異世界を駆ける
姉御
番外編*甘美酒
*ラガーベルッカ&カレスティージと
時刻は夜の0時。
七月に入ってもベルデライトの寒さは変わらない。だが、暖かい暖炉に囲まれたヴェレンバスハ家の一室は充分熱かった。ガラステーブルには様々なお酒が用意され、既に頭がぽわぽわしている私は黒のキャミソールとショーパンで上機嫌。
「ん~スティ~大好きだぞ~」
「はい……ボクもヒナさんを愛してます。あ、お代わりどうぞ……代金はさっきと同じで」
「ウサギ、良い様に変換しないでください。おや、ヒナタさん。口から零れてますよ、いけませんね」
「なんスかね……この、ホストクラブみたいな光景」
顔を青褪め、マドラーでカクテルを混ぜる弟の向かいソファには私を真ん中に左にスティ、右にベルが座っている。
着物に青の髪を左下で結い、前髪を左分けにしたスティは藍色の片目を覗かせながら新しいグラスを私に手渡すと首元を吸う。刺激に口からお酒が零れると、白のシャツに黒ズボンのベルが舌で舐め取り口付けた。
ベルに飲まないかと誘われた今日。
途中スティに会ったので誘うと三十分で仕事を終わらせ、ピンポーン。当然ベルの笑みが怖かったが知らんぷり。弟にも囲まれ、異世界に来てからは殆ど飲んでいなかったお酒も飲めて幸せだ。キス付きだが。
そんな私達に弟は顔を赤くすると、そそくさと退散しようとする。唇を離した私は手を伸ばした。
「ごら~弟~どこ行ぐ~」
「い、いや、俺まだ仕事ありますんで……」
「邪魔しちゃ悪いですよ、ヒナタさん」
「ん……ボクがいます」
「スティ~」
眉を落とすとスティを抱きしめ、私から口付ける。スティも嬉しそうに両手を首に回し、私の後ろ頭を固定すると奥深くまで舌を伸ばして突いた。
「んっ、あんっ……」
「ヒナタさん、その年下贔屓なんとかしてください。私、泣きそうです」
「泣きそうな人は殺気なんか出さないっスよ!」
逃げるようにドアを閉めた弟が言うように、背後から黒い気配が伝わる。が、構わずスティと口付けを続けた。
「はい、ヒナタさん。お代わりどうぞ」
最中、頬に冷たいグラスが当たる。
唇を離すと笑顔ベルから新しいお酒を受け取って飲むが、ふと元の世界の飲み会が思い出された。
だがサッパリ内容は浮かばず、全身が一気に熱くなると意識がボンっと飛──これ、度数いくつだ?
* * *
頭がふわふわ浮いた気分で重い瞼を開くと、先ほどとは違う部屋。
だが、ふわりと柔らかいシーツにベッドだとわかる。左右からベルとスティが顔を覗かせた。
「大丈夫ですか、ヒナタさん?」
「んむ……」
「ラガー様が八十八度なんて渡すから……」
「ヒナタさん、結構弱いっと!」
懐から小型ナイフを取り出したスティがベルを斬るが、結界魔法によって遮られる。私の眉が寄った。
「相手にされないからって……酔わして襲おうなんて卑怯な人は……ここで殺します」
「そんなつもりはなかったのですが……仕方ありません。なら私も貴方を墜とし……おや?」
黒い空気が漂う中、スティは影の中から黒ウサギを取り出し、両耳を握る。同じようにベルも剣……が、ない。さすがにあのバカデカイ剣を四六時中持ってるわけではないようで、微笑みながらも冷や汗を流している。そんな彼に構わずスティは黒ウサギを振り上げ──。
「何をしとるかーーっ!!!」
る前に、ハリセンを叩く音と怒号が響いた。
二人は目を見開くが、その顔は驚きではなく困惑。む、どうした?
「い、いえ……ヒナタさん?」
「な、なんで……ボク!?」
頭を押さえるスティは青褪めた顔で私を見る。そう、私が叩いたのは──スティ。
だが私は首を傾げた。
「年上好きの私がベルを助けて何が悪い?」
「「え?」」
素っ頓狂な声を上げる二人にハリセンを戻すとベルを抱きしめる。同時にいつもの言葉を放った。
「ああ~! 癒されるな~~!!」
「い、癒されるって……ヒナさん、その人ラガー様ですよ!? 笑みの九十パーセントがウソっぱちで変態なトラですよ!!?」
「ウサギ、墜としますよ。しかし、私が言うのもなんですが、ヒナタさんは年下好きでは……」
「何を言う。私は女子と年上と可愛いものが大好きで年下は対象外。つまりスティよりベルが好き。いつも言ってるだろ?」
何を今さらと満面の笑みで言うと、衝撃と言う名の稲妻が走った気がする。
むー、さっきからなんなんだと頬を膨らませながら『飲みすぎるとタイプが反対になるんでしょうか』と呟くベルの首に両手を回し──口付ける。
「ヒ、ヒナさんっ!?」
「ん……ベル……」
スティの悲鳴も気にせず、舌をベルの口内に侵入させる。すると大きな両手が私を抱きしめ、止まっていた彼の舌が私の舌に絡まった。
「んっ……どちらにせよ、素敵な告白を受けましたからね……私もいっぱい愛してあげますよ」
「ぅん……いっぱい」
「ダーメ!!!」
舌を互いの口内に行き来させていると後ろからスティに抱きしめられ、唇が離れる。スティの顔は髪色以上に青い。
「ヒナさん……もう寝ましょう……見てる方が気持ち悪いです……」
「とことん失礼なガキですね」
眉を八の字にさせ、今にも泣きだしそうなスティが私を見つめる。キラキラと捨てられたウサギのような瞳をしているが、眉を上げた私は言い放った。
「ヤダ。私はベルと遊ぶからスティは良い子に寝なさい」
突き放すと『ピシッ』と音を鳴らすかのように固まったスティはベッドに沈んだ。ベルは同情するかのような目を向けたが、キャミソール越しに乳房を掴むと、既にツンと尖った先端を指で捏ねる。間にブラがあるせいか、その刺激が遠くてじれったい。
「ああ……ベル……ちゃんと触っ……て、んっ」
「良い声ですよ……ヒナタさん。すぐ気持ち良くしてあげますから……まずは膝立ちしましょうか」
翡翠のイヤリングに口付けが落ちると、チョーカーを外した首元に吸いつかれる。吸われる音に頬を赤くしながら不安定なベッドの上で膝立ちし、両手を彼の肩に乗せた。ベルは片手で胸を揉み続け、もう片方でショーパンを下ろす。後ろからショーツに手を入れるとお尻を撫でた。
「はあぁぁ……ん、ベ……ん?」
「っど!?」
くすぐったさにベルの頭を抱えようとすると、突然ブラのホックが外れたのか胸が解放され、大きな乳房が彼の顔に当たる。結構痛そうな音がした。同時に下腹部も寒く、後ろを見るとブラごとキャミソールが切られ、背中が丸見え。ショーツがひらりとベッドに落ちる。
視線を上げた先には、黒い気配を漂わせながら両手にナイフを握って座るスティ。
「こら、スティ。危ないから仕舞いなさい」
「……ダーメ」
不機嫌な私以上に低い声を発した男は鋭い藍色の双眸を向けた。
寒気が駆け上ると、ナイフがキャミソールとブラの肩紐に添えられ、耳元で囁かれる。
「ラガー様と遊ぶならいいよ……ボクも……好きにヒナさんで遊ぶから」
冷たい声と同時に紐が切られ、すべての肌が露になる。
ナイフを棄てた手は尻を撫でながら下がると、股に潜り、数本の指が膣内に挿入された。
「ああぁっ!」
「おやおや、まさかの“裏”モードとは……嫉妬ですか?」
「いいえ……いつも通りです」
荒々しくも気持ち良い箇所を突く指に愛液が零れ、喘ぎを響かせる私を抱きしめるベルは笑みを浮かべる。その笑みは今のスティに似ているが、優しく口付けながら両手で乳房を揉む。が、先端を強く押され、大きく跳ね上がった。
「ひゃあああ!」
「では私も……ウサギ以上に激しくヒナタさんを抱くことにしましょう」
「ボクに勝てると思ってるんですか……ヒナさん、手、邪魔」
膣内に入るスティの手を叩いていた私だが、その手が片手で捕らわれると、解いた着物の帯で後ろ手に縛られる。同時に乳房を持ち上げたベルの舌が先端を舐めては吸い、いっそう身じろぐが、スティの両手が腰を掴んだ。
「ちょっ、あっ……ベル……スティっ!」
顔を股間に埋めたスティが舌で愛液を舐めると、胸を吸っていたベルが口を離す。するとスティと同じように腰を掴み、顔を股間に埋めると、一緒に秘部と愛液を舐めはじめた。
「ひゃああぁっ……ああっあ、ダメぇ……」
「横取り……ん、最低……」
「んっ……姫君に気持ち良くなってもらいたいだけですよ……ほらヒナタさん、もう少し脚を開いて……」
「あっ、ああっ……」
ベルの声に脚を震わせながらゆっくり開く。
瞬時に開かれた場所を奪い取るように前後から舌が伸びては吸って支配する。長さも動きも違う舌に刺激は最高潮に達した。
「い……くうぅぅーー……んんっ!」
真っ白な世界が訪れると愛液が噴き出す。
二人の顔にもかかるが、構わず顔を上げたベルの胸板に倒れ込んだ。愛液を拭うことはせず、シャツを脱ぐと私の顎を上げ頬を舐める。
「ひゃっ!」
「ん、今したみたいに今度はヒナタさんが舐めてください」
「わ、私が……?」
「ご自身のですから……出来ますよね?」
何かを含んだ笑みに頬が熱くなるが、言われた通り小さく舌を出しながら彼に付いた愛液を舐め取っていく。自分のモノをなんて羞恥はなく、頬も瞼も額も全部。すると後ろからスティに抱きしめられ、反射的に振り向くと口付けられた。
「んっ……あっ」
「ん……ヒナさん……ホントにボクよりラガー様が好きなんですか……?」
「そう、だ……っあ」
「ふーん……大好きって言ってくれたのに……忘れちゃった人は思い出させてあげないと……」
「は……あああぁっっ!!!」
両手で胸を強く揉みしだかれると首元に歯を立てながら吸われる。その痛みと刺激にベルに手を伸ばしたくとも出来ず、目尻から涙を零しながら助けを求めた。
「ベ……ルぅうんっああ!」
「カレスティージ君、だいぶん危なくなってきてますね……しかし、愛しい人を泣かせるのはどうかと思いますよ」
「っだ!」
スティにデコピンを食らわしたベルは私を抱きしめ、目尻の涙を舐め取りながら自身のズボンを脱ぐ。そこからは大きな肉棒が現れ、私の腰を浮かせると──一気に貫いた。
「あああーーーーんっ!」
「っあ……良いですね……ヒナタさん」
「っ……ヒナさん、その声……ダーメ」
「あああっ……んんっ!」
腰を揺らされ、激しく膣内を乱す肉棒に気持ち良くなっていたのに、口内にスティの指が入り、声を止められた。突然のことに彼の指を噛んでしまったが、顔を青褪める私に構わずスティは帯で捕らわれた両手に自身の肉棒を宛てがう。
「そのまま……握って」
「んんんっ!」
覚束無い手でぬめった肉棒を握るが、揺れるベルの肉棒の刺激に何度も離してしまう。その度に首元を噛まれ、胸の先端を引っ張られるお仕置きが待っていた。それを何度か繰り返していると息を荒げるベルが口を塞ぐスティの手を引っこ抜き、口付けながら宣言する。
「出し……ま……すっ!」
「あ、あああぁぁーーっ!!!」
奥底で出された熱いモノに甲高い悲鳴が上がり、繋がったままベッドに沈む。
彼の胸板で息を整えようとするが、そんな暇もなく後ろからスティに抱き上げられベルの肉棒を抜かされると、すぐ彼の肉棒が秘部を擦った。
「待っ、スティ……」
「ダーメ……待たない」
「カレスティージ君、もう少「うるさい」
頭を浮かせたベルだったが『瞬水針』が飛び、停止。
ベッドに無数の針穴が開くと、ベルと二人冷や汗をかく。着物も脱ぎ去り、前髪を上げる男の笑みは見たことも無いほど綺麗だが──怖い。
「ラガー様はただヒナさんを支えるだけの台です……それ以上喋ったら……殺す」
息ひとつ乱さず藍色の双眸を細め、私の背に肩にうなじに口付ける男は耳元で甘く宣言した。
「ヒナさん……ボク──“愛してる”って言ってくれるまでやめませんから」
「スティ……っああああぁぁあぁーーーーっ!!!」
最奥まで貫かれ、膣内でも外でも何度射精されては達し、胸を揉んでは口に含んで口付ける台(ベル)に、私は成す術もなく沈んだ──。
*
*
*
朝、目覚めるとベルの胸板に乗っていた。
さらに私の背中にはスティが乗って……なんだ、このサンドイッチ。胸が圧迫されて呼吸困難に陥りそうだが両手が後ろ手で……え?
必死に身体を捻らせるが、全身異常なほどに痛い上に頭がグワングワンする。同時に下腹部からの強い刺激に目を凝らして見るとスティと繋がったま……!?
「お、おい! ベル、スティ起きろ!! いったいこれはあああぁぁっ!!!」
慌てて叫ぶが、両手をベッドに付けたスティが腰を揺らし、膣内の肉棒を『おはよー』と動かす。その顔は不機嫌を通り越して最悪。目も据わっている。
「ど、どうした……スティ?」
「ヒナさん……ボクのこと好きですか?」
「へ……う、うむ。好きだぞ」
「愛してますか?」
「あああ………愛して……ま、す」
ドキドキする台詞を鬼のような怖い顔で問われても私が疑いたくなるが必死に頷く。すると、スティは嬉しそうに微笑み、頬ずりした。ああ~! 癒されるな~~!!!
だが、腰を動かすスピードも増し、膣内が悲鳴を上げる。と、大きな手がスティの頭を叩いた。
「っだ!」
「ちょっ、ベル!?」
「ヒナタさん……元に戻ったんですか」
「? なんのことだ。それより、年下を苛めるヤツは私が許さぬぞ」
「…………もう一杯いきましょ「『瞬水針』」
残念がるベルを遮り、無数の水針がベッドに刺さ……ていうか、このベッドすっごい穴が開いてないか!?
顔を青褪めながら慌ててスティに注意する──前に、喉元に鋭いナイフを突き付けられた。はじめて会った時を思い出すが、あの時以上に怖い双眸にゴクリと唾を呑み込むと淡々とした声。
「ヒナさん、今後一切の飲酒を禁止します」
「へ……あ、それ元の世界でも言われたな……なんでだ?」
「なんででもです。守らなかったら──殺しますよ?」
「ススススススティーーーー!!?」
「ヒナタさん、気にせず飲んでください。今度は二人っきりで」
満面の笑みで殺人予告をするスティとベルの黒い笑みに挟まれリアクションに困る。が、関係なく朝からまた二人に啼かされるだけだった。
それにしても、揃ってなんで酒にこだわるんだ────?
*裏ネタ*
ヒナタは一定以上のお酒を飲むと年下好きから年上好きになる。本人はその時の記憶がない。決して弱くはないが強くもないので、その境目を見つけるのが難しい。
*お酒の強さランキング*
ベル(ざる)≫≫アウィン(仲間で飲むのが好き)≫スティ(遊郭で鍛えられた)≫フィーラ(たしなむ程度)≫バロン(一人酒派)≫イズ(好んでは飲まない)≫ヒナタ(飲みたいのに禁止された)