異世界を駆ける
姉御
番外編*一周年記念
それは、一通の招待状からはじまった。
「結婚式?」
宰相室に呼ばれた私はソファっぽいのに座ると、バロンから白封筒を受け取る。
表には四つ葉のクローバーを持つ、翼の生えた金色の竜。
「南の~ユナカイト王が~結婚~するから~って~招待状~~」
「ほう、ユフィに続いておめでたいな」
頷く私の脳内には東のトルリット国王であり、昨年『南十字騎士団』総団長の浅葱少年と結婚した美人麗し可愛いユフィが浮かんだ。
世話にもなり、文通友達(ペンフレンド)でもある彼女の豪華絢爛な式には当然出席させてもらったが今回は南。東同様イズが出席するとは思えんし、さすがに面識のない私が行って良いものか悩む。
「イヴァレリズの代理でも構わないよ。その場合、誰を連れて行くか、だけどね」
語尾を伸ばさなかった男に疑問を浮かべながらも中身を開く。が、知らぬ古語。焦るが、ご丁寧にバロンが日本語に訳してくれていたので声に出して読む。えーと。
「拝啓、アーポアク様。この度(中略)付きましては愛する方とご出席戴ければ……愛する方?」
「ユナカイトは愛妻国だからね。結婚してなくても恋人や自分にとっての『愛する人』と出席するのが習わしなんだよ」
「ラブラブ国だな。それなら菓子でイズを釣「「「「「異議あり」」」」」
五つの不機嫌声が封筒に戻す手を止めた。
声の一人は目先のバロン、一人は後ろに立つ騎士服フィーラ、一人は私を膝に乗せ本を読む私服ベル、一人は私の膝に頭を乗せ寝転がる騎士服スティ、一人は左隣に座る私服アウィン。
揃っていた旦那達の視線に瞬きすると、本を閉じたベルの手が顎を撫でる。
「ヒナタさん、なぜそこで王の名が出るのでしょうか」
「な、なぜって……国王の式ならば同じ王あん!」
顔を横に向かされるとベルの口付けが落ち、ショーパンの中に手を潜らせたスティの指がショーツを擦る。視線だけ落とすと、捨てられたウサギのような藍色の瞳と目が合った。
「ヒナさんの……一番はボク……でしょ?」
「う゛っ……!」
「カレスティージ! 泣き落とし使ってんじゃねーよ!!」
「ラガーベルッカ様も」
胸がズキッと痛む横からアウィンの手が伸び、スティの頭を荒く混ぜる。後ろからは溜め息をついたフィーラがベルの肩を引っ張り、唇が離れた。早くもアハン突入は避けられたが、二人もバロンも不機嫌に見える。
この顔はアレだな。一人枠しかないポジションを狙ってる顔。
ユフィの時も誰が隣に座るか口論になってくじ引きをさせたが、今回はイス取りゲームでもするか。
「ヒナタ、決め方が荒くないか?」
「公平だろ? 今週の旦那ランキングでいくなら一位アウィン、二位ベル、三位フィーラ、四位バロン、五位スティ、六位イズだな」
「よっしゃー!」
「おや、ウサギ。悪さしたんですか」
「け、結婚式……今週じゃない!」
「イーちゃん~最下位は~もう殿堂だよね~~」
色々な声に考え込む。
見知ったユフィ達なら大目に見てくれるだろうが、はじめて行く国ならマナー云々を考えてフィーラかバロン。しかし、二人とスティは本業があるし、関係ないベルかアウィン。いや、でも子供達に人気のアウィンを連れて行ったら文句言われそうだし、ベルも本ばかり読んで出席の意味があるか……これはもう欠席がいいような気がしてきたぞ。
『おっぱい堪能券くれたら行ってやってもいいなりよ~』
不安を覚えているところで響き渡る呑気な声に柄を握ったフィーラと他が振り向く。
床に集まる影は徐々に人の形を取り、漆黒の髪に赤の瞳を持つイズが姿を現した。新婚旅行以来に呆れるが、変わらない笑みを向けられる。
「一番最初の“夫”で“王”の俺なら問題ねぇだろ」
「ダーメだ。永久単身赴任の貴様では“愛する夫”評価が低すぎる」
「や~ん、俺だってガキ共の評価は良いって御袋に褒められてんだぜ。これ見てよ」
何かの紙を受け取ると他の五人と見る。
紙には『第三者(ジェビィ)から見た夫としての評価』と書かれ、五段階で評価されていた。
*イズ*
付き合い…☆☆☆☆☆(悪いわねー)
家事全般…★★★★★(放置家だから出来るのよ)
子供評価…★★★★★(遊んでくれるって人気よ)
夜の営み…?????(胸フェチだけどエッチ好きなのかしら?)
妻への愛…?????(わかんない)
…………とても極端に見えるのは気のせいだろうか。
しかも『?????』ってなんだ。ラスボス専用とかではないのか。そもそも一番最後のが大事だと思うのだが。
そんなことを思っていると他の五人のも貰っているらしく一枚ずつ拝見。
*アズちゃん*
付き合い…★★☆☆☆(お仕事一直線だもの)
家事全般…★★★☆☆(可もなく不可もなくね)
子供評価…★★★☆☆(女の子相手は苦手みたい)
夜の営み…★★★★☆(上手だけどMなヒナちゃんには物足りないかも)
妻への愛…★★★★★(とても大事にしてるわね)
フィーラと共に頬を赤めたまま手で口元を隠す。
色々と恥ずかしいところがあるな、うむ。
*ラっちゃん*
付き合い…★★☆☆☆(本を読んでるとダメね)
家事全般…★★☆☆☆(整頓は得意だけど料理はダメね)
子供評価…★★☆☆☆(本を読んでるとダメね)
夜の営み…★★★★★(Mなヒナちゃんにはバッチリ)
妻への愛…★★★★★(ヒナちゃんへの愛情だけは凄いわ)
同じ指摘が二箇所もあるぞ。もう少し前半を頑張ってもらおうか。
そんななんとも言えない眼差しをベルに向けた。
*カレちゃん*
付き合い…★☆☆☆☆(ヒナちゃんとなら動くわね)
家事全般…☆☆☆☆☆(てんとダメね)
子供評価…★☆☆☆☆(寝てるもの)
夜の営み…★★★★★(本領発揮ね)
妻への愛…★★★★★★★★★★(怖いほど断トツね)
星十っ個ーーーー!!?
いやいや、私的に前半をなんとかしてもらいたいのだが……これ、アリか?
*エジェちゃん*
付き合い…★★★★☆(団長辞めてからは定時だものね)
家事全般…★★★★★(文句なし)
子供評価…★★★★★(文句なし)
夜の営み…★★★☆☆(まだ荒いところがあるわね)
妻への愛…★★★★☆(未知なとこがあるわね)
ああー……これが平均のような気がするな。
というか『未知』ってなんだ?
*ヒューゲちゃん*
付き合い…★★☆☆☆(書類が溜まらない今なら良いかもね)
家事全般…★★★★☆(教会にいただけあって出来るのよ)
子供評価…★★★★☆(勉学を教える意味でわね)
夜の営み…★★★★☆(特殊プレイが多いから)
妻への愛…?????(わかんない)
また『?????』ーーーーっっ!?!
それにしても夜の営みはわかるのに、なぜ愛が不明なのか……。
しかし、この紙を見て気付いた。六人はいつ私を好きになってくれたんだ?
自分で言うのもなんだが、あの頃は『魔力保管装置』もなかったから家事は一切出来なかったし、無鉄砲に駆け回ってハリセン飛ばして護られていただけだ。それは今も変わらぬ気はするが……理由とやらを聞いた記憶がないせいか?
そんな疑問の目を男達に向けていると瞬きされる。
だが一人、笑みを浮かべたイズが指を鳴らすと、従うように影が私達を覆いはじめた。
「ちょ……!」
「知りたければ辿ればいい。十年前から俺達がどれだけ翻弄され“一番”にこだわるか」
「は……っ!」
小さな笑いと共に全員の姿が影で見えなくなると、真下に穴がポッカリ空き――墜ちた。
「ひいゃああああああーーーーーーっ!!!」
懐かしく、何度は経験したくないものを感じながら当然“あの日”と同じ水ではない柔らかい素材の上に“墜ちた”。
目を回しながら見上げれば、広くて高い天井にシャンデリア。壁には彫刻画。そしてクッション素材に縁が金色の豪華玉座に体育座りの私は呆れた。
「おいおい……懐かしすぎるだろ」
「だな」
溜め息と共に右にフィーラ、左にスティ、足元にアウィン、上からベルが顔を覗かせる。本当に十年前を再現しているかのようだが、さすがに切っ先は向けられない。
代わりに、この場にはいなかったイズとバロンが階段下にいた。
「へ~四人で~囲ったくせに~逃げられたんだ~~」
「うっせーよ! あれは予想外があったんだ!!」
「う、うむ。まさかブラウスのボタンが飛ぶとは……」
「や~ん、それ見せて見せて。アズやって~」
「や、やれってお前っ……!?」
リクエストにフィーラの頬が赤くなるが、私を見ると目を見開く。
よく見れば私の服装は“あの日”と同じ白のブラウスとグレーのパンツスーツ。しかも胸元までキツくパッツンパッツン。おい、徹底し過ぎだろと力んでしまったのが悪かったのか、胸を張り上げると見事にボタンが――弾けた。
飛び出した胸様は今回は片方ではなく両方ポロリ。また四人は仰天の目。
しかしバロンの笑い声とイズの拍手に羞恥は最高潮まで達し、つい右足と両手を上げる。が、右足はアウィンに、両肩はベルに、左右の手はフィーラとスティに止められた。あれ?
「二度も蹴られてたまるかよ」
「俺達に同じ手は通用しない」
「今度こそ……逃がさない」
「大人しく囚われてくださいね」
何かを含んだ笑みで誇らしげに言う男達が実は根に持っていたことを十年越しに知った。
顔が引き攣っていると、露になった胸の先端を膝を折ったフィーラの熱い舌とスティの冷たい舌が舐める。
「ひゃっん!」
「あん時より……ん、尖ってんな」
「捕まえた……特権……ん」
温度の違う舌は乳首だけを舐めたり吸い付き、口内で転がす。
刺激に腰を浮かせるとアウィンがズボンを脱がしはじめた。慌てて両手を伸ばしても左右の二人に止められ、胸の刺激と一緒にショーツを舐めるアウィンの舌も加わり身体が揺れる。が、両肩を押さえ込まれては逃げ場が完全にない。
喘ぐ私をフィーラの後ろから顔を覗かせたベルの口付けが落ちる。
「んっ、あん……」
「ほら……もっと舌を出して」
「んんっ……あっ!」
「お、零れてきた」
捕らわれた罰のように命令されるがまま舌を伸ばすが、アウィンの舌がショーツを押すと秘芽に張り付く。それは既に濡れている証拠で、ショーツをずらし、直に愛液を舐められるといっそう喘ぎを漏らした。
「あぁぁ……はぁん……こんなはじめから……好きになったとか……あん、言わないだろ」
「俺は……奇怪な女としか……ん、判断しなかった」
「ボクも……苦手な人」
「なんも思ってなかったなー……」
口々に興味なさ気に言われ少々ショックだ。
いや、私も切っ先から逃げるのに必死で恋愛の“れ”の字もなかったがな。すると顔を横に向けられると大きな肉棒と口付け。微笑むベルのモノだ。
「私はこの時点で惚れてましたよ」
「は……んぐっ!」
目を丸くすると同時に大きな肉棒を咥え込まされる。
先端から少し出ていたのか、ヌルヌルした表面と白液を舐めると、小さな呻きを漏らしたベルは前後に動かしはじめた。三人が必死に身体を押さえ付け、舌で刺激を与えても口内のモノが強い。
「んんっ……んむっ」
「正しくはこの後の廊下ですが……っそれでも私が…一番最初にヒナタさんを好きに……なったのに変わりは……ないでしょ」
「ベ……ルぅ」
微笑みながら汗を流す男はイヤリングに口付けると耳朶を舐めながら優しく囁いた。
「凛とした漆黒の瞳なのに、淫らに啼くギャップ差がとても可愛くて──奥さんにすることを決めました」
「んっ、んん~~~~!!!」
「「「っだ!!!」」」
一回しか“可愛い”はなかったはずなのに、官能ボイスに羞恥は爆発。
火事場の馬鹿力のように押さえ込まれていた両手を振り上げると左右の二人に頭チョップ、上げた左足でアウィンの頭に踵落としを決めた。三人の悲鳴と下二人の点目を余所に、ベルは微笑んだまま口内射精を決め、抜くと頬にかける。
「さすがヒナタさん。惚れ直す素敵な一幕です」
「う゛……しゅまん……フィーラ……スティ……アウィン」
肉棒を舐めながら頭を両手で押さえるフィーラとスティの頬を撫で、一番痛かったであろうアウィンの頬を膝で撫でる。そんな私に階段下の二人は笑いを堪えていた。
「これじゃ、一生アズフィロラ達は玉座じゃ勝てないね~」
「やっぱヒナの席も作るかね……んじゃ、そろそろ傍観はやめていくか」
肩を揺らしていたイズがまた指を鳴らすと影に覆われた。
だがすぐに掃われ、陽の光と冷たい風。ルベライトの街並みが見える長い渡り廊下へと場所が移った。ご丁寧に目の前には太陽でも映える四人のイケメン男達。しかし、あの時とは違い三人はまだ頭を抱え、ベルはズボンを直し、私も胸は丸見え、下もショーツだけと最悪場面だ。
急ぎ両手で隠そうとしたが、後ろからバロンに抱きしめられる。
「いや~懐かしいね~~」
「な、懐かしむのは良いが廊下は飛ばしていいだろ」
「いやいや~ここは~思い出す~だけじゃなくて~もしも仮定~しなきゃ~~」
「は……っあん!」
薄っすらと開かれた金色の双眸にゾワリとしたものが背中を這う。
その背を押されると前に倒れるが、床ではない、見えない壁にぶつかった。両手をペタペタ付けるとわかる。これはまさに私の進路を妨げたベルの『四段階結界』。だが、当のベルは他の三人と一緒に目を見開き手を横に振っている。
「え、ベルじゃな……っああ!」
疑問よりも先に後ろから指を一本膣内に挿し込まれた。
前屈みになるバロンの上体が背中に乗ると、お尻を突き出し、胸は見えない壁に押し付けられ左右に広がる格好となる。恥ずかしさに私の頬は赤くなるが、目先の四人の方が赤かった。
「相変わらず~変なとこで~ウブ~だよね~~」
「バ、バロンやめっあぁぁ!」
頬を寄せる男に怒るが、膣内の指が二本に増え、前後に激しく動かされる。喘ぎを響かせる私に向かいの男達が何かを言っているが、防音対策でもされているかのようにまったく聞こえない。文句だとは思うがな。
アウィンの舌で解かされていたせいか簡単に愛液が零れ、耳元でバロンが笑う。
「あ~あ……こんなに淫乱だったら“異世界の輝石”なんて構わずヤったのに」
「利益しか……考えてなかった……だろうが……っあ!」
「まあ~仕事だからね~……でも、その過程で僕はキミに夢中になったんだから、充分“御利益”はあったかな」
あまり聞かない優しい声に顔を向けるが、すかさず口付けられる。
口内に入り込んだ舌に舌が絡まると膣内の指が抜かれ、代わりに大きな先端が秘部を擦りだす。慌てて剣を抜いたフィーラと『解放』したスティが壁を斬り付けるが、挿入の方が早かった。
「んあああぁあっ!」
声と共に斬撃がぶつかるが、壁に弾かれ、その振動で胸が大きく揺れた。
間近で見た二人の顔が徐々に赤くなるのをバロンは意地の悪い笑みで見ると、腰を持っていた片手を私の胸に持ってくる。挿入を繰り返しながら片方の胸を壁から離し、下から掬い上げ揉み込んでは引っ張る。その際、噴出したミルクが壁に掛かり、下に流れていくのを凝視したフィーラとスティが突然地面に身体を丸めた。
「ちょっ!?」
「うっわ~刺激強かったか~……ま、そうやって他を悩殺しながら乱れるヒナタちゃんが僕は──好きだよ」
「あ、あああぁーーーーっ!!!」
くすりと笑いながら最奥まで突いた肉棒の刺激と噴出す白液に世界が真っ白になった。
──はずが、なぜか真っ暗。
いや、ボンやりと灯りはあるが少々暗いし、胸が重い。まだ薄れる視界で仰向けで寝転がる私は必死に目を凝らすと目の前に黒髪。が、胸の谷間に挟まっていた。誰かがわかり叩こうとしたが、突然下腹部から駆け上る刺激に手が止まる。指ではない。そしていつもより太くて長い……これは。
「ふッ、あああぁっ……スティ……っ!」
「や~ん、モノだけで当てるとは上級者なりっだ!」
「うるさい……黙って」
胸を揉みながら顔を上げたイズの頭に手刀が落ちる。
また谷間に埋まった男の上からは鋭い藍色の双眸を向けるスティ。義父のイズを容赦なく叩き、言葉遣いの荒さに御冠なのがわかる。見て見ぬフリをするように辺りを見渡すが、やはり薄暗い。
「もしや……影の中……っあ゛あ゛ぁっ!」
「さっきも……結界で邪魔したくせに……また!」
「精進するなりよ、影騎士様」
「腹……立つ!」
「ふゃあああぁぁーーっっ!!!」
妙な言い争いをぶつける先が私なのか、既にショーツのない両脚の太腿を持ったスティが大きく腰を揺らしては膣内を突く。ニヤニヤ顔のイズは顔を上げると私の頭に回り、胸の先端を舐めながら肉棒を取り出した。
「ったく、歪んだ息子に育っちまって。ヒナのせいだぜ」
「なぜそうなっんん!」
覚えのない話に眉を顰めると肉棒を咥え込まされる。
そのまま上体を屈め、胸を揉んでは吸い付きながら股下から顔を覗かせた赤の瞳と目が合った。
「確かに元から歪んだ部分はあったけどな……ヒナに会ってからその歪みが豊かになったんだよ……っ!」
「ひゅ、ひゅたかっちゃにゃんんっっ!!!」
その言い方はおかしいだろの言葉は口内で射精された白液を飲む音で消えた。呻いたイズは摘んだ胸から零れるミルクに吸い付きながらスティを見下ろす。
「どの色に転ぶかはヒナ次第……一種の諸刃の剣っど!」
瞬間、口内から肉棒を抜いたイズが後ろに飛び退いた。
突然のことに瞬きする私の先には、舌打ちしながら懐に何かを戻すスティ。目が合うと、繋がったまま抱きつかれた。嬉しそうに頬ずりする彼の髪を撫でながら一息つく。
「スティ……また何か物騒なことしただろ?」
「ヒナさんの前じゃしません……今のはゴミ処分」
「や~ん、ついにゴミ扱いされたー」
「あんっ!」
棒読みイズに構わず首筋を舐めるスティは私を抱きしめたまま腰を揺らす。
昔はナカを満たすには至らなかった肉棒が、身体の成長と共に満杯にし、刺激が膨らむ。口から零れるイズの白液を舐めながら視線を動かすと、スティは笑みを浮かべていた。
「抱きしめる度に……広がる暖かさに……ボクが護って……愛したいのは……ヒナさんだけ」
「スティ……んっ」
「んっ……ヒナさん大好き……大好き……大好き……今日も明日も明後日も……離れることは……許さない…っ!」
「んああア゛ア゛ーーーーァ!!!」
汗を落としながら何度も口付け愛を囁かれると、膨張した肉棒が膣内で破裂する。大きな声はどこまでも響くが、イズが溜め息をつくのが見えた。
「よく響くなー」
『そうおもうのならなんとかせい。響きすぎてかなわぬ』
呼吸を荒げていると目の端に映る存在。
浮き上がった影が人の形を取り、漆黒の跳ねた髪とマント、赤の双眸を揺らす魔王の姿を捉える。十年間で身長は一六十まで伸び、身体付きもだいぶん男だ。
眉を顰める魔王に『よっ』と震える手を挙げながら『解放』しようとするスティを止めると、溜め息が聞こえた。
『あの淫乱さを主はきにいったのか、黒王』
「うんにゃ、おっぱい」
『…………』
「が、五割。面白さが三割」
『けっきょくは胸か……で、のこりの二割はなんだ』
額に手を当てる魔王の目に、同じ赤の目を向けたイズは笑みを浮かべると私とスティを影で覆う。静かな囁きが聞こえた。
「──運命(ファートゥム)」
意味を理解出来たのは目を見開き、意地悪な笑みを浮かべた魔王だけ。相変わらずイズはわからん。
暗い世界から眩しい世界へと変わる。
頭上では大きな風に漆黒の竜をあしらった旗が揺れ、日射しが照らす。それが夕日だと気付くのに遅れたのは太陽があったからだ。とても不貞腐れた太陽、でもイケメンフィーラ。
「褒めてないだろ」
「ふぃたたたたた!」
「しっかし、また空から墜ちてくるとかお前も好きだよなー。それを簡単に受け止めたアズフィロラもすげーけど」
鼻を摘む手を叩いていると、頭の後ろで手を組むアウィンの言葉でイズに放り投げられたのがわかる。そして、よく見ればフィーラに姫抱っこされている! 全裸で!! 羞恥!!!
顔を両手で覆う私に構わず二人は違う方向を見た。
「どうやらティージも見つかったようだな」
「ああー、ラガーベルッカの結界が見えんな。抜けがけした罰だ」
「……こっちにも必要な者がいるようだがな」
「へ……んっ!」
溜め息をついたフィーラは私を抱えたまま屋上の床に座ると口付ける。
いつもより荒い。だが、ゆっくりと私の舌を舐める舌に下腹部が疼きだすと、同じく座ったアウィンに玉座の時のように脚を開かされた。今は隔てるものがなく、舌を這わせて愛液を舐められる。
「あ、あぁぁっ」
「気付けばこんなに濡らしちまって……ん、ホントもう……隙どうこうじゃねーよな」
「奇怪さは……ん、何年経っても変わらないがな」
「そんな私の……あん……どこで貴様ら……好きになったんだ」
溜め息しか漏らさない二人に眉を顰めると互いを見合う。
すると苦笑しながら私を俯けにさせ、頭にアウィン、突き出したお尻にフィーラが座る。フィーラは開いた秘部から零れ、太腿を這う愛液を舐め取った。
「はあぁぁっ……んっ」
「イイ声出しやがったな……ほら、挟んで咥えろよ」
フィーラの舌にヒクヒクさせる私の前で胡坐をかき、肉棒を取り出したアウィン。
頬を撫でられると了承するかのように持ち上げた胸で肉棒を挟み込み、辛うじて見える先端に舌を這わせた。それが気持ち良いのかアウィンは小さな呻きを漏らしながら私の左手を取ると、赤いハチマキと紫のブレスレットに口付ける。
「おめーを好きになった理由なー……危なっかしいから目で追ってたのが……ん、気付きゃー……イイなーとかだったかな……っぐ!」
「にゃんじゃそれ」
全然わからない答えにムッとすると、喉の奥まで咥え込む。胸と一緒に口も動かすと、アウィンの呻きが増した。
「っあ゛あ゛……ハッキリした理由なんざ……わかんねーよな……アズフィロラっ」
「そうだな……俺も……いや、ここから去った時に強く想ったな」
背後から若干黒い気配が漂い、動かす胸と口が止まった。
それは当然十年経ってもトラウマになっている魔王の件だろう。まさにこの場所だからな。アウィンと共に冷や汗を流していると、フィーラは秘芽を舐めながら指を入れた。
「ひゃああっ!」
「去り際の笑みで『愛しき姫君(アムール・プランセッス)』だと激情に駆られたな……遅かったが」
「ああああっぁぁ!!!」
怨念も篭った低い声と共に大きな先端が秘部に宛がわれると真っ先に挿入される。
充分に広がっているはずなのに大きくて苦しい。だが、息をしようと口を開くとアウィンの肉棒を咥え込まされ、反動で膣内を締め付けてしまった。
「やぁぁあぁぁっ……!」
「本当……どこででも……奇怪なことを」
「アズフィロラ……先イくんなら……イっていいぜ……すぐ代わって……っ!」
「断る……っ!」
互いに笑みを浮かべていそうな声に合わせ、膣内と口内で白液が噴き出す。
前後から流れるモノに身体は支配されたかのようにグッタリと倒れ込んでしまうが、愛液と自身の液を舐め取る二人から『好き』『愛している』と、他の旦那達と同じような囁きが聞こえた。
それを私自身が伝えていることは少ないだろう。
今のように既に達してしまったり、恥ずかしくて言えなかったり……でも、とても嬉しいのを私は知っている。だから頑張って伝えよう。
出逢った時と変わらず愛してくれる旦那達に感謝するように。
今日も愛してくれてありがとう──と。
* * *
──思ったが、やはりやめよう。
むしろ言ってしまっては終わりな気がする。いや、すぐに終わりそうだ。
「え? ヒナタさん、そんなヤワじゃないですよね」
「ほら、いくなりよ~」
「ふあぁああんっ!!!」
仰向けに寝転がるベルの胸板に背を預ける私の後ろのナカにベルの肉棒、前からイズの肉棒が入り込む。しかも“王”に戻っている男のモノはベルと同じぐらい大きくて、早くも意識が飛びそうだ。
「ダーメ……ですよ?」
「まだオレ、ヤってねーっつーの」
「あんっあ……ああ」
「っ……ヒナタ……握りすぎっだ」
意識が途切れそうになると片胸を揉みながらスティが首元を噛み、アウィンが臍を押しながら片胸を舐める。その刺激も混ざると手に持つフィーラの肉棒を強く握ってしまい、肉棒からは白液が飛び出した。が、反対の手で握っていたバロンの肉棒が消えると、口元で宛てがわれる。
「ほら~……口で奉仕してごらん?」
「うう゛ぅ……っ」
「あっ! ちょっ、ヒナタさ……」
「や~ん、ヒナ締めすぎ~」
小さく笑う男に大きく口を開くと咥え込む。
その力みが下腹部にも伝わったのか、ベルとイズの声が同時に聞こえた。
陽も沈んだ部屋に響き渡るのは喘ぎ、呻き、癒着を繰り返す音、零す愛液、舐め取る舌、白液が噴出す音、ベッドがきしむ音。数え切れないほどの音と液が混ざり合っている。
十年前、私室として使っていた部屋に物はなく、ただ大きくなったベッドだけが設置されていた。子供達には内緒で行われる秘密行為だけの部屋。
イズとベルの肉棒から白液が噴き出し抜かれると、すぐさまアウィンが前から肉棒を、スティが後ろに指を入れる。イズとフィーラは胸を奪うように舐め、ベルは白液を垂らす肉棒を口に入れさせ、バロンは私の顔に白液を散らす。口々に出る言葉は命令か愛だけ。
声も身体も塞がれた私は受け止めては口付け、愛を伝えているのだと思いたい。
* * *
「逃げるにはそれが一番よね」
「はい……誰か一人とか……無理に好きとか伝えたら私は……終わりです」
翌日、筋肉痛を飛び越え全身が悲鳴を上げる私は地下二階『研究医療班』班長で義母でもあるジェビィさんの私室ベッドで倒れ込んでいた。柔らかな植物の匂いが癒しを誘う。
白衣を纏い、丸椅子に座るジェビィさんは青藍の髪を後ろに流しながら机に向かって書き物をしている。
「それで、みんながなんでヒナちゃんを好きになったかわかったの?」
「なんとなく……ですかね。イズだけはサッパリですが……でもジェビィさんの評価は間違ってませんでした」
「ふふふ、それは良かったわ」
そう、何も間違ってはいなかった。夜の営みも私への愛も。
しかしキツい! 一気に来ると身が持たない!! これでは天寿を全うする前に旦那達の愛で殺される!!!
そんな嘆きを言っていると、ペンを置いたジェビィさんの優しい手が私の頭を撫でる。
「そうね、それはいけないわね。抑制を覚えさせましょう」
「そんなのどうやって……」
「こう言いながら、これを見せてみたら?」
ヒラリと取り出した紙に目を丸くしながら、様子を見に来た旦那達にも彼女はヒラリ。それは──『離婚届け』。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! なぜそうなる!?」
「不吉にもほどがある書類でしょ」
「ダメですダメですダメです! ボクから離れるなんて絶対許しません!!」
「マジで落ち着こう! 落ち着こうぜ!!」
「えぇ!? 離婚したらアクロアイトも辞める!?」
「おっぱい~~!!!」
顔面蒼白で必死に止める姿は私が還る時以上。
ちなみに台詞は『旦那の愛が重すぎてこれ以上一緒にいると死に繋がると医者(ジェビィさん)に告げられました。なので別れてください。さようなら』だ。
効果は絶大のようで、一週間ほどはキス以外は何もせず、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれてた。子供達が少々目を疑っていたが、それ以降も夜の営みが少々お手柔らかになった気がする。
そんな理由でユナカイトの結婚式は辞退し、贈り物だけを送った。
のだが、なんでかメイド服が返ってきた。そういえばユナカイトって……うむ。元気になったら、これを着て奉仕してやるかな。たまには押し倒してみると面白いかもしれない。
死ぬだろうか────。