異世界を駆ける
姉御
番外編*拍手小話~お花見とお祝い編~
*過去の拍手お礼SS集
「どうした? スティ」
朝のロードワークを終え、大浴場から上がってくると自室の前で普段は寝ているスティが体育座りで待っていた。笑顔で立ち上がったスティは抱きつき、頬ずりする。
「ヒナさん……ぎゅー」
「う、うむ。ぎゅー」
抱きしめ返すと、長い前髪から藍色の双眸を覗かせたスティは微笑む。
以前なら『可愛い~!』と言っていたが、今では忠誠の宝石をくれた“一人の男”となり顔が赤くなる。その隙に首に腕を回したスティは首元に吸い付く。
「ああぁっ……」
「んっ……一番」
“ちゅっ”とリップ音が鳴ると赤い花弁が付く。
それに満足したのか、スティは腕を離すと顔の赤い私の手を握った。
「ルベライトで……お花見するから来てって……ヒュー様が」
「は、花見? 私は聞いていないぞ」
「ボクもさっき……緊急招集で聞きました」
ああ、だからスティが起きているのか。となるとストレスから浮かんだな、バロンのヤツ。
溜め息をつきながらも笑みを浮かべると自室のドアを開いた。
「わかった。準備するから待っ「なら、こちらを着てください」
クリーム色のホルターネックドレスを手に持つベルが笑顔でベッドに座っていた。
瞬間、ハリセンと黒ウサギを振るが、スティは頭を掴まれベッドに放り投げられる。ハリセンも手刀で落とされ、私は大きな両腕に捕まった。
「ちょちょちょ、ベル!」
「ん……お風呂上りはさらに良い匂いがしますね」
「いや、貴様どうやって──んっ!!」
条件反射で顔を上げてしまい、唇が重なった。
舌で唇をなぞり口内に侵入するが、スティの足蹴りが背中に当たって離される。よほど痛かったのか、ベルは背中を擦りながら振り向いた。二人は笑顔なのに怖い。
「本当、足癖の悪いガキですね」
「無断侵入しているおっさんに言われたくないです」
火花がバチバチ散っている横で着替える私は慣れてしまったんだろうか。いかんな。
すると、振り向いた二人に『ぜひドレスを』と勧められた。こういう時だけは仲が良いのか押し負け、着ることにした。が、下着まで脱がされ触られ舐められ何度かイったのは内緒だ。
「てっめぇ、そういう時は呼べって言ってんだろ!」
「二人がいなくなった時点で気付くべきだったな」
「出来れば……貴様らのどちらかが呼びにきてくれ」
早くも痛い身体を支えながらビニールシートに座る私の両隣にはフィーラとアウィン。
扉の開放が全員可能になり、ルベライトの広場に咲く桜の木の下でお花見だ。バロンも交じった花見は騒ぐというよりはまったり。今はベルとスティと三人、何かを取ってくると言って席を外しているが。
見慣れた桜に安堵しながら、シートの上にはお酒や料理が並び、両隣の二人に御酌されている。
「お、すまんな。ほら貴様らも」
「いや、俺達は……」
「む~。貴様ら、私が注ぐ酒が飲めんと言うのか?」
「てめぇ……酔ってんじゃねぇだろうな?」
“酔っていない”と眉を上げるが呆れられた。
頬をふくらませお酒を飲むと、フィーラの手がゆっくりと頬に添えられる。
「顔が赤い……充分酔っている証拠だ」
「貴様の赤には負け──っ!?」
杯から口を離すと同時にフィーラに口付けられた。
いつもは優しい舌が荒く、口内を掻き乱す刺激に杯からお酒が零れ、ドレスと膝元が濡れる。
「あぁっ……!」
「おめぇな……ったく、せっかくの日に汚すんじゃねぇよ」
「すま……ひゃあっ!」
杯を奪ったアウィンは溜め息をつくと上体を屈め、濡れた膝元、股間に顔を埋めると舐めだす。舌が肌にも伝い身じろぐが、両手で脚を固定されている上、フィーラの口付けも止まない。
「んあっ、あぁっ……」
「んっ……ヒナタ……気持ち良いか?」
「おいっ……ココも濡れはじめてねぇか?」
アウィンの手がドレス下に潜り、濡れたショーツを撫でる。その気持ち良さとフィーラの口付けとお酒のアルコールに身体は火照り、喘ぎを漏らす──が。
「「何してるんですか?」」
「ね~~」
真後ろで微笑んだままドスの効いた声を響かせるベルとスティとバロンに二人の手が止まる。同時に背負った剣と黒ウサギが飛ぶが、対抗するように剣と槍を抜き、戦闘開始。
同じく花見をしていた住民達と共に呆然と見物していると、ワンホールのショートケーキが目前に置かれた。ニコニコ笑っているバロンは腰を屈めると顔を近付ける。金色の双眸と目が合う──と、口付けられた。
「「「「ああっ!!!!」」」」
「ん…!」
「ん……ヒーちゃんの大事な日……だからね」
唇を離し、笑みを浮かべた男に顔を赤くしながら『大事な日』に首を傾げる。と、剣を鞘に治めた『四聖宝』が私を囲う。
「やっぱコイツ覚えてねぇよ!」
「自分のことは無頓着なんですね」
「まあ、準備しやすかったから良いが」
「ヒナさん……ココ見て」
わけがわからないと疑問符を浮かべる私にスティがケーキを指す。ショートケーキの真ん中にある板チョコに書かれてあるのは──。
「「「「「誕生日おめでとう」」」」」
五人の声が重なると、風と共に桜が舞う。
酔っていたかもしれない頭は冴え、目を見開き思い出す──今日は、私の生まれた日だ。
「ヒーちゃん~履歴書~書いてたの~忘れてたでしょ~~」
「ヒューゲも今朝になって思い出すんじゃねーよ!」
「俺も花見の陣地取りなんてはじめてだ」
「特別な日は特別な服と人達、ですからね」
「ヒナさん……プレゼント……」
口々の言葉に動悸の激しさは治まらず、プレゼントを持つスティをゆっくり抱きしめる。他が文句を言うが、それが聞こえないほど私は嬉しくて幸せだった。
両親が亡くなってからは私自身覚えていることは少なかった。
けれど、祖母や洋一や愛ちゃん、会社の同僚や友人が毎年祝ってくれていた。それは異世界に来ても途絶えることなく彼らにも祝ってもらえ、目尻を熱くしながら微笑んだ。
「ありがとう……」
* * *
「んじゃま、ケーキ切ろうぜ」
「ヒナタさん、ぜひ私と一緒にケーキ入刀で」
「殺しますよ……」
「フィーラはやはりいらんのか?」
「ああ、俺の分も食べて構わない。しかし……何かを忘れている気がする」
「アーちゃんも~? 僕もね~何か~忘れてる気が~するんだよね~~」
首を傾げるフィーラとバロンを横目にナイフを持つと全員が集まる。苦笑しながらも、いざケーキ──。
「ご入刀なり~!」
「「「「「!!!?」」」」」
「や~ん、ヒナと入刀よ~」
「イイイイイイイズ!!?」
いつの間にか私の背後にいたイズに抱きしめられたままナイフを一緒に持ち──入刀。
そのまま何等分かにナイフで分け、ひと切れに突き刺すと器用に持ち上げたイズは食べる。
「うまうま」
「おいいいっ! なぜ貴様が先に食べる!!」
「や~ん、だって誕生日ケーキなんだろ」
「だから私「俺もだよ」
怒りを遮った言葉に目を見開くとフィーラとバロンが『あっ』。同時に意地の悪い笑みを向けたイズは私に口付け、甘い甘いケーキを渡す。
「ふん……っん……あっ」
唇が離れると抱きしめられ、胸を揉むイズは耳元で囁く。
「だって今日──俺も誕生日だもん」
「なああぁぁぁっーーーー!!!」
まさかの発言に振り向くと、フィーラとバロンが嫌々に頷く……マジか。
その後、全員がイズを退かそうとするが、悪戯の帝王は『ヒナにケーキ付けまくって舐めたい人、この指とーまれー!』と、甘い物嫌いのフィーラ以外を味方に付けた。
その後は──ご想像にお任せしよう、うむ。
誕生日………賑やかだったなぁ……────。
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*シークレット~イヴァレリズ~*
やっほ~い。俺様誰様王様イズ様なり☆
『これ1枚』と書いておきながら10回連続ポチしたら出て来るシークレット!
なんか『バレンタイン』と『ホワイトデー』で俺の存在がバレてから、異様に押しまくるドMなヤツがいたらしくてな。誰かって? 今、俺の目の前にいて読んでる、だ~れかさん(ニヤニヤ
そんな可愛いヤツのために再び登場なり。
そんなわけでなんかくれ。だって俺、今日誕生日なんだぜ? 手ブラで来るのはなし。
え? 10回も押したならいいだろって? や~ん、俺を誰だと思ってんだ。ま、礼は必要だし頬キスだけはしてやるよ。それでも満足出来ないやつは……そーな。
全裸でクリームまみれになって、また来てくれたら1日中可愛がってやってもいいぜ。あ、胸には大量に付けろよ?
付けたところどころか全部食べてやるし、俺は良い子だから風呂にも入れてやるよ。手で隅々まで恥ずかしいところも洗って舐めて拭いてやるから準備出来たら呼べ。
そしたら特別──“王の間”に招待してやる。
*行っちゃダメだーーーーーー!!!!byヒナタ