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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*拍手小話~夏編~

*過去の拍手お礼SS集(10年前)

*~夏だ! 海だ!! 男達の頭は!!?~*

 


 アーポアクにも真夏のペリドット月がやってきた。
 一階ホールで『四聖宝』と冷たい床に座り込んでいるが……暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑いーーーーっっっ!!!

 

「ヒナタ、余計に暑くなるぞ」
「だったら貴様も服装をなんとかせんか! ベルですら脱いでるんだぞ!!」
「脱いでるっつーか、あれ生きてんのか?」

 

 スカーフを解いているとはいえ、変わらずの騎士服フィーラに怒ると、タンクトップになったアウィンの声に振り向く。ベルはシャツ一枚と黒のズボンだが笑みを浮かべたまま動かない。頬を引っ張っても、アソコを突いても。慌てて肩を揺す振る。

 

「おいいいっ! しっかりせんか!! そんなに暑いならベルデライトに帰れ!!!」
「いやですね、ちゃんとヒナタさんが水の精霊に見えてますから涼しいですよ」
「医者ーーーーっっ!!!」

 

 脳が既にヤられている男に大声で叫ぶと後ろからスティに抱きつかれる。水属性なせいか冷たいと言えば冷たいが、すぐ蒸発するように汗が出はじめるとズルリと落ちた。被害者2。

 

「貴様も何がしたいんだーーーー!!!」

 

 半泣きになりながら頭から湯気を出すスティを揺す振ると、エレベーターから長い髪をひとまとめにしたバロンが顔を出す。早々に文句を言った。

 

「バロン~暑いぞ~ここが涼しいって言ったじゃないか~」
「そう~言われてもね~あ~そんなに~暑いなら~海でも~行けば~~?」
「海……!」

 

 そうだ、そのテがあった! 機械類がないせいで扇風機もエアコンもないこの世界でも海があるじゃないか!!
 目を輝かせると、その海を陣地に持つスティを揺す振る。

 

「スティ、海だ海! 船着場があるということは砂浜もあるんじゃないのか!?」
「あ、ありますけど……魔物……出ますよ……」
「よっし、それはベルの結界に任せた! そうと決まれば早速準備だ!!」
「おめぇ、ラガーベルッカを殺す気か?」
「というか、俺達も行くのか」
「ガンバレ~」

 

 呆れるアウィン、溜め息をつくフィーラ、笑顔のベル、顔を青褪めるスティ、応援のバロン。そんな乗り気のないヤツらに気にせず立ち上がった私は笑顔で必要な物を呟く。

 

「シートとパラソルだろ。あと飲み物とお弁当を食堂で貰って……おおと、まずは水着を買わねばな。どんなのにし……なんだ?」

 

 突然背後で稲妻のようなものが走り振り向く。
 見ると座り込んでいた『四聖宝』がゆら~りと立ち上がった。ゾンビはいらんぞと後退りしていると、バロンと共に全員がハモる。

 

「「「「「水着?」」」」」
「? 泳ぐのには必要だろ。貴様らもないなら一緒に買いに行くか?」

 

 何を当たり前なと思っていると、先ほどの暑さと暗さなど吹き飛ばしたような笑顔が向けられた。

 

「ウリュグスに留守にすると鳥を飛ばそう」
「喜んで『四段階結界』を張らせていただきます」
「ラズライトも非常事態警報だして無人にしておきますね」
「やっぱビーチバレーとスイカ割りだよな」
「ボクも書類置いてくるよ」

 

 元気100%の五人が気持ち悪いが、取り敢えずスティの言ったことは止めておこう。
 そんな五人を引き連れ、女性用水着コーナーに入るが、予想通りフィーラとアウィンが固まった。反対に残りの三人は普通に水着を手に取り持ってくる。

 

「ヒナタさんはやはりビキニですかね」
「ワンピース……」
「可愛いさ~なら~セパレ~ト~?」

 

 その顔にこいつらの目的が判明。
 いや、別に選んでくれるのは嬉しいんだがな。一着しか着れないぞ。そんな思考が読めたフィーラがなんとか売り場に足を入れた。

 

「着替えればいいんじゃないか?」
「おいおい、面倒だろ。それに色々と着たいのも確かだが……まずサイズが……な」

 

 全員の目が一斉に私の胸元に向かう。
 最近また苦しくなってきた気がして下着も買い換えねばならんのだ。サイズ大きいのって高いんだぞ。肩を落としていると後ろからベルに抱きしめられる。

 

「仰って下されば一式すぐ揃えてプレゼントしますよ」
「おい」
「ヒーちゃん~サイズいくつ~~?」
「こら」
「確か……イズ様が」
「ちょちょちょ」
「ねーなら、特注がよくね?」
「おいおい」

 

 普通な会話に聞こえるが周りからすれば結構アレな内容だ。
 というか既にスリーサイズがバレてるのは……いや、ベルにはバレてたはずだが他は。頭を悩ませていると胸を“もみもみ”され、ハリセンで叩く。

 

「こら、イズ」
「や~ん。なんで俺だってわかったなりか~」

 

 影から現れたイズは前から抱きつき、胸を揉む。
 全員が自剣の柄を握るが、店内では抜刀禁止だと止めると溜め息をつきながら答えた。

 

「そんなもん触り方でわかる。貴様は両手で鷲掴み、フィーラは片方だけ、ベルは左右揉み、スティは下から真ん中寄せ、アウィンは乳首押し、バロンは片方舐めだからな」

 

 自信満々で言ったのに沈黙が訪れた。ん、何か違ったか?
 見るとイズは変わらずニヤニヤ顔だが、珍しくフィーラどころか他の連中も顔が赤い。ベルも口元を手で押さえ、スティは黒ウサギで顔を隠し、アウィンも後ろを向き、バロンはメガネを外している。首を傾げていると胸を揉むイズが楽しそうに言った。

 

「ヒナ~、それをハッキリ言う方がエロいって」
「む、そうなのか? なんなら他の攻め方も教えむごっ」

 

 フィーラの手に口を塞がれた。髪色以上に赤い顔とものすっごい吊り上がった眉で見つめられる。

 

「ヒナタ、それ以上いうと俺でもこの場で押し倒すぞ……」
「ふんがむむむがが!」
「“フィーラ正気か!”って言ってるなり~。つーかヒナ、水着なら俺のやったスクール水着があんじゃん」

 

 また稲妻が走る中、フィーラの声にも驚いたが思い出す。
 はじめての給料日にイズから貰ったスク水を。だが手を退けると眉を上げながらイズを見下ろした。

 

「あれこそ入るわけがなかろう。ご丁寧に胸元に“ヒナタ”ってデカイ名札まで付けよって」
「だって、そこに穴を開けてパイっぶ!!!」

 

 フィーラの柄頭、ベルの拳骨、スティの黒ウサギ、アウィンの足、バロンの手刀攻撃が当たり、イズは床に落ちる。全員の息は荒く、顔がとても赤い。声をかけようとしても目を逸らし、鼻血まで吹くヤツまで……いったいなんなんだ。

 

 ともかく、この調子では今日海に行くのは無理だと延期にした────。

 


 *おまけ*

 

 

 後日、改めて一着ずつ水着をプレゼントしてもらい念願の海へと来たが、全員に襲われ裸体となった私に水着など必要なかった。

 

 貴様らなーーーーーっっっ!!!!

 


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 


*~水着試着会~*

 


 海へ行く日が決まった翌日、水着を『四聖宝』とバロンからプレゼントされた。
 多種多様に色も形も違い、私は感心する。

 

「よく買えたな。特にフィーラ」
「シュレアに頼んだ……」
「下着を買うよりは恥ずかしくないですよね」
「変態……」
「しっかし、見事にバラけやがったな」
「ヒーちゃん~試着~してみたら~?」

 

 顔を赤くするフィーラを余所にバロンの提案に頷くと別室で着替える。
 サイズは既にバレてしまったから大丈夫だと思うが会社によって違うかもしれんしな。そんなわけで『水着試着会』を開始し、まずはフィーラから。赤の三角ビキニに腰には膝下まであるパレオだ!

 

「あー……アズフィロラっぽい」
「真っ赤だ~」
「全部を見せないところとかですね」
「チキン……」
「うるさいぞ」

 

 中々の酷評だが、三角ビキニを選べた時点で凄いと思う。それにと、パレオを外すとやはり赤だが紐パンだ!
 堂々と見せると、目を見開いた男達は一斉に咳払いするフィーラを見つめる。すると締め方が緩かったのかヒラリと落ちてしまい下半身丸見え。何人かが鼻血を吹いた。大丈夫か?

 

 次、ベル!
 薄緑のホルターネックのビキニで胸元にはリボン、ショーツもフリル付き。

 

「変態が……普通だ」
「可愛いじゃないかっだ!」
「うん~大人可愛いっだ!」
「ヒナタさんは照れ屋さんですね」
「つーかそれ……乳首見えてね?」

 

 『可愛い』につい叩いてしまうと、アウィンの声に全員が私の胸元を見る。
 言われてみれば薄っすらと……パッド付けねばと頷くと何人かが鼻血を吹いた。大丈夫か?

 

 次、スティ!
 ダークブルーのツイストブラワンピース。コッソリと白と黒ウサギ模様付きで丈は膝上まで。

 

「可愛いじゃないかっだ!」
「ウサギは要りませんね」
「いかにも『自分のもの!』って感じするよな」
「特注品……」
「またカーくん~お給料……って~ヒーちゃん~ショーツは?」

 

 特注品と呟いたスティに身体がビクリと動くがバロンの言葉にもビクリ。
 ワンピースを広げると……下半身丸見え。ショーツあったのかと頷くと何人かが鼻血を吹いた。大丈夫か?

 

 次、アウィン!
 イエローのバンドゥビキニにスカート付き!

 

「可愛いじゃないかっだ!」
「可愛いですねっだ!」
「かわいった!」
「おめーはさっきからなんで叩くんだ?」
「黄色って~度胸~あるね~あれ~ヒーちゃん~またショーツ穿いて~ない~」

 

 『可愛い』に反応するとまたバロンに指摘される。
 スカートを広げると下半身丸見え。後で穿こうとして忘れていたと頷くと何人かが鼻血を吹いた。大丈夫か?

 

 次、バロン!
 モノトーンのビキニの上にV字形のシャツ付きで下は黒のレース付きのミニパンツ。

 

「可愛いじゃないかっだ!」
「少々味気ない感はありますね」
「地味……」
「ぜってー、仕事の癖が出てんだろ」
「あはは~動きやすさ重視で考えちゃうからね~」

 

 まあ、実際海で遊ぶならバロン系のがいいだろう。
 しかし色々あったな。それが貰えるとは嬉しいものだ。笑みを浮かべると私は五人に礼を言った。

 

「気に入ってもらえたのなら良い。なぜか叩かれたが」
「これで当日、誰のを着てくださるのか楽しみですね」
「ボクの着てください……」
「本番はショーツ忘れんじゃねーぞ!」
「ヒーちゃん~こういうとこ~抜けてるよね~」
「や、やかましい。ともかくこれで「まだあるなり~~」

 

 お開きにしようとしたら後ろから胸を鷲掴みにされる。
 揉み揉みと揉むイズの登場に全員が剣の柄を握るが、しゅぱっぱとイズはバロンから貰った水着から他のに着替えさせた。それはスクール水着。ではない。黒のソレは胸の先端と下腹部をギリギリ隠すだけで真ん中はV字形に開かれた際どい水着。
 つまるところのスリングショット……紐ビキニ……エロビキニ。

 

「こらあああーーーーっっっ!!!!」
「や~ん、エロいなっだ!!!」

 

 さすがに恥ずかしくて両手で胸元を隠すとフィーラの柄頭、ベルの拳骨、スティの黒ウサギ、アウィンの足、バロンの手刀攻撃がイズに落ちた。全員の息は荒く顔がとても赤い。声をかけようとしても目を逸らし、先ほどまで無事だったベルやバロンも鼻血まで……本気で大丈夫か?

 

 心配になりすぎたのか、海に行くのは延期にした────。

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