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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*騎士への命令

 正午を過ぎたアーポアク城。
 一階ホールには私、ベル、スティ、アウィンが揃い、頭の後ろで手を組んだアウィンが呟いた。

 

「アズフィロラのヤツ、遅ぇーな」
「彼が遅れるなんて珍しいですね」
「私としては貴様らが揃ってる方が珍しいんだがな」

 

 立ったまま寝ているスティを抱きしめる私は、東に向けていた視線を三騎士に向ける。
 『四宝の扉』全員開放記念に街観光をしようと提案したのは昨日。にも関わらず、普段軽い案件にも来ない三人が揃っていることに驚きを隠せない。反対にいつも一番乗り。そして、第一回目となるルベライト観光案内役でもあるフィーラが来ないのだ。
 何かあったかと心配になっているとエレベーターが開き、宰相が現れた。

「あれ~みんな~何してるの~~?」
「フィーラを待っているんだ。貴様こそサボリか」
「息抜き~だよ~というか~今日~アーちゃん~休みじゃ~ないっけ~~」
「休み?」
「すまない、遅くなった」

 聞き慣れない言葉に瞬きをしていると後ろから声が響く。
 振り向くと、東の廊下から紅のマントを揺らすフィーラが現れ、宰相に気付いたのか礼を取る。相変わらず宰相には礼儀があるヤツだ、うむ。
 頭を上げたフィーラは手に持っていた書類を差し出した。

 

「今日までのです。宰相室にお持ちした方がいいですか?」
「ううん~大丈夫~預かるよ~ちなみに~他の~三人は~~?」
「他のって……あっ!」

 

 細められた金色の瞳の先を辿る──と、ベルとアウィンは抜き足差し足。腕の中にいたスティも、そろ~りと影の中に沈んでいく。
 瞬時に察した私はスティをカブのように引っこ抜くと、残りニ人の背中をハリセンで叩いた。


 

「仕事を終えてから遊びに行かんかーーーー!!!」

 


 ホールに木霊する声が第一回街観光の中止を響かせた──。

 


* * *

 


『コケコッコーーー!』


 

 太陽に照らされる緑の葉と花々が咲く中庭で、元気に鳴くプールと餌を食べるコック。
 ニ羽を屈んで見ていると、飼い主でもあり屋敷の主でもあるフィーラが現れた。その格好は白のシャツとズボンに茜色のケープを羽織っている。が、その手には剣……!?

「ついにこいつらを食う気か!?」
「イヴァレリズと一緒にするな」

 

 ニ羽を護るように両手を広げると溜め息をつかれた。
 どうやらイズが『焼き鳥~焼き鳥~♪』と狙っているらしい。それを聞くとなんとも言えなくなるが、ともかく剣を下ろすように言うと眉を吊り上げられた。

 

「騎士に武器を置けと言うのか?」
「今日は休みだろ? ほら、預かるから寄越せ」

 

 手を伸ばすが、フィーラは腰から鞘を抜いたまま考え込む。
 

 そんな彼は今日休日だったらしい。

 二十四時間営業の騎士団とはいえ、当然休みもある。だが、仕事人間ともいえるフィーラは騎士団長が休みでも『四天貴族』の仕事もするし、街観光にも普通に頷いていたのだ。
 三人のようにまったくしないのもどうかと思うが、詰め込み過ぎもいかん。しかし、一向に動く気配がないことに苛立ち、彼の手から剣を奪った。

「おいっ!?」
「ふんっ! 奪われる貴様が悪い!! 取り返せるものならしてみろ!!!」

 

 まさかの行動に目を見開くフィーラを横目に全速力で駆け出す。
 風が漆黒の髪と甘い花の香りを揺らしながら中庭を駆けるが、腕にある剣は見た目に反して重く、中々スピードが上がらない。それでも汗を掻きなが必死に駆けていると大きな影に覆われた。見上げると『浮炎歩』よりも速い魔法で飛ぶフィーラ。

 

「ズルいぞ!!!」
「こうでもしないとキミには追いつけない。ほら、返すんだ」
「ふんっだ!!!」
「…………仕方ない」

 

 せっかくチートで走るのが速くなっても魔法を使われては形無しだ。
 腹が立った私はスピードを上げるが、頭上から『ピュルガトワール』と低い声が響くと、突然剣がオレンジ色の炎を纏い浮き上がった。慌ててしがみつくが、主の下へ向かうように私ごと空へと昇る。
 最初は驚きと恐怖しかなかったが、レンガの街並みと緑で賑わうルベライトの景色に目を奪われた。

 

「ほら、捕まえた」
「っあ!」

 

 背後から抱きしめられ、耳元からの囁きに心臓が跳ねると持っていた剣を奪われた。頬を赤くさせたままぶう垂れる。

 

「良いお子さんをお持ちで……」
「主(キミ)にも素直になってもらえると助かるんだがな」
「ふんっ、良い子がいるのなら悪い子もいるものだ」
「イヴァレリズと同等の扱いで良いのなら落とすぞ」

 

 つんけんとしていた私だったが、今いる場所を思い出すと沈黙した。
 苦笑するフィーラは剣を腰に掛けると横抱きする。まだ慣れないせいか、怒るように顔を上げた先には端正な顔。目を見開いていると徐々に顔が近付き、唇と唇が重なる。

 

「んっ、ちょ……フィーラ……んん」
「ん……以前ならまだしも……今は頼まれても落とさないさ」

 

 逃げ場のない上空での口付けに、慌てて腕を首に回した。
 それがいっそう距離を縮め、小さく開いた隙間から舌を挿し込まれる。ザラリとした舌同士が交わり、全身が熱く喘ぎを漏らした。

 

「あっ、ん……ダメ……こんな」
「“こんな上空で”? なら、下りてからしようか」
「しようって……ひゃ!」

 

 唇が離れると、ゆっくりと降下する。
 彼の肩に顔を埋め、荒くなった呼吸を整えていると頬に赤い髪が当たる。それは真上にある太陽と同じ輝きで綺麗だ。

 

 見惚れていると、着地と同時に振り向いた赤の瞳と目が合う。
 その瞳に自分しか映っていないことに気付くと急に恥ずかしくなり、慌てて距離を取ろうと身体を離した。が、足がもつれ、地面に倒れる。

 

「わあっ!」
「何をしているんだ……」

 

 草の匂いがする地面とお友達になっていると頭上から溜め息。
 だが、すぐに上体を起こされ、茜色のケープが肩に掛かる。屈んだフィーラは、伸ばした手で私の頬を撫でた。くすぐったくて身じろぐが一息つかれる。

 

「土がついているんだから動くな。まったく……急に離れたりなどするから」
「う、うるさい! 貴様が変なことを言うから……」
「俺は何か慌てさせるようなことを言ったか?」
「い、言っただろ! しようとか……!?」

 

 首を傾げた男に反論してしまったが、口走った内容に慌てて両手で口を塞ぐ。赤の視線に気付かないよう視線を彷徨わせながら籠もった声で私は言った。

「今日はー天気が良いなーあーそうだー街に買い物でもー」
「棒読みにもほどがあるぞ。だが天気が良いのは良いことだ」
「だろだろ? よっし、フィーラ街に──っ!?」

 同意を得られ、両手を口から離すと視線が合わせる。気付けば唇が重なっていた。

 

「フィー……ん」
「その前に約束を果たさなければな」
「約束って……っ!」

 

 上空時とは違い、唇はすぐ離れた。
 すると、首に巻いているチョーカーの中心──彼の瞳と同じ赤の宝石に口付けが落ちる。

 同じように私も顔が赤くなると、彼は小さな笑みを浮かべ押し倒す。
 また草の匂いがするが、背中は地面ではなく柔らかいケープの上。真上には青空ではない、熱い太陽の赤髪と瞳。鼻と鼻をくっつけたまま見つめるフィーラ。
 動悸が激しさを増していると耳元で甘い声が響いた。

「上空がダメならば下で、だろ?」
「それは……んっ」

 耳朶を舐めながら右手がタンクトップの下を通り肌を撫でる。
 舐める舌から鳴る音は厭らしいのに肌を伝う手は優しい。ブラの隙間から指を潜り込まされても、先端を触るのではなく円を描くように動かすだけ。時々先端と指が擦れ合うと身体が跳ね、喘ぎが漏れる。

「あっあぁ……」
「どうした?」
「んんっ!」

 

 耳元で囁く声だけでも犯されている気分だ。
 鼻をくすぐる草も良い匂……犯され……犯され……草の匂い……外っ!!?

「ちょっ! フィーラ、外でこんなっん!?」

 

 我に返るが、口付けと同時に胸の先端を大きく摘まれた。
 突然の刺激に駆け上る快感、口内を突く舌に何も考えられなくなる。荒い息と汗を掻きながら上着を脱がされると、露になった胸の先端を舌先で舐められた。

「ぁんんっ……」
「んっ、ヒナタ……声を出せ」
「で、でも……あっ」
「構わない。屋敷までは届かないだろ……気持ち良い声を聞かせてくれ」
「ああっ、あっ……そっちは」

 胸を弄る手とは別に、タイツに潜り込んだ手でショーツ越しに秘部を撫でられる。
 広大な中庭に人の気配は感じられないが、屋敷には執事のおじいさんも数人のメイドさんもいる。もし見つかったらと考えるだけで蜜が零れた。

「ヒナタ……湿っているぞ」
「そ、そんなハズは……」
「おかしいな。今、確かに指先が濡れたんだが……確認するぞ」
「ああぁダメぇっ……」

 笑うフィーラはブーツもズボンもタイツも脱がすと両脚を屈曲させ、股に顔を埋めた。開いた脚の隙間から見える姿に赤面すると蜜も零れる。

「やはり湿っている」
「湿って……ない……」
「太陽の真下で嘘はいけないな。シミがシッカリ見えているぞ」
「ひぁっ……!」

 指でショーツの中央を押され、彼の頭を強く脚で挟み込んでしまった。
 気にする風もなくショーツを脱がしたフィーラは両脚を開かせ、零れる愛液をゆっくりと舐める。ちゅっくりちゅっくりと胸の先端を触らなかった時のように優しいが、焦らされているようで声を上げた。

「あぁっ……フィーラ……もっと」
「もっと? ……ああ、もっと“ゆっくり”か」

 口元で笑みを浮かべた彼は秘芽を舌先でゆっくりと舐め上げる。身体が跳ね、喘ぎも増すがそうではない。

「ああっ……わかってる……くせにぃ……ひゃあっ!」
「わからないな……ん……“もっと”なんだ?」

 意地悪としか思えない言い方に顔を真っ赤にしたまま睨む。
 股下で笑っていたフィーラは顔を上げると跨り、口を尖らせた私を見つめると手を取った。そのまま腰に掛けている剣の上に乗せる。

「命令を下せばいい」
「命令って……今日は……」
「悪いが剣を持っている時は“騎士”だ。だから酷いことはしない……が」
「ああぁっ!」
「“普通”の俺に戻せばキミの望み、そして俺の好きなようにさせてもらう。そうするには……わかるな?」

 口付けながら秘部を撫でられるが、ナカに入ろうとはしない。
 焦らしに焦らす彼は顔を肩に埋めると耳元で甘美な声で囁いた。

「御命令を──愛する姫君(アムール・プランセッス)」
「っ……剣を……置いて……激しく私を……抱け……っ!」
「仰せのままに──ヒナタ」

 くすりと笑った彼は頬にキスを落とし、腰に掛けていた剣を地面に置くと自身のシャツボタンを外す。
 徐々に露になる肌に動悸が激しくなり、両手を伸ばした。応えるように抱きしめられると口付けを何度も交わし、彼の片手は胸の先端を、片手は秘部にニ本の指を挿し込む。

「ああっ……あぁあ……」
「んっ……遠慮せず大きな声と蜜を出していいぞ」
「あああぁぁっ……!」

 ぐちゅぐちゅと秘部は音を鳴らし、愛液が地面へ落ちる。
 指を回しながら首元に胸に口付ける男の首に腕を回すと、戻ってきた緋の輝きが目に入る。だが、揺れる思考と愛する男の前では無意味だと、同じように首元に吸いついた。

「んっ……ヒナタ」
「フィーラ……ん……もっと……ああぁぁっん!!」

 指が三本に増えるが、ギチギチになった秘部からは愛液が止まらない。そればかりか奥を突かれ、潮を噴き出してしまった。
 

 世界が真っ白となった私は柔らかいケープに背を預ける。同じように荒い息と汗を落とすフィーラはシャツを半分脱ぎ、ズボンから雄雄しい肉棒を取り出した。蜜を零す私の両脚を曲げ、太腿を持つと、先端を押し当てる。

「ああっあ……」
「優しくは……しないぞ」
「ぅん……あ、あ゛あ゛あぁぁぁんんんっ!!!」

 

 潮を出し、満面に濡れた秘部は簡単に彼の肉棒を招き入れた。
 奥へと突き進むモノは気持ち良く、外なのも関係なく大きな喘ぎを響かせる。さらにフィーラは腰を揺らし、好きな箇所を突く。その額からは汗が落ちるが、嬉しそうだ。

「乱れるヒナタは……可愛い……っ!」

 “可愛い”に肉棒を締めつけてしまい、フィーラの呻きが聞こえた。
 膣内を掻き回しながら両手で胸を揉みしだく彼に最初の優しさはなく、ただ私を求めるように激しく揺らす。そんな彼を抱きしめたまま駆け上ってくる快感が限界を伝えた。

「あぁぁあああ゛……フィー……ラ…イくぅ……!」
「ああ……いいぞ……俺も出す……っ!」
「ひゃあああぁぁーーーーんっ!!!」

 激しくうねった肉棒に絶頂を迎えると膣内で白液が散る。
 熱い波に意識を流されながら額に頬に唇に口付けるフィーラに抱きしめられると耳元で何かを囁かれた。けれどはっきりとは聞こえず無意識に頷くと、意識を飛ばした──。


 それが『休みの時は一日中ヒナタを抱いていいか?』だったのを知ったのは目覚めてすぐ。
 証人に偶然(?)聞き耳を立てていたイズを引き合いに出された上、すべての仕事を終えていた彼に何も言い返せなかった。そしてまた優しい声で囁かれる。


「御命令を──愛する姫君(アムール・プランセッス)?」
「あ゛あぁァっあああぁぁーーーー!!!」


 フィーラの騎士(優しさ)を取るか取らないかは主(私)次第のようだ────。

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