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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*捕まえた

 それは雪景色に影を落としていた。
 太陽を背に受けし空に佇む支配者は誰に囚われることもない。
 ただ自由に飛ぶ気紛れな風だ。

 けれど──。


 

* * *

 


 深々と雪が降り続けるベルデライト。だが、吹雪ではない。
 白緑のファー付きコートを着ている私は、笑顔で雪の上に仁王立ちしていた。

 

「よーし! ただいまより雪合戦を行う!! 準備はいいな!!?」
「はーい……」
「ですです!」
「ル~ルもがんばりゅの~」

 

 溜め息をつきながら魔法で雪を固めるセツ、既に特大雪球を持つキョウカ、小さな雪球を両手に持つルル。左右に並んだ可愛い輝石達の準備万端な様子に頷くと、翡翠のイヤリングを揺らしながら前方を指す。

 

「敵は白銀読書変態元団長パパ! ヤツに手加減など一切無用!! ぎったんぎったんにヤってしまへ!!!」
「ヒナタさん、そこは白銀読書今日も可愛い妻を愛するパ「かかれーーーーっっ!!!」

 

 私の声に合わせ、一斉に雪球が放たれる。
 だが、雪壁もなしで堂々と目先に立つ男は左手に本を持ち、右耳には漆黒の宝石が付いたイヤリング。そして、変わらない笑みを向けながら右手を翳すと『一段階結界』で球を弾き、風で雪を丸め放った。

 

「わあっ!」
「です!?」
「んきゃ!」

 

 次々に我が子達がヤられ、慌てて雪壁に避難させる。壁から顔を覗かせた私は当然文句を言った。

 

「こらーっ! それは反則だと言っとるだろ、ベル!!」
「四対一なんですからフェアですよ。あ、私が勝ったら裸エプロンでご奉「成敗っ!!!」

 

 ものの数秒で『一段階結界』を通り抜けた私はパイ投げのように微笑む旦那──ベルの顔面に雪を叩きつけた。
 バランスを崩し、雪に埋まった男とは反対に華麗に着地した私。子供達と見守っていた観客から拍手を送られる。うむ、運動も終えたとこで昼食にするか。その前に風呂だな。


 

* * *

 


 大型ドーム型の家に習い、ではないが、風呂も円形で出来たジャグジーバス。
 両足も楽々と伸ばせるほど広く、足に挟まれたルルはウェーブの掛かった髪を上げ、底と側面から出てくる泡を楽しそうに両手で叩いている。微笑ましい姿にキュンキュンになっていると、洗い終わり、タオルを巻いたキョウカが顔を覗かせた。

 

「キョウカ先にあがるですけど、ママはゆっくりで良いですです」
「ん、そうか? あ、鍋焼きうどんを保温結界に入れてるから、腹が減ってるなら先に食べてていいぞ」
「はいです。それと、パパとセツ兄が出てこないですです」
「またか……ルル、離すぞ」
「ひゃい」

 

 溜め息をつくと、犬掻きでやってきたルルをキョウカに抱き渡し、バスから出る。そのまま出入口ではない、別のドアを開けた。瞬間、むあんとした蒸気が広がる。
 ベンチ型の木で出来たサウナ風呂の上段には眼鏡を外したセツ、下段にはベルがバスタオルを敷いた上で本を読んでいた。すぐさま本を奪うと、二人の頭を叩く。

 

「「っだ!!!」」
「十五分以上は身体に悪いと言ってるだろ! あと、本を読むな!! 浴槽に投げ込むぞ!!!」
「裸体でも堂々するヒナタさんはカッコ可愛いですね」
「パパ、それ以上いうと自分が投げ込まれるって。そしてママもヤられるよ」

 

 さすがセツ、わかってるじゃない……ん、私も?
 バスに落としてやろうとベルをサウナの出入口まで引っ張って来た私から二冊の本を受け取ったセルは、妹達とバスルームから出て行った。静かになり、後ろの男に振り向く。前に、抱きしめられた。

 

「っあああ! しまったあああっっ!!」
「さすがセツ君は愛時間をわかっていますね」
「風呂場にまで愛時間を作っあ……ひゃっ」

 

 右耳に光るイヤリングに口付けが落ちると、何も纏っていない身体を大きな両手が撫でる。片方の手は胸を掬っては落とし、片方は股の間に潜り、指で秘部を弄りだした。

 

「んあっ……ちょ……」
「こうなるのはわかってらっしゃるでしょ。私のお嫁さんになる前から」
「風呂は……貴様が……家族みんながいいと……んんっ」

 

 条件反射のように振り向いたが、当然口付けを受け、太く長い指が膣内へと入った。バスルームには水音と息を乱す音が響く。

 

「んんっ……あぁあ」
「ええ、週一しか家族一緒いられませんからね。その分、外でも家でも可愛い妻を抱きますよ。おや? トロトロと熱いモノが出てきましたね」

 

 耳元で囁かれると身体が震え、新しい愛液が零れる。
 それを指に絡ませながら膣内を捏ね回され、上から掬った胸の先端に吸い付かれると、いっそう声を響かせた。

 

「ひゃあああぁ……!」
「ああ……赤みを帯びた頬も、潤んだ瞳も、小さく開いた口も、白い肌をいっそう白くさせるミルクも、私の手を濡らす愛液も……全部が可愛いですね」
「言う……なあぁあ」

 

 恥らった様子もなく笑顔で告げる男に、全身は浴槽に入ってないというのに熱い。そして、もっと熱くさせるモノがお尻に当たり、振り向く。すかさず口付けられると、ベルは膣内に入れていた指を抜き、熱いモノの先端で秘部を擦った。

 

「んあっ……あぁ」
「欲しいですか? ヒナタさん」
「ううっ……」
「言ってくださればすぐ挿入してあげますよ。大きいの……お好きでしょ?」

 

 耳朶を甘噛みしながら囁かれると顔が赤くなるが、否定出来ない愛液が零れ、秘部を擦る肉棒に落ちる。ゴクリと喉を鳴らすと、小さくとも、やはり口が開いた。

 

「ほ……欲しい」
「何が?」
「ベルの……大きいのが……欲しい……っ」

 

 再度問い掛けてくる苛めっ子だが、素直なことを口にすれば面白そうな笑みから優しくちょっと意地悪な笑みに変わる。

 

「……可愛いですね」

 

 イヤリングに口付けが落ちると両手を壁に付けられる。
 お尻を突き出す格好となるが、片足を持ち上げられると太く勃起した肉棒が愛液を垂らす秘部に、膣内に挿入された。

 

「んああぁ……あああ゛あ゛っ!」
「んっ……今日は少し狭いですね……まあ、他の旦那と比べて……私のは大きいですから……っ!」
「あぁああ、ああ゛ぁっ!!!」

 

 イズとの新婚旅行の間に膣内が狭まってしまったのか途中で止まる。だが、無理やりねじ込むように突き進められ、押し拡げられてしまった。まるで彼の容を覚えるようにと言うばかりに腰を揺すり、挿入を繰り返される。

 

「ああっ……ヒナタさん……良い具合に収まってきましたよっ」
「あああんっ……ベルぅ……ああああっ!」

 

 名を呼ぶと肉棒がまた大きくなった気がして締め付ける。
 同時に呻きが聞こえ、後ろから強く抱きしめられた。広く固い胸板を背に感じながら、大きな両手は乳房を揉みしだきながら先端を摘み、ミルクを飛び散らせる。耳、うなじ、肩にも吸い付かれると身体が動いては跳ね、肉棒を奥深くへと沈ませた。


「ああ、もうっ……あ、らめ……」
「ええ、いいですよ……心置きなくイって……噴出した可愛いものも全部私が舐め取っておきますから──っ!」
「ああ……ああああぁっっ!!!」


 羞恥の言葉に目を見開くが、膣内で熱いモノが噴出し、何も考えられなくなった。けれど、意識も身体も沈みゆく中で抱き止めた彼の手を握りしめると、自然と笑みが零れる。

 

 誰にも囚われることなく気紛れに吹く風を捕まえた気がして──。

 


~~~~*~~~~*~~~~*~~~~

 


 頬をつねっても反応がないので意識を飛ばしてるのは間違いないと思います。ですが、笑みを浮かべたまま手を握られると、また勃起するのは当然ですよね。

 

 床に敷いたバスタオルの上に寝かせると、小さな口付けをしながら胸の先端から零れる甘いミルクを舐める。自分の白液と愛液が混じった秘部を指で弄ると、気持ち良いのかピクピクと小刻みに身体が揺れ、舐めていない先端からは自然とミルクが零れだした。

 

「夢の中でも感じるなんて……厭らしい奥様ですね」
「んっ」

 

 零れるミルクに吸い付いていると、不満のような声と共に手が私の頬を叩いた。
 ささやかな否定に笑うしかなく、屈曲させた両足を広げると肉棒の先端を秘部に宛がう。ピクリと動いたが、落ちた意識に構わず──挿入。

 

 当然可愛い声は口付けで、零れた愛液は舐め取りますよ。

 


* * *


 

 ヒナタさんを寝室のベッドに寝かせると、暖炉の暖かさに包まれたリビングへ足を入れる。が、ソファには愛しき輝石達はおらず、代わりにもならない男が一人。

 

「ベル兄、失礼なこと考えないでくっさい」
「いつものことだと思いますけどね。それより三人を知りませんか、オーガット」

 

 同じ白銀の髪は毛先が跳ねたショート、瞳は深緑。
 白緑に竜と三日月のベルデライト騎士団長マントと帽子を脱いだ弟オーガットに訊ねると溜め息をつかれた。

 

「王様家(ファミリー)を追っ駆けって行ったス」
「なんでまた王……」

 髪をタオルで拭きながらキッチンを見ると停止。
 昼食にと、ヒナタさんが作ってくださった鍋焼きうどんは小さな土鍋三つが洗い場に、大きな土鍋ひとつは保温結界に、大きな土鍋ひとつは保温結界外に置かれ、紙がひらり。

 

『ごっそさん byイズ家』

 

 大きな溜め息をつくと指を鳴らした。
 同時にどこからか悲鳴が聞こえたが、気にせずオーガットの分の紅茶を淹れると向かいに座る。礼を言う彼の顔は青い。

 

「『五段階結界』……張ったスね?」
「なんのことですかね」

 

 くすくす笑いながら砂糖とミルクを入れ、混ぜる。
 セツ君が生まれるのと同時に騎士団長を辞め、本城の結界張りに専念することにしたせいか、今では王の次に魔力が高い私。王には逃げられるでしょうが、双子はまだまだ弱いので後は子供達に敵を討っていただきましょう。

 

「昼食、摂らないんスか?」
「あとでヒナタさんと半分こします」
「……えーと、他街との連携なんスけど」

 

 言葉を失ったような顔をしたオーガットは早々に切り替えようと要件を話す。
 団長を辞めはしましたが、姫君との約束を違えるわけにもいかないので、騎士団、四天貴族、役所の相談役を担うことにしました。団長の頃より忙しくて、とても面倒です。

 

「嫌々な顔するぐらいなら、団長辞めなきゃ良かったじゃないっスか」
「家族との時間が減るので戻りません。それ以前にマントもありませんし」
「え、団長マントどうしたんスか? 返却しなかったスよね」
「雑巾になりました」
「ぞう……え?」
「「「ただいまー」」」

 

 目を丸くするオーガットの後ろに見えるドアを指すと子供達が元気に入ってくる。振り向いたオーガットの先には雫が落ちた廊下を雑巾で拭く三人。白緑色に竜の牙のような模様が描かれた雑巾(あれ)こそ元・私の団長マントです。

 

「ええええええーーーーっっ!!!?」
「埃が取れ易いとヒナタさんに大絶賛されまして、三十枚ほどの雑巾に化けました」

 

 大絶叫のオーガットに子供達は瞬きをしながら雑巾を見せると、パズルのように騎士団マークが完成。どこかの本で見たムンクの叫びのような顔になった弟に構わず紅茶を飲む。

 

 十年経っても彼女には驚かされてばかり。
 六人との結婚もそうですし、九人の子を成しても駆け回るパワフルさには感服しますね。ただ、週一しか一緒にいられないのは残念すぎて、一妻多夫NGではなかった国を恨みます。
 もっとも一番の驚きは壁に掛けた“写真”に写る旦那全員が、変わらず彼女を愛しているということでしょうか。ウサギとか無駄に成長して迷惑極まりません。

 

「パパ~むじゅかちいかお、ちてる」
「キョウカ達が王様家に負けたからおこったですか?」
「バカ、キョウカ」

 

 コートを脱いだ子供達はどうやら負けたようで、セツ君とキョウカさんは後退り。そんな二人を左右に座らせると、膝にルルさんを乗せ、挑んだだけ立派だと褒めるように三人の頭を撫でた。セツ君は恥ずかしがっていますが、娘二人はニコニコ。私もニコニコ。弟は真っ青。

 

「オーガットも撫でましょうか?」
「いいいいやっス! 怖いっス!! 帰るっス!!!」
「それは残念です。まあ、精々『宝輝』に喰い尽かされないよう気を付けなさい。早死にしたらウチは“全員”悲しみますからね」

 

 今はもう私の身体にはない『宝輝』。
 吸い尽かされる力も、私より魔力が断然下なのも知っている男に眉を落とした笑みを向ける。慌てて白緑のマントを羽織った弟の深緑の目が大きく見開かれたが、苦笑が返され、小さくお辞儀をすると帽子を持って部屋を後にした。
 手を振る子供達の髪を撫でていると、キョウカさんが笑みを向ける。

 

「オー兄、うれしそうでしたです」
「そうなんですか?」
「パパ、兄弟なのにわからなかったの?」
「はー……何しろヒナタさんと違ってわかり難い子ですから」
「誰がだ!」
「あ、マ~マ」

 

 後ろからペシリと頭を叩かれ振り向くと、白のバスローブを着たヒナタさんが眉を上げて立っていた。私は笑みを向ける。

 

「もう起きられるなんてさすがですね。早速、次にイきましょうか」
「お、お腹が空いただけだ! それより誰か来てたのか?」
「オー兄がきてたです」
「何!? おっとうと~~!!!」

 

 背景に花畑を背負いながらリビングを出ようとする彼女を後ろから抱きしめる。

 

「こらっ! 何すっんん」

 

 お決まりのような振り向き口付け。
 その条件反射も年下大好きなところも昔と変わらずで心の中で笑う。けれど、昔と今では違う。

 

 互いの右耳で揺れる証と、素直に応じてくれる口付け、国竜でも騎士でもない普通の私。何より何度目になったかわからない『私のお嫁さんになりません?』に、頬を赤めながらも他がいていいならと頷いてくれた彼女。
 余計な言葉を聞き逃すほど歓喜した自分など言えるはずはないが、確かに今、彼女は私の腕の中にいて、気紛れな風を捕えている。

 

「どうした、ベル?」
「いえ……ヒナタさんと子供達がいて幸せなだけです」
「き、貴様な……」

 

 普通のことを言っただけなのに胸板に顔を埋められた。
 その顔はきっと真っ赤だろうと囲む輝石達と予測すると、意地の悪い笑みを四人で作る。では、一斉に見ましょうか。

 

 愛する妻(リーベ・フラオ)の────可愛い顔を。

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