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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*拍手小話~トルリット編~

*過去の拍手お礼SS集

*~お風呂場の本音~*

 


 戴冠式と晩餐会が終わると、浅葱少年に声を掛けられた。
 なんとユフィから『お泊りに来ませんか』のお誘い! やったー!! 今すぐ行くぞー!!!

 

「ヒナさん……ボクを棄てるんですか?」
「棄てるのではない、私は友情を深めに行くんだ。たとえ離れていようと私はいつでもスティの隣にいるぞ。ほら、この直った黒ウサギを私だと思ってな」
「カッケーこと言ってけど、頭すんげー花が咲いてんぜ」
「ヒナタ、その思考のまま行くのならルーファス殿の前に俺が斬るぞ」
「全然~聞こえて~なさそ~~」
「はあ、お預けとは最悪な夜になりそうですね 」

 

 とやかや言う男達に別れを告げると、可愛い浅葱少年の後ろをルンルンで付いて行く。部屋に入ると王になったばかりのユフィが笑顔で待っていた。

 

「ヒナタ様、ご足労お掛けしました」
「ユフィこそ、忙しいのではないか? お風呂だけでも良かったぞ」
「お風呂は絶対なんですか……?」

 

 後退りする浅葱少年に『一緒に入るのと退出するのどっちがいい?』と問うと、真っ先に後者を選んだ。残念だ。肩を落としながら部屋の前に『男禁止、覗き、盗み聞きした輩は死あるのみ!!!』の札を立て、風呂にGO!

 

 ユフィの部屋にある備え付けのお風呂は円形でジャグジー。しかも温泉! やったー!!
 嬉しい私とは反対に恥ずかしがる少女を笑いながら手招きした。やはり私の胸に目が行くようで頬を赤められる。

 

「羨ましいです……私……小さくて」
「大きすぎるのも困りものだぞ。服はないし、肩は凝るし、胸フェチ男に襲われるし」
「お、襲われ!?」

 

 おっと、いかん。可愛い少女を怯えさせてしまった。
 同時に年頃の少女なせいか恋バナなどが好きらしく、一応今まで付き合ってきた男達他『四聖宝』とのことも話す。

 

「ろろろろ六人ですか!?」
「う、嬉しいような申し訳ないようなだが……昨日の騒動が終わった後もヤられたばかりで痕がな」

 

 湯船の縁に座ると、あちらこちらに付いてる赤い証=キスマークを見せる。
 その多さにユフィは顔を赤め、口元を両手で覆った。刺激が強すぎたかと苦笑いしながらタオルで隠すと私も訊ねる。

 

「ユフィは気になる男はいないのか? 王女様でも恋愛禁止ではないだろ」
「城に篭ってばかりで……殿方は見合いの肖像画しか」
「浅葱少年は? 仲が良さそうに見えたが」

 

 一瞬誰のことかわからなかったのか、ユフィは首を傾げたがすぐ横に振った。

 

「ル、ルーは小さい頃から護衛をしてくれてただけで……七つも上ですし」
「? 私とスティは九つだぞ。あまり言うと怒られるが」

 

 そりゃ、私も気にしないとは言わないが、怒られるから気にしない事にしている。だが眉を落としたユフィは私の隣に座った。

 

「そう言われても……それが好きの感情かわかりません……恋がどんなものかも」
「その人を見ると胸がドキドキしたり、目を合わせれなかったりだな」
「ヒナタ様も……ですか?」

 

 驚いた様子の彼女に苦笑するしかない。
 男勝りな私にはなさそうだが最近はもうダメだ。最初はまだ抵抗出来るが、甘い囁きと口付けと手にすぐ溺れる。赤い証をなぞると、ユフィの頭を撫でながら笑みを浮かべた。

 

「ま、王様業務が落ち着いたらゆっくりそんなヤツがいないか探せ。そうだ、浅葱少年にユフィをどう思ってるか聞いてみよう」
「や、やめてください! 絶対なんでもない顔されます!!」

 

 オロオロする少女に笑いながら湯船から出ると、窓の外に輝く月と星を見上げる。
 つい声に出さないよう彼らの名を呼んでしまう私も重症だと苦笑すると、可愛いユフィを洗うため満面の笑みに変えた。今日はユフィとのを楽しんで、明日また……な、うむ。

 

 途中、覗いてやがった黒男を連弾桶飛ばしの制裁も加え、楽しい夜が過ぎた。
 翌日、啼かされまくるなんて知る由もせず──。

 

 

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*四聖宝と南十字~アズフィロラ&ルーファス編~*

 

 

 無事に式典が終わり、船の出立時間まで数時間となった。
 フィーラと二人、ユフィ達に挨拶を済ますと浅葱少年と出会い、挨拶と共に握手を交わす。

 

「此度は自国の問題に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」
「ルーファス殿が気にする事ではない。ウチのバカ王とヒナタも充分に迷惑をかけたからな」
「おい」
「そうですね。アズフィロラ様の気苦労が伺えます」
「こら」

 

 ツッコミを華麗にスルーした二人に見つめられると大きな溜め息をつかれた。失礼な!
 すぐ反論しようとしたが『ピーン!』と何かが立ち、並んだ二人の前に立つと両手を広げ抱きしめる。

 

「「うわああぁぁーーっっ!!!」」
「ああ~、癒されるな~~!!」

 

 フィーラは同い年でも誕生日は後! 浅葱少年はひとつ下!! 完全に私の範囲内!!!
 突然のことに大の大人男二人は悲鳴を上げ、急いで剥がそうとする。

 

「ヒナタ、やめろ! 俺を年下と見るな!!」
「おお~! 相変わらず背伸びする男め!! 可愛いではないか!!!」
「ふざけるのはやめてください! なぜ私まで……!!」
「年下だからだ!!!」

 

 ドヤ顔に二人は動きを止めると共に溜め息をついた。ホントにソックリだな。やっぱ兄弟じゃ……と、思ってたら二人の手が私の頬を引っ張る。

 

「ごら~! じょしぇいのひょっぺをつにゃるとはどうひゅちゅもりだ~」
「自分の胸に聞け」
「王族としての対応を望まないと言ったのは貴女です」

 

 冷静な指摘に眉を上げると手が離される。
 同時に私も抱きしめる手を離すと、つねられた両頬を擦りながら口を尖らせた。そんな私にフィーラは苦笑いしながら手を伸ばすと、私の顎を持ち上げ顔を近付ける。端正な顔が見る見る近くなり、唇が重なった。

 

「「っ!!?」」

 

 声のない悲鳴を上げたのは私と浅葱少年。
 いや、普段なら『す、するのか?』って気持ちで胸がドキドキするが、今のは『するのか!?』と嫌な音が出たぞ。浅葱少年もいる前でフィーラが……アホな、と、唇を離した彼を呆然と見上げる。が、また顔を近付け額と額をくっつけた赤の瞳と目が合う。

 

「なんだ、足りなかったのか?」
「いやいや、充分だ! というか少年の前でやめろ!!」
「未成年の前ではないのだから大丈夫だろ」
「完全に私は子供扱いされているんですね」

 

 引き攣った表情の浅葱少年。
 その肩は小さく震え、お怒りマークが見える。そんな浅葱少年に、フィーラが珍発言をした。

 

「ルーファス殿は恋人はいないのか?」
「「!!?」」

 

 頭上に稲妻が落ちる。
 こ、恋人……だと? フィーラの口から恋人? 恋愛云々の会話だけで顔を赤くしていたフィーラが? 恋バナ? 槍でも振るか?
 浅葱少年と『ゴクリ』と喉を鳴らしていると、二人してフィーラに頬を引っ張られた。

 

「「いただだだっ!!」」
「どちらかと言えば、二人の思考が似ていると思うがな」
「し、失礼な! アズフィロラ様の性格が変わりすぎなだけでしょう!! 昨年の貴方は冷静で感情を表に出さなかった」
「そうだそうだ! カッコ良いフィーラ様がチキンになったから、浅葱少年が幻滅しっだだだだ!!」
「ヒナタ、隙を付いて悪口を言うのをやめてもらおうか。そもそも、なぜ幻滅になる」

 

 また両手で頬を引っ張られると片眉を上げながら浅葱少年を見た。
 いやだって、浅葱少年がフィーラに向ける眼差しをフィーラは『敵意』と言ったが、どうにも違う気がする。何かアウィンがロジーさんに憧れているような、それを隠しているようなと言いながら浅葱少年を見つめた。すると、彼の顔が見る見る赤くなっていく。お?

 

「わ、私がいつ憧れなんて言いましたか!?」
「じゃあ、嫌いなのか?」
「き、嫌いとも言ってませんが……いえ、まあ……凄い方だとは思って……ます、よ」
「ヒナタのツンデレを見ている気分になるな」
「「誰がだ!!」」

 

 二人してツッコミを入れたが、我に返った浅葱少年は赤い顔を逸らす。が、フィーラがその顔を覗こうとする。そんな彼から逃れる為か、浅葱少年が私の後ろに隠れた。か、可愛い~!

 

「ヒナタ、それは少し違うと思う。ルーファス殿、ヒナタから離れてくれ」
「お断りします!!!」

 

 断固拒否する浅葱少年は細めた琥珀の双眸をフィーラに向けたが、フィーラは黒い空気を纏っていた。浅葱少年の全身が一瞬ビクついたのが伝わり、私は彼を庇うように抱きしめる。
 当然胸元に顔が埋まりジタバタされるが、可愛くて可愛くて仕方ない。

 

 そんな私達にフィーラの不機嫌がMAXに達したのか抜刀。
 城の壁を破壊する迷惑を最後の最後かけてしまった。

 


 *おまけ*

 

「ちなみに浅葱少年。ユフィのことをどう思ってる?」
「は、姫ですか? ドジで間抜けで粗相ばかり起こすヴァーカな人ですかね」

 

 フィーラと二人、沈黙するしかない。
 そして、そのまんまユフィに報告してやったら、泣きながら浅葱少年を追い駆けていった。いやはや、ユフィもたくましくなったものだ。うむ────。

 


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*四聖宝と南十字~ラガーベルッカ&ネジェリエッタ編~*


 無事に式典が終わり、船の出立時間まで数時間となった。
 トルリット城の図書室で本を読むベルを呼びに来ると、紫紺少女が何かを手に持ち、ソワソワした表情でベルを見ている。

 

「どうした?」
「ヒヒヒナタ様!」

 

 目を大きく見開き驚く紫紺少女は頭を下げようとするが止める。確か彼女はベルが大好きだったなと思い出した。

 

「ベルと話したいなら呼んでやろうか? 十分の五の確率だが」
「い、いえ、そんなお手を煩わせるわけには……それに自分の声で振り向いていただかないと」

 

 ぽっと赤く染めた両頬に手を当てる姿はまさに『恋する乙女』! ベルのヤツいいないいな!! 幸せもんめ!!!
 別の方向で同じように両頬を赤くして笑みを浮かべる私に、紫紺少女は眉を落とす。

 

「でも、ベル様にとって一番の女性はヒナタ様なので、わたくしどうしたら良いか……」

 

 おっと、幸せ心に大きな槍が刺さったぞ。
 数ヶ月前ならば『あんな男やる』と仁王立ちで言ってやるところだが、今は……なあ。落ち込む紫紺少女に話題転換と慌てて口を開いた。

 

「えっと、その、貴女はベルのどこを好きになったんだ? ああ、別に深い意味はなくてだな。純粋に女子は恋バナが好きだから」

 

 二十八にもなった女が『女子』とはアタタだが、紫紺少女は手に持つ何かを握り締める。

 

「すべて、ですわ……!」

 

 おっと、どう返答すればいい?
 さっき以上に両頬を赤く染め、目がウットリしている紫紺少女に私は再び沈黙。というか『すべて』って凄いな。よくよく考えれば彼女とベルって思考が似てないか?

 

「でも一番は微笑んでらっしゃる時が素敵ですの」
「私にとっては悪の笑みにしか見えんのだが……」
「微笑みに裏表がある! 男のギャップではありませんか!!」
「ギャップ……空気もギャップに入るのか?」
「私って、どんな空気持ってるんですかね」
「どんなって、爽やかと黒い空気だろう」
「それはウサギだと思うんですが」
「スティ? ああ、確かに変わ……って、貴様女子トークに割り込むな」

 

 いつの間にか図書室から出てきたベル。
 その表情は苦笑いし、紫紺少女は壁に“の”の字を書いていた。可愛いな~。そんな私を後ろから抱きしめるベルは頬に口付ける。と、紫紺少女の背景にヒビが入った。

 

「やややややっぱり貴女はわたくしの敵ですのね!!!」
「えっ! ち、違う!!」
「そうなんです。ヒナタさんは私が大好きなんですよ」
「こらこら、変なことを言うんんっ!」

 

 否定しようとしたが口付けられる。
 長い舌が口内に侵入し絡められるが、目の端には紫紺少女が見え、ベルを叩く。唇を離した彼は眉を落とした。

 

「私のことを好きだと仰ってくださったじゃないですか」
「ここでそれを出すなーーーー!!!」
「ああ! ベル様の悲痛のお顔を出すことが出来るなんて!!」

 

 ベルと同時に紫紺少女も悲痛な悲鳴を上げる。
 ああ、ややこしい。とてもややこしい。私はどうすればいいんだ。冷や汗をダラダラ流していると、私の頭に顎を乗せたベルが紫紺少女に訊ねる。

 

「ところで、ネジェリエッタさんは何をされているんです?」
「貴様に会いにきたのではないのか?」
「あ、それもあるのですが、これをお返しに……」

 

 突然、声のトーンを落とし、両頬を赤く染めながら持っていた物を差し出す。よく見れば、ベルの白緑マントだ。

 

「目覚めた時にこれがあった時、わたくし歓喜しました」
「あー……妙な優しさが仇となりまし……ヒナタさん?」

 

 私の視線に気付いたベルが珍しく冷や汗を流す。
 いや、うん。思い返せばスティの力を使って玄関口に出た時、紫紺少女に掛けられてたなとは思う……が。なんだろうか、他の者にあまり関心を持たないベルが珍しいというか。

 頬を膨らませているとベルは苦笑しながら頬ずりし、紫紺少女に微笑んだ。

 

「ネジェリエッタさん、ありがとうございます」
「えっ!?」
「貴女のおかげでヒナタさんが嫉妬してくださいました」
「し、嫉妬などして……ない」
「可愛いヒナタさん、最高に可愛いですね」

 

 意味わからんとそっぽを向くが、翡翠のイヤリングにキスを落としたベルはとても嬉しそうだ。そんな私達を見る紫紺少女の手と肩が震えているのに気付き、怒っているのだろうかと顔を青褪める。が。

 

「はあ~ん! ベル様の最高級笑み!! 最っ高にラッキーですわ!!!」
「え」

 

 紫紺少女も少女で別方向に考えがいっており収集がつかない。
 全然噛み合わない二人は想い想いに気持ちをぶつけ、私はフィーラと浅葱少年が呼びくるまでどうすることも出来なかった。

 

 恋愛ってなんだろ────。

 

 

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*四聖宝と南十字~カレスティージ&ソランジュ編~*

 


 無事に式典が終わり、残すは明日の舞踏会のみ。
 その前にと、私の手には首と胴体が真っ二つにされた黒ウサギと綿。そして白ウサギと編みウサギがあった。

 

「ニ匹も一緒に入れていいのか?」
「はい……お願いします」

 

 月明かりが照らすバルコニーでベンチに座り、針に糸を通す私の膝にはスティが寝転がっている。膝で頬ずりされるとくすぐったくて手を止めては額を叩く。だが、互いに笑っていた。

 

「……て、何その甘さ……つーか、ホントにカレスティージかよ」

 

 篭った声に顔を上げると全身包帯男。
 唯一、金の瞳とちょろっと白銀が見えるが……。

 

「スティの友達か?」
「妖怪の知り合いはいません……そもそもボクに友達いませんし」
「スティ、それはちょっと寂しすぎるぞ。いいか? 友達というのは」
「て、おい! 妖怪と言った挙句ムシすんなよ!! ソランジュだっつーの!!!」

 

 注意していると、ツッコミしながら頭と顔に巻かれた包帯を取った男。よく見れば南十字のサイド髪男……に、気にせず友達の良し悪しをスティに教える。

 

「ホントに人の話を聞かない連中だな!!!」
「年上の話など聞く気にもならん」
「興味ない話は無視なり……」
「それ、前も聞いたし! つーか、揃いも揃って、そんなんで社会を生きていけると思うなよ!!」

 

 まさか二十八にもなって社会について言われるとは思わなかった。包帯男は汗を流すと別のベンチに腰を掛ける。歳は辛いものだな。

 

「いや、歳は関係ないから。普通に大怪我してる人間がハイテンションでツッコんだらこうなるでしょ」
「大げさなリアクションを取るから大怪我などするのだぞ」
「あのさ、ボクがこうなったのアンタの膝にいるガキのせいだかんね」

 

 包帯男の冷たい眼差しがスティに向かう。ん、スティのせいなのか?
 疑問符を浮かべると上体を起こしたスティは仮留めした黒ウサギを撫でる。

 

「父親の教え四……目には目を……死に値すべきものはそれ以上の地獄を味合わせろ」
「それ完全に死ねって言ってんじゃねーか。あーったく、女からもそいつになんか言ってやってよ。危ない発言と行動ばっかでさ」

 

 年上の話など無視したいが、確かにたまに変なことを言うな。
 その八十パーセント以上がイズのせいだが、これからの人生、コミュニケーションなどなど必要になる。私に出来ることならばとスティに顔を向けると、彼の顔が目の前にあり、口付けられた。

 

「んっ……あ」
「おいー……教える気ねーだろ」

 

 ベンチの上で両膝を折り、両手で私の頬を持つスティは包帯男など気にせず口付けを続ける。冷たい唇と舌が私の唇をなぞり、離れると首筋に吸い付き赤い痣を付けた。息を荒げながらベンチの上で正座した彼を見ると、小首を傾げる。

 

「ボク……何か悪いことしました?」
「いや……何も悪いことではないが……」
「女ぁ、騙されるな! そいつはガキの顔を被った死神だぞ!! 今回だって何人殺「『瞬水針』」

 

 大量の水針に、包帯男は慌てて防御した。ガキの顔を被った死神……死神……いや。

 

「死神の名を持つのはバロンだぞ?」
「はい……ボクは青い空の騎士です」
「おいーっ! ”影”つけろ"影”をーっ!! つーか、針を飛ばすな!!!」

 

 微笑むスティに先ほど以上に包帯男が息を荒げてツッコむ。しかし、針は確かに危ないと『めっ!』すると、スティはしゅんと肩を落とした。

 

「ごめん……なさい……」
「うむ、わかればよろしい。ほら、スティはちゃんと謝れる良い子なんだぞ」
「き、気持ち悪ぃ……つーか絶対騙されてるだろ」

 

 頭を撫でると、両頬を赤くしたスティは両腕を私の首に回し頬ずりする。そんな私達を包帯男は両腕を擦りながら顔を青褪めた。おい、体調悪いなら帰れという眼差しを向けていると大きな溜め息を吐かれた。

 

「あのさー……アンタ、そのガキが好きなんだよね? 年下好きーって言うアレとは違うわけ?」

 

 スティの眉が上がり、細くした藍の双眸を包帯男に向けるが私は頭を撫でる。
 確かにまあ、最初は『年下かわいい~』だったし『愛してる』と言われた時は度肝抜いた。けれど胸元で輝く石と同じ双眸を向ける彼は今では"少年”ではなく"男”。
 首を傾げる彼を見れば私の心はわかる……だって。

 

「スティを見てるとドキドキするし……顔を逸らしたくなるのは、歳関係なく……好きって……愛してるって意味なのだから……それは関係ない」

 

 動悸を激しく鳴らし、両頬を赤くしながらそっぽ向くとスティと包帯男が同時に目を見開く。瞬間、勢いよくスティに抱きしめられた。その顔は真っ赤。

 

「ヒナさんヒナさん! ボクもヒナさんが大好きです!! ヒナさん以外は愛せません!!!」
「ちょちょちょ、スティ!」
「だからヒナさんもボク以外を愛さないでください! 愛したらそいつら殺してヒナさんも殺……なんでもないです!!」
「ちょっ、今なんか意味深な台詞を言わなかったか!!?」
「女ー……やっぱその男はやめた方が……もうムリか」

 

 包帯男の溜め息を聞きながら、スティの細い身体のどこから出てくるのかわからない力で抱きしめられ、本気で死にそうだ。

 

 そんな盛大な告白と、このまま野外プレイになることなど当然知る由もない────。 

 


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*四聖宝と南十字~エジェアウィン&ワンダーアイ~*

 

 

 無事に式典が終わり、残すは明日の舞踏会のみ。
 晩餐会を終えた私はとある一室でアウィンと二人、正座をしていた。目の前に座るのは南十字の大柄男。

 

「つまり……本当に貴殿がアウィンの彼女と言うわけか」
(おい、アウィン。私はまだ一言も喋ってないんだが?)
(気にすんな。おっさんはだいたい人の話なんか聞かず話し進めっから)

 

 小声で話すアウィンに脱力した。
 確か孫みたいに可愛がられててウザイとか……また面倒な男に好かれたもんだな。一息つきながら、ともかく訊ねてみる。

 

「えっと……つまり、私がアウィンの彼女?に相応しいかの話なんでしょうか?」
「いや、もう嫁に決定しってから意味ねーよ」
「何、嫁だと!? もうそこまで話が進んでおったのか!!?」

 

 おいーーっ、話をややこしくするなーーっっ!!!
 顔を青褪めアウィンの背中を叩くが、足をくずした彼に逆に抱きしめられる。大柄男は目を見開いた。

 

「決まったもんは決まってんだから、しゃーねーだろ。だからジイジは口出しすんな」

 

 何も決まってない決まってない! 勝手に話を進めるな!! 貴様もこの男と同類だぞ!!?
 そんな私の訴えなど知っておきながらスルーするアウィンは頬ずりしながら舌を出し、大柄男を見る。

 

「ううむ……そうか相思相愛を引き裂くことなど小生には出来ぬな」
「おいおい、納得しかけるな! おおおじい様の意見も大事ではないか!?」
「バカッ、余計なこと言うなっげ!?」

 

 瞬間、私はアウィンごと大柄男に抱きしめられる。

 

「おお~っ! なんと優しい女子(おなご)だ!! そうかそうか、小生の心も聞いてくれるか!!!」
「「き……ぎく前に……じぬ……!」」

 

 物凄い力に押し潰されそうだ……なんだか頭にお花畑が見えてきたな。ああ……父と母……それに昨年亡くなった祖母まで……ああ……私ももうじきそこに……。

 

「ヒナターー!しっかりしやがれーー!!」
「はっ! いかん、一瞬三途の川が見えた!!」

 

 アウィンの大声で我に返ると、既に腕を解かれていた。
 私が無事なことに安堵したアウィンは大柄男に文句を言い、彼は私に面目ないと謝る。ともかく感情の起伏が激しい方なのがわかり、アウィンの背に隠れながらまた訊ねてみた。

 

「お、おじい様はなんでまたそんなにアウィンを気に入ってらっしゃるのですか?」
「ん? いや昔から家庭像を描いていてな、その中の孫がアウィンそっくりなんだ!」
「デカイ妄想にオレを巻き込むんじゃねーよ……」
「ち、ちなみに妄……じゃない、未来図のアウィンに嫁はいますか?」
「んん~、さすがに小生の中でアウィンはまだ八歳ぐらいでな。まだまだ早かろう」

 

 おい、このアウィンはもう二十四だぞ。
 腕を組む大柄男に私とアウィンは呆れるが、今度は逆に訊ねられた。

 

「しかし、女子はアウィンより年上だろ? アウィンは良いのか?」

 

 確かにスティより差はないとはいえ、アウィンとも四つ差だ。
 どういう経緯で彼に好かれたのかハッキリわかってない私にとっても謎なところ。そんな私と大柄男の視線にアウィンは赤く染まった頬をかく。

 

「年はカレスティージと一緒で関係ねーよ……たまたま、好きになったヤツが年上ってだけだろ」
「まあ……貴様あんまり年下に見えんしな」
「んだと?」

 

 ジロリと睨まれると苦笑いする。
 確かに年下レーダーは鳴るし跳び付きたくはなるが、気軽に話せるので同じ年ぐらいに見えてしまう。あ、別に顔が老けてるとかじゃないぞと訂正するが、アウィンは頬を赤くしたまま。同時に大柄男の笑い声が響く。

 

「あっははは! 若いのは良いことだな!! 互いが想い合っておるんなら結構結構!!!」

 

 今度は私もアウィンと一緒に顔を赤くする。
 そんなつもりはなかったのだが……まあ“好き”というならそういうこと……なんだろうな。うむ。祝いに酒だー、と叫ぶ大柄男は止める隙もなく走り去ってしまった。

 

「中々……面白いおじい様をお持ちだな」
「バカ言うんじぇねーよ。オレにとっちゃ祖父はロジエットだっつーの」
「いや、でもあの男も結構ロジーさんに似てると思うぞ。アウィンにもな」

 

 くすくす笑うとアウィンの顔が近付き口付けされる。
 小さな口付けを数度繰り返しながら左手にある紫のブレスレットと赤のハチマキに手が乗ると、いっそう深くなった。同時に心臓の動悸も激しく鳴り、そのまま押し倒さ──。

 

「よーしっ、飲むぞ飲むぞー! ほれほれ、二人は何が好きだ!?」
「「…………っはははは!」」
「ん、どうした?」

 

 両腕に大量の酒瓶を持ってきた大柄男にアウィンと二人笑うと瞬きされる。
 その姿はまさにロジーさんで、妙な親近感が沸くと、ウザイと言っていたアウィンが晩酌したりなど何かしらの糸が繋がる夜となった。

 

 もっとも、私と大柄男が飲みすぎたせいで思いっ切り叱られるのだが────。

 


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*シークレット~イヴァレリズ&ヒューゲバロン~*

 


イズ*やっほ~い、俺様誰様世界王様イズ様なり
バロン*あれ~なんか~前より~増えてない~~?
イズ*や~ん。それ知ってんのはかなりのドMだけだぞ。つーわけで、ここから先は十回連続ポチを知ってるドMしか入れないなりよ
バロン*四枚の~SSが~まだ出てない~残念な~人は~回れ右ね~~

 

 

 


イズ*んじゃ、今コレを見てるヤツは超ドMなヤツなわけね
バロン*え~絶対Sも~いるよ~~
イズ*なに言ってんだよ。Sだろうとフツーだろうと俺がソイツ以上のSだから全員がMなんだよ
バロン*うっわ……相変わらず凄い自信だね
イズ*当然なり(ニヤニヤ)つーかなんで今回お前もいるんだよ
バロン*いや~取り合えず~トルリットシリーズの~拍手だけど~僕~殆ど出なかったからね~~
イズ*最後の最後で登場してヒナとヤったぐらいなのにな
バロン*ね~僕も~本当は『解放』する~予定~だったんだよ~~
イズ*や~ん、残念だったなりね~
バロン*すっごく面白そうな顔して言うのやめてくれるかな。腹立つんだけど
イズ*俺を相手にして腹を立てねぇヤツの方が珍しいよ(ニヤニヤ
バロン*そうだね……アズフィロラが可哀想だ。ま、そんなわけで僕もシークレットの方に混ざろうかと思ってね
イズ*え?
バロン*だって、イヴァレリズほどじゃないけど僕もSだからね。ここってドMさんの聖域でしょ?
イズ*それを公言したつもりはねぇけど見てるヤツ次第じゃね?
バロン*ま、そうだよね。だから今読んでる君に選択肢をあげるよ。僕とイヴァレリズ、どちらに相手してもらいたいか
イズ*や~ん、俺のお株を奪った~。つーかお前、ヒナとヤったじゃん
バロン*一番はヒナタちゃんなんだけどね。別のMさんから色々学ぼうと思って
イズ*…………ヤル気満々じゃねぇか。しゃーねぇな。俺は胸フェチだから乳首攻められんのが好きなヤツが来いよ
バロン*僕は普通に下が好きかな。咥える御奉仕してくれたら君のも倍以上優しく舐めて挿入してあげるよ。ただし……

 

ニ人*揃ってドSだけど(イ)な(バ)ね


バロン*さあ、選択の時だ。黒か金の扉か……どっちを選ぶかは君次第。いまさら帰ることなんてできないよ
イズ*楽しい夜を──すごそうぜ

 


*に、逃げたかったらなんとかしてやるから私を呼ぶのだぞ!!! byヒナタ

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