める舌はくすぐったいよりもゾクゾクする。
 眼鏡の先でも私を捉えている瞳のせいか。

 

 四人と沈んだあと腰を支え、虚ろながら子供達と一緒にチョコを旦那達と男子組に渡した。その際、ニコニコ笑顔のバロンに『仕事があるから残ってね』と言われ今に至る。
 腰を動かされ、奥を突く肉棒に息を漏らしながら訊ねた。

 

「っ……これ……仕事か……っ?」
「仕事だよ。奥様が旦那様をご奉仕する仕事。他の旦那ともしただろ?」
「あれは……イズが貴様を……呼ばなかったんあ、ああぁっ……!」
「呼ばれてたよ」

 

 突く勢いが激しくなり、弓形に反ると、耳元でくすくす笑う声が全身を支配していく。金色の瞳が眼鏡越しに覗き、弧を描く口が開いた。

 

「病院を出た後だったかな……ヒナタちゃんが厭らしく啼く声が聞こえたのは」
「じゃ、なんで……こなかっあぁンっ!」
「だって、他の四人が止めてくれるだろ……なら……あとで独り占めした方が愉しいじゃない」
「ドS『ヒナヒナーーーっっ!!!』

 

 涙目で睨んでいた声を、のん気な声に遮られる。
 当然その声は一人で、影から満面笑顔のイズが現れた。手に持つ何かを掲げる。

 

「ナツキにチョコ貰ったんだけどよ、見てなり! ヒナのおっぱいチョコ!!」

 

 嬉しそうに見せるソレは、丸い球体を半分にしてくっつけたようなチョコ。中央には尖ったものもある。バロンはチョコと私の胸を交互に見るが、呆れるしかない。

 

「ナツキ……」
「いやー、さっすが俺の娘! わかってるって、ああ!!」

 

 ツッコミに困っていると、剣を抜いたバロンが私の胸チョコを真っ二つに割った。それはもう綺麗に素早く。本物じゃないとはいえ、自分の胸に例えられたせいか顔を青褪める。
 ニッコリ微笑むバロンに、イズは泣き叫んだ。

「ヒナのおっぱいが割れた~~!!!」
「偽おっぱいに喜んでどうすんのさ~というか~邪魔だから~帰って~」
「や~ん! 俺のおっぱい~!! よくもやりやがったな!!!」

 

 割と本気で泣いているように見えるイズにバロンは肉棒を抜くと、剣を振り、対峙する。低レベルすぎる争いにチョコの甘さも快楽も何もない無心でタオルを持った私は、そそくさと部屋を後にした。
 当然また旦那達に怒られたが、あの二人よりはマシだと思う。

 

 ともかく――――良い大人が揃っておっぱい言うな。

*妻&娘からのバレンタインチョコ*

*フィーラ&アサヒ……甘くないクッキー(イズが仕込んだ激甘も有)
イヴァレリズーーーー!!! byフィーラ

 

*ベル&セツ……雪だるま型チョコ(イズの悪戯でおっぱい型が紛れていた)
もう少し、垂れていると思いますよ byベル

 

*スティ&スズナ……チョコとホワイトチョコで出来たウサギ型(イズの悪戯でおっぱい型が紛れていた)
え……ありました……? byスティ←スズナと必死に取り合い、気付かなかった

 

*アウィン……サッカーボール型(イズの悪戯で中を割るとおっぱい型が!)
なんだよこれーーーーっっ!!! byアウィン

 

*バロン&ヒュウガ……チョコレートフォンデュ(イズの悪戯でドリアンが混ざっていた)
臭いよ~~ byバロン

 

*イズ&イヅキ……以上のことが妻にバレ、ナオのチョコ一粒
父さん…… byイヅキ
おう、ナオのも美味いなりよね byイズ

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